IS <インフィニット・ストラトス> ヘカトンケイルの名を持つ者   作:一ノ原曲利

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※視点がころころ変わります
なんかside○○って付けるの抵抗があるんですよね……ですので付けません


第27話 転校初日/シンヘイキ

 

 

 

「ではHRを終わる。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS実習を行う。解散!」

 

 ぱんぱんと手を叩いて千冬姉が行動を促す。このままクラスにいると女子と一緒に着替えないといけなくなる。

 

「それから織斑弟、デュノアの面倒を見てやってくれ。同じ男子同士だからな」

 

 了解。その意を込めて俺はコクリと頷いた。

 そうか、つまりデュノアは入学当時の俺みたいな立場って訳だ。

 

「君が織斑君? 初めまして。僕は――」

「あぁ、いいから。とにかく移動が先だ。女子が着替え始めるから」

 

 パシッとデュノアの手を取ると、俺達はいそいそと教室を出た。

 出る際、あのラウラって転校生が俺を見てたのに気付いた。…何なんだ、一体。

 

「俺達は毎回空いているアリーナ更衣室で着替えるんだ。実習の度にこの移動だから、早めに慣れてくれよな」

「う、うん……」

 

 デュノアは引っ張られるように歩きながらどこか緊張したように言いよどむ。

 様子がおかしい。んー…と唸りながら、比較的常識人頭脳をフル回転させて、ある結論に辿り着いた。 

 

「トイレか?」

「トイ……っ違うよ!」

「それは良かった。トイレ行ってたら間に合わないからな」

 

 一応、俺なりにリラックスさせるべく馬鹿げた質問を投げかけたつもりだが、大して効果ナシ。反省。

 

「そ、それより…何で織斑君、先生に『織斑弟』なんて呼ばれてるの?」

「あぁ……さっき千ふ…じゃなくて、織斑先生に蹴飛ばされてた奴いたろ? あいつが俺の兄さんなんだ。同じクラス内に『織斑』姓が二人もいるから、俺は『織斑弟』。希空兄は『織斑兄』って呼ばれてるんだよ」

「そ…そうなんだ……もしかしてその、キミのお兄さんって―――」

 

 デュノアが再び口を開き、新たに浮上した疑問を投げかけようとしたそのとき、

 

「ああっ! 転校生発見!」

「しかも織斑君と一緒!」

 

 そう、HRが終わっているということで、早速各学年生徒が情報先取のための尖兵が動き出したのだ。希空には毎回情報戦においてはより速く、そしてより多く、より的確な情報収集が現代では必要とされると口酸っぱくいっていたが、流石にここまでは無いだろう。捕まったら最後。授業には間に合わず、鬼教師の特別カリキュラムを受けることになる…ううっ、寒気が…。

 

「いたっ!」

「者ども出会え、出会えい!」

 

 Wait!! いつからIS学園は武家屋敷になったんだ!? しかも法螺貝吹いてるの…薫子先輩じゃないか!? Sit!! 希空兄の魔の手もとい悪戯の申し子まで!!

 因みにところどころ英語のイントネーションを入れてるのは気分だ。

 

「ああ、織斑君の黒髪もいいけど、金髪っていうのもいいわね」

「しかも瞳はエメラルド! 見て見て! ふたり! 手! 手繋いでる!」

「日本に生まれて良かった! ありがとうお母さん! 今年の母の日はちゃんと形のある物をあげるね!」

「な、何でみんな騒いでるの?」

「そりゃ男子が俺たちだけだからだろ」

「……?」

 

 何で意味がわからないって顔するんだ…フランスではそれほど特別な扱いでは無かったのか?

