「そうそう!流石ウィルソンの息子だ。上手いな」
「ありがとう!!」
「後はもうちょっと手首のスナップを効かせて投げれたら綺麗なスピンがかかるようになるぞ?」
「はい!!」
ノアとレオンはアップの後キャッチボールを行っていた。このクラブは名門なだけあって通常6歳から入部する事は不可能に近い。…ただ例外として監督が認めた選手のみ最年少で加入することが許される。
当初、ノア本人もおそらく父親の影響を使い加入したのだろうと思っていたがレオンの実力を目撃し誤りだと気づいた。
筋力や瞬発力…基礎的な能力はまだまだ程遠いが、呑み込みの速さとポテンシャル…並の選手とは既に一線を化している。
(優れた一流プレイヤーはプレイの所作まで美しく無駄のない動きだと聞いたことがある)
(レオンの場合はまさにそれだ。…一つ一つの動きに余分な動きが少なく最適な動作で動いている。ウィルソンの影響か…それを超える才能か…末恐ろしい新入生なのは間違いないな)
対するジャックとジュニアは
「無理に遠投しなくていいぞ?とにかく上じゃなくて下に投げろ!ワンバウンドしても良いから!」
「はい!!」
「いいぞ!肩なんて体が成長したら勝手に強くなってくんだ!今はそれより技術を身につけろ!高く投げようとするとリリースポイントが早くなっちまうからな!」
「はい!!」
ジャックは投手としてのイロハをジュニアに指導していた。
(本来この歳ならキャッチボールすらままならないガキの筈だがコイツは…投げるどころか"胸元にきっちり投げ込んできやがる")
(親父さんの影響か…いや…ギブソンは豪速球が売りの剛腕投手だからな。タイプは違うが…良いもん持ってんじゃねぇかコイツ)
ノア同様、ジャックもジュニアの実力とポテンシャルの高さに驚きを隠せない。
「集合ぉぉぉぉ!!」
「「「っ!?はい!!」」」
とその時、監督から集合が掛かり慌てて面々は走り出す
集まった面々の前で監督はーー
「皆もわかっている通り、再来週にRising Stars Invitational(新星たちの招待大会)がここロサンゼルスで開催される。」
「「…」」
「レオンとジュニアは知らないと思うがこの大会は今年始まったばかりのLAの新チームの中で最も強いチームを決める大会だ。各チームの新戦力が試される意味合いも含めて今のチームの実力を見極める良い機会だろう。」
「「…」」
「やって明日、その試合に臨むためのメンバーを決める練習試合を行う!!チームの詳細はここの紙に貼っておくのでちゃんと確認しておくように!必ず誰もが一度はチャンスがあるようにしてあるから心配はいらないぞ!」
「「はい!!」」
明日、大会に臨むためのメンバーを選考するチーム内での練習試合が行われるそうだ。普通に考えればレオンとジュニアがメンバーに選ばれる事はあり得ないだろう。
なぜならウェーブスはアナハイムどころかロサンゼルス全土を含めて名門チームでありレオンとジュニアを除けば最年少は9歳からである。
こうして集合してみるとよく分かるが皆レオンとジュニアより頭一つ分、いや上級生に至っては頭2つ分違っている。
しかし2人は諦めるどころか自分達こそが選ばれる気満々である。
果たしてウェーブスに加入した新たな新戦力が試される機会は訪れるのだろうか…それとも…
結果は明日発表されるだろうーー
◆
後日、レオンとジュニアはウェーブス専用グラウンドに集まっていた。
「俺たちは別チームだな」
「…だな。しかもやっぱスタメンじゃねぇし」
「代打かな?」
「多分な」
張り出されたスタメンメンバーに2人の名前はなく別々のチームという事もありおそらく2人は代打での出場が濃厚だろう。
「「Hai!!」」
「「??」」
2人が肩を叩かれ後ろを振り向くとそこにはーー
ブランドヘアの長髪をゴムで束ねた少女とダークブラウンの髪をミディアムに整えた少女がいた
「私の名前はエマよ!レオンは私とチームだからこっちおいで」
「あ、はい!」
そう言いレオンの手を引くブランドのエマという少女
「本当にちっちゃくて可愛いわね〜!!わかんないことがあったらお姉さんになんでも聞きなさいよ!」
続いて
「私はオリヴィアよ。ジュニアはこっちね」
「はい!」
ジュニアの手を引くダークブラウンのオリヴィアという少女…
手を引かれたレオンはそのまま自軍ベンチに連れて行かれる。
どうやらうちのAチームのキャプテンはチームキャプテンでもあるノアが務めるらしい。という事は向こうはーーやはりエースであり副キャプテンのジャックか
という事はこちらのチームはエースであるジャックを打たなきゃいけないわけになる
「いいか?ジャックは手強い。…皆が認めるこのチームのエースだから当たり前だ。…でもな、そんなジャッククラスのピッチャーを打って勝たなきゃこの先"全米"を取ることなんて出来ねぇ」
「「「…」」」
「甘いコースなんて待ってたら試合が終わっちまう。…得意なコースだけ自信を持って振り抜け…良いな!!」
「「「はい!!」」」
そしていよいよノア率いるAチームとジャック率いるBチームの練習試合が始まる。初回の攻撃はAチームからである。もちろんマウンドに上がるのはーー
ーーパァァァァン!!
「…早い」
「はは…確かにレオンからしたら見た事もない速さかもな」
口を開けて驚くレオンの横でノアが応える
「12歳にして、最速120キロにキレのあるカーブ…更には…いやコレはまだ良いかな」
「??」
「兎も角ジャックがすごい投手なのは間違いないが…」
ーーカキィィィィン!!
1番打者が打った打球が綺麗に二遊間を裂きセンター前へと抜けていく。
「穴がないわけじゃない」
「…どういうーー」
「まぁ見てな」
そう言いレオンの頭を1撫でし、ヘルメットを被りネクストサークルに向かうノア。
2番の選手はバントでランナーを送り、1死ランナー2塁の状況で迎えるはーー
「…ここでお前か…ノア」
ウェーブスが誇るトッププロスペクト…ノア・マーティン
ノアはバットを緩やかに回しながら構える。そしてーージャックが投じた初球ーー
ーーカキィィィィィィィン!!
「右中間抜けたぁぁぁ!!」「回れ回れ!」
インコース低めのストレートをノアは腕を畳みながら強振…捉えられた打球はセンターとライトの間を悠々と抜け、二塁ランナーは帰還し打ったノア自身は快速を飛ばして三塁へ進むタイムリーヒットだった。
その後、立て直したジャックが二者連続で三振を奪うもののAチームが先制点を齎しゲームがスタートしたのであった。