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話が終わったころに。
横からカツカツと聞かせた者の背筋が伸びそうな靴音を響かせて割り込んでくるウマ娘が現れた。
「--おや、日本に帰って来ていたのか、シリウス」
間違いなく、知らぬ者はいない、トレセン学園生徒会長。
シンボリルドルフだった。
そして、シリウスシンボリとシンボリルドルフはただならぬ因縁があることでも広く知られている。
「おや、遅かったじゃないか皇帝サマ」
シリウスシンボリは隣に座っていたジープベニザクラをグイっと近くに抱き寄せ。
階段下にいるシンボリルドルフを上から見下ろす形になっている。
この様子、どっちが皇帝か分かったものではない。
「今ちょうど、カワイイお姫様を侍らしていたところだったんだがな」
「私の方はそんなつもり一切なかったんですけど……」
ジープベニザクラは抱き寄せられたこと自体には抵抗しなかったものの、シリウスシンボリを見る目は冷めていた。
「君が階段に座っていて通れないと聞いてね。降りてきてその子も離してもらえるかい?」
この様は傍から見ればシンボリルドルフが人質であるジープベニザクラを解放させるためにシリウスシンボリに交渉を持ち掛けているように見えるかもしれない。
「ハッ!アンタの言うことにゃ従いたくねえと言いてえところだが」
シリウスシンボリはジープベニザクラを離すと階段を降りて。
「今私は気分がいい。そいつに感謝しな」
手をヒラヒラとさせながらシンボリルドルフの前を止まることなく通り過ぎてどこかに消えていった。
「やれやれ、海外で走っても、傍若無人なのは相変わらずだ」
シンボリルドルフは呆れながらシリウスシンボリを見送ると。
ジープベニザクラに手を差し出そうとして、数秒固まると。
「ええと。ジープベニザクラ。大丈夫かな?」
名前を呼んでジープベニザクラに手を差し出した。
シンボリルドルフからすればジープベニザクラなど世代も違えば適性も全然違う、それこそ大衆の1人でしかないはずだが。
そこはさすがシンボリルドルフといったところか、直接関わりのない者でも名前だけはしっかり覚えているものらしい。
ジープベニザクラはシンボリルドルフの手を取ったが。
シンボリルドルフが引き寄せて階段を降りさせようとしたところをぐっと力を込めて抵抗した。
「おや、どうしたのかな?」
「大丈夫です。なのでエスコートはしていただかなくても構いません」
そう言うと、ジープベニザクラはシンボリルドルフの手を離して。
自分で立って階段を降りた。
どうやら、救出された囚われのお姫様・人質扱いされるのが嫌だったようだ。
と察したシンボリルドルフは苦笑いで応えた。
「……やれやれ、もしかして、君はシリウスに絡まれたのではなく、"つるんでいた"のかい?」
「はい!」
別に何の自慢にもならないことを、自慢であるかのように、ジープベニザクラは元気よく肯定した。