ウマ娘 コノハナレッド   作:takapon960

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皆さん、ハルウララ有馬チャレンジに挑戦したことはありますか?
それ以外のウララの目標レースって何だったか覚えていますか?
"そんな"レース、だいたいスキップしてて気にしたことないですよね。自分もです。


第72話

ーーー72ーーー

 

走るのは私です。

 

なぜ私のトレーナーではないあなたが私のローテーションに口を出すんですか?

 

なぜ"そんな"レースなどと勝手に下に決めつけているんですか?

 

ジープベニザクラは耳こそ後ろに倒れていなかったが、そう怒りたそうな表情をしていた。

 

レース後や普段は笑顔でおしとやかで接することも多いゆえに忘れられることも多いが。

 

ジープベニザクラはわがままで頑固なウマ娘だ。

 

納得しないことは例え石原トレーナーにビンタされようとその考えを曲げない。

 

「あ、いえ……失礼しました。先ほどの言葉はお忘れください」

 

ジープベニザクラの本性を思い出した先ほどの記者は頭を下げてすごすごと引き下がった。

 

するとそこで沈黙を貫いていた石原トレーナーが小さく手を上げる。

 

「ここからは俺が解説しましょう。俺も昨日ベニザクラにそう言われたときは、貴方がたと同じことを思ったものです」

 

 

「JBCスプリントに出たいだと!?」

 

会見前日の夜、石原トレーナーはドン引きしながら答えた。

 

その様子を見たジープベニザクラの表情が少し自慢げになる。

 

そう、彼女は他人を驚かせたり引かせたりすると、してやったりと喜ぶ癖があるのだ。

 

姿勢を直した石原トレーナーは自分の額を数回叩く。

 

その頭の中は超高速回転中だ。

 

「何を言ってる、クラシックに出ろ……と言ったら嫌って返すよな?」

 

「はい。そろそろ私の扱い方にも慣れてきたようで」

 

「苦労してるんだぞいつも」

 

この時点で石原トレーナーは懸念点がいくつも生まれる。

 

なぜクラシックを捨ててスプリントに行くんだ?

 

アールへのリベンジはどうするんだ?

 

そもそもその手の3階級挑戦なんて誰もやったことがない、無謀じゃないか?

 

だが、ジープベニザクラのトレーナーである石原トレーナーはまずこの懸念点を口にした。

 

「……短距離は走れるのか?」

 

「試してみます?」

 

それくらい言われることは予想しているのか、ジープベニザクラはジャージ姿で。

 

夜も更けた練習コースを指さしながら自信ありげに言い放った。

 

 

「……それで」

 

どうだったんですか、と言いそうになった記者は固く口を閉じて察した。

 

この記者会見を用意して、ジープベニザクラにJBCスプリントに出ると言わせたことは。

 

「はい。ベニザクラは1200mでも適性があります。恐ろしい適性距離の広さです」

 

その言葉にまた別の意味で記者たちがざわついた。

 

「確か、2100mの関東オークスや2000mのJDDでもパフォーマンスは落ちなかったよな」

 

「最低でも900mの違いに臨機応変に対応できるのか……!」

 

「短距離、マイル、中距離まで走れるウマ娘が本当に目の前にいるなんてな!」

 

これほど適性距離が広いウマ娘ならば、出れるレースの種類が大幅に増える。

 

いや、ダートに長距離は存在しない。

 

3階級走ることができるということは、すなわちありとあらゆる全てのダートレースに出ることができる。

 

走ることができるなら、やってみろ。

 

石原トレーナーはそう思ってジープベニザクラの頑固な提案にGOを出したのだろう。

 

 

「すみません、もう1つよろしいでしょうか!」

 

ざわつきの中、若手記者の1人から手が上がった。

 

距離の問題が解決しても、もう1つ気になることがある。

 

「それでは今回はアールライズさんとの対決は避けるということでしょうか?」

 

「今回はそういうことになります」

 

石原トレーナーの発言にジープベニザクラも小さく頷いた。

 

つまりは、"アールライズから逃げる"ことを2人が正式に認めたことになる。

 

「……しかし、"今回は"です。アールライズがチャンピオンズカップと東京大賞典に出走する情報は俺の耳にも入っています」

 

「アールさんにお伝えください。いつかリベンジにお伺いしますと」

 

石原トレーナーとジープベニザクラが締めくくると、記者たちの次の言葉を待たずに、2人は会場をさっさと後にした。

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