風岡雄次郎は仮面のヒーローになりたい   作:アークル・オルタ

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定期投稿に向けてプロット練る中、超能力戦争見たり、More見たり、アギト展行ったりしてたらひと月以上時間かかってしまった……。
お持たせしてしまい申し訳ないです……。

今回から雄次郎たちの小中学校時代を書いていきます。
雄英入学編はその後になりますので、今しばらくお付き合いください。

また更新についてアンケート実施していますので、ぜひご協力ください(とりあえず5月いっぱいまで取ります)。


小中特訓時代編
第7話「将来(しょうらい)(ため)のライダー分析(ぶんせき)


 “無個性”でヒーローを目指すことを決意したあの日から、三年と数カ月。

 俺は今日も、母さんから課せられたヒーローになるための特訓を続けている。

 時刻は午前六時頃。身支度を整えた俺は、玄関を出て家の前の道を走り出した。

 

「いってきます」

 

 小鳥がチュンチュンと囀る朝の空気は少し冷たくて、吸い込むたびに肺の奥まで澄んだ感覚が広がる。眠気が抜けていくのと同時に、気分がすっと軽くなる。

 もう何度この感覚を味わったか覚えていないが、俺はこの瞬間が好きだった。

 そうして走っていると、角を曲がった先から、いつもの声が飛んでくる。

 

「ゆうちゃんおはよう!」

「いずっくん、おはよう」

 

 手を振りながら駆け寄ってくるのは、いずっくんだ。

 彼はオールマイトのコスチュームカラーのトレーニングウェアに、靴までオールマイトデザインで揃えている。

 もはや見慣れた光景だが、トレーニング中でも全力でオールマイトオタクを貫くその姿勢には、感心するしかない。

 並んで走り出すと、足音が二つ、リズムを揃えて響く。

 

「今日も早いね」

「それはお互い様だろ」

 

 俺がそう返すと、いずっくんは微笑んで「そうだね」と言った。

 その顔は、いつか見た気弱なものよりかは、少しばかりたくましさが出てきた。

 朝日がゆっくりと街を照らし始め、伸びる影に合わせるように、俺たちの足も自然と速くなる。

 今日も、いい一日になる気がした。

 

「学校にいく準備もあるから、少しペース上げるよ」

「うん」

 

 そう言って俺たちは、日課となった登校前のランニングを続けた。

 俺たちは小学校に入学し、この春に二年生に進級した。

 

―――――

 

 朝のランニングを終えた俺たちは、それぞれ家に戻って朝食をとり、トレーニングウェアから着替えて一緒に小学校へ向かった。ランドセルを背負うのも慣れてきたのか、最近では懐かしさを感じることも少なくなった。

 小学校での生活は、前の世界と大きく変わらない。朝は校門をくぐって教室へ向かい、ランドセルから教科書を机に入れると、担任の先生が来てホームルームが始まる。その後は時間割通りに授業が進み、給食を含めた長めの昼休みを挟んで、夕方にもならない頃に早めに下校する。いかにも小学生らしい日常だ。

 それも当然で、この世界には“個性”という力があるとはいえ、公の場での使用は禁止されている。義務教育の場も例外ではなく、学校で“個性”を使うことは原則禁止。学校関連で“個性”を扱う機会といえば、小中学校の一年次に行われる“個性”届の一斉診断登録と“個性”カウンセリングくらいで、それが終われば原則学校で“個性”を使うことはない。

 “個性”持ちには不満もあるようだが、“無個性”の俺やいずっくんにとっては、むしろありがたい環境だった。幼稚園の頃に“無個性”だと知ったときは、正直、普通の学校生活すら送れないのではと覚悟したが、実際はそんなことはなく、俺もいずっくんも成績の優秀な小学生としてやれている。

 不当な評価を受けずに教育を受けられることに感謝しつつ、俺は二度目の小学校生活を謳歌していた。

 

「いずっくん、いくよ」

「うん、いいよ」

 

 給食を食べ終えた昼休み。他の子たちがドッジボールなどの遊びに興じる中、俺といずっくんは校庭の端にいた。

 俺は大きく息を吐き、数歩後ろに下がって助走の距離を取ると、目標を定めて走り出した。

 

「……とぉーーー!!」

 

