灰冠と香路の年代記   作:MOZIO

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第二十七章 父の城

城は、石でできているのではない。

 

誰が石を運んだか。

 

誰が森から梁を切り出したか。

 

誰が堀を掘ったか。

 

誰が税として麦を納めたか。

 

誰が城壁の上で冬を越したか。

 

誰が門を閉じる命令を出したか。

 

それらすべてでできている。

 

だが城の名は、たいてい一人の家名で呼ばれる。

 

フォン・ライナー城。

 

辺境伯の城。

 

アルベリクの父の城。

 

城下の農民が、代々その石を積んできたことは、名前には残らない。

 

戦争になれば、領主は言う。

 

《我が城へ避難せよ》

 

税を取る時には言う。

 

《我が城を守るためだ》

 

そして王が城を取り上げようとすれば。

 

《この城は祖先から受け継いだ私のものだ》

 

同じ城が、必要に応じて国のものになり、民のものになり、領主のものになる。

 

灰冠自由会議は、その言葉の切り替わる瞬間へ契約を差し込んだ。

 

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## 一

 

フォン・ライナー城の大広間から、祖先の旗は外されていた。

 

罪が決まる前に家紋を外すのは、王室派への屈服だと旧臣は言った。

 

罪が決まっていないのに掲げ続けるのは、公開審査への威圧だと都市代表は言った。

 

結局、旗竿だけが残された。

 

布のない黒い棒。

 

その下に三つの長机。

 

王室監査席。

 

諸侯監査席。

 

都市・領民監査席。

 

三身監査会。

 

法廷ではない。

 

と、王室は説明した。

 

処罰を決めるのだから法廷だ。

 

と、諸侯は言った。

 

領民にとっては、名前が何であれ、自分たちの税が戻るかどうかが重要だった。

 

広間中央。

 

ディートリヒ・フォン・ライナー辺境伯。

 

六十三歳。

 

白髪。

 

頬が落ち。

 

城の包囲中に患った肺病で、時折乾いた咳をする。

 

鎧は着ていない。

 

辺境伯冠もない。

 

だが拘束具もない。

 

被告ではないから。

 

まだ。

 

彼の右側に家令。

 

左側に法務官。

 

背後に旧臣十二名。

 

向かい。

 

証人席。

 

アルベリク・フォン・ライナー。

 

息子。

 

ヴァルネリア沿岸防衛軍最高司令官。

 

王軍の将。

 

父の城を包囲した軍の一員。

 

「お前は王の制服を着ている」

 

ディートリヒが言った。

 

審査開始前。

 

「職務です」

 

アルベリク。

 

「この城で?」

 

「ここでも」

 

「私の息子として来たのではない」

 

「証人として」

 

「同じだ」

 

「違います」

 

「お前には」

 

父は息子を見る。

 

「違うと思いたいだけだ」

 

---

 

王室監査席の長。

 

シャルル・ド・モントレー軍務卿ではない。

 

彼自身が秘密軍備問題で失脚している。

 

代わりに、王妹エレノア・ド・ヴァルネ。

 

王の姉。

 

摂政経験者。

 

大諸侯の権利を理解し、王権の拡大を警戒する女。

 

だから王室席へ座らせた。

 

王の犬ではないと諸侯に示すため。

 

王室の言うことを聞かない者を、王室代表にする。

 

アドリアン二世らしい人選だった。

 

諸侯席。

 

オルテーズ伯。

 

古い封建法の守り手。

 

中央集権化を嫌う。

 

だが灰冠との秘密契約は、諸侯そのものを債務奴隷にすると理解している。

 

都市・領民席。

 

マティアス・コルヴァン。

 

時計職人。

 

ギルド会計官。

 

左腕には、三港戦で受けた矢傷。

 

指先は以前のようには動かない。

 

筆を持つと、わずかに震える。

 

彼の横に、城下町代表。

 

製粉所を営む未亡人、マルタ・ヴァイス。

 

四十七歳。

 

夫は十年前、城壁修理中の落石で死亡。

 

補償は、銀貨ではなく翌年の税免除だった。

 

その翌年、徴税官が替わり、免除記録は見つからなかった。

 

彼女は二度税を払った。

 

「なぜ粉屋が監査席へ」

 

旧臣が言った。

 

マルタは答えた。

 

「城の麦を粉にしたからです」

 

「法を知るのか」

 

「税を取られるたび、覚えました」

 

---

 

## 二

 

ディートリヒ辺境伯への審査事項は七つあった。

 

第一。

 

灰冠自由会議の使者を城へ入れ、十一日間滞在させた。

 

第二。

 

使者との会談を王室へ報告しなかった。

 

第三。

 

アルビオン系商会による補給拠点化契約を検討した。

 

第四。

 

王命なしに城兵と領内民兵を動員した。

 

第五。

 

王室軍税の一部を留保した。

 

第六。

 

城内穀物庫を閉鎖し、城下町への販売を制限した。

 

第七。

 

王軍包囲時、開城命令へ十日間応じなかった。

 

「反逆罪です」

 

王室法務官。

 

「まだ審査事項だ」

 

エレノア。

 

「全て認めれば」

 

「認めた後に名を付ける」

 

王妹はディートリヒを見る。

 

「一つずつ答えてください」

 

「使者を入れた」

 

ディートリヒ。

 

「十一日間」

 

「十日だ」

 

家令。

 

マティアスが帳簿。

 

「到着日の夕刻から、開城日の朝まで。滞在は十夜十一日です」

 

「その数え方なら十一日」

 

辺境伯。

 

「使者と何を話した」

 

「国境防衛」

 

「外国軍の補給拠点化を?」

 

「アルビオン商船へ冬港を提供し、見返りに穀物と弓材を得る案」

 

「王の許可なく」

 

「締結していない」

 

「検討した」

 

「領主は提案を聞く権利がある」

 

王室法務官。

 

「外国軍事契約を?」

 

「辺境伯には、王国の防衛が不在の場合、臨時に外部支援を求める古権がある」

 

オルテーズ伯が頷く。

 

封建法。

 

《辺境不在条項》。

 

国王が国境を守れない時、辺境領主は近隣勢力と一時的な防衛協定を結べる。

 

制定は二百年前。

 

王国が分裂していた時代。

 

「王国軍は不在ではなかった」

 

王室側。

 

「港は焼かれ、軍務局は秘密軍を隠し、王都は三港のどこを守るか決められなかった」

 

ディートリヒ。

 

「我が北西境へ来た兵は?」

 

「二千」

 

「必要数は」

 

「誰が決める」

 

「現地領主だ」

 

「自分で不足を宣言し、自分で古権を使う?」

 

エレノア。

 

「他に誰が、ここから三百里離れた王都で雪の深さを知る」

 

「だから報告が必要だった」

 

「報告すれば、許可まで冬が終わる」

 

「十一日間はあった」

 

「使者の身元を調べた」

 

「王室へ知らせず」

 

「王室軍務局そのものが灰冠に汚染されていた!」

 

広間。

 

シャルル・ド・モントレー。

 

ルネ・ヴァラン。

 

秘密条約。

 

実際。

 

「誰へ報告すればよかった」

 

父の問い。

 

簡単ではない。

 

アドリアン王へ直接。

 

三身評議会へ。

 

都市へ。

 

選択肢はあった。

 

当時は、今ほど制度が整っていなかった。

 

「誰にも報告しなかったことは」

 

エレノア。

 

「王室が信用できなかった」

 

「領民は?」

 

マルタ。

 

辺境伯が粉屋を見る。

 

「何だ」

 

「私たちには、話せたでしょう」

 

「軍事契約を粉屋へ?」

 

「麦を閉じる前には」

 

---

 

## 三

 

第五と第六の審査。

 

税。

 

穀物。

 

戦争の話より、城下町の人々はこちらを聞きに来ていた。

 

王室軍税。

 

銀貨換算三万二千。

 

納付済み。

 

二万一千。

 

留保。

 

一万一千。

 

「用途」

 

マティアス。

 

ディートリヒ。

 

