王国歴三一七年、初夏。
リュミエール王国南東端――ザルツ辺境伯領。
夜明け前の空は、まだ青くもなく黒でもない曖昧な色をしていた。
その曖昧さは、この地そのものの性質を象徴している。
ここは王国でありながら、王国ではない。
石造りの城壁の外に広がるのは、肥沃な農地ではなく乾いた荒野。
さらにその先には、砂の海――帝国領が広がっている。
風が吹く。
乾いた風だ。
塩と砂、そしてわずかに――香料の匂いが混じっている。
それは敵の匂いだった。
「……また南風か」
アルベリク・フォン・ライナーは城壁の上で呟いた。
リュミエール王国南東端――ザルツ辺境伯領。
夜明け前の空は、まだ青くもなく黒でもない曖昧な色をしていた。
その曖昧さは、この地そのものの性質を象徴している。
ここは王国でありながら、王国ではない。
石造りの城壁の外に広がるのは、肥沃な農地ではなく乾いた荒野。
さらにその先には、砂の海――帝国領が広がっている。
風が吹く。
乾いた風だ。
塩と砂、そしてわずかに――香料の匂いが混じっている。
それは敵の匂いだった。
「……また南風か」
アルベリク・フォン・ライナーは城壁の上で呟いた。
| 灰と香料の国境線 | |
| 第1編「砂の風、血の匂い」 | |
| 第2編「ザルツ前哨戦」 | |
| 第3編「灰燼の布陣」 | |
| 第4編「交渉と裏切り」 | |
| 第5編「拡大」 | |
| 第6編「灰燼の会戦」 | |
| 灰燼の回廊 | |
| 第1編「山は血を飲む」 | |
| 第2編「飢え」 | |
| 第3編「疫病」 | |
| 第4編「分裂」 | |
| 第5編「臨界」 | |
| 黄金と腐敗の都 | |
| 第1編「王都リュミエール」 | |
| 第2編「陰謀」 | |
| 第3編「粛清」 | |
| 第4編「崩壊前夜」 | |
| 第5編「都炎上」 | |