ベニザクラが勝ったことによってようやく異常が収まりました。
さて、みんながかける想いとは?
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その日の夜。
ウイニングライブ、やります。とジープベニザクラが言ったニュースは瞬く間に関係者に伝わった。
アールライズが圧勝していたレースでは観客もウマ娘もライブどころじゃなくなって中止の日々が続いており。
シニアダートの世界にとっては今年初めてのウイニングライブ開催になる。
ジープベニザクラにとっても、南部杯と巻き添えでJBCクラシック系3レースも全てライブはなくなっていたので、ジャパンダートダービー以来ほぼ半年ぶりのライブだ。
久しぶりにライブが開催されるとのことでスタッフは張り切ってくれたらしく、その日の夜にはステージを整えてくれた。
後は観客とウマ娘たちがちゃんと来てくれるか、だが。
意外にも夜、ステージ裏にはチャンピオンズカップに出走したほとんどのウマ娘が集まってきていた。
「おめでとう、ベニちゃんも怖かったけど、アールに勝ってるの見てなんかスカッとした!」
「実はこっそり練習していたから。ライブはまかせて」
「ありがとうございます、皆さん。この世界の"普通"を取り戻しましょう」
ジープベニザクラはステージ裏からちらっと顔を出して観客席の方を眺める。
……真っ暗で何も見えない。
「そうでした、最初照明が全部落ちているの忘れていました……」
Unlimited Impactのライブはまず暗闇の中、ノイズの入ったテレビが入ってからスタートする。
しかし、耳を澄ましてみるとそこからざわざわとした声は聞こえてくる。
明らかに数人、数十人という感覚ではない喧騒だ。
観客もまた、久しぶりのUnlimited Impactを心待ちにしている。
と、そこへ。
カツッ、カツッ、というゆっくりとした靴音が響いてきた。
この靴音、このリズムは嫌というほど聞き覚えがある。
「ヒッ!?」
靴音だけで尻尾を逆立ててたり、腰を抜かしたウマ娘すらいる。
「ア、アール……!」
「なんでアンタがここに……!」
ステージ裏に現れたのはあのアールライズ本人。
ウマ娘どころか観客すらおびえさせ、ことごとくライブをぶち壊してきた張本人がやってくるとは。
「なんでって、ライブってトレーナーから聞いたから来たのだけれど」
何を当たり前のことを?と首を傾げたアールライズ。
災厄ご本人の意外な再会にジープベニザクラ以外のウマ娘が警戒して距離を取る。
ふざけないで!どのツラ下げてきたの!?
アンタのせいでライブが台無しになったくせに!
と、言いたい者もいたのかもしれないが。
別にアールライズは反則もしていなければ実は"ライブなんかやらない"と言ったわけでもない。
レース後は勝手に皆がライブする気、見る気を無くしているから、自分も無理にやろうとはしなかっただけのことだ。
皆がする気なら、自分が参加することも別に構わないくらいの気持ちなのだろう。
「まあまあいいじゃないですか。アールさんは2位の位置に立つ資格はありますよ?」
ジープベニザクラは両手を見せて仲裁すると、アールライズに南部杯と同じく握手の手を差し出した。
「レースでは敵でも、ライブでは仲良くやりましょうね、アールさん?」
アールライズは無表情のまま目だけを閉じると。
パシッ、とジープベニザクラの手のひらを軽く叩いた。
一応、ハイタッチ程度の。
真っ暗闇の中、ジープベニザクラをセンターにアールライズと3位だったウマ娘が横並びになる。
「というかアールさん、歌ったり踊ったりできるんですか?全然イメージがないんですけど」
「黙りなさい。ガソリンの無駄」