IS <インフィニット・ストラトス> ヘカトンケイルの名を持つ者 作:一ノ原曲利
やっぱり前nい書いたものをいまになって見ると「疎いなあ」とか「うわナニコレどん引き」とかそういう未熟な部分が改めてさらけ出される………!!
「で、何をどう弄ったか。懇切丁寧かつ詳細明確に説明してもらえないかしら?」
「はぁ、いいですけどー」
結局、教える羽目になった。
そもそも事の発端は約4ヶ月前。たまたまロシアを訪れていた希空は、ロシアの首都モスクワのIS研究所に(無断で)立ち寄った。そこで偶然、整備途中の第三世代型ISである《
そして、希空はミステリアス・レイディを
しかしそれは結果的に、様子を見に行っていた楯無とその他大勢の研究者及び政府関係者に見つかり、希空は全身全霊をもってしてモスクワのIS研究所から逃走。以来、楯無のIS《
例えば、《
例えば、《
本音や虚ならまだしもIS研究所精鋭の技術者や楯無本人にも、原因解析は不可能だった。希空の手回しによりIS研究所の監視カメラに希空の姿が映ることはなかったが、実際見た楯無とミステリアス・レイディの解析にあたっていたIS研究所の技術者の証言により、主犯を織斑希空とした。
そして月日は流れ、今に至る。
「今の今まではなんとか騙し騙し使って来たけど、やっぱりダメなのよね。もし希空君が直してくれた時にまた馴染ませるにはちょっと負荷が掛かっちゃうから」
「おっと更識さん、弱音発言ですかー?」
「真っ二つになりたい?」
「遠慮しまーす」
不安定ながらもちゃんと型になってる『ラスティー・ネイル』にやや怯えながら、希空は苦笑した。
「じゃとりあえず、ISを完全起動してくれません? 説明ならやりながらの方がいいでしょー更識さん」
「そうね。あと、一応年は同じなんだから『楯無』でいいわよ」
「……じゃ、楯無さんで」
「あらあら、随分お堅いのね〜」
そんな軽口を叩き合いながら、楯無はポンポンと制服を脱ぎ捨てて虚に渡した。下はISスーツでは無くただの下着と分かると、希空は即座に身体の方向を180度変換。
「…何の躊躇いも無いですねー」
「あら、別にこっち向いてくれて構わないわよ? 減るものでも無いし」
「遠慮しますよー、そんな所誰かに見られたら有らぬ疑い掛けられますからねー。飛び入り入学した二人目の男子がまさか生徒会長にストリップを強制したーとか、ね」
「本当にお堅いわねぇ。そういう所はお姉さんそっくり」
「……まぁ楯無さんがいいって言うんでしたら、いくらでも
「んふふ、魅力的な誘いねぇ」
「欲求不満でしたら僕が解消してあげましょうかー? 満足させてあげますよー」
「私は高いわよ?」
「お嬢様」
「会長って呼んでよ、虚ちゃ〜ん」
「はいはい」
楯無はISスーツ姿になると《
「もともとは《
「あら、よく知ってるわね」
「脱走ついでに研究所のデータ、コピらして貰いましたからー」
「………ロシア政府にどやされるわよ? って、もう半分指名手配みたいな扱いだったわ。ご愁傷様」
「え゛ー、そうだったんですかー」
言葉とは裏腹に、とてもショックを受けてるとは思えない表情で、希空はカタカタ笑った。希空は右手にマイクロマニピュレーターのグローブを嵌めると左手を振り、空中投影のディスプレイを複数展開する。
「楯無さんのISには、とある試作プログラムを組み込んでたんです」
「試作……誰の?」
「そりゃー、僕のですよ」
「……希空君が?」
希空の言葉に、虚と楯無は顔を合わせて目を丸くした。何故なら、希空は『整備師』として有名なのだ。ISのプログラミングとなると、ISに関する知識としてはベクトルが多少異なる。
「とある人からの依頼というか、頼まれ事というか、自分で作ればいいのにって言ったんですけど、『きーちゃんがプログラミングしたやつがいい』って言うからー」