「城壁補修、北砦兵、避難民用穀物」

 

「帳簿は」

 

家令が提出。

 

城壁補修。

 

五千。

 

兵給。

 

四千。

 

穀物買付。

 

二千。

 

合計一万一千。

 

一見、合う。

 

「城壁補修の支払先」

 

マティアス。

 

《聖マルコ石工会》。

 

「実在する」

 

家令。

 

「親方は」

 

「病死」

 

「組合員は」

 

「解散」

 

「石材は」

 

「北壁」

 

マティアスは城壁図。

 

「補修箇所の石材量は、帳簿の六割です」

 

「残りは予備」

 

「どこに」

 

「城外倉庫」

 

「焼けた」

 

「いつ」

 

「王軍包囲時」

 

「誰が」

 

「不明」

 

帳簿は合う。

 

現物がない。

 

「石工会の代金受取印」

 

マティアス。

 

灰色の蝋。

 

王冠。

 

「灰冠系?」

 

広間。

 

家令の顔。

 

「当時は知りませんでした」

 

「五千のうち」

 

「全額ではない」

 

「幾ら」

 

「二千」

 

灰冠系商会を通じて石材購入。

 

利益。

 

情報。

 

城壁構造。

 

「使者を入れる前から」

 

エレノア。

 

「はい」

 

ディートリヒ。

 

「知っていた?」

 

「石商が灰冠とは知らなかった」

 

「なら、誰が」

 

「家令」

 

全員が家令を見る。

 

老家令ハルトマン・ブロイアー。

 

五十八歳。

 

三代仕えた。

 

「私は」

 

「答えろ」

 

ディートリヒ。

 

「安かったのです」

 

「何が」

 

「石も、鉄も」

 

「なぜ安い」

 

「大量契約」

 

「どこから」

 

「セレスタ経由」

 

「灰冠だと」

 

「噂は」

 

「知っていた?」

 

「平和庫の残余商会だと」

 

善意の古い名前。

 

「辺境伯へ報告したか」

 

「価格だけ」

 

「なぜ」

 

ハルトマンは主を見る。

 

「殿下は、城壁を必要としていた」

 

必要な自分。

 

必要な城。

 

必要な秘密。

 

「私が命じた」

 

ディートリヒ。

 

「安い石を買えと。商会を一つずつ調べろとは言わなかった」

 

「責任を?」

 

マティアス。

 

「取る」

 

「何で」

 

その問い。

 

責任を取る。

 

貴族がよく言う。

 

だが何を失うのか。

 

「領主として」

 

「領主でなくなれば?」

 

「それは処罰を決める者が」

 

マルタ。

 

「また他人任せ」

 

---

 

穀物庫。

 

城内在庫。

 

包囲開始時、二万四千袋。

 

城下町販売。

 

停止。

 

避難民配給。

 

三千袋。

 

兵。

 

四千。

 

残り。

 

開城時、一万六千五百。

 

帳簿上、五百袋が消えている。

 

「鼠です」

 

城倉庫長。

 

マルタ。

 

「鼠が五百袋?」

 

「一年で」

 

「十一日です」

 

「以前から」

 

「なら包囲開始時の在庫が違う」

 

「測定誤差」

 

「五百袋が?」

 

一袋は家族一人の数か月分。

 

「どこへ」

 

マティアス。

 

帳簿。

 

《特別予備》。

 

「誰のため」

 

「辺境伯家と高級将校」

 

広間。

 

「戦時の指揮系統を守る」

 

家令。

 

「兵と違う麦を?」

 

マルタ。

 

「品質が」

 

「白い粉?」

 

「精白麦」

 

城下は黒麦。

 

「領主が倒れれば城が」

 

「粉屋が倒れても、粉は止まる」

 

「代わりが」

 

「領主にも代わりはいるでしょう」

 

諸侯席がざわめく。

 

マルタは辺境伯を見る。

 

「夫は城壁で死にました」

 

「記録に」

 

「補償を二度取られました」

 

「それは徴税官の」

 

「城の名で取られた」

 

「私が命じたのでは」

 

「知らなかった責任は?」

 

黒口鉱山。

 

何度も。

 

ディートリヒの目が細くなる。

 

「補償記録を調べる」

 

「今?」

 

「戻す」

 

「銀で?」

 

「税免除を」

 

「また記録が消えたら」

 

「三部」

 

マティアス。

 

口を挟む。

 

「王室、町、本人」

 

ディートリヒは息子を見る。

 

「どこでも同じ椅子を増やす」

 

アルベリク。

 

「一つで消えたからです」

 

---

 

## 四

 

灰冠使者が持ち込んだ契約書は、正式な条約ではなかった。

 

表題。

 

《北西辺境緊急保全覚書》。

 

署名欄。

 

フォン・ライナー辺境伯。

 

アルビオン西方補給商会。

 

北海自由保険組合。

 

灰冠調整人。

 

ディートリヒの署名はない。

 

家印もない。

 

だが末尾に、小さな条文。

 

《本覚書受領後三十日以内に書面による拒絶がない場合、予備的承諾と見なす》

 

「拒絶文は」

 

王室法務官。

 

「出していない」

 

「では承諾」

 

「ヴァルネリア法では、沈黙は署名ではない」

 

オルテーズ伯。

 

「灰冠法では」

 

「灰冠に法的主権はない」

 

「商会契約慣行では」

 

マティアス。

 

「一部で有効とされる」

 

「つまり」

 

エレノア。

 

「国内法では未締結。灰冠側の帳簿では成立扱い」

 

「はい」

 

「辺境伯は、その条文を読んだか」

 

ディートリヒ。

 

「読んだ」

 

「三十日以内に拒絶しなかった理由」

 

「王軍包囲が始まった」

 

「拒絶文を書けないほど?」

 

「使者を拘束した」

 

広間。

 

「いつ」

 

「八日目」

 

「記録は」

 

家令。

 

「地下客房へ移した」

 

「拘束と記録していない」

 

「逃亡防止」

 

「それなら、王室へ引き渡せた」

 

「王軍が城外に」

 

「十日間」

 

「城門を開けば、家臣が」

 

「なぜ」

 

「王軍は私を反逆者として来た」

 

「まだ、使者を拘束したと知らなかった」

 

「知る前に包囲した」

 

事実。

 

王軍は、灰冠使者が城にいるとの密告を受け、即時進軍。

 

密告者。

 

不明。

 

後に灰冠紙商と判明。

 

灰冠は、使者を送り。

 

滞在を知らせ。

 

王軍を呼んだ。

 

「最初から、締結させるだけが目的ではない」

 

アルベリク。

 

証人席。

 

「王軍と辺境伯軍を対峙させるため」

 

「なら父上は被害者?」

 

王室法務官。

 

「使者を入れ、報告しなかった責任は残ります」

 

「反逆は」

 

「別です」

 

「息子が父を」

 

「事実を分けています」

 

---

 

## 五

 

アルベリクへの尋問が始まった。

 

最初は王室席。

 

「包囲軍へ参加した理由」

 

「王命」

 

「父が反逆したと信じた?」

 

「可能性があると」

 

「開城交渉で、辺境伯は何と」

 

「外国軍を入れていない。契約していない。城内に灰冠使者を拘束していると」

 

「信じた?」

 

「確認を求めました」

 

「城門を開けろと」

 

「はい」

 

「父は」

 

「使者だけを引き渡す。王軍は退けと」

 

「なぜ受けなかった」

 

「城内の契約、兵数、穀物、外国物資を確認する必要」

 

「つまり城を調べるため」

 

「はい」

 

「辺境伯の主権を」

 

オルテーズ伯。

 

諸侯席から。

 

「王国領です」

 

アルベリク。

 

「封建領でも」

 

「はい」

 

「王軍が、令状なしに城内監査を?」

 

「三身監査令が」

 

「包囲後に出た」

 

「はい」

 

「なら包囲時点では」

 

「王命」

 

「王命だけで、諸侯の城を」

 

「反逆の危険が」

 

「危険で城を包囲できるなら、すべての諸侯が」

 