 掛け声とともに地面を蹴り、俺は大きくジャンプをする。そして空中で体を丸めて前に一回転し、体勢を戻して足から着地する。シュタッ、と小気味よい音が響いた。

 

「やったよ、ゆうちゃん!」

「……できてた?」

 

 いずっくんは「完璧だよ!」と答えながらサムズアップをする。その様子を見て、俺はずっとやりたかった『前宙』の成功に思わず笑みがこぼれた。

 これもひとえに、母さん提案の“無個性”でヒーローを目指すための特訓のおかげだ。母さんは俺たち二人に、まずは運動能力の向上と体作りを当面の目標にすると言った。

 その一環として、俺といずっくんは朝のランニングをはじめ基礎トレーニングを行い、運動神経の向上と格闘技の習得を目的にスポーツ教室にも通っている。二人とも仮面ライダーとオールマイトという空中での動きに定評のあるヒーローに憧れていたため、パルクールは共通して習うことにし、俺はそれに加えて柔道と空手を、いずっくんは合気道を学んでいる最中だ。

 結果、俺たちは同学年の子どもと比べてかなりの運動神経を身につけつつあった。特に幼稚園の頃は少しどんくさかったいずっくんも、今では人並み以上に動けるようになっている。

 俺たちに対抗できる身近な存在といえば、きっと“彼”くらいだろう。

 

「あいつらまたやってるよ」

 

 噂をすればなんとやら。俺たちが前宙の成功に盛り上がっていると、少し離れた場所で三人の男子がこちらを見ながら、わざと聞こえるような声量で話し始めた。

 その中には勝己がいた。彼も同じ小学校に入学している。

 

「“無個性”のくせにヒーロー目指してるんだろ? あの二人」

(……聞こえてる。というか、聞かせる気満々だな)

 

 取り巻きの男子がそう言ってクスクスと笑う。その陰湿さに呆れていると、勝己が口を開いた。

 

「ハッ! 現実が見えてねぇだけだ」

 

 それだけ言い捨て、勝己は取り巻きたちとその場を離れる。

 あの公園での一戦以来、勝己たちは俺たちにちょっかいをかけてくることが増えた。

 今のように陰口を叩くだけならまだいい方で、たまに「勝負だ」と言って喧嘩を吹っかけてくることもある。俺たちはその度に適当にあしらったり、受け流したりしていた。

 小学校に入っても、彼らのように“無個性”の俺たちを下に見る生徒は少なからずいる。ヒーローを目指す夢を笑う人間もいる。

 けれど、そんな周囲の反応に振り回されるつもりはなかった。

 俺たちは、俺たちの道を進むだけ。俺はいずっくんと残りの昼休みを楽しんだ。

 

―――――

 

「ゆうちゃん、ここはどうやって解くの?」

「ああそこ? そこはね……」

 

 ところ変わって、放課後の俺の部屋。テーブルいっぱいに広げた教科書や参考書、ノートを前に、俺といずっくんは並んで腰をかけていた。

 俺たちは下校すると、その足で俺の家に向かい、このように二人で勉強をする。そんな習慣が、もうすっかり俺たちの日常になっている。

 いずっくんは鉛筆を握りしめ、真剣な顔で問題を指差した。俺はその文章を一読し、解き方を順序立てて説明する。

 今取り組んでいるのは学校の宿題ではない。宿題はこの勉強会を始める前に、もう片付けてある。

 俺たちが解いているのは、“授業よりも先の範囲”だ。

 

「ごめんね、僕ばっかり教わっちゃって」

「いやいや、教えるのも勉強のうちだから気にすんな」

 

 申し訳なさそうに眉を下げるいずっくんに、俺は軽く笑って返した。

 俺たちがこうして先取り学習をしているのも、ヒーローを目指すためだ。

 プロヒーローになるためには、全国各地の高校に設置されているヒーロー養成学科『ヒーロー科』に進学し、卒業までに国家資格である『ヒーロー活動認可資格免許』の取得試験に合格しなければならない。

 その中でも、母さんの母校であり、数多くのトップヒーローを輩出してきた雄英高校は、国内最高峰のヒーロー養成校として知られている。ヒーロー科の偏差値は79。一般入試の倍率は毎年300倍前後。桁外れの難関だ。

