IS <インフィニット・ストラトス> ヘカトンケイルの名を持つ者   作:一ノ原曲利

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第12話 一夏vsセシリア/デビュー戦(前半)

 

 

 ――一夏vsセシリア。

 ―クラス代表決定戦まであと0日。

 

 なんて、前回に引き続き変わらない前振り表記は止めにしよう。

 最早『0日!? 日曜日の分は何処に行ったんだ!?』なんて空気を読まない突っ込みを入れる人間はこの場において皆無だった!

 そんなことを言ってはこの物語を読めないぞ?

 ぶっちゃけると、本日月曜日こそが決戦当日なのである。

 

「――なあ、箒」

「なんだ、一夏」

「気のせいかもしれないんだが」

「そうか。気のせいだろう」

「ぷっ…ッ!! ぷぷッ……!!」

 

 一夏、箒、希空の3人は第三アリーナ・Aピットにいた。真面目な顔の2人の後ろにいる希空は笑い声をなんとか堪えるも、目尻にはキラリと輝く涙が浮かび、腹を抱えている。

 

「ISのことを教えてくれる話はどうなったんだ?」

「…………」

「………プッ」

「目 を そ ら す な」

「プッ―――――」

 

 限界、限界だった。

 細切れして噴出される小さな笑い声は堰を切ったようにリミッター解除、希空の笑い声は頂点に達した。

 

「ぷふふふーっ!! あーっはっはっはっはっはー!! っはははひひふひひひひー!!!!!!」

「笑うな希空兄!! そもそも希空兄こそ何で教えてくれなかったんだよ!?」

「はっはははひー!! おっかしーっての何のってパイロットパイロット!! っはははははっゲホォッ!?」

「噎せるほど笑うなぁー!!」

「パイロットとは何だ?」

「ゲホゲホッ…昔の歯ブラシか何かのCMだよー」

 

 気管では無い方に空気が入ってしまったのか、噎せる痛みに喉を抑える希空。唾液を呑み込み落ち着けると、また込み上げてくる哄笑をなんとか抑えて涙を拭う。

 

「あ〜面白、流石は我が弟!!」

「嬉しくねぇ!!」

「まぁぶっちゃけ一夏の疑問に答えるとするならー? 箒ちゃんの方がよぉーく知ってるかなー?」

「箒が?」

「うっ………」

 

… ヴァーン!! と効果音が付きそうなジョジョ立ちしながら指差す希空に箒は苦い表情で視線を遥か彼方へ飛ばす。無論、胡散臭そうな表情の一夏とは正反対の方向へ。

 

「特訓の初日、箒ちゃんがさ―――」

 

 

 

 

―『希空』―

―『ん? なぁにー?』―

―『そ、そのだな…明日からISのこと……教えてくれないか?』―

―『イッエーイ一夏と親密レッスンの為だねー!!』―

―『バッ、馬鹿!! あまり大声出すな!!』―

―『スワンスワン。可愛い幼なじみのお願いだ、その依頼承ったナリー』―

―『ほ、本当か!? 助かる!!』―

―『そして将来の御義妹さんのお願――』―

―『わあああああっ!?』―

―『ハイハイすとっぷすとっぷねー。でも、いつ教えればいいー? 時間無いでしょー』―

―『……………あ、』―

 

 

 

 

「とぉーいう訳で、保留保留の1週間続きが完成したという訳ですなー」

 

 箒は一夏の剣道の特訓で共に時間を割くのは必然だ。当然、剣道なんかやった後には疲労感が身体中に溜まり、とても勉強へ着手出来る状態ではない。唯一授業が無かった土日も、希空が()()()助言しなかったせいで箒はISのことなんか毛頭無く、2日とも1日中一夏と剣道というある意味至福の休日を過ごしていた。

 

「………箒ぃ」

「し、仕方ないだろう。お前のISも無かったのだから」

「まあ、そうだけど――じゃない! そもそもさっきから気になったんだけど何でワザワザ自分からやるって言い出したんだ? 希空兄なら暇じゃないか」

「そっ、それはだなっ……」

 

 織斑一夏、超鈍感粒子散布中。

 もうツインドライブ稼働中なんじゃないかなー? と希空は相変わらずの一夏に呆れた。真っ赤になっている箒が可哀想ことこの上無い。しかし原因はISのことを失念していた一夏と箒に加えて、面白半分で傍観していた希空にもある訳で、三者三様三分配に責任がある。

