ウマ娘 コノハナレッド   作:takapon960

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さあCBと仲良くなったところでお次はメイクデビューです。


第18話

ーーー18ーーー

 

担当契約が決まってからの日々は案外早く過ぎるものらしい。

 

今日はジープベニザクラのメイクデビューの日だ。

 

メイクデビューは日本各地で毎週のように開催されており、比較的自由に場所・距離を選ぶことができる。

 

今回、石原トレーナーが選んだ場所は小倉レース場のダート1700mだ。

 

 

「1700mですか」

 

ホワイトボードに貼られたコースをなぞりながら、ジープベニザクラは自分が走る距離を反芻した。

 

1700mとは一応ジープベニザクラが得意とするマイルの区分内ではあるが……。

 

「正直なところ、気持ち悪いほど微妙な距離だ」

 

「気持ち悪いんですかこの距離……」

 

選んだ石原トレーナー自身はすっきりしない表情をしており、ジープベニザクラは苦笑いする。

 

なぜなら、1700mはG1からPre-OPに至るまで芝では一切存在しない距離だからだ。

 

マイル戦としてはスタンダートな1600mとそう大差はないだろうが、正直なところ、石原トレーナーもこの距離は未知数と言っていい。

 

ジープベニザクラは、初戦からそんな気持ち悪い距離を走らされることになる。

 

「それでも俺が1700mを選んだ理由は3つ。1つは1600~2000mまで適性のあるベニザクラなら1700mは問題ないと踏んだこと」

 

「2つ目は、ダートにはこういった非根幹距離のレースが多い。それに慣れてもらうため」

 

「……あともう1つは?」

 

「--正直、ベニザクラなら距離なんて何でもいい気がした」

 

ジープベニザクラは軽くずっこけた。

 

ダートでステイヤーの話をしてマヌケ野郎と呼ばれたように、ウマ娘にとって適正距離は全てを差し置いて最重要だというのに。

 

とても芝で10年以上トレーナーをやってきたG1トレーナーだとは思えないいい加減な発言だ。

 

「さ、最後だけ随分雑じゃありません?」

 

「確かにそうだが、実際お前はどう思ってる?」

 

ジープベニザクラはよろけた姿勢を戻しながらあきれ顔で頷いた。

 

「--ええ。実際、距離なんて何だって構いませんよ。1700m、走ってやろうじゃありませんか」

 

 

ジープベニザクラが地下バ道へ向かった後、石原トレーナーは関係者用の観客席へと移動する。

 

期待の新人ウマ娘が出走する芝のメイクデビューであれば、それなりに関係者席や一般席にも人が詰めかけるものだが。

 

やはり、ダートのメイクデビューは相変わらず閑散としており、一般席は数えられるほど。

 

関係者席にもあまり面識のない出走ウマ娘のトレーナーしかいない。

 

「やはりほとんど人がいないな。いや、観客が全てじゃないぞ俺。ベニザクラが勝つかどうかだ」

 

石原トレーナーは頬を叩き、未だエリート気分の抜けない自身を戒める。

 

すると。

 

「あの、あなたが石原さんでしょうか?」

 

その声に石原トレーナーが振り向くと、40代後半くらいの夫婦と思われる2人が立っていた。

 

関係者席に通されているということは、この夫婦は出走ウマ娘と何らかの関係がある。

 

「はい、ジープベニザクラの担当をしております、石原泰介と申します」

 

石原トレーナーが2人にお辞儀をすると、夫婦もまた石原トレーナーに向けて深々とお辞儀をした。

 

「これはこれは、いつもうちのベニちゃんがお世話になっております」

 

「ジープベニザクラの父です。こちらは妻です」

 

この夫婦はジープベニザクラの両親ということになる。

 

わざわざ可愛い娘の晴れ舞台を見に来てくれたようだ。

 

「ベニザクラのご両親でしたか!はるばるようこそお越しくださいました」

 

石原トレーナーは両親にレース場が良く見える特等席へジープベニザクラの両親を案内する。

 

あまり間近でレース場を見たことがないのか、まだウマ娘が走ってもないのにジープベニザクラの両親はレース場の光景に圧倒されていた。

 

「まあ、こんな立派なコースでベニちゃんが走るなんて、お母さん誇らしいわ」

 

「あの、石原さん。うちのベニが迷惑をかけていないでしょうか……?」

 

レース場に感動する母をよそにジープベニザクラの父が石原トレーナーに恐る恐る尋ねる。

 

何事にも動じないジープベニザクラと違って、両親のほうは立派なスーツ姿の貫録ある石原トレーナーにたじろいてしまっているらしい。

 

「はは、聞き分けが良く、能力もあってこれからが楽しみです。少々個性的な子ですが俺は気に入っていますよ」

 

「ああ。素敵なトレーナーさんに巡り合えたようで良かった」

 

ジープベニザクラの両親はトレーナーから好評をもらっていることを聞き胸をなでおろした。

 

その横で石原トレーナーは腕時計をちらっと見る。

 

まだ発走までは少し時間がありそうだ。

 

 

「--せっかくの機会です。失礼ながら、ベニザクラについてお聞きしても?」

 

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