「その問題は認めます」

 

アルベリク。

 

諸侯席が止まる。

 

王の将軍が、王権行使の問題を認める。

 

「では王軍が先に違法を」

 

「手続が不足していました」

 

「違法?」

 

「当時の法では、明確でありません」

 

「逃げた」

 

父。

 

「父上への答えでは」

 

「お前は、いつも言葉を分ける」

 

「分けないと、人が死にます」

 

「戦場でも?」

 

「特に」

 

---

 

都市・領民席。

 

マルタ。

 

「城門を閉じた十日間、城下で何人死んだか知っていますか」

 

アルベリク。

 

「確認死者、四十三」

 

「原因」

 

「寒さ、食糧不足、王軍との小競り合い」

 

「王軍が殺した者は」

 

「十一」

 

「辺境伯兵は」

 

「七」

 

「残り」

 

「病気と飢え」

 

「誰の責任」

 

「一人ではありません」

 

「便利な答え」

 

「はい」

 

「あなた自身は」

 

アルベリク。

 

「包囲継続を提案しました」

 

広間。

 

「理由」

 

「灰冠使者と契約書を確保するため」

 

「四十三人より」

 

「契約が発動すれば、さらに多く」

 

「予測」

 

「はい」

 

「実際の死者より」

 

「比較しました」

 

マルタは彼を見る。

 

合理と人命。

 

「後悔は」

 

「あります」

 

「なら間違い?」

 

「後悔と間違いは同じではありません」

 

「また」

 

「ですが」

 

アルベリク。

 

「開城後に分かった使者の拘束記録を、もっと早く確認する手段を作れなかったのは、私の失敗です」

 

「父上が見せなかった」

 

「それでも」

 

「あなたは父を信じなかった」

 

マルタ。

 

「はい」

 

「王を信じた?」

 

「完全には」

 

「では誰を」

 

長い。

 

「手順を」

 

「手順がなかった」

 

「だから失敗?」

 

「はい」

 

自分の方法そのものの欠落。

 

---

 

父が息子へ質問する権利を求めた。

 

認められる。

 

「アルベリク」

 

「はい」

 

「この城は誰のものだ」

 

広間。

 

核心。

 

「王国の防衛拠点です」

 

「それだけか」

 

「フォン・ライナー家の封建所領」

 

「それだけか」

 

「城下町と周辺村落の避難所」

 

「三つ?」

 

「はい」

 

「命令権は誰に」

 

「平時は辺境伯。戦時は王命と封建契約。避難と穀物は領民代表を含む共同規則が必要」

 

「今作った答えだ」

 

「以前は、父上のものだと思っていました」

 

「今は違う」

 

「包囲中、城下の人々が門外にいたからです」

 

父の顔。

 

「全員を入れれば、兵糧が」

 

「入れられる人数を事前に決めていなかった」

 

「城は軍事施設だ」

 

「税は避難所のためとも説明した」

 

「全員は救えない」

 

「だから誰を入れないか、父上だけで決めた」

 

「領主だ」

 

「その言葉が、灰冠契約を呼びました」

 

父が立つ。

 

「私が灰冠を?」

 

「父上は、自分が辺境そのものだと思った」

 

「私は四十年守った!」

 

「はい」

 

「王都が忘れた冬も!」

 

「はい」

 

「なら」

 

「守ったことが、所有する理由にはなりません」

 

広間。

 

息子が父へ。

 

ディートリヒの手。

 

震える。

 

怒り。

 

老い。

 

「お前の軍功も同じだ」

 

「はい」

 

「王を守ったから、王国を所有できない」

 

「はい」

 

「なら、なぜ王の命令を」

 

「職務だから」

 

「私の職務は」

 

「辺境を守ること」

 

「同じだ!」

 

「違う」

 

アルベリク。

 

「父上は、職務を家の権利に変えた」

 

---

 

## 六

 

その日の審査は、鐘三つで中断された。

 

火災警報。

 

城内。

 

西穀物庫。

 

「火!」

 

広間。

 

旧臣。

 

王兵。

 

都市民兵。

 

全員が立つ。

 

「扉を閉じろ!」

 

城代代理。

 

「誰も出すな!」

 

証拠隠滅。

 

逃亡。

 

「穀物庫を!」

 

マルタ。

 

火。

 

煙。

 

西廊下。

 

「審査場の記録を」

 

マティアス。

 

帳簿。

 

契約原本。

 

三部のうち、原本は広間。

 

「持ち出す」

 

王兵。

 

「誰が」

 

「六人で」

 

王室。

 

諸侯。

 

都市。

 

各二。

 

「辺境伯は」

 

「ここへ」

 

ディートリヒ。

 

「私の城が燃えている」

 

「被審査者です」

 

「穀物庫の構造を知る」

 

「私も」

 

アルベリク。

 

「お前は十年離れていた」

 

父。

 

「私が行く」

 

エレノアが決める。

 

「辺境伯、アルベリク、マルタ、城倉庫長。護衛は王兵二、旧臣二、都市民兵二」

 

三者。

 

火へ。

 

---

 

西穀物庫。

 

石造り。

 

屋根木材。

 

炎。

 

煙。

 

冬の乾燥。

 

「内側から」

 

倉庫長。

 

扉の錠。

 

外から壊されていない。

 

「誰が鍵を」

 

「私と家令」

 

家令ハルトマンは広間。

 

「予備鍵」

 

「辺境伯」

 

ディートリヒ。

 

腰。

 

持っていない。

 

審査開始時に預けた。

 

「では」

 

「地下搬入口」

 

辺境伯。

 

「どこ」

 

マルタが答える。

 

「製粉水路から」

 

全員が見る。

 

「麦を運ぶ古い斜路があります」

 

「城図にない」

 

アルベリク。

 

「町の粉屋は知っている」

 

「なぜ」

 

「夜に余った麦を戻すため」

 

余った?

 

「帳簿外の?」

 

倉庫長。

 

顔。

 

火の前。

 

「今は後!」

 

マルタ。

 

地下水路。

 

入口。

 

城壁外の製粉所へつながる。

 

灰冠が使える道。

 

「火を消すより」

 

アルベリク。

 

「人を」

 

倉庫内。

 

夜番。

 

六人。

 

「窓は」

 

「高い」

 

「地下斜路から」

 

煙が逆流。

 

「西壁を壊す」

 

ディートリヒ。

 

「石壁を?」

 

「古い射出口が埋めてある」

 

場所。

 

父が杖代わりの棒で指す。

 

「薄い」

 

王兵。

 

槌。

 

マルタ。

 

粉屋の大槌。

 

石。

 

一つ。

 

二つ。

 

穴。

 

煙。

 

中から声。

 

「ここだ!」

 

夜番。

 

三人。

 

残る。

 

「地下へ!」

 

「火元は」

 

油樽。

 

穀物庫に油?

 

通常ない。

 

「持ち込まれた」

 

放火。

 

---

 

ディートリヒは城壁内の古い防火水路を開けるよう命じた。

 

「使えない」

 

倉庫長。

 

「二十年前に閉鎖」

 

「誰が」

 

「領主命令で、維持費削減」

 

ディートリヒ自身。

 

父の顔。

 

「再開できるか」

 

「弁が錆び」

 

「地下」

 

「間に合わない」

 

「井戸桶!」

 

人力。

 

兵。

 

民。

 

審査員。

 

水。

 

炎。

 

麦。

 

一万袋。

 

「全部は」

 

マルタ。

 

「東側を切り離す」

 

袋を運ぶ。

 

人。

 

煙。

 

一人倒れる。

 

アルベリクが担ぐ。

 

父。

 

咳。

 

それでも袋へ手。

 

「父上は下がれ」

 

「私の城だ」

 

「今は人手です」

 

「命令するな」

 

「では死ぬ?」

 

「お前に言われたくない」

 

二人。

 

一袋。

 

運ぶ。

 

---

 

地下斜路から、灰色の外套の男たちが現れた。

 

消火に混じり。

 

三人。

 

一人は油壺。

 

一人は短弩。

 

一人は帳簿袋。

 

「止まれ!」

 

都市民兵。

 

弩。

 

発射。

 

マルタの横の粉屋徒弟。

 

胸。

 

倒れる。

 

「ピエール!」

 

マティアスの弟子とは別人? Alreadyピエール is Matthias apprentice. Avoid duplicate. Let's name "クラウス". Need revise mentally. We'll useクラウス.