 

「別に無闇にISの知識ブチ込まなくて良かったんじゃないのー? 基本ISも知識以前に本人の身体能力も影響するから、1週間掛けてお得意の剣道に力を入れたのは正確だったと思うよー?」

「…だけど、流石に知識ゼロってのは……」

「ハイここで質問、一夏に一度に二つの物事を難なくそつなく解決出来るでしょーか? 回答者は箒ちゃん」

「無理だな」

「即答かよオイ!?」

「ハイでは正解は本人こと一夏よりどーぞ」

「……せ、正解だよ畜生め……!!」

 

 屈辱的だった。

 だが自分のことは自分でわかっているつもりだ。もちろん自分もそこまで出来た人間ではないことは、一夏自身も自負している。しかし希空が言っていることはあながち間違ってはいない。というか、この場で誰よりもISに詳しい希空が言っていることなのだから、よほど悪意ある嘘では無い限りは真実に近い。

 すると、

 

「お、織斑くん織斑くん織斑くんっ!」

「はいはーい?」

「あっ、ち、違います弟さんの方ですっ」

 

 三回呼びながら駆け足で山田先生がやってきた。覚束無いというか、危なっかしい足取りで希空の悪ふざけに必死に対応している。3人の元へ到着すると、クリップボードを持った山田先生は膝に手をついて肩を大きく上下。

 ………あまり体力無い方なのだろうか。

 

 

「なぁーんだ僕じゃないんですかー」

「すっ、すみません…」

「じゃー今度は下の名前でお願いしますねー? 『希空くーん』って」

「えっ…えええっ!?」

 

 ポンと肩を叩いて優しく言う希空に山田先生は赤面した。比喩表現を用いるならば、沸騰したヤカン。

 

「なんなら、僕も下の名前で呼びましょーか? 『真耶先生』ー?」

「ダッ、ダメですよ!?……私達は先生と生徒の関係なんですからっ!! し、下の名前で呼び合うなんてっ……!!」

「いーじゃないですかー。お互い仲がイイってことでー。ね? 真耶先生ー」

「はわわわわぁっ!?」

 

 ニコニコ笑いながら山田先生に詰め寄る希空。そんな光景を見て、『ああまたか』と一夏と箒は溜息をついた。

 今の希空は珍しく無自覚にして合理的。

 希空の思考回路からすれば千冬命名の『織斑兄』『織斑弟』より普通に下の名前で呼んだ方が、呼ぶ側が呼びやすいと考えたのだろう。いちいち最後までどちらを読んでいるかわからないし、その上言う文字数も少ない。

 極めて合理的だ。

 しかしその合理性は山田先生にはキツい、というか別の意味で捉えてしまっている。

 この()()は昔からあった。

 希空は希空で考えて言っているのだが、相手や他人からすれば大胆ことこの上無い。ドイツ人に日本人のニュアンスでお礼を言うと結婚の申し込みと思われる、とはよくいったものだが希空のはまさにそれだ。下手すれば告白の台詞だと捉えてしまうこともあった。無論そんなことを希空が気付く筈も無く、照れた様子を見ても『何でー?』的な思考しか思い浮かばない。

 希空も、立派に織斑の血を継ぐ者なのである。

 

「別にいーじゃないですかー真耶せんせー。あ、それとも『真耶』って呼ばれたいとかですかー?」

「いっ、いやっだから私達がそんな間柄になるなんてっ……教育上の問題ですっ!!」

「………? 教育って…ドーユーコトですか? 真耶先生?」

「だっだだだだからッ名前はあぁッ!!」

「いい加減にしろ」

「ぎゃぴっ!?」

「きゃっ!?」

 

 希空の脳天に出席簿の角が突き刺さった。回転しながら勢いを増した出席簿の殺傷能力は凄まじく、希空の頭をミックスさせるには十分な威力だ。

 

「目上の人間には敬意を払え、馬鹿者」

「うぐおぉぉ……!」

「き、希空くん大丈夫ですかっ!?」

「大丈夫、ですよー真耶さーん」

「山田先生と呼べ」

 

 ―バゴッ!!