 

「いや、普通に珍しいだろ。ISを操縦できる男って、今のところ俺たちしかいないんだろ?」

 

「あっ! ああ、うん。そうだね」

 

 ようやく意味合いを理解したらしい。お互い身体能力を駆使して女子達の魔手から逃れると、ふとデュノアが「あれ?」と首を傾げた。

 

「その…織斑君のお兄さんは……」

「あぁ、希空兄はIS動かせないぞ」

 

 兄弟だからって一緒にしてもらっては困る。それでも世界中でも一級のIS整備師として名を馳せている希空は有名なのだが。っと、無駄口叩いてる間に追跡からは逃れたみたいだな。更衣室に着いたことだし、さっさと着替えるか。

 

 

 

 

 

 

 

「なんとか振り切ったみたいだな…」

「ごめんね…いきなり迷惑かけちゃって……」

「いいっていいって」

 

 僕が膝に手をついて息を整えてると、一夏は何でもないというように手をヒラヒラ振った。

 

「それより助かったよ、学園に俺以外でIS使える男が増えてさ」

「…何でキミのお兄さんはこの学園にいるの…?」

「あぁ…一応整備師だからって名目で来てるんだ。あれでも世界一腕がいいらしいぜ? 『ヘカトンケイル』」

「…そう、なんだ」

 

 なるほど…()()ね。日本語では大義名分って…言うのかな。多分…彼、『ヘカトンケイル』こと織斑希空はIS学園を隠れ蓑にしてるんだろう。

 

「ま、これからよろしくな。もう名前は知ってるだろうけど自己紹介。俺は織斑一夏。一夏って呼んでくれ」

「うん、よろしく一夏。僕のこともシャルルでいいよ」

 

 日本じゃ男同士の友人間ではファミリーネームよりファーストネームで呼ぶ…うん、クリア。軽く挨拶を済ませると、壁に掛かってる時計を見て血相を変えた一夏は来ていたシャツを一気に脱い……って、ええぇ!?

 僕が慌てて一夏から目を背けると、不思議そうに僕の方を見て来た。

 し…しまった…まだあんまりこういう方面の耐性つけてなかった…!!

 

「早く着替えないと遅れるぞ? ウチの担任は…そりゃ希空兄以上に時間に五月蝿くてなぁ…」

「う…うん、着替えるよ……でもその…あっち向いてて、くれない、かな」

「いやまぁ…着替えをジロジロ見る気は無いからな…なんでもいいけど急げよ」

 

 そう言って一夏は自分のISスーツを取り出すべくロッカーに目を向ける。

 今だ……!

 僕はフランスで練習した通り、すぐにIS学園の制服を脱いでISスーツに着替えた。……今度からは下に着たほうがいいかも。やっぱり遅いかな…。

 きゅっとISスーツの裾を引っ張ると丁度一夏がこっちに向き直った。

 

「な…何かな…?」

「着替えるの早いな…何かコツでもあるのか?」

「いや、別に何も……」

「そうか……これ、着る時に裸っていうのが辛いんだよな。引っかかって……」

「……ひ、引っかかって……」

「おう」

 

 ……うん…当然『アレ』だよね…その…男子にあって女子に無い『アレ』……うん、何も聞かなかったことにしよう…!!

 

「そのスーツ着やすそうだな」

「デュノア社製のオリジナルだよ」

「デュノア…? お前の名字もデュノアだよな…」

「父が社長してるんだ。一応フランスで一番大きいIS関係の企業だと思うよ」

「へぇ…社長の息子なのか。道理でな」

「道理って?」

 

 ……どういう意味だろう…? 別段僕がデュノア社のことを詳しく言ってはいないハズ。

 

「なんつーか、気品っていうか。いいところの育ちって感じがするじゃん」

「………」

 

 ……いいところ、か。

 見方によっては、いや考え方によっては、そうなのかもしれない。

 

 一度は絶望し、その地獄の中にも光はあった。でもその光は失われ、二度と戻ることは無い。

 戻ることは無い…けど……。

 

「あ、じゃあそんな有名なら希空兄もやっぱデュノア社行ってたのか? あれ? でも会ったこと…」

「……無いよ。()()()()()()()()()()

