IS <インフィニット・ストラトス> ヘカトンケイルの名を持つ者   作:一ノ原曲利

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自宅が光回線にシフトするのに時間がかかってネットにINできませんでした
えーっと
最近いろいろありました
精神的にも参っててPCに触れるどころかTVにも手を付けなくなるほど重傷でした
いっそ旅に出てみようかと思ったりもしましたが、こうしてなんとか家にいさせて頂いています
まぁ…19年間抱いてきた価値観の全放棄ですからね…頭をすっからかんにでもしないかぎり出来ませんよ、普通は
なんとか、これからも頑張ろうと思いますので改めてよろしくお願いします

あと、再録ですが出来れば感想もよろしくお願いします


第22話(裏側) 一夏→希空/バトンタッチ

 

 ―これは全身装甲(フル・スキン)のISの砲撃がピットを破壊する数分前のこと。

 

「真耶せんせー、避難進んでます?」

「現在隔壁の降りてない通路を中心に……62%完了しています! ただ……」

「まだ、アリーナの遮断シールドで完全に外には出られて無い、かー」

「はい………」

 

 希空はディスプレイに写し出されたアリーナの見取り図を見て唸った。避難こそ完了しているが、やはり未だに健在中の遮断シールドのせいでアリーナの()()()出られないのだ。

 つまり、先ほど希空が言ったように侵入も脱出も不可。

 ただ、希空からすればアリーナから出ない方がまだ安全だと思っている。

 

「(確かに無人機の戦力は規格外だけど、アリーナって割とヤワには出来てないんだよねー、一般の施設と比べれば)」

 

 建築学を習っているなら目から鱗ものの構造なのがこのIS学園の施設なのだ。

 災害から近年問題となっているテロに対しても生徒達の命の保証にはなっている上、内部の柱の配置や機器の設置にもかなり考えられている。

 が、それでも。

 

「(密閉された空間って慣れもあったもんじゃないからなー。僕の放送で一時的な緩和は出来たけど……)」

 

 この世に絶対など無い。ゆえに困惑し、心配し、動揺し、恐怖する。

 それは人間誰もが抱く感情だ。

 

「(…ふむ、向こうの進行状況は順調かなー?)」

 

 希空は休まずタイピングを進めながら左手でテレフォンスタイルを取る。

 左耳に押し当てた親指から流れる会話を聞いて、希空は小指をマイクに見立てて言った。

 

『なぁ、鈴、あいつの動きなんつうか………機械じみていないか?』

『何言ってんのよ。ISは機械じゃない』

『そういうんじゃなくてだな…あれって………』

「本当に人が乗ってんのか? でしょー?」

『『!?』』

 

 連中の驚愕した顔を思い浮かべ、希空は口元に弧を描いた。気になる話題でもあったこともあり、希空は唐突に、何の前触れも無く割り込んだ。

 

「ハロハロ一夏、リンリン。少し余裕出来たから回線傍受しちゃったー」

『そっちはどうなんだ?』

「半々。一応絶対的安全は保証出来ないけど扉のロックを解除して避難してるところはしてる。遮断シールドの解除ももう少しだろうから、そしたら教師陣を突入させられるよー」

『…オーケイ、流石は俺の兄だ』

「えへへー、それほどでもー」

 

 希空は義手の1つで照れ隠しに頭を掻いた。

 

『何ノロケてんのよ』

「リンリンに褒められたらもっと嬉しいけどねー」

『ッ!?』

 

 ―ベシンッ

 

 「作業に集中しろ」と千冬に脳天を引っ叩かれた希空は本気で生身の千冬に個人間秘匿通信(プライベート・チャネル)を読まれたのかと驚愕した。

 

「(―うん?)」

 

 ふと総合管制室内で違和感を感じた。何か…誰か足りないような。

 だが、それがまだ希空には把握し切れなかった。取り敢えず、話を戻す。

 

「で、さっきの一夏の推測だけど十中八九合ってるよ」

『……マジかよ…』

『ちょっとちょっと、アタシを仲間外れにしないでよ』

『ああ悪い。実はさ―――――あのIS、無人機なんじゃないかって思ってさ』

『は? 人が乗らなきゃISは動かな――』

 

 会話に参加しつつ、作業中のディスプレイとは違うディスプレイを動かす。

 アリーナの見取り図に点が浮かび上がったソレは、アリーナ内部で避難している生徒達の現在地だ。

 

『そういえばアレ、さっきからアタシ達が会話してるときってあんまり攻撃してこないわね。まるで興味があるみたいに聞いてるような………』

 

 ――どこだ、今どこに誰がいて――

 希空は生身の左眼でディスプレイに映る文字の羅列を読み込む。次第に特定される生徒達。その中に―――

 

「君達が会話をしている時は動かない、もしくは砲撃を止めている。仮にあのISが独立のAIのようなもので動いているなら、ごくたまにAIには学習傾向があるものもあるから、君達の会話から学んでいるのかもしれないねー」

 

 ―――見つけた! って嘘ォ!?

