というよりコノハナレッドに真のベビーフェイスはいないと思います。
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道中、地下バ道では誰とも会わなかった。
ジープベニザクラが歩いた時の靴音だけが響いている。
いや、いくつか出走ウマ娘の控室を通り過ぎて、扉越しに小さな話し声は聞こえた。
おそらく、誰かはいたのだろう。
ただ、ジープベニザクラが横を通り過ぎるときに、その声がピタリと止んだ。
その様、まるで敵から隠れてやり過ごそうとしているかのよう。
ジープベニザクラの歩く靴音をアールライズと勘違いして、トレーナーもウマ娘も恐怖で息をひそめてしまったのだろうか。
あるいは……勘違いなどしていないのかもしれない。
「あら。ついに、私もバケモノ扱いですか?嬉しいことで」
中京レースの地上に出ると、青空と乾いた砂がお出迎えしてくれた。
今日は快晴良バ場のようだ。
ジープベニザクラが出てきただけで少し先に出ていたウマ娘、観客がざわついたような気がする。
「ジープベニザクラ2番人気。戦績は7戦6勝と2着、いまだ銅メダルの味すらもを知りません」
「しかし、金メダルへの道もまた遠いですね」
「公平性に欠ける言葉にはなりますが、私はベニザクラさんにこの世界を一変させてほしいと願っています」
実況・解説がこの場にいるアールライズ以外の全員の言葉を代弁してくれた。
やがて、他のウマ娘も紹介された後。
「さて1番人気はやはりアールライズ。ここで勝てば前人未到の8連勝」
「8連勝などありえません。ただし、"アールライズに向けてありえないと言う"、なんて、それこそありえないように感じます」
パドック紹介が終わると、先に紹介されたウマ娘は多くが、さっさとゲートインを済ませて。
"自分でゲートを閉めた。"
通常、後ろのゲートは自動で閉められる。※
ゲートに入ったウマ娘は前にだけ集中してもらうためだ。
別に手動で閉めることがルール違反ではないが、ウマ娘たちがあえて今回手動でゲートを閉めたのは。
アールライズとジープベニザクラが怖いからだ。
後方ゲートを遮蔽物にして少しでも安心感を得ようとして。
それでも多くのウマ娘は、ソワソワしたり後ろを向いたまま2人をじっと見つめている。
で、2人の近くにいたウマ娘はパドック紹介が終わると、ササッと道の端っこに逸れて道を譲った。
近づきたくない、先に行って!と言わんばかりの。
ただ、ジープベニザクラだけは、アールライズに近寄って歩いていく。
アールライズはそんなジープベニザクラに歩みは止めずに視線だけを移した。
こんにちはアールさん。約束通りリベンジに来ました。
南部杯よりは追いすがるつもりでいますから楽しみにしていてくださいね。
なんて言おうと思ったジープベニザクラだったが。
「……」
アールライズに顔を向け、何かを話すような口は開けたジープベニザクラ。
ただ、言葉は一言も発することなくアールライズを素通りし、自分のゲートへと入った。
どうせ何かを言ったところでアールライズはガソリンの無駄遣いだとかクラクションだとかお得意の皮肉を返されるだけだ。
アールライズには黙って実力を見せてやる方が印象が良かろう。
素通りされたことでいよいよ誰からも話しかけられることのなくなったアールライズはジープベニザクラを見送ると。
自分も黙ってゲートインを済ませた。
「今日はスムーズにゲートインが完了しましたね。さああとはゲートが開くのを待つのみです」
その実況を聞いてジープベニザクラはスタンディングスタートの構えを……。
いや。クラッチを切って、ギアを1速に入れた。
※係員がゲートを閉める描写もあった気がしますが、アプリ版ではおそらくないため、今回は自動閉としました。