「………?」

 

 …おっと、ちょっと口を滑らせちゃったかな。気をつけなきゃ。

 

「そっか。あ、別に希空兄が言ったこと真に受けるなよ。アレよく希空兄がするナンパみたいなモンだから」

「……うん…そうだね…」

 

 ………違うんだ、一夏。彼は…『織斑希空』は……。

 

「……ねぇ、一夏くん」

「何だ?」

「……キミのお兄さんは…()()()、かな?」

「………は?」

 

 あ…ど、どうしよう!? 無意識に口に出しちゃったよ!? あぁぁっ、こういう質問しようと思った訳じゃ無くて…!

 

「あー…まぁ、基本的には優しいんだろうな。俺に厳しくしてんのも、最終的には俺の為なんだろうし」

「へ、へぇーそうなんだ…そう言えば、お兄さん先生に蹴飛ばされてたけど、大丈夫なの…?」

「あぁ。あんなの日常茶飯事だから気にすんなよ。どうせピンピンしてるだろうな……」

 

 …つまり、『織斑希空』には例え落下しても怪我をしない特別な()()があるってことか………。

 改めて『織斑希空』の特質を再認識した僕は、第二アリーナに着くなり予想を裏切られることになる。

 

 

 

 

 

 

 

「あっははー。いやーまいったまいった」

「………は?」

「…ぇ?」

「んな………」

「………」

 

 上から順に、希空、一夏、シャルル、鈴、千冬。

 第二アリーナにやってきた希空を見て、上記四人に限らず一組、二組のクラスメイトは勿論、教師陣も唖然としていた。何故なら、

 

「いやー、まさか当たりどころ悪くて右足骨折とか。自分でも笑っちゃうよー」

 

 右足にギブスを嵌めて、ひょこひょことやってきたからだ。

 普段から巻いている右目左腕の包帯も霞んでしまうほど、かなり目立っていた。右手に黒塗りの金属製らしき松葉杖をついている。真ん中の芯を起点に四本の足が生えた現代的なデザインなのは、よりよく松葉杖としての機能性を高めているらしい。

 

「…え? 希空兄?」

「うんー? 何だい我が愛しの弟よー」

「愛し言うな! ……じゃなくて!! なんで骨折なんがゴフゥッ!?」

 

 一夏の腹にごすっと五寸釘でも撃ち込まれたような衝撃が走り思わず咳き込んだ。それは間違い無く、『百手機甲(ワンハンドレッドガントレット)』によるヒットandアウェイによるもの。まさに瞬間芸。

 

「どうしたんだい弟よー。流石に高い所から墜ちちゃったらいくら僕でも怪我の一つや二つして当然じゃなーい。どこぞのギャグ漫画やバトル漫画と一緒にしないでよねー。それとも何かい? 僕に超能力のような特別な力なんかあるとでも思ったかいー?」

 

 希空はどこかウザそうにひょこひょこと近付き一夏の顔を覗き込みながら右手にテレフォンスタイルを取る。それを見て一夏は意を介したのかゆっくり意識を集中させた。

 

『ハロハロみなさーん。と言っても今繋いでるのはリンリンと一夏、千冬姉さんの三人だけなんですけどねー』

 

 個人秘匿通信(プライベート・チャンネル)だ。

 これは秘匿性も高く、個人指定出来る上に限定的にではあるが個々関わらず放送のように繋ぐことが出来る。その上、口を動かす必要は無い。

 

『千冬姉さんは多分わかってると思うけど一応言っとくね。しばらく『百手機甲』は暫く使う気無いから』

『………は? オイそれなん』

『はーい文句言うヤツには直接腹に『百手機甲』ぶち込んでミックスするからー』

『怖っ!? ていうか希空、そんなこと出来るの!?』

『いえす。要は十一次元の演算だからお手のものです。まる』

『………わかった。そもそもアレはお前も時たま出さないものだしな。今回は()()()()()ということにでもしておこうか』

『実際には織斑先生の―――』

()()()()()だったよな? 凰』

『ひぃっ……!』

『落ちまーす』

 

