すまんな。CBの嫁ポジはもろたで。
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「自由で、自分にしか従わない。それを当たり前と思っているところに」
ジープベニザクラの答えに、ミスターシービーは目を丸くした。
自由で、何にも縛られたくなくて、好き勝手に行動する。
それが原因で怒られて、周囲とうまくいかないことは幾度もあったが。
まさかそんなところに憧れを抱かれるとは思っていなかった。
「……じゃあさ、少し昔話をしようか。私、小さいころはよく『どうして言うことが聞けないの』って怒られたんだ」
ミスターシービーはトレセン学園に入る前の小学校やクラブチームで度々、先生やトレーナーと衝突していた。
子供のころから能力を買われ、期待されていたミスターシービー。
それだけに周囲の大人はミスターシービーを立派なウマ娘にするべく、好き放題する彼女を必死に窘めようとしたのだろう。
最も、それがミスターシービーにとっては鬱陶しくてかなわなかったのだが。
「キミも言われたことある?」
「いえ、あなたほど期待されていませんでしたから。しかし、もし私が同じことを言われたのでしたら」
ジープベニザクラはミスターシービーに少し不慣れなウインクを返した。
「"聞きたくないから、以外にあると思いますか?"で押し通ったかもしれませんね」
「……あはは、そっかぁ。小さいころの私も、それくらい図々しかったらなー」
ミスターシービーの声とジェスチャーは呆れていたが、その顔は笑顔だった。
本来、図々しいはネガティブな意味合いで使われる言葉だが、ジープベニザクラにとっては褒め言葉である。
ジープベニザクラは自由奔放なミスターシービーを羨ましく思っていたが。
「--私だって、そんな動じないベニちゃんが羨ましいよ」
「あら、シービーさんにそう言っていただけるなんて光栄です」
ミスターシービーにとって走り方ではなく、在り方を認めてくれる数少ない友人ができた瞬間だった。
そして、走り方すら注目されず、そもそもの友人が少ないジープベニザクラにとっても。
「さーて、そろそろ昼休み終わっちゃうから戻ろうかな」
ミスターシービーは大きく背伸びをすると、屋上を後にして。
その後ろをジープベニザクラも続く。
当たり前だが、ノーガードで雨を浴び続けていた2人は学園内に入った瞬間、全身からビチャビチャと水が床に滴っていく。
「この姿、きっと先生に怒られますね」
「でも気にしない。そうでしょ?」
ミスターシービーは、慣れた様子の綺麗なウインクをジープベニザクラに返した。
「ええ。放っておけば乾きますから」