 再び希空の頭に出席簿が振り落とされ、希空は目をぐるぐるさせて倒れた。寸でのところで山田先生が支えたはいいが、顔面がその豊満な果実に埋もれているせいで、窒息という新たな危機を迎えていた。

 

「きっ、希空くん!? ってきゃあっ!? そ、そんなとこに顔埋めないで下さいっ!!」

「……××××…」

「山田先生!! 希空兄が窒息死しますよっ!!」

「えええええぇ!? どっどうしましょう!?」

「とりあえず希空兄の体を起こして…」

 

 ――この後、一夏と山田先生の2人掛かりで希空はなんとか一命をとりとめ、昔と変わらない性格の希空に箒と千冬は溜息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そ、それでですねっ! 来ました! 織斑くんの専用IS!」

 

 一段落着いて山田先生は深く数回深呼吸するなり、いつもより少しハキハキした口調で告げた。

 その言葉に、一夏は思わず首を傾げる。――え? と。

 

「織斑弟、すぐに準備をしろ。アリーナを使用できる時間は限られているからな。ぶっつけ本番でものにしろ」

「この程度の障害、男子たるもの軽く乗り越えてみせろ。一夏」

「お膳立てというか何というか、バトる直前まで機体のサポートはするよー」

「え? え? なん……」

「「「早く!」」」

「GO――!!」

 

 ―ゴゴンッ。

 希空がDJのようにピストルを模した両手の人差し指をピット搬入口へ向けると、重々しい音を立てて開いた。斜めに噛み合うタイプの防壁扉を潜ると、目の前に鎮座する『モノ』に一夏は目を丸くした。

 ――そこに、『白』が、いた。

 白。

 真っ白。

 飾り気の無い、無の色。

 

「これが……」

「はい! 織斑くんの専用IS《白式》です!」

「…まさか無印ポケモンの最初の街とはー」

 

 それはマサラタウンである。

 と、いつものようにボケをかます希空だったが、包帯の無い左目は真剣な眼差しで《白式》を見つめている。体は既に動き、右手にマイクロマニピュレーターのグローブを嵌めると左手を振って空中投影のディスプレイを複数展開。目にも止まらぬ速さでタイピングしている。

 

「体を動かせ。すぐに装着しろ。時間が無いからフォーマットとフィッティングは実践でやれ。出来なければ負けるだけだ。わかったな」

「簡易接続リンク完了…と。ほら一夏ー、早く乗んなよー」

「背中を預けるように、ああそうだ。座る感じでいい。後はシステムが最適化をする」

「もう予定が結構押してるから、しばらくは初期設定で頑張ってねー」

 

 どこか不安そうな、違和感を感じているような表情のまま、一夏は《白式》に体を任せた。自動(オート)で体に合わせて装甲を閉じる。視界が今まで感じたことの無いような、クリアーな感覚が広がった。

 

「あ」

「どう? ()()()()()()景色はー?」

「あぁ…これは凄いな……おっと」

 

 ―――戦闘待機状態のISを感知。

 操縦者セシリア・オルコット。

 ISネーム《ブルー・ティアーズ》。

 戦闘タイプ中距離射撃型。

 特殊装備有り―――

 

「ISのハイパーセンサーは問題無く動いているな。一夏、気分は悪くないか?」

「大丈夫、千冬姉、希空兄。いける」

「そうか」

「……あれー?」

 

 するとタイピングしていた希空がディスプレイを見て首を傾げていた。

 

「どうした?」

「あ…いんや、特に問題無いよー千冬姉さん。ハイパーセンサーは通常稼働。量子変換機能エラー無し。コアネットワーク接続不良無し。シールドエネルギー100%。PIC調整中…うん、オッケーだよー!」

 

 希空が最後にタタンとキーを打って最終調整は終わった。さっきとは逆に左手を振って空中投影ディスプレイを消滅させる。

 するとさっきから黙っていた箒の両肩をポンと叩き、後ろからぐいぐい押して行った。

 

「箒」

「な、なんだ?」

「行ってくる」

「あ……ああ。勝ってこい」

 

 一夏は箒の言葉に首肯で応え、ピット・ゲートに進んだ。一夏の視界の中で《白式》の最適化処理(フィッティング)の前段階の初期化《フォーマット》が行われている。するとゲートが開放される前に、ハイパーセンサーから通信が入った。

個人秘匿通信(プライベートチャンネル)からだ。

 

