私も思いました。
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ダートは格式の低い世界だ。
走るごとに毎回砂埃まみれになるこの場所に気品や美しさなどありはしない。
言い換えれば、ダートとはガラの悪い落ちこぼれでも受け入れてくれる場所ともいえるだろう。
「そろそろレースを始めます、ゲートに……」
「あぁン!?指図してんじゃねーよオッサン!」
「いいからさっさと走らせろや!」
「誰も見てないのにレースとかだる……」
今日の模擬レースに出走するウマ娘たちは特にガラの悪い不良集団が集まっていた。
係員の指示に従う気のない者、そもそもレースにやる気のない者、逆にありすぎて興奮状態の者など挙げればきりがない。
だからこそだろうか。
係員の指示を素直に聞いて、平常心を保ったままゲートに向かおうとしているウマ娘の方が逆に浮いて見えた。
その中の1人が、ジープベニザクラだった。
騒ぎまくる周囲を気にも留めず、淡々とゲートへ向かおうとしている。
と、その時。
いかにもガラの悪そうな不良ウマ娘たちが2,3人ほど、ジープベニザクラの行く手を塞いだ。
不良ウマ娘たちはニヤニヤしながら、ジープベニザクラを囲みだす。
「--私に何か御用ですか?」
ジープベニザクラは礼儀正しそうな声で不良ウマ娘たちに話す。
「ッヒャッハッハァ!」
不良ウマ娘たちは、それを聞くとジープベニザクラのことを嘲笑った。
ジープベニザクラは怪訝そうな表情で頭にハテナマ―クを浮かべている。
「おい、聞いたか?"ごようですか"だとよ!」
「オレたちにまで敬語だぜコイツ!やっさしいねぇ~!」
不良ウマ娘たちはそういうと急に真顔になり。
「オラよ!」
「ッ」
なんと、急に隠し持っていた砂をジープベニザクラの顔にまき散らした。
砂をかけられたジープベニザクラは軽くひるみ、顔を手で覆うが、時すでに遅し。
顔は砂まみれになり、目にも砂が入って思わずジープベニザクラは目を閉じる。
「ここはダートだぜ?オメーみてーないい子ちゃんが来るトコじゃねーんだよ」
「とっととおキレイなお芝に帰りな、"お嬢ちゃん"」
不良ウマ娘たちはナメ腐った態度でジープベニザクラを挑発する。
「コラ!そこ、何をしてる!君、大丈夫か!」
慌てて係員が不良ウマ娘たちに説教し、ジープベニザクラを心配して保健室に連れて行こうとするが。
ジープベニザクラは目をこすりながら、もう片方の手で係員を制止した。
ジープベニザクラはようやく目を開けて、前が見えることを確認すると。
「あら、"素敵なお化粧"、ありがとうございます」
と、逆に目を細めて不良ウマ娘たちにニヤッと笑い返した。
不良ウマ娘たちは一瞬たじろぐ。
まさか、顔に砂をかけたことを"化粧"などと皮肉を言われるとは。
間違いなく、このお上品ウマ娘ちゃんは不良ウマ娘たちを怖がるどころか舐めてかかっている。
「なっ……クソ、調子乗りやがって!」
不良ウマ娘たちは舌打ちをしながら先にゲートへと入っていく。
嫌がらせで屈しないのならレースで分からせてやると思ったのか。
ジープベニザクラにとっては好都合だ。
砂まみれになった顔を払い落としもせずに、ジープベニザクラは続けてゲートインを済ませた。
「ゲートイン完了しました……」
数秒間の静寂の後に。
ガコン、という音が鳴る。
「スタートです!」