これはウイニングポストで鞍上だった人の考え方を参考にしました。
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石原トレーナーは、一見訳の分からないアドバイスをした。
レース前のジープベニザクラに対して「勝とうと思うな」、など普通は大問題発言だ。
「……なぜです?」
ジープベニザクラは興味があるという風に聞き返した。
流石のジープベニザクラと言えども、その言葉の真意が「わざと負けなさい」、だとは到底思わない。
何か意図があってそう言ったはずだと察した。
「思っていようが思っていまいが、結果は勝手についてくるからだ」
そう言いながら、石原トレーナーは今までのトレーナーキャリアで見てきたレースをいくつか思い出していた。
絶対に絶対に勝たないと。あるいはここでも負けたらどうしよう……。
そういう気負いすぎたウマ娘たちの多くが、実力をうまく出せていなかった事態を。
「ベニザクラにとっては釈迦に説法かもしれんが、いっそどうにでもなれ、と思うくらいの気持ちで臨め」
「いえ、本番前にためになる説法をありがとうございます」
ジープベニザクラは石原トレーナーのアドバイスを気に入ったようで。
「さあ、いっそどうにでもなーれ!」
とご機嫌で控室のドアを出た。
「1枠2番、ジープベニザクラ4戦4勝、JDD最有力候補」
「この子の強さには驚かされてばかりです。今日もメチャクチャなレースを見せてくれるでしょうか」
「--4枠7番、対抗ウマ娘アルマダクロック。こちらも3戦3勝」
「重賞こそありませんが、この世界において重賞の数だけで強さを判断するのはバカだと言わせていただきましょう」
パドックでの自己紹介はつつがなく終わり、ウマ娘たちはゲート前に集合する。
アルマダクロックは探さずとも見つかった。
彼女の勝負服は青いベストに白いベルトを巻いた海賊のような服。
といっても、パイレーツハットではなくつけているのは青いバンダナ。
あまりギラギラとした派手な装飾もない。
物語に出てくる有名な海賊、というよりはその手下の乗組員のような服装のほうが印象的には近い。
トレーナーは近くにいないが、アルマダクロックの集中力は研ぎ澄まされている。
アルマダクロックもまた、黒ワンピースというわかりやすいジープベニザクラに近づき。
握りこぶしを作り、自分の親指を見せるような向きでジープベニザクラに突き出した。
……いや、これは「いい勝負にしましょう」などと拳を突き合わせてほしいのではない。
もし、アルマダクロックの手に剣が握られていたとしたら。
その切っ先はジープベニザクラの首筋に当てられているような位置だ。
「……ボクは、"アルマダクロック"」
「"ジープ"(車)じゃ、"アルマダ"(艦隊)には勝てないよ」
そう言うと、アルマダクロックは握りこぶしを少し横に動かした。
もし、アルマダクロックの手に剣が握られていたとしたら。
その切っ先はジープベニザクラの首を切り裂いているだろう。
そんな挑発に対してジープベニザクラは、薄ら笑いをしながら微動だにしていなかった。
「……全速力で突っ込んだら、あなたを沈められるかもしれませんよ?」
ジープベニザクラは、意趣返しとして空中で何かをひねるジェスチャーをした。
イグニッションキーを入れて。
エンジン、スタートだ。