『やっほー一夏』

「希空兄!?」

 

 突如テレパシーのように脳に響く兄の声に一夏は思わず声を上げて驚いた。

 

『一夏、頭で会話して。ワザワザ口で言わんでも会話出来るよー』

『………こうか?』

『そーそー。よくできまちたねー後で飴ちゃん奢ったげるー』

「要るか!!」

『そ』

 

 怒り余りに一夏は思わず声に出して怒鳴ってしまった。ハッと失態に気がついて後方にいる千冬達を盗み見るが、気付かれてはいないようだ。

 

『一夏一夏ー』

『……何だ?』

『ISの初のデビュー戦だねー!! ガンバー! 落ち着いた?』

『あぁ……っつーか希空兄と話してるとすげぇ脱力感が来るぜ……』

『言い方が癪に障るけどー……いいや、ゲート開くまでまだ時間あるね。今の内にセシリアさんの対策教えとくよー』

『お前、セシリアにはまだ警戒心解いてねぇんだな……』

 

 希空が他人の名前を言うのには警戒心のレベルが挙げられる。愛称やニックネーム、ちゃん付けで呼ぶ場合は『心からのお友達だよん♪』という暗示。同年代の人に対するさん付けの時は、大抵『まだ信用してないよー?』という暗示が込められている。

 年上の場合はほとんど例外無くさん付けである。つまり、セシリアは二番目の事例が挙げられるのだ。

 

『うん。だってまだ打ち解けて無いしー、打ち解ける目処も立って無いしー』

『希空兄にしては珍しいな……で、対策ってなんだ?』

『あくまでも前にイギリスに行った時、その2号機として作ってた第3世代IS《サイレント・ゼフィルス》を整備してたから、それの特徴なんだけどー―――』

 

 

 

 

 

「あら、逃げずに来ましたのね」

 

 ゲートが完全に開き、希空のレクチャーを終えた一夏がアリーナへ舞い上がると、先客がいた。

 イギリスの第3世代IS《ブルー・ティアーズ》を駆るセシリア・オルコット。

 特徴的なフィン・アーマーが四枚、主力武装であるスコープ付きの巨大な特殊レーザーライフル『スターライトmkⅢ』を構え、殊勝な笑みを浮かべている。

 

「最後のチャンスをあげますわ」

「チャンスって?」

「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理。ですから、ボロボロの惨めな姿を晒したくなければ、今ここで謝るというのなら、許してあげない事も無くってよ」

 

 ―『これはセシリアさん自身に対するアプローチていうか、なんだけどねー』―

 

 一夏は先ほど言われた希空のアドバイスを、頭の中で反芻する。そして口を開いた。

 

「はっ。冗談言うなよセシリア。俺のデビュー戦だぜ? 白星確定の戦いをむざむざ辞退すると思うか?」

「なッ―――」

 

 ―『考え方は理論的だけど、基本単純だから適当にからかえば引っ掛かるよー? 『ぶ・ち・こ・ろ・し・か・く・て・い・ね?』的な感じでさー』―

―『……それって逆効果じゃないか?』―

―『狙撃手(スナイパー)は基本的に冷静な思考と不動の意志の2つが柱だからねー。そっから崩してけばモーマンタイ。ただ過ぎた悪口はNGー』―

 

 希空が言ったことはあながち間違いではなかった。一夏の挑戦的な発言にセシリアは顔を真っ赤にさせていた。

ハイパーセンサーだからこそわかる変化だ。

 

「言ってくれますわね…!! その減らず口……ッ」

 

 セシリアのIS《ブルー・ティアーズ》の手に持つ2mを越えるライフルが一夏に照準を合わせた。すると一夏のISのハイパーセンサーが警告を発する。

 

 ―――警戒《WARNING》! 敵IS操縦者の左目が射撃モードに移行。

 トリガー確認。

 初弾エネルギー装填―――

 

「潰して差し上げますわ!!」

 

 来る。運命の第一弾が。

 勝敗を分かつ、戦闘開始の合図が。

 一夏はセシリアの視線に、そしてレーザーライフルの銃口にひたすら集中していた。

 

 ―キュインッ!