 俺といずっくんは、中学卒業後の進学先を雄英高校ヒーロー科に決めている。だからこそ、同世代と差をつけるために、こうして毎日コツコツと勉強を積み重ねているのだ。

 一度目の人生で義務教育を終えている俺にとって、小中学校の学習内容はそこまで難しくない。百年以上の時代差はあるものの、基本的な内容は大きく変わっておらず、科目によって新しい単元が増えたり、扱いが変わった程度だ。俺はそれらを“復習とアップデート”のつもりで学んでいる。

 一方のいずっくんは、俺のように前世の知識というアドバンテージがないにもかかわらず、学習状況は驚くほど良好だった。初めて触れる範囲でも理解が早く、分からないところも俺が説明すればするほど吸収していく。おかげでこちらも教えがいがあり、俺自身も説明することで理解が深まって、まさにWin-Winだった。その結果、二人とも学校の成績はすこぶる良好だ。

 ただそれでも、もしこの努力を他人に知られたら、きっとこう言われるだろう。

 『“無個性”なのに雄英に受かるわけがない』と。

 確かに、ヒーロー科のある高校は他にもたくさんある。中には免許取得までのハードルが低い学校もあり、身も蓋もない言い方をすれば、ヒーロー飽和社会と言われる今、免許を取ってヒーローになる“だけ”ならそこまで難しくない。特に“無個性”の俺たちがヒーローを目指すなら、そういったレベルの低い学校に進む方が、可能性としてはまだ現実的だろう。

 ―――だが、そんな生温いところで満足しているようでは、俺たちが目指す憧れのようにはなれない。

 俺もいずっくんもそれが分かっている。だからこそ、志望校は雄英以外に妥協するつもりはなかった。

 

「よし、じゃあ今日はここまでにしようか」

「うん。はぁ疲れた」

 

 勉強を始めて一時間ほど経った頃、俺は教科書と参考書を閉じて区切りをつけた。いずっくんは力が抜けたようにカーペットへ倒れ込み、両手両足を投げ出す。

 平日の先取り学習は、だいたいこのくらいの時間で終える。休日はさらに一時間ほど追加するが、それでも小学生としてはそこまで多い方ではない。

 この方針は、母さんの助言が大きい。母さんは特訓を始める時、俺たちに一つだけ強く言い聞かせた。

 

『努力するのはいいけど、やりすぎないこと。ちゃんと子どもらしく、遊ぶことも忘れないでね』

 

 それは、勉強や鍛錬だけでなく、子どもとして遊ぶ時間も確保することだった。“無個性”というハンデを埋めるために努力するのは大事だ。だが、そればかりしているとストレスが溜まり、成長の妨げになる。故に母さんは、俺たちに“青春”を送ることも特訓のうちとして課した。

 そんなわけで、勉強会を終えた俺たちは、自由時間を満喫している。

 

「そうだ、ゆうちゃん。これ貸してくれてありがとう」

「おお、参考になった?」

 

 すると、いずっくんが思い出したようにランドセルを漁り、二冊のノートを取り出した。そのうちの一冊を俺に差し出す。

 ノートの表紙に書かれたタイトルは『将来(しょうらい)(ため)のライダー分析(ぶんせき) No.1』。これは俺がいずっくんに貸していたものだった。

 

「うん。おかげで漢字の勉強にもなったかな」

「全部にフリガナ打ってもよかったんだよ?」

「それじゃあ、ゆうちゃんが大変でしょ。僕もゆうちゃんくらい漢字読めるようにならないと」

 

 そんな会話をしながら、いずっくんは照れたように笑い、俺は受け取ったノートの表紙を軽く撫でた。

 このノートには、俺が覚えている限りの仮面ライダーたちの情報が詰まっている。各ライダーの能力、戦闘スタイル、変身システム、特徴的なエピソードや名言等も。主役ライダーだけでなく、サブライダーまで網羅して、イラストと文章でまとめた。これは言うなれば、“俺なりの研究書”だ。

 これを書いた目的は二つある。一つは、将来ヒーローとして戦う時に、仮面ライダーの戦い方を分析して取り入れるため。もう一つは、彼らの活躍を忘れないためだ。

 最初は完全に自分のためだけに書いていたノートだった。だが、ある日いずっくんがこれを見て「僕もヒーローを研究したい」と言い出し、書き方の参考として貸すことになった。

