IS <インフィニット・ストラトス> ヘカトンケイルの名を持つ者 作:一ノ原曲利
執筆当初は1話があまりにも短すぎて「こりゃイカン」と思いまして……
本当はもうちょっと断片的なものを書きたかったんですけど…
第一回モンド・グロッソ。
ISが次第に世界に広まっていき、その世界的イベントの始まりとも言える世界大会。21の国と地域が参加して行われ、その中で僕の姉、織斑千冬は日本代表に抜擢されそして、
「千冬姉さーん!」
「!」
最後に千冬姉さんが操る『暮桜』による刀『雪片』が繰り出した一閃によって相手のシールドエネルギーを0に削った。
荒く息を吐きながら観客席で手を振って叫んでいる僕に視線を向けると小さく屈託無い笑みを浮かべ、千冬姉さんは誇らしげに『雪片』を掲げた。
途端、それに反応するかのように競技場から歓声が巻き起こる。
たまらず耳を塞いだ僕は満面の笑みを浮かべながら観客席を降り、千冬姉さんの姿を最後に確認して通路に逃げ込んだ。
競技場の構造上か、暗がりのある通路は歓声から少し遠退いていて安心した僕は一息ついた。
「きーぃーちゃんっ!」
「わっ」
突然後ろから抱き締められた。
なんとなく、と言うか声と行動で誰だかわかった。
18歳の女性…と語るには些か雰囲気が幼子に思える。いわゆる18歳児。
背中辺りまで伸びた髪。研究者あるまじき白衣ではなくどこぞの童話に出てくる青色ワンピース。頭には不思議と機能性のありそうな機械らしいウサミミカチューシャ。
「束姉さん! 千冬姉さん勝ったよ!!」
「うん勝ったね~! ちーちゃん優勝したよ~私が作った『暮桜』とちーちゃんには不可能なんてないのだー!!」
「世界一だよ世界一! 僕の姉さんは世界一なんだー!!」
「うん! ちーちゃんは世界一!!」
「「やったー!!」」
あまりの嬉しさに僕らは手を繋いでぐるぐる回りに回った。
束さんはやはり自分の一番の自信作だし一番の親友だし、そもそもISを作りこの世に広めた張本人ではあるけれど、やっぱり実際千冬姉さんが優勝したことは嬉しくて仕方無かった。
「束姉さん! 僕決めたよー!」
「何をー?」
「ISって女性にしか扱えないんだよね。だったら世界一のISを使う姉の整備師になるー! そして目指すは二連覇!」
「おぉー! だったら私が直々にISの知識を伝授しよう!」
「えぇいいの!? ありがとうー!!」
また舞い上がった僕らはぐるぐる回った。
こうして僕、
「(……これまた随分と懐かしい夢を見たなぁー)」
目を覚ました僕は寝床にしていた草原から起き上がった。東京郊外に位置するここはまだ自然が残っていて都市部とは随分雰囲気が異なる。
朝露に濡れた木々。小鳥の囀り。
風に揺れた草花のざわめき。
昨晩日本に到着して東京についた(と思った)のが夜中の2時辺り。ならば4時間位は寝られたハズである。
「(夢を見た)」
夢を見た。そう、夢を見た。夢を見てきた。
感触からして
僕は過去。始まりの、シアワセの記憶。
ならば
「(さて、と)」
流石に人気の無い所だからかIS関係の捜索部隊とか、中国からの人外集団やら蛇さんやらからの追っ手は無し。
伸びをして左目をぱちくりさせて、漸く覚醒した。
「(一夏とか箒ちゃんとか、驚くかなー)」
そりゃあもう、色々な意味で。
感覚の無い左腕と視界の無い右目。空いた右手で触れば包帯越しに無機質な感触。
右目を起動させれば視界がクリアになり全方位360°の視界が完成。
滞り無く迎えた朝。
車輪付きの大型キャリーバックを転がしながら、僕は服についた草を払いながら山を降りた。
行き先は、IS学園。
「………酷い顔だな」
