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「なんでアンタ、ダートなんか選んだ」
シリウスシンボリはジープベニザクラの頭がおかしいことを確認すると、聞きにくい本題をズバッと切り出した。
「……適性の問題、皆と違うことをしてみたい……」
ジープベニザクラはひとまずいくつかの理由を挙げてみる。
しかし、それ以上の理由が出てこなかったのか、ジープベニザクラは数秒ほど固まると。
「……ええと、正直に言うと、直感のようなもので自分でもうまく説明できません」
「はあ?」
苦笑いして、回答を放棄した。
ジープベニザクラは芝で実力不足を感じたわけではない。
一切の興味を示さず最初からダートに行った。
この行為は、悪く言えば自分から落ちこぼれになりに行くようなもの。
シリウスシンボリはその理由についてもっと深く踏み込んでみたかったのだが。
本人はヘラヘラしながら回答らしい回答をしなかった。
常識に囚われないことはよろしいことだが、常識を捨てるだけ捨ててその後何も考えていないのではシリウスシンボリ的に0点だ。
私の見込み違いだったか、とシリウスシンボリは席を立とうとした。
「けど、自分の直感には間違いがない。--それは信じたいと思います」
その言葉にシリウスシンボリは振り向いた。
なぜ決めたのかはよくわからない。
でも、私が決めたことは絶対に曲げない。
シリウスシンボリが絶対としている"自分が歩む道を自分で選んだ"ウマ娘そのものだった。
「……それが正解かどうか分かんねえ道でもか?」
「正解かどうかなんて私が決めます。というか私が選んでるんですから正解です」
この答えは、シリウスシンボリ的に100点だろう。
あまりにも模範解答すぎてアドバイスすることがなく、少々つまらないくらいに違いない。
きっと、全世界がジープベニザクラのやることは間違いだと言ったとしても。
自分が合ってるとさえ思えばジープベニザクラはやりぬく。
実力は並程度でも、その強靭な意志・メンタルが、ジープベニザクラを強くしているのだろう。
「なるほどな。アンタはパピーじゃねえ。が」
心の中で感心したシリウスシンボリは、アドバイスの代わりに、少しテストをしてやることにした。
シリウスシンボリはジープベニザクラの顎をクイッと上に引き上げる。
「私はリードだけじゃねえ、ハンドルだって握れるんだ」
「このまま私がアンタを"運転"してやるよ。そう言ったら?」
少々からかって落としてやろうという魂胆だ。
シリウスシンボリ的には、この誘いに慌てたり困惑したりせず、はっきりとNOを言うのが模範解答だ。
ジープベニザクラは、他人にハンドルを操られたりなどしないウマ娘のはずだから。
ジープベニザクラは軽くため息をつくと。
シリウスシンボリの手首を右手で思い切り握って下に下げ。
左手で上にあげられた自分の顔を元に戻した。
「じゃあまずバックミラーは正しい位置に直しましょうか?」
少々のジョークへの付き合いも添えて。
「--ククッ、ハハハハッ!気に入ったぜベニザクラ!」
シリウスシンボリは高笑いすると、ジープベニザクラの肩をドンっと叩いてエールを送った。
「そのイカれたオフロード、最後まで突っ走ってみろ!」