 

弩矢。

 

十八歳の粉屋徒弟クラウス。

 

マルタの甥。

 

「クラウス!」

 

灰色の男。

 

油。

 

別の穀物列へ。

 

アルベリクが袋を蹴る。

 

油壺。

 

割れる。

 

火。

 

広がる前に土。

 

旧臣が一人へ斬りかかる。

 

市場法ではない。

 

城。

 

剣。

 

男の肩。

 

生け捕り?

 

「殺すな!」

 

アルベリク。

 

「火を!」

 

戦闘。

 

狭い。

 

煙。

 

ディートリヒが壁の古い鉄輪を引く。

 

落とし格子。

 

地下斜路。

 

「父上!」

 

灰色の二人と、旧臣一人が向こう側。

 

閉じ込め。

 

「ニコラウスが!」

 

旧臣。

 

「開ければ敵も」

 

父。

 

息子が見る。

 

領主の判断。

 

一人を切る。

 

「別出口は」

 

「製粉所側」

 

「回れ」

 

都市民兵。

 

走る。

 

ニコラウス。

 

向こう。

 

戦う音。

 

格子。

 

血。

 

「開けろ!」

 

旧臣。

 

ディートリヒの手。

 

鉄輪。

 

「父上」

 

アルベリク。

 

「開ければ油が」

 

「分かっています」

 

「なら」

 

ニコラウスの声。

 

「閉めてください、殿下!」

 

忠臣。

 

父は閉じる。

 

息子は、その顔を見る。

 

合理。

 

人命。

 

自分と同じ。

 

---

 

製粉所側で、灰色の男一人を捕らえた。

 

もう一人は川へ。

 

旧臣ニコラウスは死亡。

 

喉。

 

灰色の短剣。

 

放火犯一人死亡。

 

一人捕虜。

 

三人目は、帳簿袋を持って城下へ逃亡。

 

何の帳簿。

 

審査記録ではない。

 

穀物庫の秘密帳簿。

 

帳簿外五百袋。

 

「なぜ灰冠が」

 

マルタ。

 

倉庫長。

 

泣く。

 

「売っていました」

 

「誰が」

 

「私と、家令の補佐」

 

「どこへ」

 

「北方商人」

 

「利益は」

 

「城兵の給金」

 

「本当に」

 

「一部」

 

「残り」

 

「自分たち」

 

五百袋。

 

鼠ではない。

 

「灰冠は帳簿を持ち出し、辺境伯の横領として」

 

マティアス。

 

遅れて到着。

 

「実際、領主家の監督下」

 

「私は知らなかった」

 

ディートリヒ。

 

マルタ。

 

「その言葉を、今日は何度」

 

父は答えない。

 

---

 

## 七

 

火災死者。

 

粉屋徒弟クラウス。

 

旧臣ニコラウス。

 

夜番二人。

 

灰冠実行者一人。

 

計五。

 

負傷二十九。

 

焼失穀物。

 

三千二百袋。

 

水損。

 

二千。

 

救出。

 

一万余。

 

「成功?」

 

誰も言わない。

 

捕虜。

 

名。

 

ベルナール・クローデル。

 

元王国補給兵。

 

三港戦で片脚を負傷。

 

除隊。

 

補償遅延。

 

灰冠から義足代。

 

「火をつけた理由」

 

王室法官。

 

「帳簿を消す」

 

「何の」

 

「辺境伯が灰冠と結んだ証拠」

 

「偽造するため?」

 

「本物の契約を」

 

「署名なし」

 

「沈黙承諾」

 

「ヴァルネリア法では」

 

「灰冠では」

 

同じ。

 

「審査会を混乱させる」

 

「火災で王室兵が旧臣を殺せば」

 

「諸侯反乱」

 

「旧臣が王室代表を殺せば」

 

「王権弾圧」

 

「辺境伯を」

 

「生きていても死んでも」

 

「アルベリクを」

 

「父を救えば反逆者」

 

「見捨てれば王の犬」

 

二枚の紙。

 

既に。

 

「リヴィアは」

 

捕虜の目。

 

「誰です」

 

「紫衣の女」

 

「知らない」

 

「黒い手袋」

 

一瞬。

 

知る。

 

「《灰杯》?」

 

沈黙。

 

「会った?」

 

「声だけ」

 

「どこ」

 

「城下の聖ラウル施療院」

 

捜索。

 

空。

 

患者名簿。

 

《リヴィア・ジェルマン》。

 

肩傷。

 

三日前に退院。

 

城の火災前。

 

馬車。

 

西へ。

 

「また」

 

誰か。

 

アルベリクは言わない。

 

父。

 

「お前たちは、いつまで女一人を逃がす」

 

「女一人ではありません」

 

「姿が一つなら」

 

「役割と網が」

 

「言葉を分けるな」

 

「分けないと、次も一人を捕らえて終わります」

 

---

 

## 八

 

火災後、審査会を延期する案が出た。

 

死者。

 

証拠整理。

 

城の混乱。

 

「延期すれば」

 

エレノア。

 

「灰冠が次を」

 

「急げば」

 

オルテーズ伯。

 

「火災の怒りで判決を」

 

「三日」

 

マティアス。

 

「短い」

 

「帳簿を」

 

「七日」

 

「長い」

 

「五日」

 

交渉。

 

遺族。

 

マルタ。

 

「クラウスを埋葬するまで」

 

葬儀は二日後。

 

「三日目再開」

 

決定。

 

審査記録。

 

《延期理由、火災及び死者埋葬》

 

期限。

 

三日。

 

---

 

クラウスの葬儀。

 

城下の粉屋組合。

 

十八歳。

 

両親は遠い村。

 

叔母マルタが棺。

 

ディートリヒ辺境伯が参列しようとした。

 

「来ないで」

 

マルタ。

 

「領主として」

 

「今は」

 

「補償を」

 

「今は要らない」

 

「では」

 

「名前を覚えて」

 

「クラウス・ヴァイス」

 

「はい」

 

「何歳」

 

「十八」

 

「何を」

 

「粉屋徒弟」

 

「父は」

 

「ハンス。母はエリザ」

 

辺境伯は繰り返す。

 

「クラウス・ヴァイス。十八。粉屋徒弟。父ハンス、母エリザ」

 

「記録官へ言うのではなく」

 

「覚える」

 

「忘れるでしょう」

 

「なら、また聞け」

 

マルタ。

 

「あなたが領主でなくなったら?」

 

ディートリヒ。

 

「それでも」

 

葬儀へは出ない。

 

少し離れた城壁上。

 

見送る。

 

自分の城から。

 

---

 

旧臣ニコラウスの葬儀。

 

こちらには参列。

 

家紋。

 

剣。

 

軍葬。

 

「粉屋と差が」

 

都市民。

 

「旧臣だから」

 

「二人とも火災で」

 

身分。

 

ディートリヒは、ニコラウスの棺前で気づく。

 

クラウスには名前を聞いた。

 

ニコラウスは知っている。

 

四十年。

 

「葬儀を同じ日に」

 

提案。

 

家族が拒否。

 

「身分を混ぜるな」

 

旧臣家。

 

粉屋家も。

 

「一緒にされて、領主の忠臣物語に使われたくない」

 

マルタ。

 

両方。

 

別々。

 

死者を平等に扱うことが、死者の違いを消すことにもなる。

 

記録は別。

 

同じ頁に死因。

 

---

 

## 九

 

審査再開。

 

火災で、争点は増えた。

 

秘密穀物売却。

 

地下斜路。

 

閉鎖された防火水路。

 

領主の知らなかった帳簿。

 

「城の管理能力そのもの」

 

王室法務官。

 

