ウマ娘 コノハナレッド   作:takapon960

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最初「いやなんでジープやねん!ウマやろがい!」と自分も思いました。
でもバリバリダートを走るウマ娘ってなると案外合ってる気もしてきました。


第21話

ーーー21ーーー

 

「レースも終盤に入ります、ここで大きく展開動き始める!」

 

実況の言葉を合図にするようにウマ娘たちがスパートをかけ始める。

 

ジープベニザクラもまた速度を上げ始め、少し外に膨れるように相手を追い抜こうとする。

 

いや、外に膨れざるを得ない、と言ったほうがいいだろうか。

 

ジープベニザクラの走りはストライドが広い分、小回りが効かないのだ。

 

もちろん、無理のない程度でインコースを突いて最短距離を走れるほうが効率が良い。

 

トレセン学園のレース理論の授業の最初で習うことだ。

 

 

「--関係あるものですか、そんなこと!」

 

ジープベニザクラは歯を食いしばると。

 

ザシュッ、という音を立ててしっかりダートの砂を踏みつけ、次々とウマ娘たちを外側から強引に追い抜いていく。

 

追い抜かれたウマ娘たちは「そんな、メチャクチャな……!」と言いたげな驚愕の表情をしながらジープベニザクラを見送っていった。

 

「ここで外からグングン追い上げを見せるのはジープベニザクラ!次々とウマ娘を追い抜いていく!」

 

インコースを突いて最短距離を走れるほうが効率が良い?

 

教科書の著者がジープベニザクラの何を知っているというのだ?

 

非効率な方法で無理やりウマ娘を追い抜け続けたジープベニザクラは。

 

いつの間にか先頭にたって、後続との差をどんどん広げていく。

 

「すごい、見ろ!ベニが1位だ!」

 

「そのまま逃げ切るのよベニちゃん!」

 

あれよあれよという間に一気に先頭に躍り出たジープベニザクラに、両親は大興奮だ。

 

「見事な追い抜きだ、ベニザクラ。あれをガッツだけでこなしているなどとは信じられん」

 

石原トレーナーは両腕を組み、満足そうにうなずく。

 

その後の他のウマ娘が逆転してくる兆しは一切なく。

 

危なげなく、ジープベニザクラはゴール板を突っ切った。

 

「先頭はジープベニザクラそのままゴールイン!圧勝です!」

 

1着と2着との着差を表す電光掲示板には"3"が点灯した。

 

ジープベニザクラはほんのわずかにだけ拍手の聞こえる観客席・関係者席に振り向くと。

 

手を前にそろえて、綺麗なお辞儀で応えた。

 

あんなに力強い走りをするダートウマ娘なのに、ずいぶんと礼儀正しいじゃないか……。

 

少ない観客たちはおそらくそう思ったことだろう。

 

 

「さすがだベニザクラ!満点の走りだったぞ!」

 

地下バ道で石原トレーナーはジープベニザクラを迎えに行く。

 

戻ってきた体操服も髪も顔も砂埃で汚れていたが、ジープベニザクラは気にするどころか、むしろその姿を誇らしそうにしていた。

 

「ありがとうございます、トレーナーさん。私らしい走りができたと思います」

 

「ああ、そのうえで1つ。もし仮に『次はもっときちんとタイミングを見計らって経済コースを走りなさい』と俺が言ったとしよう」

 

石原トレーナーは人差し指を立てつつ、まるで他人の言葉の引用かのように言った。

 

この経済コース(効率のいいコース)を走りなさい、という言葉はまず先ほどのジープベニザクラの反省点としてあげるべきところ。

 

"普通の"トレーナーならそう言うだろうが。

 

石原トレーナーはこの言葉の返事がすでに予想できていた。

 

「ベニザクラはイヤって言うか?」

 

「はい、イヤです」

 

ジープベニザクラは笑顔で即答した。

 

「理由は?と聞かれたら直感、としか言えません。私は前にいるウマ娘を大外を回って抜くほうが性に合っているみたいです」

 

自分でも理由が説明できません、と言いたげにジープベニザクラは肩をすくめた。

 

大外を大きく回ってごぼう抜きする戦法はどちらかというとパワフルな豪脚が持ち味の差し・追込ウマ娘向けの走り方だ。

 

特別パワーが優れているわけではない先行ウマ娘のジープベニザクラがやれば距離ロスのデメリットの方が目立ち、あまり相性は良くないのだが。

 

「……それでいい」

 

石原トレーナーはジープベニザクラの即答拒否を肯定した。

 

「お前はお前の走りやすいと思ったやり方でやればいい。効率の良いデータなんて山ほどあるが、結局は自分に合ったやり方が一番だからな」

 

「ふふっ、トレーナーさんったら、私のことをよくわかってらっしゃる」

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