 プチっという回線切断の音と共に、一夏達は現実に戻った。周りの状況を見るにつき、時間はそう経ってもいないようだ。

 

「えーゴホンっ。それでは、今日から格闘訓練及び射撃訓練を実施する」

 

 千冬が咳払いしているのを見て一夏はさり気なく鈴とアイコンタクトを取る。呆れたように肩を竦められた…ということは、理由がわからないにせよ従った方がいいということらしい。毎回することやること意味不明だが、それが後々結果に結び付くのをわかっていた一夏は目の前で松葉杖をつく実兄を見て溜息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

「本日から実習を開始する。主に戦闘においてもっとも基本となる格闘訓練及び射撃訓練だ」

「はい」

 

 みんな、本格的な戦闘訓練ともあってか相当気合が入っているわ。一応私も代表候補生なわけだから戦闘訓練なら何十回もやったけど。ヘンなミスしなけりゃ大丈夫よね、恥かくのやだし。

 それにしても……希空、どうしたのかしら…? そういえば、一組に二人も転校生が来たらしい。しかも二人共代表候補生で、顔見知りだとか……。

 あのデュノアって男と…ラウラ・ボーデヴィッヒ…うわ何アイツ。

 

「まずは戦闘を実演してもらおう……凰、オルコット!!!」

「はいっ!?」

「は、はいっ」

 

 ちょ、千冬さん!? 何イキナリ指名しちゃってんのよ!? ああもうっ!!

 

「専用機持ちなら、早く始められるだろう。前に出ろ」

 

 私的に要約するなら、要は態々訓練機を取りに行く手間が省けるってことでしょ……人遣い荒いよ千冬さん。

 ……めんどいなぁ…なんで私が……。

 どうやらセシリアも同じ心境っぽい。お互い代表候補生は辛いわね。

 そう肩を落としていると、ずんずんと歩いて来た千冬さんが私達の首根っこ掴んで耳元に口を寄せてきた。

 

「お前等、少しはやる気を出せ。アイツ等に良い所を見せられるぞ?」

 

 み な ぎ っ て き た ー !!

 

「やはりここはイギリス代表候補生である私の出番ですわね!!!」

「まぁ、代表候補生の実力を見せるいい機会よね!!!」

 

 きっと今の私やる気オーラ出てるわ! 凄く、凄くね!!

 ここは見せ場よー私!! 活躍して好感度UP!! 一気に簪との差を広げてやるわ!!

 

「それでお相手は? 私は別に鈴さんとの勝負でも構いませんが」

「ふっふっふ、それはコッチのセリフよ。返り討ちにしてやるわ!」

 

 それに希空から新兵器もあるのよねー! ちゃんと麗々さんからは許可貰って申請してあるし! 試すにはいい機会だわ。

 

「落ち着け馬鹿共。二人の対戦相手は―――」

 

 さぁ誰かしら。もしかして今日来た転校生? なら好都合……!

 でも実際そうでは無かったみたいで、上空から何か音が聞こえた。しかも段々近付いて来る。この機動音は……量産機のリヴァイヴ?

 中国で散々相手していたからわかる。日本に近いから《打鉄》ばかり使うとよく思われがちだけど、ちゃんと量産機相手にできるように配備されてるのよね、これが。

 すると、どっかで聞いたことがあるような叫び声と共に―――地上にいた一夏へ激突した。うわぁ…ご愁傷様。あ、希空指差して笑ってる。

 …思い出した。希空のクラスの副担任だ。確か名前は…山田先生。

 しかも一夏も一夏で相変わらずラッキースケベスキル発動してるわねー。今度はセシリアに撃たれてるし。

 

「おほほほほ、外してしまいましたわ」

 

