『血と香料の戦争』― 灰燼の回廊 ―   作:MOZIO

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第2編「陰謀」

【1】見えない刃

 

王都リュミエール。

 

夜は静かだった。

 

だが、その静けさの中で人は死ぬ。

 

音もなく。

 

血も目立たず。

 

「……終わったか」

 

暗がりの中で男が呟く。

 

倒れているのは、ある中級貴族。

 

戦争反対を口にしたばかりの男だった。

 

「記録は?」

 

「事故です」

 

短い会話。

 

それで終わる。

 

【2】情報の価値

 

リーゼロッテは報告書を受け取る。

 

「一人消えました」

 

「誰が?」

 

「ラング伯」

 

彼女は少し考え――

 

「早いですね」

 

と言った。

 

「誰の手だ」

 

「まだ」

 

リーゼロッテは微笑む。

 

「どちらでもいい」

 

【3】対抗者

 

帝国側。

 

ファリードもまた同じ報告を受ける。

 

「王国側で粛清か」

 

「その可能性が高い」

 

彼は指を組む。

 

「動きが活発だな」

 

側近が問う。

 

「介入しますか」

 

ファリードは首を振る。

 

「まだだ」

 

そして言う。

 

「流れを見ろ」

 

【4】巻き込まれる者

 

アルベリクは呼び出されていた。

 

「貴族会議だ」

 

ヴォルフラムが言う。

 

「面倒ですね」

 

「逃げられねぇぞ」

 

「分かっています」

 

彼は静かに答える。

 

「戦場より厄介です」

 

【5】貴族たち

 

会議室。

 

空気は重い。

 

「戦費が足りん!」

 

「だから増税だ!」

 

「民が持たん!」

 

怒号が飛び交う。

 

アルベリクは黙っている。

 

「お前はどう思う」

 

突然、指名される。

 

全員の視線。

 

「……継続すべきです」

 

ざわめき。

 

【6】火種

 

「なぜだ!」

 

貴族が叫ぶ。

 

アルベリクは淡々と言う。

 

「止めれば敗北します」

 

「勝てるのか!」

 

「勝てません」

 

沈黙。

 

「ではなぜだ!」

 

「構造です」

 

誰も理解しない。

 

【7】別の理解者

 

その場にいたリーゼロッテが口を開く。

 

「彼は正しい」

 

視線が集まる。

 

「戦争は止まりません」

 

彼女は続ける。

 

「ならば、どう維持するかを考えるべきです」

 

「商人風情が!」

 

罵声。

 

だが――

 

誰も反論できない。

 

【8】動く影

 

その夜。

 

アルベリクの元に使者が来る。

 

「警告です」

 

「誰から」

 

「名は言えません」

 

短い沈黙。

 

「狙われています」

 

「誰に」

 

「複数です」

 

使者は消える。

 

ヴォルフラムが舌打ちする。

 

「始まったな」

 

【9】帝国の影

 

同時刻。

 

サイードの元にも報告が届く。

 

「王都で動きあり」

 

「内乱か」

 

「兆候あり」

 

サイードは考える。

 

「利用できるな」

 

ザフラが笑う。

 

「やっと戦争らしくなってきた」

 

【10】交差

 

夜の街。

 

トビアスは歩いていた。

 

もう兵ではない。

 

だが、どこにも属していない。

 

「……腹減った」

 

そのとき。

 

誰かにぶつかる。

 

「すま――」

 

言葉が止まる。

 

相手は、刃を持っていた。

 

「邪魔だ」

 

一瞬。

 

トビアスは反応する。

 

身体が動く。

 

避ける。

 

押す。

 

男が倒れる。

 

「……」

 

静寂。

 

トビアスは震えた。

 

だが――

 

逃げなかった。

 

【11】交渉

 

リーゼロッテは一通の手紙を書く。

 

宛先は――帝国。

 

「協力の提案」

 

一方。

 

ファリードもまた、書く。

 

宛先は――王国。

 

同じ内容。

 

「均衡維持のための支援」

 

戦争は、裏で繋がっている。

 

【12】選ばれる者

 

アルベリクは剣を手にしていた。

 

久しぶりに。

 

「来るか」

 

ヴォルフラムが言う。

 

「ええ」

 

静かな声。

 

「戦場が変わっただけです」

 

窓の外。

 

王都の灯り。

 

美しい。

 

だが――

 

「ここも戦場だ」

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