 

 レーザー発射の独特な音。それと同時に走る閃光。

 一夏は()()()()()()()()反応し、レーザーを避けた。

 

 ―――バリアー着弾・ダメージ9。

 シールドエネルギー残量・591。

 実体ダメージレベル・低―

 

「ってあっぶねぇ!! やっぱり行き当たりばったりで出来る芸当じゃねぇな!」

 

 ―『射撃型の相手だったらまず見るのは銃口と視線。それのみに集中してれば難なく避けられるよー。レーザーが着弾する0.4秒を、無駄にしちゃあダメダヨー』―

 

 希空の間延びした声が脳裏に過る。口で言うのは簡単だが、実際問題それをすぐ実行するのは難しい。しかも一夏はまだISを扱い慣れていない。避けられただけでも幸運と言うべきだろう。

 

「なっ!? かすっただけですって!?」

 

 予想外の展開にセシリアは目を丸くした。代表候補生になり、《ブルー・ティアーズ》を手にしてからもう長い年月が経つ。セシリアの十八番といってもいい射撃を初めから避けられるなんて、信じられなかった。ビギナーズラックにも程がある。

 

 ―『モチベーションは重要。お得意の射撃を初弾から外されたらそれだけでも動揺するよ、ばっくんばっくんてねー』―

 

 まさに希空が言う通りだった。初弾を躱されて唇を噛むセシリア。心に大きな波紋が広がりつつも、それを打ち消すように首を振った。

 

「くっ、ならば踊りなさい!! わたくし、セシリア・オルコットと《ブルー・ティアーズ》の奏でる円舞曲(ワルツ)で!!」

「上等ォ!!」

 

 そう言った瞬間に一夏は即座に動く。すると数秒前までいた場所をレーザーが通過した。同時に、《ブルー・ティアーズ》から4つの小さな機械が飛び出す。

 

「(アレが―――希空が言ってたBT兵器ってやつか!)」

 

 ―『BT(ビット)型の武器でね、全方位オールレンジ攻撃が出来ちゃうんだなコリガ。実験機体だから機体名も《ブルー・ティアーズ》っていうんだろーね。僕が整備したヤツは結構万能タイプだったけど……1号機はそれより性能高く無いだろうから、ビームばんばん打つだけじゃないかなぁー』―

―『希空兄が整備したヤツって、どんな機能がついてたんだ?』―

―『簡潔に述べれば、攻守両面・万能対応・爆弾ヤベェ』―

―『最後の何だよ!?』―

―『とにかくヤバいんだってー。まぁそこまではないだろうから、弱点探しは一夏本人でやんなねー。今のキミには力があるわけだし』―

―『おう、わかった』―

 

「(何が『性能は高く無いだろうから』だよ!? ビームだけでも十分脅威じゃねぇか!!)」

 

 一夏は直径200mのアリーナを縦横無尽に駆け巡る。4基のBT兵器が一夏の真上を追尾し、ビームの雨を降らせた。

躱してはいるもののやはり数発の被弾は免れず、ジリ貧にシールドエネルギーを消費していく。

 

「くそっ!! こっちも何か武器を……!!」

 

 と、ビームを避けつつも器用にメニューを立ち上げようと手を動かす。しかしその手は寸前でピタリと止まった。

 

―『あと一夏、最後に忠告っちゅーか何て言うかなんだけどさー……』―

―『どうした?』―

―『うん……武器を出すのは結構後にしなねー?』―

―『………は? 何でまた?』―

―『何と無くだよ何と無く。多分予想通りだろうからさー』―

―『?』―

 

「(何予想してっかは知らないけど、現状を打破するには必要なんだ!!)《白式》! 装備は!?」

 

 一夏が問うとすぐさま現在展開可能な装備のメニューが出た。

 

 ―『近接ブレード』×1

 

「んなっ!?(一個だけ!? しかもブレードって……!?)」

 

 だが素手で勝てる訳が無い。0%の勝率より1%の勝率の方が遥かにマシである。一夏は近接ブレード<名称未設定>を呼び出し(コール)、展開した。高周波の音と共に量子化されていた約1.6mの片刃のブレードが、一夏の手に収まった。

 

「中距離射撃型のわたくしに、近距離格闘装備で挑もうなんて…笑止ですわ!」

「やってやるさ!!」

 

 BT兵器付き中距離射撃型ISvs近接ブレード付きタイプ不明ISの激戦の火蓋が、切って落とされた。

 

 

 

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