答えはゼロ。ウマ娘で1人も実装されていないことがこの時代・世界の冷遇さを物語っています。
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石原トレーナーが模擬レースを行っているダートレース場に訪れると。
「この人数……模擬レース、やってるんだよな?」
そこはもぬけの殻か、というほど人がいなかった。
先ほどの芝のレース場は何百人といってもいいほど人やウマ娘で溢れかえっていたのに。
このダートレース場には係員と出走ウマ娘を除けば片手で数えられるほどのトレーナーしかいない。
その片手で数えられるほどのトレーナーは、10年以上中央トレセン学園で勤めているはずの石原トレーナーですら見覚えがない。
記者や現役ウマ娘に至っては0だった。
「中央の敷地にいるのに見知らぬ土地に来た気分だ……」
石原トレーナーはまずダートという場がどれほど注目されていない場なのかをここで思い知ることになった。
「となればまずは情報収集だな。まさかこの年になって1から関係を築くことになるとは」
石原トレーナーはダートについてほとんど知識がない。
とりあえず、ダートコースについて知るべく、石原トレーナーは目の前のフェンスに寄りかかっていた2人のトレーナーに話を聞くことにした。
「隣で見ても構わないか?」
石原トレーナーはガラガラの最前列の位置を確保しつつ、2人の見知らぬトレーナーに声をかける。
その内1人は緑色のセーターに紫色の縁をした眼鏡をかけた柔和な若い男だった。
ようやく中央トレーナーとしての研修を終え、これから初めてウマ娘を担当するであろうの新人トレーナーだろうか。
襟にはピカピカのトレーナーバッジがつけられている。
もう1人は白いスーツを着たやや強面の男。
風貌やトレーナーバッジの使い込みから、これまで1人か2人のウマ娘の人生を預かった中堅トレーナーといったところだろうか。
とはいえ、白スーツの男もベテランの石原トレーナーに比べればまだまだ若輩者だろう。
「よそ者か?」
白スーツの男は石原トレーナーに目線を移すとぶっきらぼうに答えた。
第1印象を見るに、白スーツの男は石原トレーナーをあまり歓迎していないように見える。
「……同じ中央トレーナーのはずだが?ダートではクラシックから来たトレーナーのことを"よそ者"というのか?」
いきなりのよそ者扱いに石原トレーナーは呆れた言動を返したが。
これは白スーツの男から見れば"クラシック戦線のエリート様が気まぐれで落ちこぼれのダート戦線にちょっかいをかけに来た"と捉えるのだろう。
「ああそうだぜ。"よそ者"」
今度はよそ者を強調して白スーツの男が返す。
一気にトレーナー席の空気が険悪になるが。
「まあまあ。小原さんはここから出ていけ、と言っているわけではないんです」
緑セーターの柔和な男が間に入って仲裁した。
どうやら、こちらは石原トレーナーを歓迎しているらしい。
「……いても構わないな?」
「ええどうぞ。小原さんも別に構いませんよね?」
「さっき打出が言った通りだ」
小原と呼ばれた白スーツの男はむすっとした顔のまま目線をダートコースに戻し、打出と呼ばれた緑色セーターの男を指さした。