「反逆と別」

 

オルテーズ伯。

 

「だが辺境緊急権を主張する者が、自城の麦も」

 

マティアス。

 

「管理できない」

 

ディートリヒ。

 

「管理できなかった部分を認める」

 

「部分?」

 

マルタ。

 

「五百袋」

 

「倉庫長の犯罪」

 

「あなたの城で」

 

「王都の不正を、王が全部」

 

「だから三身監査を」

 

エレノア。

 

「今作った」

 

「必要になったから」

 

「私だけを、後からできた基準で」

 

「反逆罪は当時法で」

 

「管理権の制限は、今後の安全措置として」

 

処罰と制度。

 

分ける。

 

---

 

三身監査会は、七項目を三種類に分けた。

 

第一。

 

反逆にあたるか。

 

第二。

 

封建義務違反か。

 

第三。

 

今後、辺境防衛を誰が担うか。

 

「一つの判決で」

 

諸侯。

 

「家の罪と城の制度を分ける」

 

エレノア。

 

「罪がなければ、制度を変えられない?」

 

「城は王国防衛拠点」

 

「それこそ王権拡大」

 

「なら領民税を返せ」

 

マルタ。

 

諸侯が見る。

 

「城が完全な家産なら」

 

彼女。

 

「城壁税、避難税、兵糧税を、領主の私財へ払っていたことになる」

 

「封建税だ」

 

「守る対価」

 

「なら守る義務も共同で審査される」

 

諸侯の論理。

 

領民の論理。

 

ぶつかる。

 

「城は家産であり公役」

 

オルテーズ伯。

 

「両方」

 

「都合よく」

 

「封建制とはそういうものだ」

 

伯は正直。

 

「なら、どちらの時に誰が決めるかを」

 

マティアス。

 

「書く」

 

---

 

## 十

 

反逆罪の評決。

 

王室席。

 

有罪二。

 

無罪一。

 

エレノアは無罪。

 

王室法務官二人は有罪。

 

「理由」

 

エレノア。

 

「外国軍事契約を検討し、報告を怠ったことは重大。ただし署名、家印、外国兵入城、資金受領、軍事協働の証拠がない」

 

「沈黙承諾は」

 

「ヴァルネリア法で認めない」

 

諸侯席。

 

無罪三。

 

都市・領民席。

 

無罪二。

 

有罪一。

 

有罪はマルタ。

 

全体。

 

無罪六。

 

有罪三。

 

反逆罪。

 

不成立。

 

旧臣が歓声。

 

辺境伯支持者。

 

「無罪!」

 

「殿下!」

 

エレノアが鐘。

 

「反逆罪についてです」

 

ほか。

 

ディートリヒは目を閉じる。

 

救われた。

 

完全ではない。

 

マルタが有罪へ投じた理由。

 

「署名がなくても、城門を閉じ、王軍と対峙した」

 

「王軍の手続不足は」

 

「それでも、城下が死んだ」

 

「反逆罪とは」

 

「法律の名前は分かりません」

 

「ではなぜ」

 

「王国を割る危険を、自分の判断だけで作ったから」

 

法的には弱い。

 

政治的には。

 

記録。

 

---

 

封建義務違反。

 

項目。

 

秘密交渉未報告。

 

有罪九対零。

 

軍税留保。

 

戦時緊急費として一部正当。

 

ただし報告欠如。

 

違反七対二。

 

穀物販売停止。

 

避難基準不備と特別予備。

 

違反八対一。

 

民兵動員。

 

辺境防衛権の範囲内。

 

ただし動員目的と期間の公開欠如。

 

違反六対三。

 

開城遅延。

 

王軍手続にも瑕疵。

 

双方責任。

 

処罰対象外。

 

記録。

 

---

 

「双方責任?」

 

王室強硬派。

 

「王が謝罪するのか」

 

エレノア。

 

「はい」

 

広間。

 

「アドリアン二世の名で、令状手続を欠いた包囲開始について、辺境領民とフォン・ライナー家へ謝罪文を」

 

諸侯。

 

「賠償を」

 

「王軍による死傷者へ」

 

「城側も」

 

「辺境伯側の死傷者へ、辺境伯財産から」

 

二つ。

 

「国民の税で王の誤りを」

 

マルタ。

 

「王室財産から」

 

「国家財産ではなく?」

 

ユースフの制度のように。

 

ヴァルネリアでも。

 

「王家私領収入から」

 

エレノア。

 

王が先に失う。

 

「辺境伯は」

 

個人財産。

 

領民税ではなく。

 

「受ける」

 

ディートリヒ。

 

---

 

## 十一

 

最も難しいのは、城の今後だった。

 

王室案。

 

王国直轄要塞。

 

諸侯案。

 

辺境伯家の権利維持。

 

都市・領民案。

 

城と穀物庫の共同管理。

 

「共同管理で戦えるか」

 

軍人。

 

「単独管理で灰冠を入れた」

 

マルタ。

 

「父上だけの責任では」

 

アルベリク。

 

「家令、商会」

 

「だから家の中だけで管理できない」

 

「町だけでも」

 

「はい」

 

「王室だけでも」

 

「はい」

 

三つ。

 

---

 

マティアス案。

 

《フォン・ライナー辺境城共同防衛憲章》

 

第一。

 

城の所有権は、フォン・ライナー家の封建家産として維持。

 

第二。

 

防衛、避難、穀物、外国交渉については公役財産とする。

 

「同じ城に二つの所有?」

 

諸侯。

 

「部屋で分ける?」

 

「権限で」

 

「複雑」

 

「現実が」

 

第三。

 

城門の平時鍵。

 

辺境伯家。

 

戦時。

 

四鍵。

 

辺境伯家。

 

王国軍。

 

城下町。

 

周辺村落連合。

 

「村が門を」

 

「避難時の開閉へ」

 

「敵前で」

 

「軍事閉鎖は二鍵。避難拒否は三鍵」

 

「急襲では」

 

「辺境伯家と王国軍の二鍵で閉鎖可能。ただし半日以内に残る二者へ記録」

 

第四。

 

穀物庫。

 

三帳簿。

 

城。

 

町。

 

村。

 

在庫は月一回公開。

 

軍事備蓄量の詳細は半年封印。

 

「敵が」

 

「総量だけ公開」

 

第五。

 

特別予備。

 

指揮官用、病人用、子供用。

 

用途別。

 

身分別を禁止。

 

「領主の食事は」

 

「自費」

 

「戦時も?」

 

「同じ配給を基本。医療例外」

 

第六。

 

外国使節。

 

辺境伯は聴取できる。

 

二日以内に三身通知。

 

緊急秘密は理由と期限。

 

七日以内。

 

第七。

 

辺境不在条項。

 

一人の領主の宣言で発動しない。

 

辺境伯。

 

王国軍現地司令。

 

城下・村代表。

 

三者中二者。

 

「王都の許可なし?」

 

「通信不能時」

 

「通信可能なら」

 

「王都へ」

 

第八。

 

防火水路。

 

地下斜路。

 

全て地図化。

 

ただし公開範囲を分ける。

 

「密輸道を公開すれば」

 

「監査機関へは」

 

第九。

 

灰冠系契約。

 

既知の印・紙・口座一覧と照合。

 

「新しい商会は」

 

「利益所有者を」

 

「分からなければ」

 

「小口のみ」

 

複雑。

 

---

 

「戦時に会議を」

 

ディートリヒ。

 

「矢が飛んでいる時、粉屋を探すのか」

 

マルタ。

 

「平時に基準を作る」

 

「敵は基準を読む」

 

アルベリク。

 

「だから一部封印」

 

「また秘密」

 

「理由と期限」

 

父が笑う。

 

苦い。

 

「お前は本当に、どこへ行っても同じ言葉だ」

 

「同じ穴があるからです」

 

---

 

## 十二

 

ディートリヒへの処分。

 

反逆罪なし。

 

死刑なし。

 

家名剥奪なし。

 

だが。

 

第一。

 

辺境伯の軍事指揮権を永久停止。

 

広間。

 

