ウマ娘 コノハナレッド   作:takapon960

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ベニザクラはシリウスがまとめるようなはぐれ者だったのか……
そうです。イカれてます。


第44話

ーーー44ーーー

 

ジャパンダートダービーは7月に行われる。

 

現時点で唯一のダートG1ウマ娘、ジープベニザクラは今の戦績でも登録に除外されることはないだろうが。

 

とはいえ、この間ケガもしていないのに何1つレースに出ないというわけにもいかない。

 

クラシックで最短のG1はジャパンダートダービー。

 

ではその間にG2はあるだろうか?

 

……1つだけある。

 

川崎2100m、関東オークスだ。

 

 

「間もなく第4コーナー、ジープベニザクラは現在4番手」

 

関東オークスのレースは4分の3を消化し、残りは500~600m。

 

ジープベニザクラは全日本ジュニア優駿以上に他の全員からマークされている。

 

当たり前だ、ジープベニザクラは川崎でどれだか暴れたか。出走ウマ娘は全員身に染みている。

 

「ベニザクラだけは勝たせるものか……!」

 

「根性ならオレだってなあ……!」

 

「ここから外を回ってくるはず、塞がないと!」

 

まるで協力して包囲戦を仕掛けられているかのように、ジープベニザクラのセオリーである大外ブン回しを潰しにかかってくる。

 

「……あーあ。これは作戦を変えたほうがいいんでしょうか」

 

ジープベニザクラは周りを見渡して余裕そうにつぶやいた後。

 

「--変えるわけないでしょう!」

 

最初から一貫して変わらない"大外ブン回し"を実行した。

 

予想通り、と他のウマ娘が進路を塞ごうとするが。

 

「えっ?」

 

予想と違ったのは、塞いだ内側に、すでにジープベニザクラはいなかったこと。

 

「抜け出したジープベニザクラ!加速も速度も格が違う!」

 

最終直線でとにかくスピードさえあればいいと多くのウマ娘は思いがちだが。

 

もう1つ重要な要素にパワー、つまり加速力がいる。

 

加速力がなければトップスピードに到達できないまま終わってしまう。

 

勿論逆もしかり。加速力だけあってもトップスピードが低ければ抜け出せない。

 

そのどちらも意識してラストスパートをかけることで他のウマ娘を置き去りにする。

 

それがジープベニザクラの"ブラッドブロッサム"だ。

 

「ジープベニザクラ1着でゴールイン!関東オークスなど前哨戦と言わんばかり!JDDはやはり彼女のものか!?」

 

ジープベニザクラはいつもどおり、笑顔を見せ、控えめな手の振り方で観客席にアピールしたが。

 

実はとんでもない心拍数で汗もダラダラ、何1つ喋れないほど息が苦しかったことが分かった人はいったい何人いただろう。

 

「……何がベニザクラをそこまで動かしているのやら」

 

レースを見ていた石原トレーナーはそう呟いたが。

 

答えは数秒もしないうちに見つけた。

 

「いや、自分自身か」

 

ジープベニザクラはきっと、誰かのために走っているわけではないのだろう。

 

しかし、自分がやりたいがためにやるその全力すらも超えた走りは。

 

少しずつ、人々を振り向かせていくに違いない。

 

 

関東オークスから数日後。

 

石原トレーナーは1枚のレース新聞を調達した。

 

東京レース場で行われた全レースの結果と出走ウマ娘、その詳細が事細かにびっしりと書かれている。

 

石原トレーナーは新聞をペラペラと斜め読みし始める。

 

既に日本ダービー・オークスは終わっており、新聞に書かれてある日付のレースは重賞すらも存在しない。

 

そんなたいして価値のない日のレースの10Rの詳細が書かれてあったページで手を止めた。

 

東京ダート2100m、スレイプニルステークス。

 

石原トレーナーは、もしジープベニザクラにとっての新たな強敵がいるとしたらここしかないとの仮説を立てていた。

 

スレイプニルステークスの1着に目を落とすと。

 

そのウマ娘はメイクデビュー、ヒヤシンスステークス(Pre-OP)、そして今回のスレイプニルステークスと3戦3勝の成績を見事に収めていた。

 

グレードこそジープベニザクラよりは下だが、立て続けに3連勝するウマ娘が取るに足らないはずがない。

 

石原トレーナーは、1着のウマ娘の情報をなぞっていく。

 

「"アルマダクロック"」

 

「トレーナー、"原崎 直人(はらざき なおと)"」

 

ウマ娘の方は初めて聞いた名だが。

 

原崎直人、という名前は、どこかで聞いたような気がする、と石原トレーナーは首をかしげた。

 

ただし、それ以上は思い出せなかった。

 

石原トレーナーが過去に会ったトレーナーの数など数えきれない。

 

思い出せないのならその程度なのだろうと、ここでは気にすることもなく石原トレーナーは新聞を閉じた。

 

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