 既に《ブルー・ティアーズ》を展開させたセシリアが妖しく笑ってる。ああいうのをヤンデレっていうんだろうか………。

 すると流石にセシリアの暴挙もとい暴走を、千冬さんが必殺の出席薄で止めた。……アレ、希空のお手製とかじゃ無いわよね? 軽くISのシールドバリアー超過してるような……。

 

「言っておくが、山田先生は日本の元代表候補生だ」

「む、昔のことですよ。それに候補生止まりでしたし……」

 

 千冬さんの言葉に「いやー、それほどでもー」と山田先生が照れた。あれ、ちょっと希空っぽい? いやまさか。

 

「さて小娘共、さっさと始めるぞ」

「え…あの、二対一で?」

「いや流石にそれは…」

 

 それではこちら側の一方的なフルボッコになっちゃうじゃん。現役がOGに負けることは無いわよ。

 すると千冬さんは私たちに意地悪気なニヤケ顔を見せた。

 

「安心しろ、今のお前たちならすぐ負ける」

 

 ……ムカッ!!

 いまムカッてきたわ!! 私達があの先生に、たかが元代表候補生で、しかも量産機に!? 冗談じゃないわよ!! 負けたら絶対希空に大笑いされる……!!

 

「では…始めッ!!」

 

 千冬さんの合図と共に、私達は大空へと飛び上がった。ある程度の戦闘空域に入ると私達三人はほぼ同じ高さのところで制止した。

 

「手加減はしませんわっ!!」

「いくわよっ!!」

「い…いきますっ!!」

 

 それを合図に私達は咄嗟にアイコンタクトを取ると散会した。

 まず私が前衛。『双天牙月』がある上に私は比較的近接戦闘の方が得意だ。加えて…セシリアは近接に向いてない。近接戦用のショートブレードの展開(コール)があまりにも遅いのは致命的過ぎ。という訳でセシリアが後衛。おおっと、早速自慢のBT兵器出してるわね…出すタイミング速過ぎない? ま、そのおかげで先生が避けるから隙が出来るんだけど……ねっ!!

《龍砲》の砲撃を始める。でも、先生はスレスレのところで体を捻らせて機体を傾けることで回避した。やるわね……でもまだまだこれからよっ!!

 

 

 

 

 

 

 

「さて、せっかくだデュノア。山田先生の使用しているISの説明をしてくれ」

 

 空中で繰り広げられている激戦を遠目に見ながら、千冬姉さんの指示を受けたシャル…うん、シャルシャルは懇切丁寧に説明を始めた。

 我が姉よー、何故僕を指名しなかったー?

 

「はい。山田先生が使用しているのは、フランス型第二世代型の《ラファール・リヴァイヴ》、通称《R-V》です。第二世代型としては比較的最期に開発されたモデルですが、性能自体は高く、初期第三世代機にも劣りません。安定した性能と高い汎用性、後付装備(イコライザ)の豊富さが特徴です。

《ラファール・リヴァイヴ》は世界七ヶ国でライセンス生産、十二ヶ国で正式採用されており、世界シェア第三位につけています。特筆すべきは操作性の簡易化によって操縦者を選ばない事と、多様性役割切替(マルチロール・チェンジ)を両立させている事です」

 

 長い…! じゃなかった。短い…!

 でもまぁ、そこら辺の一般生徒と比べれば上々か。

 ……ちらり。

 少しだけ盗み見。シャルシャルの横顔を拝見。ついでに『天目一箇(あめのまひとつ)』でスリーサイズも確認。

 ………うん、至って普通の女の娘! 見事なまでにボンキュッボン! これで先方の件が無ければいいオトモダチになれたかもしんないんだけどなー、しかも二件。

 するとシャルシャルが何か感じたのか背筋をぞわりと震わせた。あ、バレるところだったー…!

