「あら、黛くん…………!?」
「気付くのに遅えな」
約束の日がやってきたのでボーダーの本部にやって来た。
加古に遭遇したら何時も通りの反応をした後にどうしてここにいるの?と驚きのリアクションを取ったがそれまでの間に数秒だけ沈黙があった。
「まさか……遂にボーダーに入隊したのね!」
「違う」
「じゃあ、どうして本部に居るのよ?」
「ボーダーの金稼ぎの道具になる為だ」
ボーダーに入隊したとキラーンと推理する加古だったがボーダーには入隊していない。
なんでボーダーに居るのかが分からないとなる加古で、理由について説明をしてもイマイチ分かってない。
「ボーダーの資金集めの為のプロスポーツチームを作るからそれのスカウト……で、今回は各方面を黙らせる為のスポーツ自慢をぶっ倒すのが仕事」
「へぇ……じゃあバスケをするのね」
「そういうこった……試合はその内にボーダーの端末に録画映像とか流されるだろうが生で見たいなら見ればいい」
バスケをするのだと気付いた加古は面白そうな話を聞いたと笑みを浮かべている。
ボーダーのスポーツ自慢が何処の誰なのかは分からねえ……桃井がある程度の予測をしようと思えば出来るだろうが、今回はあえてデータが一切無い状態で挑んでいる。あろうがなかろうがやることは1つ、圧倒的な蹂躙だけだ。
「でも、黛くん以外は来てないわよ?」
「先に来てるみたいだから回収って、言ってたら向こう側から来たか」
「おはようございます」
「どうもっす……彼奴等、先に来てるっぽいけど集合するって考えがないのか……」
赤司と虹村と合流を無事に果たした。他の6人が先に来てるっぽいが何処に居るのか……については何名かは聞いている。
先ずは分かる奴から回収していこうかと誰から行こうかと思っていたら、一番最初に見つけねえと厄介だよなと思っていた灰崎を見つけた。
「よぉ、一緒に遊ばねえか?」
「え、あ、あの」
「今からすんげえのをしに行くんだよ。面白えから見てくんねえ?」
「はぁ……あいつ、ホントに懲りないって言うかなんて言うか……」
一番最初に見つけたのは灰崎だった。
灰崎は那須隊の那須をナンパしていて那須は困った表情をしている。虹村は遊びでここにやって来ているんじゃないんだぞと大きなため息を吐いた後にメシメシと灰崎の頭部を掴んだ。
「お〜こら、お前、今日はなにしにきたのか忘れたわけじゃねえよな?」
「いって!?いいだろ!別に、ちゃんと言われたとおりに来てやったんだからよ!!」
「それなら他の奴等だってそうだわ!……悪いな、灰崎のバカが」
「いえ……」
「ナンパぐらいいいだろ!こちとら練習漬けで女っ気は無いんだぞ!黛とか大樹とかはちゃっかりしてんだからいいだろ!」
「あの2人と比較するな」
虹村がナンパをしている灰崎を〆に行けば灰崎は灰色の青春を送っているんだから彩りを持たせろよと文句を言う。
サラリととんでもねえ事を言ってやがるが、虹村は変な風に話を盛り返すなと睨みつければ灰崎は少しだけ萎縮している。
「誰かと思えば、灰崎か……ボーダーをクビになった奴が今更なんの用事だ?」
「お〜お〜三輪か。灰崎じゃなくて灰崎さんだろ」
「問題行動しか起こさないお前に敬意は無い」
「はん、その割には口先だったよな。実力派エリートを名乗るグラサンも顎髭も」
「す、スゴいわ!どっちも同じ声に聞こえるわ!」
揉め事が徐々に大きくなっているなと思えばそこに三輪が現れた。
年齢的には1つ上の灰崎だが素行不良等を知っているからか歳上だろうが敬意は無いとキッパリと言い切った。灰崎の声と加古の声を聞いた加古は久しぶりに聞いたけれどもと少しだけ興奮している。
「灰崎、今日は口喧嘩をしに来たわけじゃないんだ……お前が無駄口を叩くのならば分かっているな?」
「……っち。へーへー、分かってますよ。合法的にボーダーをボコりますよ」
このままだと騒動が大きくなると判断したのか赤司が睨みにいった。
赤司が出てきたのならば流石の灰崎も逆らうことが出来ねえと聞こえるレベルで舌打ちをした後に赤司はフォローを入れる。
「すまない。久しぶりのボーダーで灰崎はピリピリと来ているんだ……君も悪かったね。あいつはナンパが趣味な男で、手癖が」
「いえ、誘いを素直に断らなかった私も……あの、灰崎と言う名前ですけどもしかしてあの灰崎先輩なんですか?」
「ボーダーをクビになった奴で間違いねえぞ」
