ウマ娘 コノハナレッド   作:takapon960

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あれ、どこかで見た顔だな…
この登場人物について知りたくなったらぜひ「ブラス・トレーサー」もお願いします!


第56話

ーーー56ーーー

 

そう、彼の名は"森内洋一"(もりうち よういち)。

 

この時代ではティアラ路線を通り、現在シニア級のウマ娘を担当している中堅トレーナーだ。

 

数年後に彼もまたインシルカスラムというダートウマ娘を担当することは、この時点ではまだ知る由もない。

 

「こうやってお前に会うために国でも渡ってきた気分だ、森内。今年のティアラはどうだ」

 

石原トレーナーがダートに移籍してから、かつての旧知の仲に出会うことは少なくなってしまったが。

 

たまたま今日、旧友の1人である森内トレーナーと再開したことで、今の芝の状況を直接聞きたくなった、というわけだ。

 

「どうだも何も、噂は聞いているだろ」

 

石原トレーナーの質問に森内トレーナーは少し大きな音を立てて、コーヒー缶を机の上に置いた。

 

「桜花賞、オークス、2つともメジロラモーヌの圧勝だ」

 

「それは凄い。森内の目から見ても、最後の秋華賞も確実か?」※

 

「8割方、ラモーヌが何かやらかさない限りはな」

 

森内トレーナーは呆れたように首を横に振りながら答えた。

 

他の対抗バがちょっと成長したり対策を練ったりしたところで焼け石に水。

 

最早本人がミスすることを祈るしかないくらい、メジロラモーヌの実力は圧倒的だというのだ。

 

石原トレーナーも遠い昔にティアラ路線に関わっていたことがある。

 

ティアラ2冠、そして最後の1冠も確実視されることがどれほどの凄さかは実感できる。

 

スカウト時の模擬レースで最有力候補と言われ、何かしらのG1はどこかで取るのではないかと石原トレーナーも予想はしていたが。

 

まさかトントン拍子で栄光を掴み、今や歴史上に残る偉業の達成寸前だとは。

 

最後の秋華賞も制覇すれば、シンボリルドルフ、ミスターシービーが獲得したクラシック3冠に並ぶトリプルティアラを獲得することになる。

 

「しかもトライアルのチューリップ賞、フローラステークス、ローズステークスまでちゃんと勝ってきた」

 

「わざわざトライアルまで!?まさにライバルを完膚なきまでに叩きのめす"完全"三冠と言うべきだな」

 

「ああ。もしラモーヌと戦うとなったら俺もどう対策していいかわからん。担当の前でそんな弱音は吐けんがな」

 

「ならここで俺に吐き出しておけ」

 

 

一通り、メジロラモーヌへの愚痴を吐き終わった森内トレーナーはコーヒーを一気に飲み干し、休憩室を後にしようとするが。

 

ふと、あることが気になって缶の中に一口分だけのコーヒーを残した。

 

「--お前がいなくなってからのティアラの情報はこんなものだ。今度は対価をよこせ」

 

「ベニザクラのことか?」

 

「ああ。ダートになんぞたいしたウマ娘はいないと思ってたが。5戦5勝だ、気になるのがトレーナーってもんだろう」

 

その質問に今度は石原トレーナーがコーヒー缶を机の上に置き、少し呆れ笑いを含んだ表情で腕を組んだ。

 

「ベニザクラはワガママなウマ娘だ。だから俺はやりたいようにやらせた。5勝なんて勝手についてきただけにすぎん」

 

「勝手についてきたって。ベニザクラが必死に取ってきたモンだろ……」

 

その言葉に森内トレーナーは大いに引いてしまった。

 

5勝、しかも内G1、2勝なんてダートとはいえどちゃんと一流ウマ娘の領域に入る戦績だ。

 

それを勝手についてきた、みたいな感じの石原トレーナーの言動は森内トレーナーにとって到底すんなり受け入れられるものではない。

 

「本人にも言ってみろ、同じこと言うさ。だからこれからも俺のやるべきことはベニザクラが勝手するのをサポートってわけだ」

 

「……まあ、そこだけは参考にはさせてもらう」

 

森内トレーナーは未だ若干引き気味のまま一口残っていたコーヒーを飲み干し、今度こそ空き缶をゴミ箱に捨てて。

 

「じゃあな石原。やっぱダートってのはよく分からん世界だ。俺には合わん」

 

とひらひら手を振って休憩室を後にした。

 

その後ろ姿を見て石原トレーナーは。

 

「……ベニザクラに会う前の俺も、同じことを思っていた気がするぜ」

 

と独り言をこぼした。

 

 

※メジロラモーヌがトリプルティアラを達成するにあたり、実際に勝利した最後のレースは「エリザベス女王杯」ですが、ここではウマ娘基準に合わせ「秋華賞」とします。

 

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