そうか そうだったのか
呪術とは 進化とは

わかるぞ   すべてがわかる
そうか 時間と空間と私との関係はこんなにも簡単なものだったのか

なぜ術式が生まれ、受け継がれるのか
なぜ領域展開が呪術の秘奥とされるのか
その全てがこのためにあったのだとしたら
この形になるのも理解できる
領域展開とは、宇宙を喰っていくことに等しい



それはきっと  すばらしいことだよ




1 / 1
領域展開とは、宇宙を支配することである

禪院家。

御三家と呼ばれる、日本の呪術師を代表する名家。

多くの分家を抱え、組織化し、独自で多数の戦力を抱える古き家。

その末端にも等しい分家に、その娘は生まれた。

 

誰もが落胆した。誰もが失望した。

誰もが、その誕生を望んでいなかった。

 

禪院家は古い家である。

それは家柄であり、家格であり、思想さえも。

術式を持たぬ者に価値はなく、女と生まれた者にも価値を認めない。

女に一切の権利を認めない男尊女卑の権化ともいえるこの家は女にとっては地獄。男が生まれぬ限り、子どもには何一つとして与えられはしない。

真っ当な生も、権利も。

 

故に彼女は望まれなかった。

育てられたのは使用人とするためであり、今後生まれ得る男子のサンドバッグとするためであり、今いる者たちの捌け口とするためだった。

 

しかしその娘は奇妙としか言いようがなかった。

生まれ出でたその時から、ただの一度も泣くことなく、母の顔を理性ある目で見つめていた。

 

食事は与えられなかった。母親がそう望んだ。地下牢に入れられ、死を待つばかりかと思われたが、衰弱するどころか健やかに育っていく。いつしか娘は、鍵を開けることなく、外に出て縁側に座っていた。

 

話しかけても反応することはなかった。

日がな一日静かに空を見つめ、瞬き一つさえしない。食事を必要とせず、睡眠を必要とせず、虚空のような瞳は人の姿を映さない。

家の者は娘を白痴と呼んだ。しかしそれは理解の外にある存在を貶すための、ほんの微かな抵抗に過ぎなかった。

 

ある時、一人の男が娘を蹴り飛ばそうとした。縁側に座っているのが邪魔などと理由をつけてはいたが、それが白痴の女を貶す行為の一環であることは言うまでもなかった。

しかし蹴った男に待っていたのは脳死という末路。術式を使った形跡は見当たらなかった。にもかかわらず、その男は二度と目を覚まさなかった。

 

もはやアレは人間ではない。今更になって家の者はそれを実感し、誰も触れることをしなくなった。

母親は己が産んだ者のおぞましさに気が狂って死んだ。

 

誰も「ソレ」に触れなくなった。

誰も「ソレ」に近づかなくなった。

「ソレ」は、ただ生きているだけで家の者を圧倒し、跪かせた。

 

 

本家には何も言えなかった。「何故か」その発想自体が皆の頭から消されていた。

 

 

幾許かの時が過ぎた。

 

破綻の時は唐突に訪れた。

 

 

 

 

「領域展開」

 

 

「虚無幻影羅生門」

 

 

 

 

「ソレ」の瞳が何かを映した時。

全ては虚無の、あるべき空間へと還っていった。

 

 

 

娘は目を覚ました。

ふらり、ふらりと。ふわふわと。軽快な足取りで、無人となった家を駆け回る。

 

あはは。

あはは。

楽しいね。

楽しいね。

 

みんないっしょだ、うれしいね。

とうさんも、かあさんも、ほかのひとも、みんなみんなここにいる。

 

おはなししたけど、みんな「五条」さんのことがこわいんだって。ほんとにそうかな?会ってみよう。

願ってみればほら不思議。行きたいところへひとっとび。

 

みつけた。蒼い瞳の男の子。生まれたばかりでかわいいね。ほらみんな、ごあいさつ。ね、こわくないでしょ?

 

それじゃあこれであいさつおわり。みんなでおうちにかえろうね。

 

わたしの近くはわたしの宇宙。どんなことでも叶う世界。

呪術がなにかはしらないけれど、やってみればできると思う。

とうさんの術式。おじいちゃんの術式。ひいじいちゃん、おじさん、大おじさん。みんなすごいね、あこがれちゃうね。

 

もっと宇宙をひろげよう。もっと空間をひろげよう。

わたしはきっと、そのためにうまれてきた。みんなでいっしょに行くために。

 

待ってよね、見知らぬだれか。5,000光年先の宇宙で、あなたを倒しにいくからね。

ビッグバンよりすっごいパワーで、かならず倒しにいくからね。

 

 

 

 

 

 

「領域展開」

 

 

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

「ずっと昔、赤ん坊の頃にさぁ、怖いもの見たんだよね」

 

 

「僕が生まれた頃、いきなり女が飛んできてさ。あ、飛んできたって、空じゃないよ?空間。空間跳躍。オマケに息をするように常時領域展開なんかしてんの。術式も何かわかんなくてさ、もう泣くどころじゃなかったよね」

 

「それでその女、僕に手のひら見せてくるの。そしたらその中に沢山の人の顔が浮かんでてさ、それがこっちに手振ってくんのよ。さしもの僕でもちょっとビビっちゃった」

 

「その時に本能的に悟ったんだよね。あれは普通の女じゃない、女のカタチをした宇宙そのものなんだって」

 

