灰冠と香路の年代記   作:MOZIO

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第三十四章 七つの国の被告

被告人は、一人だった。

 

裁こうとする国は、七つあった。

 

七つの国は、それぞれ別の罪名を持ってきた。

 

セレスタは、戦争を商品にした罪を。

 

アウレリアは、皇帝の毒杯へ銀を流した罪を。

 

ナフルは、洪水と継承を同じ帳簿で売った罪を。

 

アルカシャは、鉱山の死者と毒物を担保にした罪を。

 

アルビオンは、王璽と船員給金を債権へ変えた罪を。

 

ヴァルネリアは、王と諸侯を秘密条約で割ろうとした罪を。

 

オルシャは、巡礼者の道と聖地の鍵を取引した罪を。

 

どの国も、自国の被害が最も重いと考えた。

 

どの国も、自国の裁判こそ先に行うべきだと主張した。

 

そして、どの国も。

 

自国の役人。

 

商人。

 

軍人。

 

聖職者。

 

王族。

 

それらが灰冠自由会議から利益を得た事実については、できれば後で話したいと思っていた。

 

マルケル・セヴェロスは、そのことを知っていた。

 

だから共同裁判を恐れながら。

 

同時に、望んでいた。

 

七つの国が互いの罪を暴く間。

 

被告人は、自分が唯一必要な説明者であり続けられるからである。

 

---

 

## 一

 

法廷は、オルシャ巡礼大門の内側に作られなかった。

 

門を閉じる権利と。

 

人を裁く権利を。

 

同じ場所へ置かないためだった。

 

七国共同法廷が選んだのは、旧香料取引所。

 

かつて巡礼者の祈りより、胡椒の重さが優先された建物。

 

中央に大きな天窓。

 

床には、七方向へ伸びる黒い線。

 

線の先に。

 

七つの審理机。

 

机の形は同じ。

 

高さも。

 

幅も。

 

国旗だけが違う。

 

中央には、被告席が一つ。

 

鎖はない。

 

代わりに、床へ円が描かれている。

 

《被告人は、許可なく円を出ない》

 

「線だけで?」

 

アルノー・ド・ヴェルモン。

 

「逃げれば」

 

ギヨーム・ド・サン=ロシュ侯。

 

「拘束します」

 

「最初から鎖を」

 

「有罪確定前です」

 

「ハリールは」

 

「別件被告」

 

「マルケルが」

 

「逃げる?」

 

ギヨームは南塔を見る。

 

「逃げれば、必要な囚人ではなくなります」

 

---

 

被告席の後ろに、鉄格子は置かれなかった。

 

代わりに、三つの扉。

 

オルシャ衛兵。

 

聖剣騎士。

 

七国共同護衛。

 

一つの国が被告を奪えないように。

 

一つの国が殺せないように。

 

三つ。

 

「護衛同士が争えば」

 

アルノー。

 

「記録します」

 

ヨナ・ベン=エズラ。

 

十六歳。

 

法廷首席公開記録官。

 

若すぎるとの異議が出た。

 

マリアムは答えた。

 

「彼は、各国が消したがる言葉を、消さずに書きます」

 

「能力ではなく性格?」

 

「両方です」

 

ヨナの机は、中央ではない。

 

七机の外側。

 

どの国にも背を向けない場所。

 

隣にリナ。

 

新しい炭板。

 

火傷した手には薄い布。

 

彼女は正式な記録官ではない。

 

《無言証人》。

 

誰がそう呼び始めたか。

 

本人は嫌っている。

 

板へ。

 

《リナ》

 

ヨナ。

 

「記録上も、リナです」

 

---

 

## 二

 

七国の裁判席には、それぞれ二人が座った。

 

法を読む者。

 

被害を読む者。

 

セレスタ。

 

法席。

 

海洋都市同盟法務官ジュリア・フェラーラ。

 

被害席。

 

港湾労働者代表パオロ・フィエーゾ。

 

アウレリア。

 

法席。

 

帝国文書院長エレニ・スコルディス。

 

被害席。

 

毒杯事件で右半身麻痺を負ったミハイル皇弟の代理として、侍医テオファネス。

 

ミハイル本人は旅ができない。

 

だが左手で書いた供述書を持たせた。

 

ナフル。

 

法席。

 

カーディー・サフワーンの代理法官。

 

被害席。

 

サルマ・ベン=ナタン。

 

会計官。

 

洪水。

 

塩。

 

継承。

 

すべての帳簿を持つ。

 

アルカシャ。

 

法席。

 

王女ザレフの法律顧問サイラス・メフル。

 

被害席。

 

黒口鉱山現場長シャヒーン・バヌー。

 

右腕の義手。

 

机の上へ置くたび、鉄の音がする。

 

アルビオン。

 

法席。

 

下院海軍監査議員トマス・ヘイル。

 

被害席。

 

小作農トーマス・ウェルズ。

 

弓兵。

 

未払給金証書の子。

 

似た名の二人が並ぶため。

 

法廷では。

 

議員を《ヘイル》。

 

農夫を《ウェルズ》。

 

と記録した。

 

ヴァルネリア。

 

法席。

 

王妹エレノア・ド・ヴァルネの代理法官、レミ・ヴォークラン。

 

被害席。

 

時計職人マティアス・コルヴァン。

 

左腕の矢傷。

 

細い文字を書くと、指が震える。

 

オルシャ。

 

法席。

 

ギヨーム・ド・サン=ロシュ侯。

 

被害席。

 

巡礼大門外の水売りファティマ・アル=ハルル。

 

新しい第七席監査人。

 

マリアムは裁判席へ座らなかった。

 

灰冠条項の当事者。

 

