偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
実際の予想される天候以上に各地での降雨による被害が目立ち過ぎた。何より、その時の事前予測が出来ないことが状況の悪さを更に悪化させた。
「Fes×LIVEは中止にしよう」
百生部長は淡々とそう口にした。
たぶん、その日になれば大した雨にはならない。けれどもそれを希望的観測と言われてしまえばそれまでで未来とはそういうものだ。
知っている限りになるけれどここ数年はトラブルこそあったもののFes×LIVEそのものが中止になるようなことはなかった。
だから余計に百生部長は迷っただろうし悔しいと思っているだろう。けれどもそれで判断を遅らせるような愚行をしなかった。
決行よりも中止の判断の方が難しいものだけれどしっかりそれが出来る部長は素直に尊敬できると思った。
「中止にするということは何をするか覚えてるマイカちゃん?」
「はい。Fes×ReC:LIVEと生オーディオコメンタリーです」
わざとらしく部長はマイカちゃんに聞き、その答えに大変よくできましたと満足気に頷いた。
「各自収録した内容にもう一度目を通してこれは配信中に話しておきたいな、っていう話題を3つは用意してください」
休んでる暇ないよ、と私達を鼓舞する部長はいつになく笑顔だった。
「姫芽」
「あいさ〜。SNSの方には私が告知するね」
「小鈴、泉」
「了解!ひとっ走り街に向かうね」
「中止告知のショート配信だね。任せてくれ」
「セラス」
「関係各所への中止連絡ですね。ことあと分担の確認いいですか?」
各々やるべきことを事前に話していたのか先輩達は何やるか勘違いがないかだけ相互確認していた。
今年の蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブはなんというか組織的な動きに磨きが掛かっていると思う。
「マイカちゃんの上司は凄いね」
「上司って、そんなんじゃないから」
「うん。それはそう。でも凄いなって思ったのは本当だよ?」
「葵が人のことをそういう風に捉えるの珍しいね。可愛いとか、歌がいい、とかそういうのはあったけど」
「私はどちらかといえばワンマン気質だから組織的判断ってのはやれるかどうか未知数なんだよね」
判断力テストとか紙面上でやる論理問題としてなら簡単に判断できるだろうけど、実際ことが起きた時の心理状態を加味するとどうなるか正直分からない。
あまり考えたことなかったけど私にも不向きな分野なのかもしれないなと思う。
「葵にも苦手分野ってあるんだね」
「本当にね。集団のなかにいないと思いつかない発想だ」
芸能の分野は未知数だ。答えは無いし、あったとしても時と場合で変動する。だからこそ面白い。
スクールアイドルになって良かったな、なんてこんな大変な時なのにそう改めて私は思った。