ウマ娘 コノハナレッド   作:takapon960

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思い出してみてください。ベニザクラの強みは?


第35話

ーーー35ーーー

 

重く、強く。

 

ジープベニザクラは思いっきり地面の砂を蹴り上げて速度を上げた。

 

1と1/4バ身まで縮まった差は、すぐにそれ以上縮まらなくなり。

 

今度は逆にわずかに差が開き始める。

 

「なっ……!?」

 

メティキュラスも驚きを隠せない。

 

最終直線の先行VS差しで、差しが負けることがあるというのか。

 

「気合と根性で何もかも強引に押し通すやり方が、私に通用すると思わないことです!!」

 

なぜなら、ジープベニザクラがそれ以上の気合と根性で押し通ろうとするから。

 

既に力尽きていた前2人を容易く追い抜いたジープベニザクラは、残り200mもない時点で先頭に躍り出る。

 

「ここで先頭変わったジープベニザクラ!速い!強い!これは追い抜けない!」

 

この残り少ない直線距離でジリジリと差を詰め続けられればメティキュラスにも勝ち目があっただろうが。

 

差を縮めるどころか、わずかに広げられたその時点で勝敗は決してしまった。

 

 

「ジープベニザクラ2バ身離してゴールイン!紅色の桜が川崎レース場に咲きました!」

 

大きな歓声と拍手を受けながらジープベニザクラはゆっくりと速度を落として止まり、観客席に向き直ると。

 

綺麗に手をそろえて、ペコリと頭を下げてお辞儀をした。

 

本人はおそらく観客に手を振るような軽い気持ち、無意識でやった仕草なのだろう。

 

だが、G1を勝利するほどの強者なら「よっしゃー!!」「やったー!!」くらいの勢いでガッツポーズや雄叫びを上げていたっていいはずなのに。

 

とりわけダートならそういう荒々しい勝利アピールをする者が多いのに。

 

今年のジュニアダートの覇者は礼儀正しく、丁寧なアピールでファンに応えた。

 

それでいながら、美しくシックなワンピースも、赤い桜の髪飾りも砂埃にまみれさせ。

 

ライバルを強引な走りで千切って勝利を奪い取った。

 

礼儀正しく、おしとやかでありながら強く、砂塵をものともしないウマ娘。

 

それがジープベニザクラだった。

 

頭を上げたジープベニザクラは観客席を見渡して、両親がどこかにいないか軽く首を振った。

 

Pre-OPですら長時間のドライブで来てくれるような両親だ、G1なら絶対どこかにいるだろうとは思ったが。

 

「……いえ、わざわざ探すまでもありません」

 

観客席を目で追う途中でジープベニザクラは探すことをやめた。

 

代わりに、きっとどこかで私の勝利を泣いて喜んでくれていると決めつけることにした。

 

 

「ベニ……ザクラ、さん……」

 

その後ろで息も絶え絶えになりながら、メティキュラスは膝をついてジープベニザクラの名を呼んだ。

 

掲示板表にはⅠ:5が点灯している一方、10の番号はⅣの位置にあった。

 

あれだけメチャクチャな方法を無理やり押し通そうとして。

 

結局は2着どころか4着から順位を上げられないままメティキュラスはゴールインしていた。

 

全体でみれば健闘こそしただろうが、メティキュラス自身は納得などしていなかった。

 

「やっぱり……」

 

あなたがムカつく。

 

そう言いたかったメティキュラスは整わない息のせいで、最後までジープベニザクラに言葉を届けられなかった。

 

ジープベニザクラは根性に優れたウマ娘だ、気合に任せて相手を離していく。それは知っていた。

 

だが、実際の走りを後ろから眺めてみれば。

 

ジープベニザクラは余裕を持ち、全てが自分の思い通りに進んで、のびのびと走っていたようにすら見える。

 

躓いてばっかりのメティキュラスに比べて、何一つ苦労していなさそうな。

 

あまりにもスムーズに最強の称号を手にした、その様がムカつくのだ。

 

 

「メティさん」

 

そんなメティキュラスの心情を知ってか知らずか。

 

ジープベニザクラは振り向くと、メティキュラスの手を取り。

 

グイっと上に引っ張って強引に引き起こした。

 

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