でも注ぐ奴はベニちゃんのことをちゃんとわかってる相手です。
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「アルダンさんはちょくちょく学園を休まれているそうですが、お身体は大丈夫ですか?
「ええ、最近は体調も良くなり、近々選抜レースに参加できればと」
「頑張ってくださいね。思い切ってやれば最高とはいかずとも何とかはなるものです」
「ベニザクラさんが言うと説得力がありますね……」
2人は緑茶を飲みつつ、駄菓子をつまみつつ他愛のない会話をしていく。
ジープベニザクラがデビューしたころのメジロアルダンはまだ病室と学園を行き来するだけの日々で。
メジロラモーヌにくっついてレースを見て回ることしかできなかったが。
来年くらいから、メジロアルダンも選抜レースに向けて調整を考えているようだ。
彼女がガラスの脚の苦悩と向き合いつつ、灰の怪物と鎬を削りあう日々はまた別の話。
机の上の駄菓子がそろそろなくなり、お茶会もお開きになろうかと思ったあたりで。
メジロアルダンは少し話題を振りづらそうに目を下に落とした。
「……ベニザクラさん。少し言いづらい話なのですが。チャンピオンズカップのレース、見させていただきました。優勝、おめでとうございます」
「言いづらい話ですか?その、最終コーナーくらいから少々見苦しい姿でごめんなさい」
「いえそんな……!とても素晴らしいレースでした!」
ジープベニザクラは苦笑いで応えたが、メジロアルダンはとんでもない、というように手のひらを振った。
「あのレースを例えた言葉が"砂漠に咲いた紅い桜"、なのですね……」
「面と向かって言われたら照れますね。でもありがとうございます、そういうレースをやりたかったもので」
「……本当に、素晴らしかったんです……」
メジロアルダンはお世辞ではなく、心の底からジープベニザクラのチャンピオンズカップを素晴らしいレースだと思ったようだ。
それにしては……表情が暗い。
まるで、恐ろしい怪物を目の当たりにしているような。
名伏しがたき怪物ににらまれ、助けてと小声で繰り返し呟いておびえているような、そんな顔だ。
「なのに、お恥ずかしい話ですが……私、今までベニザクラさんのご活躍をほとんど耳にしたことがなくて……」
どうやら、こんなにすごいウマ娘のこと、今まで知らなくてごめんなさい、とメジロアルダンは申し訳なさそうに言いたかったようだが。
ジープベニザクラにとっては別に謝られるようなことではない。
「まあ……アルダンさんは芝のクラシックでしょうから?ダートの私のことなんて全然噂にもなってないでしょう?」
総合30勝以上して、今年7連勝を決めたアールライズですら、トレセン学園全体で見れば空気のような。
いや、"よく分からないがダートにやばい奴がいるらしい"程度の知名度なのだ。
ジープベニザクラのことも、今後輝かしいクラシックで活躍するメジロアルダンにはその程度の噂しか聞こえてこないだろう。
注目されないなんて今更過ぎるし、むしろお誘いしてくれただけで上等なくらいだ。
「"それ"が……あなたが……恐ろしく感じたのです」