 いずっくんが取り出したもう一冊のノートの表紙には、『将来の為のヒーロー分析』と表紙に書かれている。中身を少し見せてもらったが、ヒーローの“個性”やコスチュームの特徴、戦術の傾向などが丁寧にまとめられていた。どうやら俺のノートが参考になったらしい。

 

「にしてもすごいね、仮面ライダーって。改造人間に普通の人間、中には人間とは違う種族まで、本当にいろんなライダーがいるんだ。しかもお話もすごく面白いし」

「そうだろうそうだろう」

 

 いずっくんの感想に、俺は鼻が高くなる。彼にはこれまで仮面ライダーについて何度か話してきたが、やっぱり文字と絵でまとめたものは理解しやすいらしい。我ながらいいものを作ったと自負する。

 だが、俺がそうして若干浮かれていると、いずっくんはふと真顔で俺にある質問してきた。

 

「ねえ、ゆうちゃんはどのライダーが一番好きなの?」

「Oh……、我が親友はなんと酷な質問をされるのだろう……」

 

 仮面ライダーオタクの俺にとって、それは最も答えづらい類の質問だった。いずっくんの前で大げさに嘆いてみせながら、俺は顎に手を添えて本気で考え始める。

 

(……一番好きなライダー、か)

 

 そうして一人しばらく熟考した末、俺は静かに結論を出した。

 

「……さすがに選べないかな。どのライダーも魅力的だから」

 

 曖昧な答えだが、これ以上でもこれ以下でもない。どの仮面ライダーも俺にとっては、様々な魅力が詰まった学ぶべき存在だ。そこから一番を選ぶことはできそうにない。

 しかし、俺がそんな煮え切らない返答をしていると、いずっくんは容赦なく追撃してきた。

 

「え、じゃあ王蛇ってライダーも? 変身してる浅倉って人、犯罪者なんでしょ?」

「なかなか痛いところついてくるね、いずっくん」

 

 子どもの純粋な思考は末恐ろしい。俺は思わず苦笑が漏れる。

 いずっくんの言う『王蛇』とは、『仮面ライダー龍騎』に登場する13人のライダーの一人、仮面ライダー王蛇のことだ。変身者の名は、浅倉威。自分が「イライラした」という理由だけで暴力を振るい、殺人すら厭わない凶悪犯で、ライダーへの変身能力を得てからは、戦いそのものに快楽を見出し、劇中で数多くの他のライダーを葬っていった。

 彼のような悪の仮面ライダーは『ダークライダー』と呼ばれ、他にも多く存在する。俺はそんなダークライダーたちについても、このノートにまとめていた。王蛇はその中でも“歴代最凶”の呼び声が高いダークライダー。いずっくんが彼の名を出して疑問を抱くのも当然だった。

 だが、俺はそんないずっくんの問いに、今度ははっきりと答えてみせた。

 

「まあ、いずっくんもこれを見てもらったから分かると思うけど、仮面ライダーとその敵の怪人の中には、“同じ”系統の力で戦っている人たちもいるでしょ? 彼らは本質的に言えば“同じ”強大な力を持った存在。ただその違いは『正義の心も持っているかどうか』ってだけなんだ」

 

 それは、仮面ライダーという存在の根幹に触れる話だ。

 たとえば、すべての原点である仮面ライダー1号。彼はショッカーという悪の組織に改造された“改造人間”の一人に過ぎない。恩師の緑川博士の協力で洗脳を逃れたからこそ、正義のヒーローになれたが、もしあのまま洗脳を受けて怪人として完成していれば、彼は怪人バッタ男としてショッカーの一員になっていたはずだ。

 実際、後に登場するショッカーライダーと呼ばれる仮面ライダーの偽物の存在が、その可能性があったことを証明している。

 

「だから言い方を変えれば、仮面ライダーは『正義の心を持った怪人』とも言えるし、逆に怪人は『正義の心を失った仮面ライダー』とも言えるわけだ。そういう意味では、王蛇や他の悪役ライダーたちは、俺にとって『力を手に入れたときの、心の在り方』を教えてくれたと思ってる。……まあ、反面教師的な意味にはなるんだけどね」

「なるほど、そういうことなんだ」

 

 俺のダークライダーに対する考えに、いずっくんは、俺の言葉を噛みしめるように頷いた。

 