 

「どうしたデュノア」

「い、いえ…何か寒気が……」

 

 千冬姉さんから殺人光線級の視線が来たけど、無視。さりげなーく、再び上空を裂く三つの光を見る。状況は…うん、セッシリーとリンリンが劣勢。

 真耶先生が駆る《ラファール・リヴァイヴ》の推進機(スラスター)による回避運動が効果的過ぎー。《甲龍》の衝撃砲『龍咆』は砲身、砲弾ともに目には見えないのにそれをセッシリーのBT兵器によるレーザー共々回避。今の所直撃はゼロ。デビルかっけぇー!!

 射撃も中々。というより射撃が出きるからこそ回避予測が鋭いんだろーけどねー。二人の回避運動を予測、狙いを妨げるような銃撃。行動範囲を狭めて…あ、ぶつかった。

 

「うわぁっ!?」

「きゃっ!?」

 

 …そこにグレネード弾! 真耶先生鬼畜やわぁー。

 二人そろってまともにグレネード弾が被弾。ひゅるひゅると落下音が響く中…お?

 

「まさか、この私が……」

「あんたねぇ……! 何面白いように回避先読まれてんのよ!」

「鈴さんこそ……! 無駄にバカスカと撃つからいけないのですわ!」

「こっちの台詞よ! 何ですぐにビット出すの!? しかもエネルギー切れ早いし!」

 

 二人共元気だなぁー。まだリンリンにシールドエネルギーが残ってる…かなー? すると、

 

「ちっ…このまま一撃も入れず負けられるかっての! セシリア! ちょっと失…礼!!!」

「へ……って、きゃあっ!?」

 

 リンリンがセッシリーを足場にして飛んだ。推進機(スラスター)の初動エネルギーを割いたことで節約。

 ……おおぉ…遂に『アレ』を出す気だなぁリンリンー!!

 空中を跳ねたリンリンは一瞬こっちに目を合わせてきた。いいよー、おK。使っちゃいなさい。

 

「!」

 

 こっちの意志がわかったのか、リンリンは薄く笑って頷くと再び真耶先生に向き直って、『双天牙月』を()()()()

 

「えっ…!?」

 

 空中で真耶先生はリンリンの行動に驚きつつも、『龍砲』による攻撃と判断したのかシールドを構える。

 ―――にやり。

 リンリンと僕は笑みを浮かべた。

 

「行くわよっ!!」

 

 リンリンは両手に光の粒子を放出し新たな武器を呼び出す。展開(コール)された武器は、リンリンの手中に収められた。

 その武器の名は、

 

「伸びろ、『双天神来』!」

 

 

 

 

 

 

 

 決まったかと思いきや、前にいたセシリアさんが楯の役割となったのか鈴音さんのシールドエネルギーはギリギリ0にはならなかったらしい。セシリアさんを足場にして鈴音さんがこっちに飛んできた。うわぁ…酷い。

 私は必然的にアサルトライフルを構える。鈴音さんは雄叫びを上げながら青龍刀を…え!? 消しちゃうんですか!?

 

「!?」

 

 しかし私は冷静を失わない。少し驚いたけど、この距離なら確かに鈴音さんの『龍砲』の方が射程圏ギリギリですからね。

ということで、弾道予測。ちょっとかすりそうなのでシールド準備。

 

「行くわよっ!!」

 

 さぁ来なさい…! って、あれ!?

 今度は本格的に驚いた。何故なら鈴音さんが新たな武器を展開(コール)したから。展開(コール)時独自の粒子が晴れるとそこには、さっきまで持っていた青龍刀と()()青龍刀が握られていた。

 先ほどと違うのは、最初から柄の部分が接続されていて、黒塗りの柄が少し細い割に両端に付いた刃が大きく、両刃であること。ただその両刃も左右非対称なようで、ところどころ形が変わっていた。

 …でもこの距離じゃまずもって届かない筈。

 そう、長いと言えば長いにしても距離が足らない。長さはおおよそで4m程度。私と鈴音さんとの間は約15m。とすれば、

 