「……それは誰からの依頼なのかしら?」
「言ったらロシア政府に恩赦出してくれますー?」
「いいわよー? 別に」
楯無が悪戯っ子みたいな表情を浮かべると、楯無の視点より下にいる希空がおもむろに顔を上げて、クスリと笑った。
「束姉さんだよ」
「束……IS開発者、篠ノ乃束?」
「Yes! 知る人ぞ知る篠ノ乃束姉さんですよー。あはは、歴史の教科書に乗ったの見た時は吹きましたけどねー」
「……そういえばあなたのクラスにも妹さんがいたわね。篠ノ乃箒さんだったかしら」
「1-1マジぱねぇっすよねー、『ISの産みの親の妹』『世界最強の弟にして世界初の男性IS操縦者』『第3世代機操る英国の代表候補生』。みーんな有名人揃いじゃないですかー」
「それに、『世界一のIS整備師』もですか?」
「布仏さん、僕はまだまだですよー。あと僕布仏さんより年下なんで、敬語は遠慮してくださーい」
むず痒い、と唸りながら希空はピコピコ3つのディスプレイのキーボードを軽快なリズムで叩く。ディスプレイに映っているのは《
「……話を戻すわ。希空君は私のISにどんなプログラムを組み込んだの?」
「それ言ったら楯無さんのIS勝手に弄ったこと、免罪にして貰えますー?」
「うーん、内容によるわね。あまり酷いプログラムだったら赦さないかも♪」
音符マーク付きの笑顔で恐ろしいこと仰る。希空はそんな楯無に苦笑しながら、空間投影ディスプレイの1つを掴んで楯無の隣に並んだ。
「まぁ、要はコレです」
「「………?」」
楯無と虚はディスプレイを覗き込む。
ディスプレイには5、6個の白い球体が映っている画面と、量産型ISの打鉄が黒い映像で映っていた。希空がキーボードを操作してエンターキーを押すと、白い球体の方が少し細やかに動きだした。すると、打鉄が徐々に黒のカラーリングからゆっくりと灰色に染まっていき、完全に灰色に染まると近くにあったタイマーが止まった。
31:01:55。
「うーん30秒切らないなぁー。これじゃー実用性も低いけど……前の半分の時間ならいっかー」
希空は後頭部をポリポリ描きながらぼやいた。その傍らで楯無と虚は冷や汗を流していた。
「……会長、これって…」
「……十中八九、私の《
「おー、よくお分かりで」
「当然よ、何せこのISは私が組み上げたんだから。自分のISのナノマシンの構造くらい知ってるわ。………でもこれは………」
「……………」
2人は沈黙した。
普段活発な姿しか見ていない希空からすれば、かなりレアな光景である。だが内容が内容だから致し方無い。楯無は少し引き締めた顔で希空に振り向く。
「…多分私の予想はほとんど合ってるけど……是非とも希空君の口から聞きたいわね。希空君、これは何?」
「何って―――
―――対IS用ウィルスプログラムですよー」
ウィルスプログラム。
少し希空の言葉には語弊があるが、あながち間違ってはいない。希空のウィルスプログラムは楯無の《
いわば、IS専用の『見えないウィルス』である。
「ただナノマシンの信号と運動、そして量によりどれだけの作用を施すのかを調べたかったんですよー。いやー助かった」
「……あなた、トンデモ無いモノを生み出すわね………」
呆れた表情で楯無は深く溜息をついた。
傍らにいる虚も信じられないと言うような目で、ひたすらリプレイされるナノマシンによるウィルスプログラムの模擬進行映像を見ていた。
「よーし、データは出来たから束姉さんに送ってしまおうかー」
軽快なタッチでキーボードを叩くと、ナノマシンウィルスプログラムのデータが纏められたファイルが送信された。これで束の元へ届いただろう。
「あ、そーだ楯無さーん」
「何かしら?」
「楯無さんの妹さん、名前何でしたっけー?」
「……簪よ。更識簪。でもどうして?」
「いいえー、ちょっとバイトでもしようと思いましてねー。後で好きな物とか教えてくれますー?」
