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お互いに軽口を叩きあった後、未だ動けないアールライズはどこかへ歩いて行った。
いまだ起き上がることすらままならないジープベニザクラでは、アールライズが何しに行ったのか見えない。
1分後、アールライズはジープベニザクラの近くに戻ってくると。
「ほら」
「ぷぇ」
ジープベニザクラの顔面に水色の布を落とした。
顔から布をはぎ取ると、それは水色の優勝レイだった。
紫色の文字でチャンピオンズカップと描かれている。
この優勝レイ、少し珍しい色合いかもしれない。
ジープベニザクラは優勝レイを近くに投げ捨てると。
ボーっと空を見上げた。
今は何も考えられないほど力を使い果たした。
これからのこと、トレーナーのこと、アールライズのことは。
「全部……後で……考えましょうか……」
空が青い。
中京のダートに寝転がって何分経ったかわからない。
それでもジープベニザクラはずっとそのまま動けずにいた。
身体はぐったりしているが、目はこれ以上なく冴えている。
すると、ジープベニザクラの腕は誰かに引き上げられ、身体は誰かにグイっと起こされた。
「まだ生きてるか?帰るぞ」
石原トレーナーはジープベニザクラの腕を自分の肩に回して地下バ道に向いて歩いていく。
ジープベニザクラは自分で歩こうとしないので引きずられていく。
「ったく、急にアールが来てレッカーに行けと言われたのはこういうことか。……やったな、ベニザクラ」
控室まで片手に電池切れのジープベニザクラ、もう片手にチャンピオンズカップの優勝レイを抱えて帰ってきた石原トレーナーは。
「ぐぇ」
扉を開けるなりジープベニザクラをドサっと床に直接寝かせた。
まるでダッフルバッグか何かのような扱いだが。
ジープベニザクラに抗議する体力もなければ、今更お姫様扱いされるつもりもない。
「今はゆっくり休め。誰もやれると思ってなかったことを、おまえはやったんだ」
それに対してジープベニザクラはよろよろと右手を上げ、サムズアップになりかけのよくわからない形の手を見せた。
「ええ……いつもなら、澄ました顔をしたいところですが、今日ばかりは褒めてください……」
「いくらでも褒めてやる。今日は大金星だ」
そのまま5分くらい時が流れる。
ジープベニザクラがとりあえず自力で動く気になってからトレセン学園に帰ろうかと思っていた石原トレーナーだったが。
「……そうだ、ライブ!」
重要なことを思い出した、という風に急にジープベニザクラは飛び起きた。
「ライブ?ウイニングライブをやるのか?」
「普通はそうでしょう。私、アールさんみたいに無愛想じゃありませんしー?」
ジープベニザクラは大げさにそっぽを向いて答えた。
石原トレーナーは、いやおそらくほとんどの人が今回もウイニングライブは中止されると思い込んでいた。
今回も皆がアールライズ、もしかしたらジープベニザクラにも怯えてライブどころではなかったのだと思ったし。
あんな走りをしてレース後に立っていられなかったほど、精魂使い切ったジープベニザクラに。
ウイニングライブをやる気力など残っていないのだと思っていた。
しかし、当の本人はウイニングライブをやる気だ。
身体が心配なところではあるが、それを理由に中止させようとしたところで本人が駄々をこねるだろう。
というかやらなかった今までの方がおかしいのだ。
1つ懸念があるとすれば。
「分かった、手配しよう。1つ気になるのはアールが来るかどうかだな」
「まあ、別に来なくても構いません。私がやりたいだけです」