掴んで!ヒーロー☆ヤミーウェイ!   作:月日は花客

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中の人は医療従事者ではないので、作中での応急処置は医療サイト等を参考にしたものです。あくまでも応急レベルです。
負傷した際は、無理に自己治療で止めず、しかるべき病院へ行ってください。
間違った医療知識を見つけた場合、コメントなどでこっそり教えてくだされば修正します。何卒。






3袋目:ジュケン☆ヤミーウェイ

 

 雄英高校セラピー科の受験日は、ヒーロー科の試験日の次の日だ。

 

 どうしてズレているのかはわからないけど、たぶんヒーロー科の受験人数がとてつもなく多いからだろう。

 セラピー科は新設なので、ヒーロー科及びサポート科と併願が可能だ。私はどちらにも併願してないけど、こっちも人が多くなりそうだ。

 

 家族からの許可は案外あっさりと出た。

 ハッキリとやりたいことを見つけたなら、それで良いらしい。ただ、やるからには全力でしがみつきなさいと言われた。途中で投げ出すんじゃなく、やれるだけ全部出し切りなさいと。

 結果、私はしばらくひたすら勉強して勉強して勉強することになった。

 私と繋がった「私」の記憶から、知識も流れ込んできているけれど、そのほとんどが「遊戯王」関連で、高校受験にはあまり役に立たない。

 雄英高校の偏差値は高い。滅茶苦茶高い。

 模試の結果では国語と英語は大丈夫そうだったけど、数学が不安だ。ギリギリまで問題集にしがみついていた。

 

 ヤミーたちは、たとえ私が答えに悩んでいても呑気に息抜き用のおやつを持っていったりするばかりなので、残念だが完璧な戦力外だ。

 そもそも、ヤミーに受験を手伝わせるなって話なんだけど。

 

「ここが雄英かぁ……」

 

 目の前に聳え立つ校舎は大きく、そしてその門に沢山の受験生が向かっていく。

 ライバルは多い。

 私は家を出る時に母にもらったキットカットをかじる。うん、yummy(がんばろう)

 

「セラピー科の受験生(リスナー)諸君!! エヴィバディセィ!!」

「…………」

「ヒュー! こいつァシビィー!!」

 

 ヒーロー、プレゼントマイクの巨大なボイスが会場に響く。

 周りには真剣そうな顔した子や、明らかにこの受験はメインではありませんって感じの子もいる。たぶんヒーロー科あたりの併願の人だろう。

 私としては、あんまりやる気の無い態度を取るのはそれだけで不利だと思うけど……ライバルの心配をしても仕方ないか。

 

「今回のコースは今年から新設のセラピー科だァ!! 癒し役だからって舐めてると痛い目見るぜ!! ここは遊英、甘いヤツらは即・脱・落!!!」

 

 筆記は、自己採点では十分合格点を超えていた。数学はやっぱり苦手だけれど、ヤバいほど点を落としてはいない筈。

 あとは実技を頑張るのみ。やれることは、あとはそれだけだ。

 配られた試験会場の場所を確認し、動きやすい服装に着替えて移動する。私は普通に中学のジャージだ。

 実技試験の内容は伏せられていた。新設のコースだから試験内容の予測も困難。

 この時ばかりは、緊張で酸っぱい唾を飲み込む。

 

 試験会場はボロボロの市街地だった。

 いや、市街地を模した演習場か。雄英高校ってすごい規模の学校なんだなぁ……と改めて感じる。こんなの、ただの学校が用意できる設備じゃない。

 崩れ具合はかなり酷くて、瓦礫や金属片、何故か壊れたロボも転がっている。もしかしてヒーロー科の試験でも使われていた会場なのだろうか。

 数多の戦闘跡が痛々しい。

 

「目の前にあるのは破壊された街!! おおっと、敵は出てこないから安心していいぜ!! お前たちはセラピー科希望、目指すのは『救出(レスキュー)治療(メディカル)』だ!!」