「おい、まだ色々と紹介方法あんだろ!」
「お前が防衛任務とか言って嘘ついて学校サボってたからだろ!」
「痛い!っちょ、握力100kgのアイアンクローは死ぬ!」
「虹村さん、灰崎を〆るのは試合が終わった後にしましょう……それよりも他の面々を探さないと」
灰崎を〆る事は確定なのか……まぁ、影浦辺りと遭遇したら生身の肉体云々を除いて喧嘩に発展しそうな未来は見えているか。
赤司は他の面々を探さないといけないと言い出して、手分けして探すことになるんだが……
「なんでお前もついてくるんだ」
「だってスゴく面白そうな事が起きそうじゃない。久しぶりに灰崎くんも見れたし」
「そうか……飯を食うって言ってたから、食堂か。加古、食堂はどっちだ?」
「こっちよ」
何処に居るのかを一応は教えてくれている奴に会いに食堂に向かう。
食堂には人集り、と言うよりは異様なものを見つめるような光景がありそこには無数のカツカレーの皿が積まれている。
「こいつ、胃袋が無尽蔵なのか!」
「もぐもぐ……もうやめちゃえば?」
「うぉ、デッカ……黛くん、知り合いなの?」
カツカレーの大食いをしている2名、とても大きいのととても小さい2人が居た。
両者が積み上げているカツカレーの皿はとても多くて大食い大会でもやってんじゃねえよと思っていると加古が大きい方と知り合いなのかと聞いてきたので大きい方に近付いた。
「紫原、試合前だってのにドカ食いしてんじゃねえよ」
「ドカ食いじゃないよ〜運動前の栄養補給だから」
「既にありえない量を食ってんだろ……お前そんだけ食えんのに未だに体重100kg越えないってどういう新陳代謝してんだ」
「俺に聞かれても分かんないよ。赤ちんや虹村さんだって100kg無いのはヤバいって言っててなんとか100kg越える様に色々とやってるけど太れないんだもん。俺のせいじゃねえし」
今から試合を行うってのにドカ食いをしている紫原に文句を言えば軽い軽食と言う。
カツカレー1杯でも大分ヘビーなのにそれを何皿も食ってるってことは相当に食ってんだろ。それでも体重が100kg越えない。身長は2m越えてんのに89kgと細い。
「ごっそさん……黛さんが来たから行くね〜」
「いや、待て……おそらくは俺も同じ所に行くだろう」
「え、そうなの?じゃあ、何処か教えてくんない?ここに来るの初めてだから全然分かんないんだ」
「こっちだ……お前達は試合をしに来たんだろ?」
「ええ、まぁ……そいつを連れてってくれるなら連れてってください。まだ他にも探さなきゃいけないのが居るんで」
風間が紫原を連れて行くと言っているので紫原を任せた。
他の奴等は捕まったかどうかの確認をすれば黄瀬を虹村が、桃井を赤司が捕まえて残すところは緑間だけになった……青峰はなんか既に試合会場に居るらしい。あいつ、こういう時だけ真面目にするってどうなんだ。
「だから困りますって!」
「そこを何とか頼む!今日の俺のラッキーアイテムなのだよ!」
「これ、本人からギリッギリ承諾された物なんですから!」
「……彼は何をしているの?」
メディア対策室に向かえば揉めている緑間を発見した。
その手には……呪物?とち狂っている物?……等身大の嵐山人形を掴んでいてメディア対策室の人と揉めていて、加古は何をしているのかが分からないのでオレに聞いてきた。
「緑間は朝の占いに出たラッキーアイテムを手に入れに来ているんだ……」
「え、なんで?」
「人事を尽くして天命を待つ、やれることを徹底的にやり尽くした後に最後の運を味方につける為にラッキーアイテムを手に入れるんだ。その甲斐あってが緑間はバスケのルールを書き換えなければならないぐらいにヤベえ選手でな……まだ公式が手を出してねえが、色々とぶっ壊れている」
「本日のラッキーアイテムは等身大の人形なのだよ……流石の俺も等身大の人形は持っていない。しかし、ここにはあると聞いている。ならば、ここは1つ試合をより確実に勝つ為に貸して欲しいのだよ」
等身大の嵐山人形をなんとかして持っていこうとする緑間。
そもそもでなんでそんな呪物みてえなものがあんだよというツッコミは一切無しで、必死になって交渉して最終的にはメディア対策室長が出てきて必要だから貸してくださいと頭を下げて借りることに成功した。
「なんだね、キセキの世代はイロモノしかいないのかね!」
「なに言ってるんすか、全員名前に色が入ってるでしょう」
