ウマ娘 コノハナレッド   作:takapon960

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なんだか私をおもちゃにしているようで気に入りませんね。


第53話

ーーー53ーーー

 

ジャパンダートダービーは終盤戦に入った。

 

ここまで来て、アルマダクロックとジープベニザクラの間は1バ身もないほどの近い間ながら。

 

最終直線が見えた今もアルマダクロックが前に居続けている。

 

ここまでずっと、想定通り。

 

「仕掛ける!ゴールまで、ずっとボクが前だ!」

 

ジープベニザクラは最終直線での粘り強さを武器にしていることを聞いた。

 

だが、ボクだって粘り強さで負けるわけにはいかないと。

 

アルマダクロックは歯を食いしばり、脚に力を入れる。

 

「レースは最終直線!先頭にいるのは――」

 

 

その瞬間、横を黄色い髪が通り過ぎた。

 

「"ジープベニザクラ"!」

 

「なッ……!?」

 

「あら、思ったより簡単に追い抜けました」

 

先頭にいるのはアルマダクロック!と言われるはずだったのに。

 

ラストスパートをかけるために意識を後ろから自らに向け直したその瞬間を狙って追い越したというのか。

 

いや、ジープベニザクラにそんなテクニカルなことをする余裕などない。

 

単に自分もラストスパートする瞬間で追い抜いただけだ。

 

「す……すぐに取り返さないと!」

 

アルマダクロックは急激にペースを上げてジープベニザクラを追い抜き返そうとするが。

 

「ーー私はここから!」

 

ジープベニザクラはさらに強く砂を踏みつけて走る。

 

自らの血で自らのサクラを染めるほどの意地で砂地を走る。

 

「"くれないの桜、咲かせて見せます!!"」

 

それが、ジープたる所以。

 

それが、ただのサクラではなく、ベニザクラたる所以。

 

それが、"ブラッドブロッサム"たる所以だ。

 

追い抜き返そうとしているアルマダクロックとジープベニザクラの差はどんどん開いていく。

 

やがて、2番手、1番手と追い抜いて1位になったジープベニザクラ。

 

ようやく2番手に上がってきたアルマダクロックとの差はまだまだ広がっていく。

 

「ジープベニザクラ、差を広げる広げる!これは勝負ありか!」

 

レースは残り200mあるが、もはや勝敗は決した。

 

「1着はジープベニザクラでゴールイン!圧倒的!もはや彼女には誰も敵わない!」

 

ゴールインしたジープベニザクラは自分で勝負服の胸元を掴みながらゆっくりと止まる。

 

キツい。苦しい。喋れない。

 

壊れるんじゃないかってくらい、鼓動が鳴りまくっている。

 

いっそダートに倒れ込んで休めたらどれほど楽だろうか。

 

「(……でも、そんなの私じゃない。短く咲いたら散って終わりなんて嫌なんです。)」

 

ジープベニザクラは苦痛に歪みそうな表情をしたいところを余裕そうな笑顔を作って顔を上げる。

 

「すっげえ!文句のつけようがない勝利だ!」

 

「4連勝だぞベニザクラ!このまま突っ走れー!」

 

「ベニちゃーん!おめでとうー!!」

 

スタンドからの大歓声がジープベニザクラに浴びせかけられる。

 

純粋な称賛、祝いの言葉が多くを占めるが。

 

少しの間、ジープベニザクラは耳を澄ますと。

 

「なんだよアイツ……あんなメチャクチャな方法でどうして勝てる!?」

 

「余裕そうなツラしやがってムカつくぜ!」

 

妬みや嫉妬のような声も聞こえてくるが、ジープベニザクラにとっては、それすらも心地よく感じる。

 

ジープベニザクラは手を前にそろえて、深く観客席にお辞儀をすると。

 

手を小さく振って声援に応えた。

 

「--みなさん、応援ありがとうございました!」

 

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