「(投擲ですか…!?)」

 

 形状から見ても投げるにはもってこい。銃撃による弾道予測でないから少し難しいが、出来ないことはない。私はその直線上から回避―――

 

「伸びろ、『双天神来』!」

「―――え、」

 

 直後、目前に刃が迫った。

 え? 今伸びろって言いました? いやまさか。

 しかし実際ちゃんと刃が目前に来ているようで、目の当たりにした私は身体が固まったように動けなかった。だが、

 

「くうっ!!!」

 

 手にしていたアサルトライフルとしていたシールドを前に押し出し、軌道をズラす。

 あ…危なかったぁ!!

 アサルトライフルの銃身がざっくり斬られてしまったが背に腹は代えられない。回避に成功すると私はISのハイパーセンサーで目の前にいる鈴音さんを補足……あれ?

 しかし目の前には誰もいなかった。少し視線をズラせば、先ほどと変わらない場所で鈴音さんがこちらを見上げて―――笑っていた。

 

「―――まっ、が、」

 

 …あれ、何かイヤな予感。

 自分の頭上に影が差しているのを見て、私は思わず頭上を見上げる。そこにはアリーナのシールドを突き破るような勢いでどんどん伸びていく青龍刀『双天牙月』…ではなく、『双天神来』。

 

「……れェエエェェェェ!!!!!!!!」

 

 ぐんぐん伸びていた青龍刀がカクン、とこちらに()()()そのまま一直線に私の方へ………伸びてきた!?

 まるで龍神が翔け抜けるようなソレを、私は持ち前の反射神経でなんとか回避を試みる。が、

 

「ぐぅっ!!」

 

 刃が、肩の装甲を裂いた。というか今ヒヤッとしましたよ!! 物理的にも精神的にも!! しかもシールドバリアー貫通してますし!!

 

「やった……!」

 

 下で鈴音さんがガッツポーズ。するとエネルギーに限界が来たのか、鈴音さんは新たな青龍刀を粒子化して仕舞うと高度が下がり…落下した。

 

「いっててて…」

「ちょっと鈴さん!? さっきはよくも私を足蹴にしましたわね!?」

「あ、ゴメンゴメン……でもなんとか一撃喰らわせてやったわ…!!」

「いや…最後のはびっくりしちゃいましたよ…」

 

 心臓が喉から飛び出そうだった…!! だって、構造上ありえなさ過ぎますよさっきの武器!

 すると織斑先生が膝をついている鈴音さんに問い掛けた。

 

「凰、さっきのは何だ?」

「そうですよ…あんな武器見たことありません」

「あぁ、アレは―――」

「中国政府が開発した《甲龍》の新武装、の試作品。だってさー」

 

 ひょこひょこと、松葉杖をついて歩いて来た希空くんが割り込んで来た。

 それを織斑先生が…目を細めて見遣る。

 

「何故お前が知っている?」

「《甲龍》は専属整備士のスタッフ方々から調整を任されてるんですー。ちゃーんと政府側から許可貰ってますよー」

 

 うわぁ…なんか白々しいような……。

 多分、というか120%希空くんが創ったに違いない。うん。こんなの創れるの、希空くん以外にいませんよ。それを織斑先生は目敏く察知したのか(ひぃっ)、小さく溜息をつくと踵を返した。

 

「―――と、まぁこれで諸君にも、教員の実力が理解できただろう。以後は敬意を持って接するように」

 

 先ほどの話はなかったように、織斑先生はみんなに言うと、ぱんぱんと手を叩いて意識を戻させた。

 すると、希空くんが私を見て松葉杖を持ってない、包帯に巻かれた左手で悪戯っぽくシー、の合図をされた。多分…黙っててちょーだい、と言ってるんだと思う。

 そんな希空くんの態度が可笑しく感じてしまい、私は苦笑いしながらOKサインをした。

 

 

 

 

 

 

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