「そういう意味じゃない!揚げ足を取らないでくれ……」
全員の回収が済んだのでメディア対策室長の根付と一緒に試合会場に足を運んだ。
どうやら非番の隊員とか試合に実際に参加する隊員が所属している部隊の奴等が観客として見に来ている。
「っげ、ホントに灰崎が居るわ……」
小南が灰崎を見れば嫌そうな顔をして灰崎を見ていた。
「黛さん、向こうからメンバー表を貰いました!こっちも既に出してます」
「そうか……因みにどんな感じだ?」
「ポジションは書いてないので予測で……Cに木崎さん、PFに村上くん、SGに柿崎さん、SFに米屋くん、PGに歌川くん。ベンチとして居る荒船くんはSF、風間さんはPG、後は本部長さんがPFかな」
「色々と言いたいことはあるが、なにやってんだ本部長」
ボーダーの中でも運動能力がトップレベルで尚且つチームプレイなんかがなんなのかを理解している面々で挑んできた。
生身の肉体で挑んだのならば確実に負けるがハンデとして身体能力が高めのトリオン体で挑んでいる。色々と言いたいこととしてはなにやってんだ本部長だ。
「トップアスリートのスゴさを見てみたいから出たいってなって参加してみたいです……向こうも8人、こっちも8人ですからちょうどいいじゃないですか」
「ったく……いいのかそれで」
ボーダーの顔の1つになるのだからそれを肌で感じたいってのは分からなくもねえが、やるしかない。
各々が所属している部隊の面々や噂話を聞いてやって来たボーダー隊員達が観客席に足を運ぶ。その間に俺達はアップを済ませていく……別になんてことはないアップだ。だからこそ恐ろしい。機械の精密動作の様に手元が一切狂わずレイアップシュートを決めていく。
この試合はお遊びの試合ではあるが、赤司のバスケ王国計画の第一歩を踏み出す為の物でもある。
ボーダー隊員に見下されてたらしゃあねえから真面目に頑張るしかねえなと思っているとアップは終わりヴォーパルソードになるオレ達とボーダーの体育会系達が並んだ。
「これより三門ヴォーパルソードの親善試合を行います……プロのアスリートになる彼等とのハンデとして30点をボーダー側に」
「異論はありません」
「では、ジャンプボールの選手を」
スターティングメンバーは赤司、緑間、紫原、黄瀬、青峰の5人。
オレと虹村と灰崎はベンチスタートで、ジャンプボールの選手が前に出れば紫原とレイジが向かい合う……
「っちょ、あいつデカくない?レイジさんって確か190cmあったわよね?レイジさんよりデカいって」
「そりゃバスケのスゴい選手として契約するんだから大きいに決まってますよ」
「いやでも……なんかキャプテン以外は全員レイジさんより大きい気がするんだけど」
レイジはとても大きいが、紫原はそれを余裕で越える大きさを持っている。
小南の奴がヴォーパルソードの選手が並べばデカいと感じたので烏丸がバスケ選手なんだからデカくて当然だと最もな事を言えば、レイジよりも大きい選手しか居ないのだと指摘する。
そりゃそうだと思いながらも試合は始まる。
審判がホイッスルを鳴らすと同時にボールは高く放り上げられ……紫原とレイジがジャンプをした。デカい方が有利なので、紫原の方が先にボールに手が届きガッチリと掴んで緑間にボールを渡す。
「30点のハンデなど意味は無い……先ずは貰った!」
緑間は自陣からいきなりの3Pシュートを撃った……んだが、その直前にホイッスルが鳴った。
緑間の3Pシュートは高いループを描いてゴールに入ったがホイッスルが鳴ったので試合は一時中断……
「もう、むっくん!まだボールが最高到達点になってないんだから取っちゃダメだよ!」
原因がなんなのかは分かったので桃井は怒った。
ボールが最高到達点になる前に紫原がボールに触れて緑間に渡した……ボールは充分な高さにまで飛んでいた筈だが、まだそれでも最高到達点には至っていなくて審判がありえないものを見る目で見てくる。
「あの審判は公式の審判か?」
「はい。協会から来てます……流石にむっくんサイズは予想外みたいですね」
普通にジャンプボールをしたが紫原が最高到達点に行く前にボールに触れた事を驚いている。
日本人じゃ規格外のサイズを持っている紫原だからジャンプボールをする時の力の入れ具合はよく分からねえか……ともあれボーダーボールでの試合が再開したと言うか開始したな。