旧臣が立つ。

 

「殿下から軍を!」

 

ディートリヒの顔。

 

カリムと同じ。

 

「静粛に」

 

第二。

 

外国使節との単独交渉権を停止。

 

第三。

 

臨時軍税・避難税の単独徴収権を停止。

 

第四。

 

個人財産の三割を、城下死傷者、王軍死傷者、消失補償、穀物庫再建へ。

 

第五。

 

フォン・ライナー家の継承権は別審査。

 

「アルベリクへ?」

 

群衆。

 

「本人は王国軍職にあり、利益相反」

 

「私は求めていません」

 

アルベリク。

 

父が見る。

 

「家を捨てる?」

 

「決まっていません」

 

「なら誰が」

 

「家族会議と三身審査」

 

旧封建家では、王が跡継ぎを決めるものではない。

 

家。

 

家臣。

 

王。

 

新制度。

 

第六。

 

ディートリヒは城内居住を認める。

 

ただし防衛命令権なし。

 

「自分の城に住む囚人」

 

父。

 

「移住も選べます」

 

エレノア。

 

「どこへ」

 

「王家私領の館」

 

「王の客として?」

 

「監視対象として」

 

正直。

 

「残る」

 

「新管理者の命令へ」

 

「従う?」

 

父。

 

長い。

 

「努力する」

 

守れる約束。

 

---

 

旧臣の一人が剣を抜いた。

 

「これは屈辱だ!」

 

市場法ではない。

 

城の大広間。

 

「辺境伯を家から!」

 

王兵も。

 

アルベリクは動かない。

 

父を見る。

 

ディートリヒ。

 

「剣を納めろ、ゲルハルト」

 

「殿下!」

 

「私の軍権は終わった」

 

「だから我々が!」

 

「それが灰冠の紙に書かれている」

 

旧臣。

 

止まる。

 

「我々は殿下を守る!」

 

「私が望まない守り方をするな」

 

ラシード。

 

遠いナフルと同じ。

 

「殿下は王に屈した!」

 

「王も謝罪する」

 

「紙で!」

 

「私も銀を出す」

 

「家が」

 

「残る」

 

「軍がなければ」

 

「家は軍だけではない」

 

ディートリヒは、言いながら自分へ。

 

信じてきたものを失う。

 

「剣を」

 

ゲルハルト。

 

泣く。

 

納める。

 

---

 

## 十三

 

処分後。

 

父と息子は、西塔で二人になった。

 

窓。

 

焼けた穀物庫。

 

黒煙の跡。

 

城下。

 

雪解け。

 

「満足か」

 

父。

 

「いいえ」

 

「私は死ななかった」

 

「はい」

 

「軍を失った」

 

「はい」

 

「お前が望んだ」

 

「必要だと」

 

「同じか」

 

「違いません」

 

「なら満足しろ」

 

アルベリク。

 

「父上が無罪になれば、昔へ戻れると思っていましたか」

 

「反逆者ではないと証明した」

 

「はい」

 

「それで十分だ」

 

「城下の四十三人は」

 

「私だけが殺したのか」

 

「違います」

 

「また」

 

「王軍も。父上も。灰冠も。食糧不足も」

 

「責任を分ければ軽くなる」

 

「軽くしないため、名を分ける」

 

父は窓。

 

「私は、お前をそう育てたか」

 

「戦場で、死者の名を書けと」

 

「兵の数を」

 

「名前も」

 

「忘れないため」

 

「お前は忘れない?」

 

アルベリク。

 

「忘れます」

 

父が見る。

 

「記録がなければ」

 

「では記録が覚える?」

 

「人が読み返せば」

 

「読まなければ」

 

「失敗です」

 

「何でも失敗と言う」

 

「成功と呼ぶより」

 

父。

 

小さく笑う。

 

咳。

 

「クラウス・ヴァイス」

 

「十八歳。粉屋徒弟」

 

「ニコラウス・フォン・ヘルダー」

 

「五十四歳。旧臣」

 

「夜番」

 

「ヨーゼフ・クライン、三十九。エドガー・ロート、二十二」

 

父が覚えている。

 

「灰冠の男は」

 

「名が」

 

「不明」

 

「ベルナールでは?」

 

「捕虜です。死者は別」

 

「そうか」

 

父。

 

「覚えきれない」

 

「はい」

 

「なら、お前が」

 

「記録します」

 

「息子として?」

 

「証人として」

 

また。

 

父は怒らない。

 

「お前は、私を救わなかった」

 

「はい」

 

「切りもしなかった」

 

「はい」

 

「中途半端だ」

 

「父上も、契約へ署名せず拒絶もしなかった」

 

父が息子を見る。

 

痛い。

 

「似ていると?」

 

「はい」

 

「それが一番、腹が立つ」

 

---

 

「アルベリク」

 

「はい」

 

「継承権を取れ」

 

「今は」

 

「家を町へ渡すつもりか」

 

「共同憲章です」

 

「紙の城だ」

 

「石だけより」

 

「お前が辺境伯なら、軍も町も従う」

 

「だから危険です」

 

「自分が必要だと思うな?」

 

必要な自分。

 

「はい」

 

「私に言った言葉を、自分へ」

 

「はい」

 

父は椅子。

 

老いた。

 

「私は、王を認めていなかった」

 

「アドリアン陛下を?」

 

「子供だと思っていた」

 

「王です」

 

「王冠を被った子供だ」

 

「今も?」

 

「謝罪文を王家私財で払うなら」

 

少し。

 

「少し王だ」

 

「認める?」

 

「毎日、認めさせろ」

 

高原。

 

「王冠は、一度で」

 

「終わらない」

 

父。

 

同じ結論へ。

 

「お前も、息子として毎日認めさせろ」

 

「何を」

 

「私を父と呼ぶ価値があると」

 

アルベリク。

 

「努力します」

 

父が笑う。

 

「王みたいな答えだ」

 

---

 

## 十四

 

アドリアン二世の謝罪文は、王都から十二日後に届いた。

 

《フォン・ライナー辺境領への王軍進入に際し、三身確認を欠いたことを認める》

 

《灰冠自由会議との外国契約疑惑が重大であったとしても、疑惑のみをもって城と領民を包囲した手続は不十分であった》

 

《王家私領収入から、王軍行動に起因する死傷者へ補償する》

 

「王が謝った」

 

城下。

 

「負けた?」

 

「辺境伯が勝った?」

 

「軍権を失った」

 

「なら王の勝ち」

 

人々は勝敗に。

 

複雑な判決を一つの勝者へ。

 

エレノアが公開朗読後に言う。

 

「王の謝罪は敗北ではない」

 

諸侯が笑う。

 

「王室は、いつもそう言う」

 

「辺境伯の軍権停止も、諸侯の敗北ではない」

 

「では誰が勝った」

 

マルタ。

 

「クラウスは死にました」

 

静か。

 

「勝者なしと?」

 

エレノア。

 

「穀物庫は再建される」

 

「なら、次に燃えなければ」

 

成功。

 

---

 

補償。

 

王室側死傷者。

 

辺境伯側。

 

城下。

 

火災。

 

金額。

 

死者一人を銀へ。

 

また。

 

遺族選択。

 

銀。

 

税免除。

 

土地。

 

教育。

 

長期食糧。

 

クラウスの両親。

 

「銀は」

 

「弟子の資格基金を」

 

マルタ。

 

粉屋組合。

 

クラウス名義で、貧しい徒弟の受験料と道具。

 

「英雄に?」

 

「しない」

 

「基金名は」

 

《西穀物庫火災徒弟基金》。

 

個人名なし?

