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「……芝なら菊花賞や秋華賞がまだクラシックロードとして秋も残っている」
そういった後、石原トレーナーは南部杯の欄に書かれていた出走条件に目を落とした。
"クラシック・シニア級"。
南部杯だけじゃない。
JBCクラシック系、チャンピオンズカップ、東京大賞典。
全て、クラシック級限定で行われるレースではない。
つまり、名目上はまだジープベニザクラはクラシック級だが。
ダートの世界では後半戦はシニア級と全く同じ扱いをされる。
「芝だってスプリンターズステークスや秋の天皇賞は無差別級だろうが。珍しい顔してんじゃねえ」
石原トレーナーにとって想定外だったわけではないが、今回はただ無差別階級に放り込まれる以上の意味がある。
つまりは目の前の。
「……お前の担当、アールライズといずれ戦う日が来るということか」
それを聞いて小原トレーナーはいたずらっぽく鼻で笑った。
「馬鹿野郎、"いずれ来る"んじゃねえよ」
「"もう来てんだ"。アールライズも、南部杯に出走する」
「!」
小原トレーナーが石原トレーナーのトレーナー室に来た理由。
それは、ジープベニザクラへの宣戦布告のためだった。
石原トレーナーは驚愕の表情で小原トレーナーを見つめなおすと。
1度ソファから立ち上がり、自分のデスクに向かって引き出しを開ける。
そこから、パンパンになったクリアファイルを持って小原トレーナーの前にドンっと置いた。
「俺だってアールライズのことくらいすでに調べてある」
表紙に見えているのは、アールライズの今年の戦績。
フェブラリーステークス(G1):1着。
ダイオライト記念(G2):1着。
平安ステークス(G3):1着。
かしわ記念(G1):1着。
帝王賞(G1):1着。
今年に入ってからG1、3勝を含む怒涛の5連勝。
そして、現在の総合戦績は。
37戦30勝。
勝利に含まれていない7レースも2着や3着など。
"一強"、"無双"、"蹂躙"……。
シニア級ダートの世界は、アールライズによってそう呼ぶべきしかない状態に陥っていることがこの資料から分かる。
しかもこの出走数は去年、今年だけの話ではなく、何年もずっとだ。
「俺がまとめたこの資料、何もかもがデマじゃないかと未だに思っている!いるわけがない、こんな化け物!」
ヤケクソ気味の怒りが混じった声で、石原トレーナーはアールライズの戦績表を叩いた。
「……だが、現実にいるから今、シニアのダートは地獄の様相を呈している。そうなんだろう?」
小原トレーナーから返ってきた答えは。
拍手だった。
「リサーチが丁寧だな、石原」