「生まれて初めての敗北ってやつ?アレがずっと頭から離れないんだよ。寝ても覚めても、どれだけ強くなったとしても。六眼でも解析しきれないアレを、何としてでも解明しなきゃならない。だからずっと探してる。あの時の女を」

 

 

 

「あんなおぞましい生き物見たらさあ、最強がどうのとか言ってらんないでしょ」

 

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

 

「はじめまして、見知らぬ人。お話があるの、聞いてくれない?」

 

「なんだい、お嬢さん。その物騒な領域をしまってくれたら聞いてあげよう」

 

「ごめんなさい、しまえないの。これはわたしの宇宙だから。もっともっと広げる以外に、どうにかする方法がわからないの」

 

「……驚いたな。生得領域を自分の周囲数メートルに限定することで常に領域を展開しているのか。縛りにしては緩すぎる。他に何か種があるのかな?しかし、それで果たして呪力が保つのかい?」

 

「いらないよ、そんなもの。あなたは息をするのに理由がいるの?自分の足で歩くのに、何か理屈が必要なの?」

 

「は……?は、ははっ。なんだい、それ。それじゃあまるで、進化したみたいじゃあないか!領域展開をすることを生態とする新たな生命!人類の可能性!そんなものが自然発生していいと思ってるのかい!?最高じゃないか!」

 

「それじゃあお話、聞いてもらってもいい?」

 

「もちろんさ!私は君が知りたい!隅から隅まで、あらゆる全てを調べさせてくれッ!」

 

「いいよ。それじゃあ、一緒に行こっか。進化の意志、生命が生まれた意味、宇宙が存在する意義。その全てを知る旅に」

 

 

 

 

 

 

「進化の時だよ、あたらしいお友達」

 

 




ほんの出来心のつもりで思いつきを領域展開。
短編っていいですね。こういう雑な思いつきをさくっと書いて残せるので。

ここの五条先生は最強とか言わないタイプ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

【カオ転三次】怠惰を求めて(作者:茅薙)(原作:女神転生)

つまり勤勉に行き着く▼【他三次創作様へ】▼今作におけるキャラクター及び独自設定部分などについては、ご自由にお使い下さい。▼AIで生成してみました。主人公の優羽です。▼通常時▼【挿絵表示】▼P5式怪盗服▼【挿絵表示】▼マカーブル様より挿絵を頂きました。▼シキガミのエキドナです。▼【挿絵表示】▼


総合評価:579/評価:7.94/連載:28話/更新日時:2026年09月29日(火) 22:03 小説情報

V.V.がクソみたいなギアスの使い道を考える話(作者:紫乃華まこ)(原作:コードギアス)

世の中には不思議な力がございます。▼それは「ギアス」と呼ばれる力でして、なんでも王の力なんて呼ばれているとかいないとか。▼ですが一口に王と言っても、名君だけとは限りません。▼暗君、愚王、そう呼ばれる王もございます。▼これはそんなお噺です。▼※ルート・ワイダングルを解放しました。▼こっちから読んでも多分大丈夫です。


総合評価:1216/評価:8.83/短編:6話/更新日時:2026年08月13日(木) 21:12 小説情報

【どうしたら】魔法少女に変身させられたけど放置された【いいと思う?】(作者:名無しの魔法少女)(オリジナル:ファンタジー/コメディ)

転生者たちが脳内掲示板でわちゃわちゃするn番煎じのよくあるやつ。▼日夜、悪の組織と魔法少女たちが戦うある意味平和なニチアサ的世界に転生したイッチ。▼マスコット的サムシングの押し売りに負けて変身するも、いろいろな要素が悪い方向に作用して、マスコットは絶叫して逃走。▼おいてけぼりを喰らったイッチはしゃあなしに、転生者たちが集う脳内掲示板に助けを求めるのだった。▼…


総合評価:3436/評価:8.53/連載:5話/更新日時:2026年09月13日(日) 12:00 小説情報

習作:マブガル世界にTS転生した一般レイヴンのお話(作者:ぱんそうこう)(原作:Muv-Luv)

知らないロボ世界に転生した。▼どうやら美少女×ロボ作品らしく、パイロットは右を見ても左を見ても女の子ばかり。▼ついでに俺も女の子になっちまったが、人型ロボに乗れる代償だと思えば軽いもの。▼いざ、鉄の軋みでファンファーレを鳴らせ。▼この手の銃は祝福のクラッカーだ。▼さあ、自由な空へ飛び立とう。あの日憧れたワタリガラスのように。▼さあ、自由に大地を駆け巡ろう。あ…


総合評価:4735/評価:8.71/連載:14話/更新日時:2026年10月23日(金) 08:00 小説情報

ワールドトリガー世界にブルーアーカイブ周年人権キャラをぶち込んでみた(作者:星野林(旧ゆっくり霊沙))(原作:ワールドトリガー)

タイトルの通り!ブルアカのキャラクターであるホシノ、ミカ、ヒナ、ケイの4人でボーダーの1部隊を作って回してみようって話です。▼ワートリの時系列だと原作開始1年前のB級ランク戦にぶち込もうかと思います。▼アンチ・ヘイトにはならないように頑張ります!▼ワ民力をくれ!


総合評価:3251/評価:8.76/連載:23話/更新日時:2026年10月24日(土) 20:27 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>