ウマ娘 コノハナレッド   作:takapon960

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このシーン、このセリフがジープベニザクラを象徴するシーンになると思います。


第71話

ーーー71ーーー

 

ハルウララと走った翌日。

 

今日はこじんまりした部屋で、ジープベニザクラの記者会見が予定されていた。

 

すでにダートの世界を取り扱う報道記者たちが数人、準備を済ませている。

 

今まで、アールライズという災厄に誰もかれもがなす術なく蹂躙され続けてきたシニアダートの世界。

 

勝てはしなかったが、今までのウマ娘に比べ、かなり惜しいところまでジープベニザクラは追いすがった。

 

今部屋にいる記者たちはジープベニザクラの次走はだいたい予想がつく。

 

記者たちはジープベニザクラの口から直接聞きたいのだ。

 

「次のJBCクラシックで、今度こそアールさんを倒します」と。

 

 

会見時間になると、石原トレーナーとジープベニザクラが部屋に入ってくる。

 

「ベニザクラさん!まずは南部杯お疲れ様でした!」

 

「今年に入り最もアールライズに追いすがったウマ娘として、私たちも心を動かされました」

 

2人が座る前から放たれた食い気味の賞賛に、ジープベニザクラはにこやかに手を振って応える。

 

やがて2人が着席すると、記者からは本題の質問が飛ぶ。

 

「ベニザクラさん。アールライズは次走を大井2000m、JBCクラシックに出走することを決めました」

 

「正直なところ、アールライズに太刀打ちできる者はあなたしか存在しません」

 

最後に発言した記者は最後に小さく「どうか……」とつぶやいた。

 

これでは質問というより完全にお願いだ。それも懇願と呼ぶに近いレベルの。

 

「ベニザクラさん。次走のご予定をお聞かせください」

 

ジープベニザクラは軽く周囲を見渡した後。

 

 

「次のG1は"JBCスプリント"に出走します」

 

と淡々と告げた。

 

2000mのJBCクラシックではなく、1200mのJBCスプリントのほうに出走すると。

 

一瞬だけ、理解するまで時間がかかったかのように会場が静まり返ると。

 

記者たちは状況を理解してざわつき始めた。

 

「1200m……?」

 

「ベニザクラはマイルから中距離が適性のはずだ、なぜ短距離に……!?」

 

「アールとの対決はどうなるんだ?」

 

なぜこれほどまでに記者たちが不可解だとざわついているのは2つ理由がある。

 

まず1つ、ジープベニザクラがJBCスプリントに挑戦するということはいわゆる"3階級挑戦"になること。

 

短距離、マイル、中距離、長距離のうち、多くのウマ娘はどれか2つ、2階級に適性を持つ。

 

実際、ジープベニザクラはこのうちマイルと中距離の2階級に適性を持っている。

 

だが、3つの距離、3階級に適性があるウマ娘は珍しい。それだけでかなりの強みになるほどだ。

 

ただ、記者たちはジープベニザクラが短距離を走れるかどうかの判断材料はない。

 

現時点では、ジープベニザクラが結果を出した実績はマイルか中距離しかないのだ。

 

2つ目。JBCクラシック系の3レースは同日、連続して行われるレース。

 

クラシック、レディスクラシック、スプリントの3つのうち、ウマ娘はどれか1つだけしか出走できない。

 

つまり、ベニザクラがスプリントを選んだ時点で、クラシックを選んだアールライズと対決することは不可能になる。

 

クラシックに出られる資格そのものはあるのに、それを選ばなかった時点で。

 

捉え方によっては、"アールライズから逃げた"と言われても文句は言えない。

 

つまり一言でまとめると。

 

ジープベニザクラは言ってることがおかしい。

 

今までマイル~中距離で好成績を収めていたのなら、これからもマイルか中距離で走ればいいものを。

 

なぜ急に短距離に転向を表明するのだろうか?

 

「……ベニザクラさん、クラシックはどうされるのですか?そんなレースなんかなぜわざわざ」

 

 

ガタッという音がして、椅子が倒れ、疑問は遮られた。

 

その言葉にジープベニザクラは勢い良く立ち上がって椅子を倒したのだ。

 

ジープベニザクラは疑問を呈した記者を睨みつける……とまではいかないが。

 

その発言に納得がいっていない様子は一目で分かった。

 

 

「"そんな"レースかどうかは、私が決めることです」

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