鍵守家。

 

証人。

 

制度設計者。

 

利益相反。

 

彼女は、法廷運営官。

 

発言権はある。

 

評決権はない。

 

「自分から外れた?」

 

ギヨーム。

 

「外しました」

 

「嫌か」

 

「かなり」

 

いつもの。

 

---

 

聖座ルミナは、国として裁判席を求めた。

 

アウレリアも。

 

ヴァルネリアも。

 

「七国の理由は」

 

教皇使節ベネディクトゥス。

 

「七王勘定が、七国を直接名指ししています」

 

「聖座も」

 

「観察席と、証拠保全鍵を」

 

「投票は」

 

「なし」

 

「教皇が」

 

「自分の国が被害者でないと?」

 

「被害者です」

 

マリアム。

 

「同時に、七つへ絞ると決めなければ、十六国すべてが来ます」

 

「それが正義では」

 

「裁判が始まりません」

 

遅さ。

 

選択。

 

聖座は観察席。

 

ルシタニア。

 

セレスタ海戦の被害者として。

 

同じ。

 

観察席。

 

ノルハイム。

 

救済債務。

 

同じ。

 

裁判は、最初から足りない。

 

---

 

## 三

 

開廷規則は、三十七条あった。

 

長い。

 

だが最も重要なのは、五つ。

 

第一。

 

七国のいずれかが、マルケルの犯罪を主張する時。

 

同じ取引によって、自国の官民が得た利益も提出する。

 

「被害と利益の対読規則」。

 

第二。

 

秘密証拠は、被告への質問に使えない。

 

公開できないなら、評決の根拠にしない。

 

証人保護のための氏名封印は可能。

 

期限付き。

 

第三。

 

被告人の供述だけで、他者を有罪としない。

 

帳簿。

 

物証。

 

別証人。

 

二つ以上。

 

第四。

 

各国が自国民の名を隠した場合。

 

その国は、同じ帳簿に関する他国民の名も評決へ使えない。

 

「片側公開禁止」。

 

第五。

 

責任認定と刑罰を分ける。

 

最初に。

 

何をしたか。

 

次に。

 

どこまで予見したか。

 

最後に。

 

どう罰するか。

 

「刑を最後へ?」

 

遺族。

 

「逃がすためだ!」

 

「違います」

 

マリアム。

 

「最初に死刑を求めれば、各国は自国の不都合な証拠を出さなくなります」

 

「なぜ」

 

「被告を殺すのに必要な分だけを出すからです」

 

「十分では」

 

「灰冠の全体が残ります」

 

「全体を知るため、生かす?」

 

「知ることと刑を分けます」

 

マルケル。

 

被告席。

 

聞く。

 

自分が必要とされる論理。

 

「彼が望んでいる」

 

遺族。

 

「はい」

 

マリアム。

 

「だから、望んでいること自体を理由に、逆を選びません」

 

敵に選ばせない。

 

---

 

評決。

 

法席七票。

 

被害席七票。

 

責任認定には。

 

法席五。

 

被害席五。

 

両方が必要。

 

「被害者が法を」

 

一部法官。

 

「法官だけが被害を」

 

ファティマ。

 

「決めないためです」

 

「被害席に感情が」

 

「法席に国益があります」

 

誰も中立ではない。

 

利益を隠さない。

 

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## 四

 

マルケル・セヴェロスが法廷へ入った時。

 

群衆は、思ったより静かだった。

 

外で叫ぶ者はいる。

 

《殺せ》

 

《話させろ》

 

《セレスタへ渡せ》

 

《アウレリアへ》

 

《ナフルへ》

 

《オルシャで》

 

七つ。

 

中。

 

遺族席。

 

商人。

 

兵士。

 

巡礼者。

 

坑夫。

 

船員。

 

職人。

 

役人。

 

椅子。

 

マルケルは、白い囚人服ではなく。

 

灰色の長衣。

 

身分を示さない。

 

左小指。

 

ない。

 

机へ手を置く。

 

「氏名」

 

ヨナ。

 

「マルケル・セヴェロス」

 

「生年」

 

「灰暦八百十二年」

 

「出生地」

 

「アウレリア東方帝国、カルケドン市」

 

「職歴」

 

「帝国財務院次官。蒼環海共同平和財庫設計官。灰冠共同財庫創設者。セレスタ海上信用連盟顧問」

 

「通称」

 

彼。

 

一瞬。

 

「会計王」

 

「本人は」

 

「王ではありません」

 

「認めますか」

 

ギヨーム。

 

「何を」

 

「七国から提出された帳簿へ署名したこと」

 

「帳簿を見てから」

 

「自分の署名か」

 

「見てから」

 

「罪状」

 

「一括では答えません」

 

群衆。

 

「逃げるな!」

 

マルケル。

 

「七つの国が別の罪を言うなら、七つに答えます」

 

「分けて生き延びる?」

 

シャヒーン。

 

「分けなければ、あなたの弟の死と、アウレリア皇弟の毒杯が同じ罪になります」

 

義手。

 

机。

 

音。

 

「同じ銀だったかもしれない」

 

「だからこそ」

 

マルケル。

 

「同じ罪とは限りません」

 

「あなたは無罪を」

 

「求めます」

 

広場。

 

「一部について」

 

正直。

 

「何について有罪を」

 

「帳簿を作ったこと」

 

「曖昧」

 

「詳細は、証拠ごとに」

 

法廷。

 

彼は裁判の形式を使う。

 

それは被告の権利で。

 

彼の武器でもある。

 

---

 

## 五

 

七冊の帳簿は、同じ日に届いた。

 

セレスタ。

 

青潮帳。

 