 

 1人ツッコミした希空は慌てて椅子を180°回れ右。突然の挙動に驚いた千冬、山田先生、セシリア、オペレーター、そして。

 ……箒ちゃんがいない。

 

『……そんなこと有り得るの? そんな、ISの常識を根本から覆すようなことが………』

「事実は小説より奇なり、この世に有り得ないことなんてない」

 

 其の言葉を皮切りに希空はガタンッ! と音をたてて椅子から飛び降りた。

 

「織斑兄!? どこにいく!?」

「希空くんっ!?」

「お待ち下さいまし!?」

 

 ―――やっぱり、1人足りない。

 それが寂しく、悲しく、背筋に液体窒素を流し込まれたような寒気が全身を支配する。

 後悔した。

 失念していた。

 何故右眼に埋められた『天目一箇(あめのまひとつ)』があって、何故退室した人間の感知すらままならなかったのか。しかも最悪なことに、先ほど希空の作業によって大半の隔壁が上がってしまっている。

 

「(何の為にっ…この眼を得たんだっ…!!)」

『どうした?』

「………いや、なんでも無いよー」

 

 個人間秘匿通信(プライベート・チャネル)から一夏の心配したような声がして、ヤバいヤバいと希空はヒヤヒヤしながら廊下を疾走する。『天目一箇(あめのまひとつ)』で箒の現在地を確認し、その地点に向かって走るのだが、その間も一夏達との会話を続けた。

 

「確かに今公開されている世界の技術じゃ無理な領域かもしれない。というか無理。みんな第3世代の開発に手一杯だからねー。でも、一重に有り得ないとは言えないね、現物を目にしている僕達からすれば」

『……じゃあ、仮にあれが無人機だとしだら勝てるの?』

「多分ね」

『ああ、人が乗ってないなら容赦無く全力で攻撃しても大丈夫だしな』

「『雪片弐型』が持つ単一使用能力(ワンオフ・アビリティ)【零落白夜】はまだ一夏自身の訓練が足りないから力の抑制が出来ないんだよねー。歩く人斬り包丁みたい? 十一番機構・裂式波山態【鮫の歯】?」

『人聞き悪いなオイ!? って何の話だよ!?』

 

 ルービックキューブが似合う女の子ですとは言えなかった。「呪うぞ~!」と束の楽しそうな声がしたのは気のせいだと思いたい。

 とにかく、今は余裕が無い。

 

「んー……何でも無いよ。まぁ相手が生身の人間じゃないなら後は一夏の考えてる通りだよ………ハァ…」

『? どうした?』

 

 『天目一箇(あめのまひとつ)』から確認されたターゲットにいつまでたっても追い付かないことに希空は溜息を溢した。要は、箒が速すぎるのだ。

 希空も希空で世界中から大絶賛逃走中を繰り広げていたから逃げ足には自信があるのだが、如何せん剣道をずっと続けていた箒の足は希空を上回っていた。

 

『………希空兄?』

「何」

『…何やってんだ?』

「何って……どーもこーも無いよ、あの子ホンット足が早いんだもんなぁ、お兄さん困っちゃうよ」

『え? 何言っ―ザザザッ――?』

 

 唐突に一夏の声が途切れた。いや、妨害されたと言うべきだろうか。

 

「(……IS用回線妨害電波(ジャミング)!? こンのタイミングに……!!)」

 

 あまりのタイミングの良さに希空はギリッと奥歯を咬んだ。

 原因は十中八九、あの全身装甲のIS。まさかアリーナのコントロールを一部支配することが出来るのだから、逆に今までそれをやらないことに希空は薄々不思議だったのだが。

 IS同士の連絡を切れば、戦闘どころか作業や救助もままならず滞る。そちらの方が効果的であるのだ。

 

「(こうなったら彼女達の働きに掛けるしかないかっ……!!)」

 

 希空の呼び掛けに応えてくれた4名。そろそろ彼女達のISの準備も最終段階に入ったであろう、ディスプレイを立ち上げると表示されたモニタの時計が刻一刻と針を刻んでいた。

 

「一夏ぁ!」

 

 すると唐突に、通路に箒の叫びにも似た声が響く。

 何の運命なのか、その声の発生源は希空の記憶には無いが、数刻前に鈴と戯れていたBピット。

 

「(ホントっ…気持ち悪い程の運命の悪戯だよっ……!!)」

「男なら…男なら! その程度の敵に勝てなくてなんとする!!」

 

 尚も響く箒の声。漸く希空はピットのドアを蹴り破ったが、既に無人機の砲口は箒に向いていた。

 

 ―間に合わない。

 

 GNシールド(ISver.)も、アスカロンも、サラマンドラも、ギラスも、咄嗟の刹那に呼べるモノでは無い。ましてやこの冷静と平静を失った状態なら、無理だ。

 あの砲撃は必ずや箒に死をもたらす。箒を殺す。殺してしまう。

 希空にはそれがひしひしと()()から感じ取っていた。

 

「箒! 逃げろ!!」

 

 一夏の叫び声が耳を突く。

 そうだ、まだ彼等の結婚式を見ていない。彼等は、一夏は、箒は、鈴は、まだ生きるべき希空の大切な人。

 

 だから3年前も、一夏を守ったのだ。

 

「(今さら、何を恐れる)」

 

 どうせいつかはバレること。出来れば彼女達には一生知られたく無かったが、仕方無い。

 希空は全力疾走して箒の目の前に躍り出る。後ろで箒の驚いたように息を飲む音を聞いた気がするが、無視。

 青空の下、こちらに向かって向かってくる桃色のビームは当然アリーナの遮断シールドを破壊し―――

 

 ――ガシャアアアアアアアン!!!!!!

 

「箒いいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 耳をつんざくような一夏の絶叫と共に、激しい熱が希空の体を襲った。

 

 

 

 

 

 

 

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