とある攻略サイトによるとモデルにした馬は「ファル子より勝つのが難しい」とまで書かれていました。
第55話
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6月後半。
この時期のシニアダートは、まさに地獄の様相を呈していた。
「最終直線、アールライズ抜け出した!そのまま突き放し続ける!まさに無敵!」
バ群集団から4~5バ身ほど抜け出し、1人旅を続けるアールライズと呼ばれたウマ娘。
身長は170cmは優に超えているであろう大柄なウマ娘で、暗めの赤色のダスターコートに黄色いスカート。
羽織っているケープは青く、それでいてメンコが緑色と第一印象はカラフルなウマ娘だ。
第4コーナー終盤の時点で大幅なリードを取ってなお、最終直線でまだまだリードを伸ばし続ける。
「強い強い!アールライズゴールイン!今年から負けなしの5連勝!」
掲示板のバ身差を表す表示には7の文字が点灯していた。
遅れてゴールインしてきたウマ娘たちは、息を切らしながらアールライズを睨みつけたり、膝を突いたりと死屍累々の状態だが。
当のアールライズ本人は息を切らす様子もなく、冷たい目で後続を見下ろしていた。
「またアールの圧勝だ……」
「フェブラリーステークスとかしわ記念でもこんな感じだったじゃねえか……!」
「俺、ウマ娘に生まれなくてよかったって心から思うよ……」
その様子に観客席も喜びというよりは畏れの感情に包まれている。
やがて、スタッフが帝王賞の優勝レイを持ってアールライズに近寄ってくる。
「ア、アールライズさん。帝王賞2連覇、おめでとうございます。どうぞこちらをお受け取りください」
スタッフですら、まるで暴君に貢物を差し出すかのような畏れ多い表情だ。
差し出された帝王賞の優勝レイをアールライズは1度は肩にかけるが。
あまり気乗りしない様子ですぐに優勝レイを外すと。
「--この柄はもう持ってるの。2つもいらない」
バサッと、空高く優勝レイを放り投げた。
優勝レイは空中をしばらく舞うと、2着だったウマ娘の目の前に落下する。
驚愕の表情を浮かべる後続のウマ娘たちをよそに、アールライズはレース場を後にする。
その時のアールライズの表情を言葉にするなら。
「こんなザコどもに勝っても、ちっとも満たされない」だっただろう。
……遠い遠い後世の話になるのだが。
砂のハヤブサ、スマートファルコンが現れたとき、大井に長年出入りしていることで有名なある老人がこうつぶやいたという。
「もし、ファル子とアールが戦う姿を見ることができればどんなに心躍ったことじゃろうか……」
とはいえ、シニアダートが地獄の様相になっている様はほとんどのウマ娘やトレーナーに伝わることはなかった。
なぜなら芝のほうにあった出来事が話題をかっさらっていったから。
時期は過ぎて9月に突入したある日。
石原トレーナーは旧知のトレーナーと休憩室で再会し、コーヒーを片手に他愛のない話をしていた。
黒いシャツと赤いスーツジャケットが良く似合う、ちょうど20代半ばくらいの男。
去年、担当ウマ娘に秋華賞のトロフィーを送り、G1トレーナーの仲間入りを果たした新進気鋭のトレーナー。
「久しいな石原。お前がダートに行ってからはこうやって顔を合わす機会もなかったな」