「別にいいけど……1つ条件があるわ」
「うげっ」
希空はあからさまに嫌そうな、難色を示した表情を浮かべた。
「んふふ。一方的な情報提供はフェアじゃないわよ? 駆け引きは上手くやらなくちゃね」
「………楯無さんの場合、なんか物凄く荒唐無稽でヴァイオレンスな要求とかして来そうなんですけどー。あ、えっちぃことは別に構わないですけど」
「大丈夫よ、特に難しいことでも無いわ。えっちぃことはまた後でねー♪」
「ひゅー残念」
何気大人でadultな会話ではあるが2人には普通らしい。少しだけ虚の頬が赤かったのは、気のせいではなかったりする。
「じゃー何がお望みですかー?」
「んー……そうねぇ…」
と、楯無はちらりと虚にアイコンタクトを送る。それに気付いた虚は「あっ」と小さな声を漏らして楯無の言葉を遮ろうとしたが、
「虚ちゃんが『ヘカトンケイル』の実力を見たいんだってー」
「ちょ、会長!?」
間に合わなかった。
虚が楯無に着いてきたのも本来は世界最高峰の整備技術を持ち『ヘカトンケイル』と称される希空の腕を見てみたかったからだ。だが流石にこんなあからさまに頼まなくてもいいのでは、と心臓バクバクものの緊張度だった。
しかも、
「うーん、いーですよー」
普通に軽く了承した。よし、と楯無も満足そうに頷きISを整備用待機状態にしてISから降りる。
「(えっ、ええええっ!? なんかとても軽過ぎません!?)」
「(いいじゃない。虚ちゃんもたまには『押し』が必要よ?)」
「(そんなもの要りません!!)」
「じゃ、楯無さんのISの調整でいーですか? 一応ナノマシンウィルスプログラムを抜いたので多少調節も要りますしー」
「まさに一石二鳥じゃない。よかったわね虚ちゃん♪」
「いえ、そういう問題ではなくてですね……!」
「始めるんで、ホラ、少し離れて離れてー」
「あっ、どうもすみません」
後ろからぐいぐい肩を引かれて下がる虚。だがそこでおや? と首を傾げた。
希空と楯無は目の前にいる。
では
恐る恐る、虚は引かれた右肩を見る。そこには、浮遊した機械の左手が。
「!?」
「でわでわ本日は特別サービス、織斑希空の整備技術をとくとご覧あれ」
やたら芝居掛かった台詞を吐いた希空は両手を指揮者のように大きく振るう。すると、空中から義手が次々に出現した。部分的には手首から先。楯無と虚には明確な数がわからないが、実際の数は右手50機に左手50機。そしてそれらは倍増ししたディスプレイのキーボードを高速で叩いていたり、ISの修復や分解に動いていた。スパナにドライバー、ピンバイスにペンチ。瞬く間に《
目の前で繰り広げられている風景に楯無は戦慄する。
「(『ヘカトンケイル』なんて大層な名前つけるからある程度の予想はしてたけど…まさかここまでなんて………!!)」
あちこちにある義手が、絶え間無く動いている。もちろん希空自身も2つのディスプレイを見比べて高速で手を動かす。軽く視界を覆うくらいの浮遊義手の全ては、希空1人が脳で指示を送って動かしているものである。
本来、ISの開発や整備は1人でやるなんて天才紛いなことはしない。量子変換機能調節科、コアネットワーク構築接続科、シールドエネルギー管理科、
だが希空は違う。
希空が最高峰の整備技術を有していると持て囃されているのは、ISに関する専門知識を総て理解し、ものにしているということだ。言わば、希空自身が1つのIS開発チーム。
「楯無さんのISもナカナカいーもんじゃないですかー。プログラム組み込み前とあんま大差無いですよー。これなら少し動かせば全快ですねー」
千の知識を有し、百の手を巧みに操るその姿こそ、
「………『ヘカトンケイル』、って訳ね……」
普通なら半日は掛かるであろう作業は、ものの15分で終わった。
これが、織斑希空という人物なのである。