アウレリア。

 

紫秤帳。

 

ナフル。

 

乾河帳。

 

アルカシャ。

 

火口帳。

 

アルビオン。

 

羊毛帳。

 

ヴァルネリア。

 

灰狼帳。

 

オルシャ。

 

聖門帳。

 

表紙の色。

 

題。

 

違う。

 

中の紙。

 

同じ時期。

 

同じ紙房。

 

同じ簿記記号。

 

同じ署名。

 

マルケル・セヴェロス。

 

いくつか。

 

左小指を失う前の七本線花押。

 

失った後の六本線。

 

年代が合う。

 

偽造なら。

 

極めて精巧。

 

---

 

七冊の第一頁には、同じ額があった。

 

銀貨換算。

 

八十万。

 

だが名目が違う。

 

青潮帳。

 

《海上損失平準化準備金》。

 

紫秤帳。

 

《東方宮廷安定保証》。

 

乾河帳。

 

《ナフル水路・塩税復旧信用》。

 

火口帳。

 

《山岳鉱産物長期輸送保証》。

 

羊毛帳。

 

《北西船員給金償還基金》。

 

灰狼帳。

 

《ヴァルネリア辺境防衛補完信用》。

 

聖門帳。

 

《巡礼路安全・宿駅保全基金》。

 

七つ。

 

同じ銀。

 

「一つの金を、七つへ?」

 

トーマス・ウェルズ。

 

「同時には使えない」

 

サルマ。

 

「帳簿上は」

 

「どうやって」

 

マルケル。

 

「保証です」

 

「銀そのものではなく」

 

「払う約束」

 

「同じ銀を裏付けに」

 

「七つの約束」

 

「全部が同時に必要になれば」

 

「破綻します」

 

「分かっていた?」

 

「はい」

 

法廷。

 

「では詐欺」

 

セレスタ法官。

 

「平時には、すべてが同時に請求されない前提でした」

 

「戦争を防ぐ財庫が」

 

マティアス。

 

「戦争が起きた時に破綻する?」

 

「だから、戦争を起こさない動機になると」

 

「誰に」

 

「各国の出資者へ」

 

「実際は」

 

「戦争が起きると、請求順を操作する利益が生まれた」

 

「予見を」

 

マルケル。

 

「十分にしませんでした」

 

「できなかった?」

 

「しなかった」

 

最初の。

 

認める。

 

---

 

## 六

 

セレスタ。

 

青潮帳。

 

証人。

 

ルチアーノ・ヴェルディ。

 

元第一統領。

 

元銀行頭取。

 

四十日の暫定管理を終え。

 

今は公職なし。

 

資産の大半を公開信託へ。

 

顔。

 

以前より痩せた。

 

妻カテリーナは傍聴席。

 

「青潮帳を知っていたか」

 

ジュリア法官。

 

「一部」

 

「八十万の二重保証を」

 

「知りません」

 

「戦争配当契約は」

 

「署名しました」

 

「なぜ」

 

「海上損失を、軍需輸送利益で埋めるため」

 

「戦争が長いほど」

 

「配当が」

 

「増えました」

 

「知っていた」

 

「はい」

 

港湾労働者パオロ。

 

「我々の給金は」

 

「戦争利益から」

 

「一部」

 

「なら、港労働者も利益を?」

 

「はい」

 

パオロ。

 

止まる。

 

自分の席。

 

被害者。

 

同時に。

 

「我々は、船を積んだ」

 

「はい」

 

「武器も」

 

「はい」

 

「拒めた?」

 

「契約上は」

 

「失業する」

 

「はい」

 

空腹。

 

自由。

 

「では、誰が一番」

 

「私です」

 

ルチアーノ。

 

「そう言えば、楽か」

 

パオロ。

 

「何が」

 

「我々が全部、頭取のせいにできる」

 

「実際」

 

「全部ではない」

 

パオロ。

 

「港は儲かった」

 

対読。

 

---

 

青潮帳。

 

セレスタ側が最初に提出した写しでは。

 

軍需利益を受けた船主名が、黒塗り。

 

「保護対象?」

 

ギヨーム。

 

「未起訴者」

 

「他国の名は」

 

アウレリア武器商。

 

ナフル穀物商。

 

公開。

 

「片側公開禁止」

 

マリアム。

 

セレスタは。

 

自国船主名を開くか。

 

他国名を評決から外すか。

 

ジュリア。

 

「開示します」

 

船主。

 

二十八家。

 

総督家の親族。

 

ヴィットーレ・ダンドロの兄。

 

カテリーナの実家の取引先。

 

ルチアーノの銀行だけではない。

 

群衆。

 

自国名が出る。

 

共同裁判。

 

最初の試験。

 

---

 

マルケル。

 

「私は、セレスタへ戦争を命じていません」

 

「戦争配当を」

 

「設計した」

 

「それが、戦争を長くする誘因と」

 

「後に理解した」

 

「いつ」

 

「最初の三港封鎖」

 

「その時、止めた?」

 

「止めようと」

 

「帳簿は」

 

「継続」

 

「なら」

 

「失敗しました」

 

「止める権限は」

 

「単独ではない」

 

「でも、始める時には」

 

「複数でした」

 

「名前を」

 

セレスタ出資者。

 

各国。

 

「出します」

 

マルケル。

 

「ただし、各国も自国名を」

 

法廷規則。

 

被告が使う。

 

---

 

## 七

 

アウレリア。

 

紫秤帳。

 

皇弟ミハイルの供述書。

 

左手。

 

震えた字。

 

《私は、毒を盛った者の顔を知らない》

 

《杯が私の前へ移されたことは覚えている》

 