「でも、それって僕らにとってもすごく大事なことだよね。僕たちが目指すヒーローも、それと戦う敵も、同じ“個性”っていう力で戦ってるわけだし」

「そう。力っていうのは、使う人間次第で善にも悪にもなる。これは忘れないでおきたいね」

 

 いずっくんの言葉に、俺は迷いなく頷いた。俺が伝えたかった核心を、彼が自分の言葉でしっかり掴んでくれたことが嬉しかった。

 そうして王蛇のページを指でなぞっていると、いずっくんがふと何かを思い出したように顔を上げた。

 

「そういえばゆうちゃん、このノートの最後の方に説明の書いていないライダーの絵があったけど、あれは何なの?」

「ああ、これのこと?」

 

 俺はノートをめくり、最後のページを開いた。

 そこには、他のページのような説明文も名前もない、“俺の見たことのない仮面ライダー”の絵がいくつか描かれている。

 

「これは、ページ的に次のライダーのこと書くには足りなかったから、ちょっとデザインの練習で描いたやつ」

「デザインって……、もしかしてゆうちゃんのコスチュームの?」

 

 いずっくんの問いに、俺は素直に頷いた。

 そう。これはいずっくんが言ったように、将来ヒーローとして活動する時に俺が身につける“コスチューム”のデザイン案。その雛形ともいえるものだった。

 

「前にいずっくんの『将来こんなコスチュームを着たい』って絵見せてもらったでしょ? オールマイトへのリスペクト入ってるやつ。あれを見て俺も、自分が尊敬するライダーたちのデザインや能力を参考にして、自分に合ったコスチュームを作ろうと思ったんだ。まあデザインとかやったことないから、まだまだなんだけどね」

 

 以前、俺はいずっくんが自分のコスチュームのイメージを描いた絵を見たことがあった。それはオールマイトの象徴である二本の前髪を模した角、満面の笑みを思わせる口元の意匠があり、横には大きく『オールマイトみたいにカッコ良く!』と書かれていた。いずっくんがどれほどオールマイトを尊敬しているか、一目で分かる絵だった。

 俺はその絵を見た時、素直に「いいな」と思った。そして自分も将来着るコスチュームを考えてみたくなり、このように余ったページに、思いつくままにイメージを描き殴った、というわけだった。

 ただ、描かれているデザインは、まだ方向性が定まってなく、系統もバラバラだ。いずっくんのようにオールマイトという一人のヒーローを尊敬していればある程度目途がついたと思うが、俺が尊敬しているのは、『仮面ライダー』という称号を持つ人たち全員。数多くのライダーへのリスペクトを、どう自分のコスチュームに落とし込むか、その答えがまだ見つかっていない。だから、このページのデザインも、俺が一番好きなライダーを選べなかったのと同じように、どこか曖昧なままだった

 

「そうなんだ! じゃあ完成したら僕にも見せてね!」

「ああ、約束だ」

 

 いずっくんは目を輝かせ、身を乗り出すようにして言った。その期待に満ちた表情を見ながら、俺は約束をする。

 先が長くなりそうだが、今はそれでいい。

 俺はノートをそっと閉じ、机の端に置くと、新しいノートを取り出した。

 

「じゃあせっかくだし、次のノート書いて行こうかな」

「あ、じゃあ僕も!」

 

 いずっくんもそう言いながら、ヒーロー分析ノートを広げる。

 こうして俺たちは、お互いに意見交換しながらヒーローとライダーの分析を行い、いずっくんの帰宅時間まで鉛筆を進めていった。

 ……なおこれは余談だが、このあといずっくんが王蛇の「近くにいたお前が悪い」というセリフを「かっちゃんが言いそうだね」と言い出し、俺はその光景を想像して盛大にジュースを吹き出した。その時についた染みは、今もこのノートの端にしっかり残っている。

 

【挿絵表示】

 




【次回予告】

我らが風岡ライダー、次のお話は……。

母・陽から課せられた特訓をこなし、着実に強くなっていく雄次郎。

夏休みに母の実家を訪れた彼は、この世界で出来た新しい親戚との交流を深める。

次回
   『()っすぐで(あつ)いハリケーンのような従弟(いとこ)
                        に、ご期待ください。

不定期投稿としていましたが、今後は週1回(19:30)の定期投稿に切り替えようと思います(話のストックがある際は随時更新します)。ベースとなる「更新曜日」について皆様の希望を伺わせてください。

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