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「クソッ!なんなんだアイツは……!」
悔しさのあまり、観客席でフェンスを殴りつけ、苛立ちを見せる原崎トレーナー。
「ベニザクラにも同じような態度で言ってやれ。喜ぶぞ」
石原トレーナーは原崎トレーナーの悔しそうな態度に自慢げな様子だ。
見事に火に油を注いでいる。
「チッ、こんなクソみてえな態度でよけりゃいくらでもしてやるぜ。……何がアルマダに足りなかった」
原崎トレーナーは今だけ苛立ちを抑え、恥を忍ぶように石原トレーナーに聞いた。
レースが始まる前の原崎トレーナーの予想では粘り強さはどちらも長所。
それに加え、アルマダクロックのレースセンスや全体を見渡す力・意識づくりに力を注いだことで、ジープベニザクラにはない強みを手に入れた。
だから、勝てると思っていたのに。
「そうだな、アルマダに足りないところは俺にもわからんが勝因ならわかる」
「俺にとっちゃ敗因だ。教えてくれ」
「ベニザクラの精神力だな。レースを思い返してみろ」
そう言われて原崎トレーナーは先ほどのレースを頭の中で回想する。
どんな時でもアルマダクロックがジープベニザクラより1歩だけ前を行っていたのは、揺さぶりのためでもあった。
どうやっても前を取れない、と焦らせるために。
だが、ジープベニザクラが揺さぶられている様子は一切なかった。
序盤でそういう作戦だと悟られてからは大人しく主導権を譲って後ろをついていた。
「ベニザクラには自由気ままに走れ、いっそどうにでもなれ、と伝えて走らせた。だが、アルマダはどうだ?」
どんな時でもアルマダクロックがジープベニザクラより1歩だけ前を行く作戦は。
言い換えれば、相手に合わせて走り、自分らしさは封印する、ということ。
そこを最終直線という重要な場面で。まあジープベニザクラは好きに走っていただけだろうが。
合わせていたはずのベニザクラがとんでもない行動で追い抜いてきたら。
その時点で主導権を奪われていたということだ。
「……ハッ、俺には真似できねえよ」
「いっそどうにでもなれ、なんて勝負前のウマ娘にのたまうイカレたトレーナーがどこにいるってんだ」
「残念ながらここにいる」
担当ウマ娘に影響されたのか、イカレたトレーナーと言われてむしろ誇らしそうに石原トレーナーは自分を指さした。
ゴールインしたアルマダクロックは膝をついて肩で激しく息をしながら。
余裕そうな表情で観客席にアピールするジープベニザクラを睨みつけていた。
「分かってるんだ……本当は全然余裕なんてないってことは」
頭で分かっていても、その表情を見たら、悔しさが何倍にも膨れ上がってくる。
一通りアピールを終え、深呼吸をしたジープベニザクラは。
膝をついたアルマダクロックを見下ろしに来た。
「アルマダさん、どうでした?私の走り」
「……一言で言えば、ヘタクソ」
「あら、嬉しい言葉をありがとうございます。それはヘタクソな走りでも勝てるってことでしょう?」