《毒物調達費が、宮廷安定保証から出たことを知ったのは、麻痺した後である》

 

《私の兄、故皇帝アレクシオス七世の近臣も、この基金から政敵監視費を受け取った》

 

自国の不都合。

 

出す。

 

エレニ・スコルディス。

 

「紫秤帳の宮廷安定費は」

 

項目。

 

毒物。

 

密偵。

 

買収。

 

医師。

 

宗派工作。

 

反乱予防。

 

「毒だけではない」

 

マルケル。

 

「だから?」

 

「基金全体を殺人費と」

 

「毒物購入を承認したか」

 

「いいえ」

 

「口座を作った」

 

「はい」

 

「毒物を買える分類へ」

 

「医療・検査用化学材」

 

「危険を」

 

「知っていた」

 

アルカシャの毒。

 

「用途審査を」

 

「現地責任者へ」

 

「誰」

 

リヴィア。

 

杯守。

 

ほか。

 

「名前を」

 

マルケル。

 

「リヴィア・サン・ジェルマーノは、杯の移動を認めた。毒物購入の最終承認者は、アウレリア宮廷財務官ニケフォロス・ダラスと、医務補佐エウクレイデス」

 

エレニ。

 

「ニケフォロスは死去」

 

「いつ」

 

「宮廷火災」

 

「エウクレイデス」

 

「行方不明」

 

「自国で隠した?」

 

「調査中」

 

「紫秤帳の元本は」

 

「帝国文書院が保管」

 

「写しは」

 

「あなたが」

 

マルケル。

 

「帳簿を出したのは、灰冠だけではありません。アウレリアの官僚も」

 

エレニ。

 

「はい」

 

対読。

 

「帝国が政敵監視へ使ったことを認めます」

 

被害席の侍医が。

 

「ミハイル殿下も、即位前に反対派貴族の医療記録を」

 

「知っていた?」

 

「供述書に」

 

追加頁。

 

《私は、兄の政敵監視を黙認した》

 

皇弟。

 

被害者。

 

無罪ではない。

 

---

 

## 八

 

ナフル。

 

乾河帳。

 

八十万。

 

水路。

 

塩税。

 

洪水。

 

だが帳簿には。

 

《王位空白準備費》。

 

《三候補別外交保証》。

 

《軍・財務・宗教三系統予備》。

 

バイバルス三世が生きている間から。

 

三王子。

 

「父王は知っていた?」

 

サルマ。

 

マルケル。

 

「一部」

 

「何を」

 

「継承時の市場安定基金」

 

「三候補へ別の契約を」

 

「知らない」

 

「署名は」

 

「王室財務補佐」

 

ハリール。

 

偽。

 

一部本物。

 

「ユースフ陛下の私的緊急債券は」

 

「乾河帳と接続」

 

「知っていた?」

 

「ユースフ本人は、国内洪水資金として」

 

「外国承認条件へ使う意図は」

 

「なし」

 

「ジャマール殿下の軍馬契約は」

 

「副官経由」

 

「サイード殿下の巡礼塩は」

 

「支援者経由」

 

三人。

 

本人が全部を知らない。

 

だが周囲が。

 

「ナフルは被害者です」

 

サルマ。

 

「同時に、我々の役人が三候補の名で外国へ便宜を売った」

 

「はい」

 

「名前を」

 

乾河帳。

 

黒塗り。

 

ナフル法席。

 

「王位安定のため、現職者名は」

 

「片側公開禁止」

 

ギヨーム。

 

自国名を出す。

 

軍人。

 

商人。

 

宗教官。

 

一部は現職。

 

「国が揺れる」

 

ナフル使節。

 

サルマ。

 

「既に揺れました」

 

公開。

 

---

 

マルケル。

 

「ナフル洪水は、私が起こしたのではありません」

 

サルマ。

 

「洪水の後に、塩と王位を売った」

 

「私が直接では」

 

「仕組みを」

 

「はい」

 

「人が記録を失えば、支援から消えると知っていた?」

 

「当時の帳簿は、登録者単位」

 

「だから」

 

「予見できた」

 

「した?」

 

「軽視しました」

 

「なぜ」

 

「無記録者は、返済能力がない」

 

法廷。

 

冷える。

 

「人ではなく」

 

サルマ。

 

「返済能力を見た」

 

「はい」

 

「今も?」

 

マルケル。

 

「間違いでした」

 

「いつ知った」

 

「ヨナの証言を」

 

少年。

 

見られる。

 

「私?」

 

「オルシャの水売りが、名簿外巡礼者を数えた記録」

 

「私は」

 

「それを読んだ」

 

「なら、前から」

 

「人を知るのに、会う必要はありません」

 

「でも、消すのも」

 

ヨナ。

 

「帳簿だけでできる」

 

「はい」

 

---

 

## 九

 

アルカシャ。

 

火口帳。

 

黒口鉱山。

 

毒物。

 

銀。

 

坑夫二千。

 

死者八十七。

 

後の火災・事故。

 

シャヒーンは帳簿を開かず。

 

まず、義手を外した。

 

机。

 

右腕。

 

肘から下がない。

 

「これを失った事故は、灰冠以前です」

 

法廷。

 

「父王の代。鉱山領主の代。安全規則がなかった」

 

「今回の八十七人だけを、マルケルの罪にすれば」

 

「その前に死んだ者が消える」

 

火口帳。

 

「でも、灰冠は事故を使った」

 

「賃金未払」

 

「家族補償」

 

「毒物」

 

「落盤」

 

「全部、債権へ」

 

---

 

火口帳の被害欄。

 

鉱山領主ヴァフラム。

 

加害者のように。

 