何だか目覚めの良くない朝だったのは分かる。
鏡に映る自分のげっそりした顔を見て千冬は思った。まぁ今日から女性しかいないIS学園に弟である 一夏が入学するのだ。心配でない訳が無い。
弟と言えば。
「(……アイツは今一体何処にいるんだ……?)」
お調子者の一夏と仲良く遊んでいたもう1人の弟の姿を思い出しながら千冬は洗面所で顔を洗う。
最後に見たのは、あのにっくきウサ耳カチューシャの幼なじみに連れ去られながら笑顔で地平線の彼方に消えて行った時。
あの光景が目に浮かぶ度に猛烈にウサギを殴りたくなるのは致し方無いことだ。
なんせあの幼なじみといるのだ、日本でIS学園に勤務している間にも、世界各地からの噂はかねがね聞いている。
物騒な噂話こそあれど深刻…と言うにはほど遠い。だがどれも頭痛を起こしそうな噂ばかりではある。
乱れた髪をブラッシングしていると洗面所の鏡の前に置かれた写真立てが視界の端に映る。
篠ノ之道場で胴着姿の一夏、箒が先陣切ってピースサイン。その後ろでは自分が少し緊張したような無愛想な顔で突っ立っている。
その、一夏達と千冬の丁度間くらい。
人懐っこい、気の抜けたようなへにゃりとした笑顔を浮かべて一夏と箒の肩を抱く少年。
「……希空…」
一夏の1つ上の兄であり、千冬の弟。常時仏頂面な自分とは正反対に常時気の抜けた顔の弟。足して2で割ったら丁度いい塩梅になるのでは無いかと……いや、とてもカオスで不愉快な化学変化を引き起こしそうだから止めておこう。
そんなことを考えながら、寝間着を脱いでワイシャツに着替えていると、
―コンコン
「………?」
ノック音が聞こえた。自室の玄関からだ。
こんな朝早くから誰だ、と寝惚け半分憤り半分で玄関に向かい、鍵を開ける。
「…誰だ、こんな朝早くから……」
「やっほー姉さん。ひっさしーぶりー」
「………」
バタン。
勢いよく閉めた。
物凄く勢いよく閉めた。
「(いや待て待て待て、ここは確かIS学園のしかも教師寮。セキュリティは万全上IDを持ってない者は入れない仕組みになっているハズだ。だからこんな朝早くに希空が私の部屋を訪れるなんてことは無いんだ。そうだ、きっと希空に似た先生に違いない。あぁきっとそうだそうなんだというか先月は中国辺りで目撃情報があった筈だろうまさか全世界で束の次に国際指名手配されている希空がこんなところにいる訳がない)」
吸って吸って吐いて大きく深呼吸。
寝汗とは違う汗を拭い、妙に煩い心臓を落ち着けてさあもう一度ドアを開く。
「誰だ、こんな朝早くから」
「やっほー姉さん。ひっさしーぶりー」
「…………」
「あれ? 無反応? 僕だよ、姉さんの愛しい愛しい弟君である織斑希空君その人だよー」
「…………」
目の前に突き付けられた現実は、千冬にはキツかった。
そんなことお構い無しに、希空はゴツいキャリーバッグをゴロゴロと引き摺り回しながら(しかも土足で)屈託無い笑みを浮かべて部屋に入る。
「うっわぁー結構部屋整理なってないねー。今度やってあげようか?」
「…………」
「Oh……よくよく見れば姉さんのYシャツ姿を見るのは久しぶりダァー。そして白いシャツから覗く生足……!! やはり裸Yシャツに生足が最強という僕と束姉さんの見解は正しかったなー。あ、千冬姉さんそのままにしててね写メ撮るから」
「出て行けェ!!」
「そげぶっ」
思わず赤面した千冬は枕を希空の顔面にぶち当てて部屋から追い出した。
入学式の朝早々、心配事山積みな千冬であった。
いくらか加筆
物語にちょいちょい関わる部分と希空の変態度を増やしましたwww
執筆当初はここまで希空君も変態ではなく割とマジメキャラでした。どうしてこうなった………OrL