 

 プレゼントマイクの声によって、試験内容の説明がされる。

 

 この破壊された市街地に、要救助者や負傷者を模した人形が配置されている。

 その人形は各々負傷や問題を抱えていて、また数も多い為ヒーローの救助だけでは手が足りない。また、中には緊急で治療が必要なものもいる。

 その人形たちを救助し、また適切な処置を施して治療すること。それによってポイントが入る。

 しかし、人形を雑に扱ったりして、破損させた場合……減点が入る。破損原因や行動によっては、この街の中の人形を全て救出しても巻き返せないほどのマイナスが。

 

「治療は人形に配置されたボタンの中から、適切な治療方法が書かれたボタンをプッシュだ!! 最後にヒーローじゃなかろうと雄英なら誰もが頭に刻んでる言葉を送るぜ!! お前ら──」

 

 Plus(更に) Ultra(向こうへ)!!!

 

 大音量のメッセージ。それが言い終わる前に、私は市街地へ走り出す。

 私の身体能力は正直高くない。足もそこまで速くない。

 だからこそ、人一倍急がないと。

 

「いくよ、【クッキィ☆ヤミー】【カプシー☆ヤミー】【ロリポー☆ヤミー】【マシュマオ☆ヤミー】!」

 

 ヤミーモンスター4体を一気に喚び出す。

 現れたヤミーたちは、走る私に続々とついてきた。彼らに指示を飛ばす。

 

「全員散開。要救助者優先で見つけたら報告! 他の受験者の邪魔はしないで。帰ったら沢山のお菓子が待ってるよ!!」

 

 私一人の足では、救助者の発見に時間がかかる。補足手段を増やせるヤミーたちはありがたい。

 私の作戦に、というか最後の一文に、ヤミーたちは目を輝かせ辺りへ飛び散っていった。ヤミーはみんな小型だから、人が通れない狭い通路も難なく通っていく。

 現場想定なら、安全とスピードが命。崩れた瓦礫の影も細かく見て人形を探していく。

 

「いた……!」

 

 瓦礫の影に、服を着た人形……というか、アンドロイド的な人型の機械が倒れている。

 駆け寄れば、胸部のモニターに負傷状況が書かれていた。

 

「脚部の骨折、複数箇所の打撲と擦り傷……この場合は、冷やしつつ骨折箇所を固定。擦り傷は傷口の洗浄」

 

 人形を一度、脚部を動かさないように安全地帯まで運び、モニターのボタンをクリックする。

 すると、ピロンと音が鳴って、モニターの光が緑になると同時に数字が表示される。恐らくこれがポイントだ。今回は、1(ポイント)

 

「クッキィ、発見了解。案内して」

 

 ポイントを確認し立ち上がると、すぐ近くにクッキィが戻ってきていた。要救助者を発見したらしい。走るクッキィについて行って、見つけた人形に治療を行う。

 

「鼻血、頭部から軽度の出血。傷口を押さえて、鼻に綿を詰めて足を頭より上に……」

 

 やはり捜索を複数で、同時並行にやれるというのは強い。ヤミー達が次々と発見していく人形を、慎重に救助していく。

 私一人では運べない時はヤミーに手伝ってもらったり、瓦礫を退かす時はスナッチーに浮かしてもらったり。

 私は直接的に傷を癒す手段は持ってないけど、受験科目と同時に応急処置や一般人でも可能な範囲の救助方法を学んでおいて良かった。

 ファイヤーマンズキャリーとかすごい役に立つ。

 

「ふぅ……これで今ポイントが──うひゃあ!?」

「どけぇ!! コイツは俺が見つけた人形だ!!」

 

 背後から突然衝撃音がして、声が出てしまった。

 どうやら、受験者の間で人形の取り合いが勃発してるみたい。治療者が患者を取り合ってどうするの……。

 血気盛んな受験者が売られた喧嘩を買っちゃってるけど、もうそんな人形が少なくなってきてるのかな。

 