だが利益欄。

 

王室。

 

火守院。

 

坑夫組合。

 

「坑夫組合も?」

 

シャヒーン。

 

「はい」

 

安全具購入基金。

 

救済食。

 

一部。

 

灰冠資金。

 

「我々も受けた」

 

「はい」

 

「だから、口を閉じろと」

 

「契約には守秘」

 

「読まれた?」

 

「代表へ」

 

「坑夫全員へは」

 

「いいえ」

 

「公開契約でも、代理人が嘘をつけば」

 

「はい」

 

---

 

黒口落盤。

 

ダリク・サヴァン。

 

兄アルメンの補償。

 

偽の労働者所有契約。

 

五パーセント。

 

議決権なし。

 

「あなたは、労働者へ半分の所有を約束した?」

 

シャヒーン。

 

「私ではありません」

 

「帳簿に《労働安定持分五十》」

 

「五十単位。全体の五パーセント」

 

「誤解させる書き方」

 

「意図的でした」

 

最初から。

 

「誰の意図」

 

「私です」

 

法廷。

 

「なぜ」

 

「労働者代表へ、参加感を」

 

「参加感?」

 

義手。

 

鉄。

 

「腕も、感覚だけ残せばよかった?」

 

マルケル。

 

言葉。

 

出ない。

 

「記録してください」

 

シャヒーン。

 

「被告、回答なし」

 

---

 

## 十

 

アルビオン。

 

羊毛帳。

 

旧戦役給金。

 

王璽債務。

 

私掠船。

 

保険。

 

羊毛税。

 

「あなたは、アルビオン王の約束を買った?」

 

ヘイル議員。

 

「給金証書を」

 

「額面の二分で」

 

「平均」

 

「支払われないと考えた?」

 

「はい」

 

「なぜ買う」

 

「いつか政治問題になる」

 

「自分で政治問題に」

 

「一部」

 

「では、兵士家族を」

 

トーマス・ウェルズ。

 

被害席。

 

「投資材料にした」

 

「はい」

 

静か。

 

「父の証書も?」

 

帳簿。

 

ジョナサン・ウェルズ。

 

番号。

 

灰冠関連商会が一度買おうとした記録。

 

本人は売らなかった。

 

「買えていません」

 

「ほかの家は」

 

「買いました」

 

「空腹の時に」

 

「はい」

 

「自由契約?」

 

マルケル。

 

「法的には」

 

「あなたは今もそう言う?」

 

「法的評価と、公正さは違う」

 

「買った時は」

 

「違いを利用した」

 

「なら」

 

ウェルズ。

 

「罪は、証書を買ったこと?」

 

「分かりません」

 

「自分で」

 

「困窮者から、将来の権利を著しく低く買ったことは」

 

「不公正です」

 

「犯罪?」

 

「当時法では」

 

「今ここで聞いてる」

 

マルケル。

 

「罰されるべきだと思います」

 

「自分だけ?」

 

「買った商人も」

 

「売らせた国も?」

 

「はい」

 

アルビオン法席。

 

顔。

 

王国。

 

未払。

 

対読。

 

---

 

羊毛帳には、アルビオン海軍が灰冠保険から受けた秘密補填も。

 

サン・テルモ以前。

 

私掠損失。

 

海軍修理。

 

「王国は被害者だけでは」

 

ヘイル。

 

「ありません」

 

自国議員。

 

認める。

 

「セドリック提督は」

 

「一部知っていた」

 

「女王は」

 

「即位前の王女時代に、沿岸保険改革案として概要を」

 

「マルケル」

 

「直接話した?」

 

「一度」

 

アルビオン席。

 

騒ぎ。

 

「女王は灰冠を」

 

「当時は、灰冠共同財庫が公然組織でした」

 

「何を」

 

「海賊損失の共同保険」

 

「私掠船再武装は」

 

「後の計画」

 

「女王の責任を」

 

「それはアルビオン法廷が」

 

片側公開禁止。

 

女王の会談記録。

 

提出。

 

自国の王。

 

免除しない。

 

---

 

## 十一

 

ヴァルネリア。

 

灰狼帳。

 

辺境防衛。

 

秘密港。

 

諸侯。

 

軍税。

 

フォン・ライナー城。

 

シャルル・ド・モントレー。

 

ルネ・ヴァラン。

 

王軍秘密編成。

 

アルビオン補給案。

 

マティアスは帳簿を開く。

 

左手。

 

震え。

 

「この署名」

 

マルケル。

 

「私です」

 

「《若き狼》」

 

「人物名ではなく、計画名」

 

「誰を想定」

 

「アルベリク・フォン・ライナー」

 

法廷。

 

「本人は」

 

「灰冠へ参加していません」

 

「なぜ名を」

 

「父と王の間で選ばせれば、どちらに動いても王国軍が割れる」

 

「人を計画へ」

 

「はい」

 

「本人の意思なしに」

 

「はい」

 

「それも帳簿?」

 

「人の行動予測を資産として」

 

「兵士を銀と」

 

「同じ欄では」

 

「別欄です」

 

マティアス。

 

「そういう話ではない」

 

---

 

灰狼帳の利益欄。

 

王室秘密軍。

 

諸侯。

 

都市。

 

「都市も?」

 

マティアス。

 

「三港防衛融資」

 

「我々の時計工房も」

 

部品。

 

弩機。

 

「あなたの組合へ」

 

「知らなかった」

 

「それで免責?」

 

「いいえ」

 

マティアス。

 

自分へ。

 

「知らなかった責任を、私は父の城で他人へ聞きました」

 

「自分にも」

 

「はい」

 

彼の組合帳簿。

 

提出。

 

