ウマ娘 コノハナレッド   作:takapon960

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トレーナーって1人のウマ娘を満足に担当するごとに3年以上は経過してしまうんだよな…
ウマ娘はいつまでも少女の見た目かもしれないけど、ただの男は何人も担当してたら老けちまうんですわ。


第2話

ーーー2ーーー

 

時代はインシルカスラムが入学するよりも前にさかのぼる。

 

トレセン学園の出会いと別れの季節。

 

専用に与えられた個室のトレーナー室で、1人の男トレーナーが何十枚と届けられた書類を眺めながら思慮を巡らせていた。

 

「……ふむ」

 

黒いスーツに赤いネクタイをフォーマルに着こなした威厳ある男。

 

年齢は30代半ばくらいだろうか。

 

トレーナーバッジを身に着けていなければ、エリートビジネスマンのような印象を抱くだろう。

 

彼が身に着けているトレーナーバッジはひどく色褪せていたが。

 

色褪せているほど使い込まれたトレーナーバッジ、ということは入るだけで超難関とされる中央トレセントレーナーの門を通ってから幾年も経ち。

 

多くの実績を積み上げてきたベテラントレーナーという証でもある。

 

実際、彼のトレーナー室には、色とりどりの優勝レイが飾られていた。

 

皐月賞。菊花賞。桜花賞。

 

1つ獲得するだけでも偉業と称えられる八大競争G1の優勝レイが、彼の部屋にはなんと3つも飾られてあった。

 

彼は、精鋭揃いの中央トレセン学園所属トレーナーの中でもさらに最精鋭。

 

引く手あまたの敏腕トレーナー、と言っていいだろう。

 

 

彼の名前は"石原 泰介(いしはら たいすけ)"。

 

かつては格式高いクラシック、ティアラ双方の路線でG1ウマ娘を輩出。

 

石原トレーナーと言えば芝でその名を知らぬものはいない、中央トレセンを代表するような名トレーナーだった。

 

そんな石原トレーナーは今年、担当していたウマ娘が引退・卒業。

 

また新たにウマ娘を迎え入れなければならない。

 

机に積みあがっていた書類はどれも新入生ウマ娘のプロフィールやこれまでの練習データなどがまとめられたいわばエントリーシートだ。

 

と、いうわけで石原トレーナーは現在、絶賛書類審査中というわけだったが。

 

「……ピンと来ないな」

 

全ての書類を読み終えた石原トレーナーはため息をついた。

 

どうやら、お眼鏡に叶う新入生ウマ娘は1人として存在しなかったらしい。

 

ベテラントレーナーたる彼の審査の目は厳しい……

 

 

いや、それもあるだろうが。

 

ため息をついた石原トレーナーの目線はトレーナー室に飾られていた優勝レイに向けられていた。

 

実はピンと来なかった最も大きな理由は。

 

今の石原トレーナーは新しい目標というものを見つけられていなかったからだ。

 

これまで10年以上のキャリアを積み上げ。

 

担当したウマ娘には格式高いクラシックG1を勝たせることができた。

 

さあ次のウマ娘にはどんなG1を獲らせてあげようか。

 

石原トレーナーはその答えをまだ決められないまま目の前の書類と向き合っていた。

 

もちろん、宝塚記念・天皇賞・有馬記念etc......

 

石原トレーナーにはまだまだ獲得できるビッグタイトルが残っているが。

 

目の前に並べられた新入生ウマ娘たちがそれらビッグタイトルすらも夢ではないかと言われると。

 

説得力には欠ける。

 

いや、模擬レースすらまだの基礎練習データだけで説得力を持たせられる方がおかしいのだが。

 

 

「まあ、全員見てみるか」

 

それでも、一応全員のデータを頭に叩き込んだ石原トレーナー。

 

1人当たり1~2枚の紙きれに並べた数字と文章だけで全てを決めつけるほど石原トレーナーも愚か者ではない。

 

最終的な判断はこの目で見てから。

 

石原トレーナーは今日の模擬レースの日程表を手に取り、トレーナー室を後にした。

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