「スナッチー、そのまま空から捜索任せられる? オッケー、お願い」

 

 地上からじゃ見えにくい位置に人形がいるかもしれない。

 暴れてる人は無視して、救助に専念しよう。

 

「ん……ボタンに新しい項目が追加されてる?」

 

 何十体目かの人形を確認した時、モニターに新しいボタンが登場していた。

 そのボタンは他のボタンより小さく、ただ真っ黒なボタンで、よくわからない。意図がわからないから、触らないようにしているけど……。

 

「何か……あるってこと?」

 

 他の人形にも追加されているし、システムのバグとは思えない。

 ただ、やはりどういう意味のものなのかはわからなかった。

 でもどこか、不気味というか……嫌な予感がする。

 残り時間はかなり短くなっていて、すれ違う受験生の中には絶望の表情を浮かべた者もいる。人形の中に「OUT」の文字が浮かんだまま動かないものがあったから、恐らく減点を踏んだと思われる。

 

「スナッチー、発見した? この建物の上? 了解」

 

 倒壊したビルの内部を歩くのは危険なので、スナッチーに掴んでもらって運んでもらう。極端に重いものは持てないけど、案外スナッチーは力持ちだ。

 ビルの屋上。意外と障害物の無いそこに降り立ち、人形を探す。

 

「……これ、は」

 

 屋上の隅、唯一瓦礫があるところに、それは仰向けで倒れていた。

 

 頭部が、瓦礫で完全に破壊されている。

 

 でも、モニターには「OUT」の字は無く、他の人形と同じように負傷状況の文字が書いてあった。

 頭部の完全な損壊。それだけだ。

 

「これって……いや、でも、もう」

 

 ボタンは複数の選択肢を映し出していた。

 止血や負傷箇所の固定、瓦礫の撤去や心臓マッサージなど。でも、どれも意味があるものとは思えない。

 でも、選択肢があるということは、これには「正解」があるということだ。

 

「ッ──!!」

 

 そして、一分ほど思考し、ようやく理解した。

 あの黒いボタンの意味を。

 

 “トリアージ”という概念がある。

 緊急時、治療対象がどんな状態なのか、優先して治療すべきは誰なのかを識別する、色記号だ。

 上から赤、黄、緑、黒の順で優先順位が高い。

 では、黒の意味は何か。

 

「死亡……」

 

 死亡、あるいは治療できないと判断された場合である。

 目の前の人形は、完全に、死んでいた。

 異形型の個性とかでもなんでも無く、普通の人間を想定された人形だ。頭を潰されたら、助からない。

 

「キッツイなぁ……。でも、これが『現場』か……」

 

 死亡判定を下せ。ということなのだろう。この黒いボタンは。

 流石に医療知識にまだ乏しい私は、赤や黄の正確な判断はできない。でも、黒の判定はできる。こんなにも明確に、この人形は死んでいる。

 私は、少し震える手で、黒いボタンを押す。

 

 ピロン。

 

 モニターが、緑になる。

 それと同時に、試験終了のボイスが響いた。

 

 ポイントは、見れていない。








☆遊甘の個性【ヤミー】通常モード
・ヤミーモンスターの召喚が可能(召喚数は本人の気力が持つまで。リンク、シンクロはより消耗が激しい)
・ヤミーモンスターの攻撃、守備はゼロになり、効果は無効化される(ただし破壊されても遊甘にダメージはいかない)
・ある程度の距離まで離れて自由行動が可能。
・お菓子、糖分を摂取することで消耗が抑えられる。
・魔法罠カード、ヤミーモンスター以外のモンスター使用不可。

総じて偵察やちょっとしたお手伝い向け。省エネ。
消耗すると低血糖や頭痛が起きるので、こまめな甘味チャージが必要。
盾にはなるが戦闘には向かない。
基本的に使っていくのはこっち。
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