職人たちが軍需利益。

 

負傷した本人も。

 

その弩で。

 

誰かが。

 

---

 

マルケル。

 

「ヴァルネリアの中央集権化は、私が」

 

「始めていない」

 

「諸侯反乱も」

 

「始めていない」

 

「では」

 

「あなたは、既にある割れ目へ金を流した」

 

マティアス。

 

「それで十分です」

 

「罪名は」

 

「戦争を作った、ではない」

 

「何を」

 

「止められた争いを、利益が出る形へ固定した」

 

法席。

 

記録。

 

新しい責任の言葉。

 

---

 

## 十二

 

オルシャ。

 

聖門帳。

 

巡礼宿。

 

水。

 

塩。

 

鍵。

 

宗派。

 

死体船。

 

灰鍵条項。

 

聖地の通行料。

 

マルケルは、この帳簿だけを長く見た。

 

「署名は」

 

ギヨーム。

 

「私です」

 

「内容は」

 

「一部」

 

「どこが」

 

「表題は後付け」

 

「項目は」

 

「夜荷通行保証。巡礼宿安定。遺体搬入免責。宗派別危険係数」

 

ファティマ。

 

「宗派別危険係数?」

 

「暴動・検査・保険の」

 

「人を、宗派で値段に」

 

「はい」

 

「刻印民は」

 

「高い」

 

「なぜ」

 

「国籍記録が不安定。遺産回収が難しい」

 

「南方啓句派は」

 

「政治監視が多い」

 

「聖火古教は」

 

「火災危険」

 

「一灯教聖冠派は」

 

「低い」

 

「なぜ」

 

「制度を作る側だった」

 

法廷。

 

---

 

死体船。

 

夜荷。

 

リナ。

 

板。

 

《生きた人》

 

ギヨーム。

 

「聖門帳の《低温長物》とは」

 

マルケル。

 

「遺体」

 

リナ。

 

板。

 

《私》

 

「生存者を遺体として運んだことを」

 

「知りませんでした」

 

《同じ金》

 

「はい」

 

《同じ道》

 

「はい」

 

《同じ印》

 

「はい」

 

《知らない?》

 

マルケル。

 

「あなた個人を、知りませんでした」

 

リナ。

 

《人なら?》

 

「生存者が混じる可能性は」

 

「考えました」

 

板。

 

《それを知らないと言う?》

 

ヨナが読む。

 

マルケル。

 

答える。

 

「可能性を知り、確認しなかった」

 

《同じ》

 

「はい」

 

知らなかった。

 

知らないことを選んだ。

 

違い。

 

法。

 

道徳。

 

---

 

聖門帳には。

 

オルシャ諸侯。

 

聖剣騎士団。

 

巡礼宿。

 

刻印民金融。

 

全て利益。

 

アルノーは傍聴席。

 

騎士団が夜間護衛費を。

 

灰冠から。

 

「知らなかった」

 

彼。

 

声。

 

「でも使った」

 

「はい」

 

「我々は、巡礼者を守った」

 

「同じ護衛が、夜荷を通した」

 

一部騎士。

 

名。

 

死者。

 

現役。

 

「公開を」

 

騎士団が躊躇。

 

片側公開禁止。

 

アルノー。

 

「出せ」

 

自分の部下。

 

名。

 

---

 

マリアム。

 

灰鍵。

 

聖門帳。

 

《最後の慈悲保障》。

 

「私の家が、灰冠から」

 

「直接では」

 

マルケル。

 

「非常解除情報を、平和財庫へ提供した見返りに、巡礼路保険料減免」

 

「誰が」

 

彼女の祖父。

 

署名。

 

「祖父は」

 

「聖地を守るため」

 

「結果」

 

「灰冠が構造を知った」

 

家。

 

罪。

 

「あなたが殺した?」

 

マリアム。

 

自分の一族。

 

マルケル。

 

「命令していません」

 

「情報を」

 

「流した仕組みを」

 

「はい」

 

「家族殺害の利益は」

 

「灰冠一部派閥が」

 

「あなたは」

 

「知らなかった」

 

言う。

 

全員。

 

マルケル。

 

「当時は」

 

「後で」

 

「知った」

 

「止めた?」

 

「遅かった」

 

「処分した?」

 

「関係口座を凍結」

 

「人を」

 

「引き渡していない」

 

「なぜ」

 

「組織が崩れる」

 

「家族より」

 

「財庫を」

 

「はい」

 

マリアム。

 

目。

 

「記録してください」

 

---

 

## 十三

 

七冊の帳簿は、すべて本物だった。

 

同時に。

 

すべて完全ではなかった。

 

マルケルの署名。

 

本物。

 

項目。

 

本物。

 

支払い。

 

本物。

 

だが受益者の欄が違う。

 

同じ口座が。

 

ある帳簿では、王室へ。

 

別では、商会へ。

 

別では、救済基金へ。

 

「どれが正しい」

 

ギヨーム。

 

マルケル。

 

「全部」

 

「一つの銀が」

 

「法的主体を変えます」

 

「説明を」

 

---

 

灰冠会計。

 

《七重名義》。

 

銀貨十万。

 

最初。

 

セレスタ銀行が預かる。

 

名義。

 

平和財庫。

 

次に。

 

アウレリア皇室保証として、支払予約。

 

銀は動かない。

 

予約権だけ。

 

次。

 

ナフル塩税の将来収入を担保に、その予約権を再保証。

 

次。

 

アルカシャ銀で価値を補う契約。

 

次。

 

アルビオン保険が、破綻時の一部を補償。

 

次。

 

ヴァルネリア軍需会社が、物資で返済可能。

 

