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「さあ大外のウマ娘もすべてゲートインが完了しました」
大井レースが静まり返り、数秒。
ゲートが開いた。
「……スタートです!少しばらついたスタートか」
何人かのウマ娘が出遅れたが、その中にジープベニザクラとアルマダクロックはいない。
「--3番手に7番アルマダクロック、そのすぐ後ろに2番ジープベニザクラがぴったりとくっつく」
どちらも先行ウマ娘であるアルマダクロックは3位、ジープベニザクラ4位と近い位置についた。
スタートから200m,300m,400m,500m……
序盤、自分の有利な展開を作るための区間を走り続ける2人の順位は一切変動しない。
「まるで私のペースに合わせてるみたいです……」
ジープベニザクラはここで少しペースを上げてアルマダクロックに揺さぶりをかける。
「……通さない」
予想通り、アルマダクロックはジープベニザクラと同じだけペースを上げた。
2人の差は一切埋まらない。
「そうですか。ここで負けず嫌いなら何としても追い抜かなければ、という気持ちになるのでしょうか」
他人事のようにジープベニザクラはつぶやいた後、ペースを元に戻した。
ジープベニザクラはそこまで負けず嫌いな性格ではない。
しかし、勝敗なんてどうでもいい、といえばそれは嘘になる。
最後に勝てばいいのであって、今勝っている必要はない。
ペースを緩めたことに気づいたアルマダクロックは、自分もまたペースを同じだけ緩めた。
2人の差は一切広がらない。
「このわずかな差を保ち続けて勝つ。シンプルだが侮れねえだろ?」
石原トレーナーの隣にいた原崎トレーナーは勝ち誇ったような態度で聞いてきた。
答える前に石原トレーナーは原崎トレーナーの顔を見る。
原崎トレーナーの声こそ自信満々だったが、その表情は真顔だ。
原崎トレーナーの実際の心境は、まだ油断は禁物と思っているのだろう。
「後ろを見ずとも気配でわずかなリードを保ち続けている。なるほど、あれがアルマダのレースセンスか」
「で、根性勝負が得意なのはアンタのベニザクラだけじゃねえ」
アルマダクロックというウマ娘は粘り強さもまた長所だ。
2つのストロングポイントを持つアルマダクロックに、根性論1本で立ち向かうのはあまりに無謀が過ぎる。
「厳しい戦いになるぞ、ベニザクラ」
石原トレーナーは原崎トレーナーに聞こえないよう、小さく独り言をつぶやいた。
レースはいつの間にやら1000mを通過し、残り半分。
2人の差はスタートから一切埋まりもしなければ、広がりもしていない。