 

両親。

 

「名を」

 

《クラウス・ヴァイス徒弟基金》。

 

記録。

 

許しではない。

 

---

 

ニコラウス家。

 

王室補償を拒否。

 

「王軍の金は」

 

辺境伯個人財産から。

 

受ける。

 

死者の家族も、誰から受けるかを選ぶ。

 

同じ死因。

 

違う政治。

 

「分裂が」

 

監査官。

 

「選択を奪うより」

 

マティアス。

 

---

 

## 十五

 

新しい城門鍵が作られた。

 

四本。

 

辺境伯家。

 

王国軍。

 

城下町。

 

村落連合。

 

金工師。

 

サミーラではない。

 

ヴァルネリアの老鍛冶。

 

鍵の形を少しずつ変える。

 

一つでは開かない仕組みではない。

 

門には二つの錠。

 

軍事閉鎖。

 

避難閉鎖。

 

「複雑だ」

 

城兵。

 

「急襲で」

 

「軍事錠は二鍵」

 

「二人が寝ていたら」

 

「当番」

 

「裏切ったら」

 

「記録」

 

「記録で矢は止まらない」

 

「止めるのは門」

 

「なら一鍵で」

 

「一人が閉じ込める」

 

終わらない。

 

訓練。

 

夜襲想定。

 

鐘。

 

当番。

 

最初の訓練。

 

村代表の鍵守が遅刻。

 

牛の出産。

 

「戦争は待たない」

 

城兵。

 

「牛も」

 

村人。

 

代替鍵守。

 

二人。

 

制度は生活へ。

 

---

 

ディートリヒは、最初の訓練を塔から見た。

 

命令できない。

 

口を出す。

 

「東門の弓兵が遅い!」

 

新しい城代。

 

王国軍、町、家の共同選任。

 

名はフリードリヒ・ケストナー。

 

元家臣。

 

王軍経験。

 

「辺境伯殿」

 

「何だ」

 

「観察意見は、訓練後の記録会へ」

 

「今言えば直る」

 

「今は私が命令します」

 

父の顔。

 

「お前は私の」

 

「元家臣です」

 

「恩を」

 

「あります」

 

「なら」

 

「だから、規則どおり」

 

ディートリヒ。

 

杖。

 

塔を去る。

 

怒り。

 

だが兵へ直接命令しない。

 

努力。

 

---

 

マルタは穀物庫三帳簿の町側記録者になった。

 

「粉屋が」

 

「まだ言う?」

 

旧臣。

 

「書記では」

 

「数字は読める」

 

「字が」

 

「息子に」

 

「息子が書けば」

 

「私が数える」

 

二人一組。

 

読み書き。

 

現物。

 

「一万三百四十二袋」

 

城帳簿。

 

「一万三百四十」

 

町。

 

「二袋」

 

村。

 

「病人用へ」

 

「記録は」

 

「今」

 

小さい差。

 

以前なら鼠。

 

今は。

 

---

 

## 十六

 

火災で捕らえられたベルナール・クローデルの裁判。

 

彼は灰冠へ入った理由を話した。

 

義足。

 

補償遅延。

 

妻。

 

娘。

 

「王国が払っていれば」

 

王室法官。

 

「入らなかった?」

 

「分かりません」

 

「灰冠は」

 

「すぐ払った」

 

「代わりに」

 

「最初は帳簿を運ぶだけ」

 

「次に」

 

「鍵型」

 

「次に」

 

「油」

 

段階。

 

「断れた」

 

「妻の薬が」

 

「断れば」

 

「支払い停止」

 

「それでも」

 

「はい」

 

罪。

 

火災。

 

死者。

 

「死刑を」

 

旧臣。

 

粉屋組合。

 

意見分裂。

 

マルタ。

 

「死刑を望みますか」

 

クラウスの両親へ。

 

「分からない」

 

母。

 

「殺せば息子が」

 

「戻らない」

 

父。

 

「生かせば」

 

「腹が立つ」

 

「選べない」

 

「法廷が」

 

「逃げるな」

 

遺族。

 

法官。

 

「では、我々が決めます」

 

判決。

 

殺人の共同実行。

 

放火。

 

反逆工作。

 

死刑ではなく終身労役を求める意見。

 

「なぜ」

 

「灰冠の網を証言」

 

「取引」

 

「命を買う?」

 

マティアス。

 

「証言減刑を明記」

 

「被害者が」

 

「許さなくてよい」

 

ベルナール。

 

「生きたい」

 

「なぜ」

 

「娘が」

 

「会える?」

 

「家族を人質にしない」

 

「娘は」

 

「選べる」

 

最終。

 

死刑を回避。

 

二十五年の強制復旧労働。

 

最初の五年は城壁・穀物庫。

 

公衆監視。

 

証言義務。

 

逃亡時。

 

再審。

 

「二十五年後」

 

「生きていれば」

 

五十代。

 

「軽い!」

 

「重い!」

 

また。

 

クラウスの母。

 

「娘へ、父が何をしたか隠すな」

 

「年齢に応じて」

 

「誰が」

 

「母と記録官」

 

「灰冠の子と呼ばれる」

 

「家族情報を公開しない」

 

本人の罪。

 

家族。

 

分ける。

 

---

 

## 十七

 

リヴィアが城下へ残した最後の紙が見つかった。

 

聖ラウル施療院。

 

病床の板の裏。

 

黒い手袋の指で書いたような細い字。

 

《父を救えば、王の犬と呼ばれる》

 

《父を切れば、親殺しと呼ばれる》

 

《どちらも選ばなければ、臆病者と呼ばれる》

 

《人は、名前を与えれば行動を選ばせられる》

 

アルベリクへ。

 

個人。

 

「挑発」

 

ハンス副官。

 

王都から来た。

 

「燃やしますか」

 

「記録へ」

 

「また」

 

「はい」

 

「返事を?」

 

「どこへ」

 

「紙で」

 

「彼女が読む」

 

「必要ありません」

 

アルベリクは裏へ一文。

 

《呼び名は、行動の代わりにならない》

 

「弱い」

 

ハンス。

 

「戦書ではありません」

 

「向こうは戦書として」

 

「なら、なおさら」

 

紙は審査記録へ。

 

リヴィアへ送らない。

 

彼女の言葉も、相手の所有物ではなく証拠へ。

 

---

 

## 十八

 

アルベリクは城を去る前、父の私室へ。

 

ディートリヒは、古い軍服を箱へ入れていた。

 

「捨てる?」

 

「保管」

 

「軍権は」

 

「服まで罪ではない」

 

「はい」

 

「お前は王都へ?」

 

「沿岸軍へ」

 

「また海か」

 

「灰冠艦隊の残党」

 

「私の審査は終わった?」

 

「処分は」

 

「家の継承が」

 

「後です」

 

「お前は出るか」

 

「利益相反」

 

「息子だ」

 

「だから」

 

父は箱を閉じる。

 

「アルベリク」

 

「はい」

 

「この城を継がなくても、家名は捨てるな」

 

「なぜ」

 

「私が罪人でないと」

 

「家名が証明する?」

 

「違う」

 

父。

 

「罪があっても、家は続くと」

 

「それは」

 

「人は、父の罪で息子を」

 

「私も王の犬と」

 

「嫌か」

 

「はい」

 

「親殺しは」

 

「嫌です」

 

「臆病者は」

 

「それも」

 

父が笑う。

 

「全部嫌なら、全部呼ばれろ」

 

「父上は」

 

「反逆者、頑固者、古い領主、辺境の盾」

 

「どれが本物」

 

「全部だ」

 

四鏡。

 

「リヴィアと同じ」

 

父の顔が止まる。

 

「違う」

 

アルベリク。

 

「父上は、自分で選んだ結果も含む」

 

「女は」

 

「他人の顔を敵にする」

 

「お前は私を」

 

「父です」

 

初めて。

 

証人ではなく。

 

「それだけ?」

 

「辺境伯。被審査者。軍権を失った領主。城を守った者。城下を門外へ置いた者」

 

「多い」

 

「全部です」

 

父は椅子へ。

 

「息子として、一つだけ言え」

 

アルベリク。

 

「生きていてよかった」

 

父。

 

返事をしない。

 

窓。

 

「私もだ」

 

小さく。

 

---

 

## 十九

 

フォン・ライナー城の共同憲章は、四十日後に正式施行された。

 

最初の四十日で起きた問題。

 

鍵守遅刻。

 

帳簿差二袋。

 