次。

 

オルシャ巡礼収入が、最終損失を分担。

 

「銀貨十万が」

 

サルマ。

 

「七国の帳簿で、合計七十万に見える」

 

「はい」

 

「利益も」

 

「損失も」

 

「どこへ」

 

「最初に請求した者と、最後まで知らなかった者へ」

 

灰冠。

 

「戦争が起きれば」

 

「全員が同時に請求」

 

「だから」

 

「誰が先に真実を知るかが利益になる」

 

情報。

 

戦争。

 

「あなたは」

 

マティアス。

 

「会計を作ったのではなく、順番を売った」

 

マルケル。

 

「はい」

 

法廷。

 

---

 

「では灰冠自由会議とは」

 

ヨナ。

 

許可。

 

被告へ直接。

 

「秘密の王たちですか」

 

「違います」

 

「商人?」

 

「一部」

 

「国?」

 

「一部」

 

「何」

 

マルケル。

 

「同じ損失を、別の名前で他人へ渡したい者たちの共同体です」

 

「誰でも?」

 

「十分な金か、印か、情報があれば」

 

「あなたは王?」

 

「順番を決めた」

 

「それは」

 

「王に見えた」

 

自分。

 

「でも、王では」

 

「ありません」

 

「責任は」

 

「あります」

 

---

 

## 十四

 

サフィーヤ・アル=ハズルが証言台へ。

 

黒雪の役。

 

元カディーラ財務官。

 

家族を灰冠に救われ。

 

保護され。

 

監視され。

 

赤い帳簿をアルビオンへ運ぼうとして捕らえられた。

 

腕の傷。

 

まだ。

 

「七王勘定を知る?」

 

ギヨーム。

 

「はい」

 

「どれが本物」

 

「マルケルの説明どおり、全部」

 

「あなたの役割」

 

「損失を、別の国の危機へ移す」

 

「具体的に」

 

「ナフル洪水で、塩税信用が下がった時」

 

「アルカシャ銀の将来供給を担保へ」

 

「黒口落盤で銀が」

 

「アルビオン給金証書の回収利益を」

 

「給金法で利益が」

 

「ヴァルネリア港湾保険へ」

 

「戦争が」

 

「オルシャ巡礼収入へ」

 

「巡礼門が」

 

「次へ」

 

「終わりは」

 

「ありません」

 

損失を。

 

前へ。

 

人へ。

 

---

 

「家族を人質にされた?」

 

「保護という名で」

 

「逃げられた?」

 

「理論上は」

 

「空腹は自由か」

 

アグネスの言葉。

 

「いいえ」

 

「でも、あなたは」

 

「加担しました」

 

「減刑を」

 

「求めます」

 

「なぜ」

 

「生きたい」

 

「家族のため」

 

「はい」

 

「証言は取引?」

 

「はい」

 

正直。

 

---

 

サフィーヤ。

 

「マルケルは、最初から戦争を望んだわけではありません」

 

群衆。

 

「庇う?」

 

「いいえ」

 

「では」

 

「彼は、戦争が起きても平和財庫が生き残るようにした」

 

「それが」

 

「戦争を終わらせるより、財庫を生き残らせる判断へ変わった」

 

マルケル。

 

見ない。

 

「最初の戦争配当が出た日」

 

「彼は何と」

 

「《これで次の和平費用ができる》」

 

「次の」

 

「はい」

 

「戦争の利益で、和平を買う」

 

「そのため、戦争を止めると、和平資金も失う」

 

円。

 

---

 

「あなたは、いつ抜けようと」

 

「家族を救済会から出そうとした時」

 

「なぜ赤帳を」

 

「保険」

 

「自分の?」

 

「はい」

 

「では、正義では」

 

「自分のためです」

 

「それでも証拠?」

 

「証拠です」

 

動機と真実。

 

分ける。

 

---

 

## 十五

 

ベアトリーチェ・モロジーニは、武装商船《海燕》の船長服で証言した。

 

腰の剣は、法廷外。

 

手には。

 

航海日誌。

 

「灰冠船を追った」

 

「はい」

 

「利益も」

 

「得た」

 

「何を」

 

「護衛料。拿捕賞金。軍需運賃」

 

「被害者?」

 

「加害者でも」

 

「レオナルト・グレイを捕らえた」

 

「はい」

 

「彼は」

 

「次」

 

---

 

レオナルト・グレイ。

 

元セレスタ海軍戦略家。

 

灰色艦隊指揮。

 

捕虜。

 

鎖。

 

彼には付く。

 

逃走歴。

 

軍事能力。

 

「マルケルの命令で」

 

「直接ではない」

 

「誰」

 

「灰冠海務局」

 

「資金は」

 

「青潮帳」

 

「目的」

 

「海上保険率を操作し、停戦条件を有利に」

 

「船を沈めた」

 

「はい」

 

「民間船」

 

「軍需を運んでいた」

 

「民間人を」

 

「はい」

 

「後悔」

 

「あります」

 

「間違い」

 

レオナルト。

 

「あります」

 

即答。

 

アルベリクとは違う。

 

「いつ知った」

 

「捕虜になった後」

 

「遅い」

 

ベアトリーチェ。

 

「はい」

 

---

 

レオナルト。

 

「マルケルは、海戦を細部まで命じない」

 

「何を」

 

「損失率を示す」

 

「船を何隻沈めれば」

 

「保険料が上がり、どの航路が閉じるか」

 

「それを見て」

 

「私が作戦を」

 

「なら、あなたの罪」

 

「あります」

 

「マルケルは」

 

「私の手を汚さず、私が自分で最適解を選ぶようにした」

 

「命令しない」

 

