IS <インフィニット・ストラトス> ヘカトンケイルの名を持つ者   作:一ノ原曲利

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第3話の実質的裏側、つまり時間帯が重なっているということでこんなタイトルにしてみました
……どっかみたいに一度しか使わないやり方でなければいいけど
自分、場面切換が多いから正直困ってるんですよね……


第3話(裏側) 空白の6年間/ウソツキ

 

 

 一方廊下では、教室での騒動なんて知るよしも無く一夏と箒が向かい合っている。この時楯無が一夏を探しだせなかったのは他の女子による包囲網のせいであるが、ここでは伏せておく。

 

「そういえば」

「何だ?」

「去年、剣道の全国大会で優勝したってな。おめでとう」

「………………」

 

 三点リードが無駄に多い箒。それほど、箒には予想外であったし意外でもあった。

 

「なんでそんなこと知ってるんだ」

「なんでって、新聞で見たし……」

「な、なんで新聞なんか見てるんだっ」

 

 羞恥心あまりに錯乱状態。もはや言っていることが支離滅裂な箒に今度は一夏が面食らった。

 

「あー、あと」

「な、何だ!?」

「……………」

「あ、いや………」

「…久しぶり。6年ぶりだけど、箒ってすぐわかったぞ」

「え………」

「ほら、髪型一緒だし」

 

 6年ぶり。

 2人が今まで生きてきた中でもおおよそ半分に当たる空白の時間。それだけ離れていたにも関わらず、一夏は箒の髪型を6年も覚えていたのだ。その結論が生む可能性に箒は思わず赤面してポニーテールを弄る。恥ずかしがり屋さん。

 

「よ、よくも覚えているものだな………」

「いや、忘れないだろ、幼なじみのことくらい」

「……………」

 

 だが、所詮は可能性。

 可能性は可能性でしかなく、真に真実を撃ち当てる訳では無かった。相変わらず鈍感っぷりを見せる一夏を箒はありったけの恨みを込めて睨む。そして何か言おうと口を開こうとした丁度その時、

 

 ―キーンコーンカーンコーン。

 

 タイムアップ。

 箒の抵抗虚しく時間切れのチャイムが鳴ってしまった。

 

「(しまった…せっかく希空がくれたチャンスだというのに!!)」

 

 箒はこの時間が希空の粋な計らいによって生み出されたのを知っていた。いや、わかっていた。過信でも自惚れでも何でもない。一夏にはわかっていなかったようだが、箒には希空が狸寝入りしているのを知っていた。もし希空が起きていれば、精神的弱体化の傾向にあった一夏が箒の誘いに、実の兄である希空を連れていく可能性もあったからだ。

 

 希空は、箒自身が一夏に好意を寄せていることを知っている。

 

 希空は昔からわかってはいたようだが、箒自身が相談の為に打ち明けたということもあった。

 

「(そう言えば……)」

 

 そう言えば。

 希空は何故IS学園に来ているのだろうか。

 自己紹介の時に整備師としての実地研修と言っていたが、どうも嘘らしい。そもそも本当に実地研修ならば、希空の腕であればIS学園などでは無くISを取り扱った軍や施設に行けばいい。なのにIS学園に来た。

 嘘といえばもう1つある。

 

 

 ―「あ、因みにこの右目の包帯は昨日猫に引っ掻かれたから巻いただけだよー」―

 

「(共にいたのは6年前までだったが、私にはわかる)」

 

 あれは、希空が吐いた嘘だと。

 ならば何故嘘をつく? 包帯に巻かれた右目に、何があった?

 

 

 自分がいない6年間、何があった?

 

 

「俺たちも戻ろうぜ」

「ま、待ってくれ一夏っ。……1つ聞きたいことが、あるんだ」

「何だよ?」

「………希空に、何かあったのか?」

「……………」

 

 今度は、誰も面食らってなんかいなかった。真剣に問い掛ける箒に対し、一夏も何だか複雑そうな、どんな顔を浮かべればいいのかわからないような顔をしていた。

 

「……悪ぃ、そろそろ2限目始まっちまう」

「一夏!!」

 

 箒の引き止めも無視して一夏は戻る。

 一夏の背中を掴もうと手を伸ばしたが、「今は聞かないでくれ」とでも言うような、弱々しい背中に箒は思わず手を引っ込めた。

 

「(希空……? お前に、いやお前達に一体何があったというのだ………)」

 

 ―パァンパァンッ!

 

「とっとと席に着け、織斑、篠ノ之」

「………ご指導ありがとうございます、織斑先生」

「うっ……す、すみません………」

 

 箒は千冬に謝りつつギロリと一夏を睨み付けた。今回のは箒自身に非があるが、何と無く一夏に非があるように思えたからだ。一夏は毎度こんな痛みを味わっていたのか…と痛む頭を抑えながら教室に入ると、相変わらず狸寝入りをした希空が視界に飛び込む。そして枕代わりに組んだ腕の隙間から包帯だらけの左手がにゅっと伸び、あろうことか親指を立ててグッドサインをしていた。

 

「(す、すまなかった…希空………)」

 

 内心謝りたい気持ちで一杯だった。

 だがそんなこと気にするなとでも言うように、ゆっくり起き上がった希空は伸びをするとぷらぷらーっと手を振る。

 窓際の自分の席に座ると、包帯で隠れていない左目がぱちっとウィンクした。

 

「(掴みはばっちりだよー箒ちゃん)」

 

 

 

 

 

 

 

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