王国軍と旧臣の当番争い。

 

村人が城門訓練日に市場を優先。

 

特別予備から辺境伯用葡萄酒を出そうとした侍従。

 

「医療用です」

 

「辺境伯は咳を」

 

医師。

 

「量」

 

「一日一杯」

 

「白葡萄酒」

 

「普通兵は」

 

「薬草湯」

 

「身分別?」

 

「症状別」

 

医師の署名。

 

例外。

 

「辺境伯が二杯を」

 

侍従。

 

「一杯」

 

ディートリヒ本人。

 

不満。

 

従う。

 

小さい。

 

制度は大きな反乱より、小さな特権で崩れる。

 

---

 

城下の人々は、城を《共同城》とは呼ばなかった。

 

今も《フォン・ライナー城》。

 

名前は変わらない。

 

中の鍵が変わった。

 

帳簿が増えた。

 

領主が命令できなくなった。

 

それだけ。

 

あるいは、それが大きい。

 

---

 

アドリアン二世は、王都で判決を読んだ。

 

「反逆無罪」

 

軍務官。

 

「諸侯が勢いづきます」

 

「王室の謝罪が」

 

「弱さと」

 

「手続を変える」

 

王。

 

「全辺境城へ三身確認令?」

 

「一律は反発」

 

「希望領から」

 

「誰も」

 

「税補助を」

 

「金で制度を」

 

「必要経費」

 

「灰冠と」

 

「公開する」

 

王家。

 

財務。

 

都市。

 

王も学ぶ。

 

「アルベリクは」

 

「沿岸へ戻ります」

 

「父を」

 

「救わず、切らず」

 

王。

 

「それでよい」

 

「陛下なら」

 

「私は王だから、父を持たないように見られる」

 

アドリアン。

 

実際には父王。

 

死者。

 

「王も息子です」

 

エレノア。

 

姉。

 

「だから失敗する」

 

「認める?」

 

「記録へ」

 

姉が笑う。

 

---

 

## 二十

 

灰冠自由会議は、《父の城計画》を次のように記録した。

 

《ディートリヒ辺境伯、反逆有罪化、未達》

 

《無罪による王権失墜、限定》

 

《王室謝罪、達成》

 

《諸侯蜂起、未達》

 

《城下・旧臣衝突、限定》

 

《穀物庫火災、達成》

 

《審査記録焼却、未達》

 

《アルベリクによる父殺し・救出の二者択一、未達》

 

《フォン・ライナー城共同憲章、敵制度強化》

 

《辺境伯軍権停止、王国軍事構造変化》

 

《リヴィア退避、成功》

 

無貌。

 

「また制度を」

 

新しい黒雪。

 

「王と諸侯の間に町と村が入った」

 

「封建契約が」

 

「薄くなる」

 

「王権が強く?」

 

「単純には」

 

「誰が得た」

 

「監査者」

 

「誰が失った」

 

「即断」

 

「戦争では」

 

「遅い」

 

「灰冠には」

 

「読みにくい」

 

黒雪は地図。

 

フォン・ライナー城。

 

ヴァルネリア。

 

その北西。

 

アルビオン海王国。

 

女王アデライン一世。

 

議会。

 

海軍。

 

私掠船。

 

停戦。

 

「父と息子は割れなかった」

 

「次は」

 

「女王と海軍」

 

「セドリック・ヴォーン提督?」

 

「女王を守るため、議会を無視する」

 

「議会は女王を守るため、海軍予算を止める」

 

「両方が忠誠」

 

「だから割れる」

 

アルビオン。

 

偽の王命。

 

私掠免許。

 

羊毛税。

 

海上保険。

 

「王を認めない臣下ではなく」

 

黒雪。

 

「王を愛しすぎる臣下へ」

 

リヴィアの馬車。

 

北西の港。

 

霧。

 

---

 

## 二十一

 

アルベリクが城を離れた朝。

 

城門の四鍵が初めて実務で使われた。

 

軍事ではない。

 

避難でもない。

 

王国軍司令官の出門。

 

必要鍵。

 

辺境伯家と王国軍。

 

二本。

 

「町と村は」

 

城門番。

 

「出門だけなら」

 

「規則に」

 

「はい」

 

ディートリヒは辺境伯家の鍵を持っていない。

 

新しい家代表。

 

老家臣ではなく、家族会議で選ばれた叔母ヘレーネ・フォン・ライナー。

 

父の妹。

 

「兄上は」

 

「持てない」

 

「分かっている」

 

ディートリヒは塔。

 

見送り。

 

鍵が回る。

 

門。

 

アルベリクの馬。

 

ハンス。

 

護衛。

 

城下。

 

マルタ。

 

穀物帳簿。

 

「将軍」

 

「はい」

 

「次に来る時、城門はあなたの命令だけでは開きません」

 

「知っています」

 

「嫌ですか」

 

「少し」

 

「記録します?」

 

「必要ありません」

 

「正直では」

 

「では、かなり」

 

マルタが笑う。

 

「王みたい」

 

「父にも言われました」

 

---

 

門外。

 

農地。

 

雪解け水。

 

新しい防火水路工事。

 

ベルナールたち囚人。

 

監視。

 

石。

 

土。

 

捕虜がアルベリクを見る。

 

「将軍」

 

「何です」

 

「私は、灰冠に入らなければ、義足を」

 

「王国の補償が遅れた」

 

「はい」

 

「だから許されると思う?」

 

「いいえ」

 

「でも、王国の責任も記録します」

 

「それで脚は」

 

「戻らない」

 

「娘は」

 

「家族情報を守ります」

 

「私が何をしたか」

 

「年齢に応じて」

 

「娘は私を父と」

 

アルベリク。

 

父の塔を振り返る。

 

「それは、娘が決めます」

 

「国ではなく?」

 

「はい」

 

ベルナールは土へ。

 

「厳しい」

 

「守れる約束だけです」

 

---

 

城が遠くなる。

 

ハンス。

 

「父上を救えましたか」

 

アルベリク。

 

「反逆罪からは」

 

「失ったものは」

 

「軍権」

 

「父としては」

 

「分かりません」

 

「聞かなかった?」

 

「生きていてよかったと」

 

「それで」

 

「十分ではない」

 

「でも」

 

「はい」

 

風。

 

城。

 

旗竿には、新しい旗。

 

フォン・ライナー家の銀狼。

 

その下に、四つの小さな印。

 

王国。

 

町。

 

村。

 

家。

 

一枚の布へ。

 

「家紋は残した」

 

ハンス。

 

「はい」

 

「王は」

 

「認めた」

 

「町も」

 

「条件付きで」

 

「父上は」

 

「毎日、認めさせろと」

 

アルベリクは前を向く。

 

西。

 

海。

 

アルビオン。

 

灰色の帆。

 

女王。

 

議会。

 

次の報告。

 

《アルビオン王国海軍、議会許可なく私掠船三十隻を再武装》

 

《セドリック・ヴォーン提督、女王の密命を主張》

 

《アデライン一世、命令を否定》

 

本物の忠誠。

 

偽の王命。

 

海軍。

 

議会。

 

王冠。

 

「次は」

 

ハンス。

 

「海です」

 

「父の城より」

 

「広い」

 

「鍵は」

 

「港ごとに違う」

 

アルベリク。

 

「面倒ですね」

 

「はい」

 

城の門なら、四本の鍵で閉じられる。

 

海には門がない。

 

だから王は、船長一人ひとりに命令を信じさせなければならない。

 

そして船が一度港を離れれば。

 

王が命令を否定しても。

 

帆は、すぐには戻らない。

 

灰冠自由会議が次に狙ったのは、王を認めない臣下ではなかった。

 

王のためなら、王の言葉さえ無視できる臣下たちだった。

書き溜めていた分のストックがほぼ尽きてきましたので… 更新頻度についてアンケートをさせていただきたいと思います。 以降の更新頻度はどの程度がよいでしょうか?

  • 死ぬ気でがんばれ
  • 可能な範囲でがんばれ
  • そんなに急ぐこたーないぞ
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