お腹の中にジャシン様がいるらしい件   作:笑嘲嗤

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第13話 どこか遠くの話

 狩衣を着たゲンジは三簾の奥を見詰めていた。その奥にいる人の形をした影を。

 

「ゲンジ。では聞かせて欲しい。兎の女神よりもなお古き神について。君が見つけた神を宿す少年について」

 

「はい。湯の国で見つけました少年。いまはナナシと名乗っておりますかの少年には間違いなくもっとも古き神の一柱。謝信(ジャシン)の声を聞いています」

 

「ふむ。大筒木がこの地に降り立ってから古き神々は姿を消した。チャクラを得た人々は神と遠く別たれてしまった。神代の終わりの始まり。忍宗以前の神。まさか現代にその声が降りてくるとはね」

 

「ナナシはジャシンの声をたびたび聴いているようです。ただ断片的であり、人中力の尾獣の様な意思疎通はどうやら叶わないようであります」

 

「神の意志を推し量るなど元々無理なものだよ。我々は神の声を聞いても好き勝手に解釈してしまう。現代においてジャシンの信仰が抜け忍や犯罪者の罪悪感を雪ぐ為にジャシンの隣人愛を殺戮の教義に変えたようにね」

 

「悲しいことであります。各国を巡りましたが、まだ細々と正統なジャシンの教えを残す地域は遺っておりました。もっとも忍宗による弾圧はひどいようですが」

 

「忍宗も決して間違ってはいない。人々は繋がれる。その祈りは尊いものだろう。奇跡をこの世に具象化してしまったのが誤りだったのだ」

 

「私にはいまだに理解できません。チャクラというエネルギー。それは確かに文明を進めるポテンシャルがあったのでしょう。しかしかつては奇跡としか言えなかった御業の多くを忍術が可能にしてしまった。人々は偽りの奇跡を信仰するようになった。チャクラによる繋がり。それは果たして人には早すぎるものではなかったのでしょうか?」

 

「それを選ぶのは人々だろう。だが個々に選ぶ機会が与えられないのであれば。それは心への暴力になる。繋がりは時に互いを傷つけあうのだからね。ゲンジ。君の願いは変わらないのかな?大筒木が齎したチャクラ文明の精算。本当にそれを望むものは決して多くはあるまい?」

 

「私の意志は変わりませぬ。我々は次のステージに進むのです。チャクラの奇跡ではなく……意志によって前に」

 

「そうか。ならば私がこれ以上とやかく言うことはない。ただうちはマダラの亡霊。あれだけは止めねばならぬよ。それは忘れないでほしい」

 

「もちろんでございます。ではこれにて失礼したします。天帝陛下」

 

 ゲンジは立って一礼し三簾に背を向ける。

 

「ゲンジ。和を忘れるな。君も孤独に堕ちるのを私は見たくない」

 

 ゲンジは振り向かずに歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 例によって治安任務のCランク。最近は忍者が相手じゃないので気が楽だ。もっともハナコは忍者が出てこなくてイラついてるし、忍者である俺たちが犯罪者とは言えどもターゲットを忍術で傷つけるのを見てリノイもいらだってる。ヒヨリ先生はどこ吹く風。そんな日々。でもタスクは少し増えた。

 

「じゃあ演習と訓練するわよ」

 

「やっと修行だな!」

 

「修行じゃないわ。演習と訓練よ。修行って言葉嫌いなのよね。効率悪そうな感じがいや」

 

「どっちでもいいから早くやろうぜ!」

 

 ハナコは鼻息荒くせっつく。リノイはどうでもよさげに髪の毛を弄ってる。俺はと言えば訓練は生き延びるために大事なので真剣に臨んでるつもり。

 

「じゃあ木の葉伝統の鈴取りやるわよ」

 

 鈴を二つポケットから取り出したヒヨリ先生が腰にそれをつける。

 

「鈴が二つ。それを取ったら合格ですか?だとすると一人は失格?ならわたしは不参加でいいですね?」

 

 リノイは本当にやる気がない。戦うことをここまで忌避するのはもはや尊敬に値する。

 

「参加拒否したらそこの丸太に縛り付けるからね」

 

「はぁ。そうですか……」

 

 強制参加らしい。でも上忍相手に三人がかりでも鈴が一つでも取れるのだろうか?

 

「殺すつもりでやってね。じゃないと鈴に触れることさえできないからね」

 

 ヒヨリ先生は珍しくサングラスを外してポーチにしまう。ヒナタと似た瞳の色。だけどやや灰色がかかっている。同時にヒナタにはない瞳孔がある。そしてそれが縦に割れて瞳は虹色に輝きだす。

 

「ちょっとは本気出してあげるからかかってきなさい」

 

 そしてアラームが鳴る。俺たちは散開して演習場のあちらこちらに潜む。というかヒヨリ先生も潜んじゃったんだけど。こういう時って師匠は堂々と隠れずに迎え撃つものじゃないのだろうか?とりあえず。感覚に集中して何処にいるのか探ってみる。だけどちっとも反応がない。

 

「ナナシ。私を探す前に見つからないことを考えるべきだったわね」

 

「はいぃ?!」

 

 気がついたらヒヨリ先生が俺の背後にいた。そして鋭い手刀を俺の首に降ろしてきた。それをよけきることはできなかった。俺はもろに喰らってふらついて木から落ちてしまった。そのままくらくらしてその場にうずくまってしまう。これが上忍の力……。だけどただでやられるのはいやだ。

 

『しらせる』

 

 その通り。俺は火遁で近くの枯れ木に火をつける。そして煙が上がる。そこに風遁をぶつけて煙をヒヨリ先生に当てた。

 

「あら?へぇ。仲間のために私に匂いをつけるってことね。いい判断力ね。もう中忍レベルの思考ができるのは大したもんだわ。まああの子たちがこのヒントを使いこなせるかはわからないけどね」

 

 そしてヒヨリ先生はふっと姿を消してしまった。そして俺も気を失ってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 訓練結果。俺は速攻リタイア。リノイ、3時間41分ヒヨリ先生の攻撃を逃げ切ってリタイアさせられる。ハナコ、5時間47分ほど逃げ回りつつも果敢に攻撃して鈴に傷だけつけてリタイア。

 

「ぶっちゃけ下忍レベルでここまで動けるなら大したもんよ。じゃあ明日からは今日見た個々人の傾向から訓練メニューを決めてやるから覚悟してね」

 

「押忍!!」

 

 ハナコは倒されこそしたけど上機嫌。リノイは嫌そうな顔してて、まあ俺はそんなものかと受け止めた。そして演習場から帰る途中、リュックを背負った遠出の格好のカカシ班とすれ違った。

 

「あれぇ?ヒヨリのところは修行だったの?」

 

「まあそんなところです。任務で遠出ですか?」

 

 カカシ先生とヒヨリ先生がのんびりと話してる。俺はというとナルトから睨まれて、ちょっと居心地悪い。

 

「そうなんだよねぇ。Cランクが入っちゃった」

 

「そうですか。まあカカシ先生がいるなら大丈夫でしょう」

 

 そしてカカシ班は任務で里から出ていった。里から出ていくならしばらくはナルト似合わずに済むかな。問題の先送りでしかないけど、ホッとするのも事実だったんだ。

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