「はい」

 

最も強い命令。

 

---

 

ベアトリーチェ。

 

「私は、レオナルトを捕らえて賞金を得た」

 

「正義では」

 

「復讐も」

 

「兄を」

 

海戦で。

 

「だから殺さず」

 

「裁判へ」

 

「なぜ」

 

「死ねば、私だけが満足する」

 

群衆。

 

「今は」

 

「まだ殺したい」

 

「かなり?」

 

「かなり」

 

記録。

 

---

 

## 十六

 

七王勘定のうち。

 

一冊だけ。

 

署名頁が不自然だった。

 

羊毛帳。

 

冬第二月。

 

マルケルの六本線花押。

 

紙。

 

本物。

 

蝋。

 

本物。

 

だが本文の墨。

 

新しい。

 

「後から」

 

アルビオン鑑定官。

 

「署名済み頁へ、本文を」

 

マルケル。

 

「私の署名です」

 

「白紙署名?」

 

「完全な白紙ではない」

 

法廷。

 

何度目。

 

「上部に、羊毛債権清算承認と」

 

「本文欄は」

 

「空」

 

「なぜ」

 

「月末に、担当官が数字を」

 

「何枚」

 

「百二十」

 

「行方不明は」

 

「七」

 

盗まれた校正票。

 

王室緊急令。

 

同じ。

 

急ぐ制度。

 

信頼。

 

空欄。

 

「この羊毛帳頁は」

 

「後付け」

 

「なら偽」

 

ヘイル議員。

 

マルケル。

 

「私たちの規則では、署名済み承認頁は、担当官記入後に有効でした」

 

「あなたが読まなくても」

 

「はい」

 

「法的に本物?」

 

「当時は」

 

「今は」

 

「不正完成文書です」

 

「でも、あなたの仕組みが」

 

「はい」

 

---

 

誰が本文を。

 

筆跡。

 

リヴィア。

 

完全一致では。

 

右肩傷後。

 

筆圧。

 

「彼女が」

 

サフィーヤ。

 

「似ています」

 

「断定」

 

「できない」

 

紙の余白。

 

紫の極細線。

 

《王が払わないなら、死者の紙へ王を作らせよ》

 

リヴィア。

 

---

 

「被告は、この頁の罪を」

 

「本文作成は否認」

 

マルケル。

 

「署名済み頁を作った責任は」

 

「認める」

 

「結果責任は」

 

「争います」

 

「なぜ」

 

「何を書かれても全て私の犯罪なら、署名を盗んだ者の罪が消える」

 

正しい。

 

「でも、あなたの仕組みが」

 

「私の罪です」

 

「本文は」

 

「別の者の罪」

 

分ける。

 

必要。

 

---

 

## 十七

 

裁判七日目。

 

七国へ、同時に急使。

 

それぞれ。

 

自国政府から。

 

《被告身柄の即時引渡しを求む》

 

セレスタ。

 

海上犯罪法廷。

 

アウレリア。

 

皇族暗殺罪。

 

ナフル。

 

王位妨害。

 

アルカシャ。

 

鉱山大量死。

 

アルビオン。

 

王璽債務詐取。

 

ヴァルネリア。

 

国家反逆共謀。

 

オルシャ。

 

聖地侵犯。

 

七通。

 

日付。

 

同じ。

 

印。

 

本物。

 

内容。

 

政府内部で正式に発行。

 

「誰が」

 

各使節。

 

自国へ連絡。

 

「我々は共同裁判へ参加中」

 

「政府は」

 

国内強硬派。

 

遺族。

 

軍。

 

商人。

 

被告を先に自国へ。

 

「七国全部が」

 

マリアム。

 

「同じ日に」

 

灰冠。

 

だが文書は本物。

 

リヴィアは、各国の実在派閥へ。

 

別々の理由。

 

「共同裁判が、マルケルを保護している」

 

号外。

 

《七国法廷、死刑を禁止》

 

偽。

 

《被告へ証言免責》

 

偽。

 

《マリアムとマルケルの秘密取引》

 

偽。

 

一部。

 

彼女は裁判開始を約束した。

 

取引ではない。

 

紙。

 

---

 

法廷外。

 

群衆。

 

「渡せ!」

 

「どこへ!」

 

七方向。

 

国旗。

 

遺族。

 

国外使節。

 

石。

 

「門を閉じる?」

 

護衛。

 

ギヨーム。

 

「法廷門だけ」

 

「七鍵は」

 

「ここは巡礼大門では」

 

「同じ失敗を」

 

「出口三つ」

 

群衆安全。

 

帝都。

 

オルシャ。

 

学ぶ。

 

---

 

裁判内。

 

七席が、自国命令へ従うか。

 

「我々は使節」

 

法官。

 

「政府命令は」

 

「共同法廷規則に署名」

 

ギヨーム。

 

「国内法が上」

 

「では、最初から共同裁判は」

 

崩れる。

 

マルケル。

 

被告席。

 

静か。

 

望んだ分裂。

 

---

 

サルマ。

 

「ナフルの引渡し要求へ反対します」

 

最初。

 

「自国王位妨害を」

 

「ここで裁く」

 

「ユースフ王の命令は」

 

「書簡を確認」

 

急使文。

 

王印。

 

六水路と麦穂。

 

本物。

 

だが反署。

 

軍務印のみ。

 

六印なし。

 

「王単独の外交引渡しは」

 

新制度。

 

「六印が必要」

 

無効?

 

「緊急要求としては」

 

「仮」

 

「従わない」

 

自国制度が守る。

 

---

 

アルビオン。

 

三鐘海令のように。

 

国際引渡しには議会と王室。

 

文書は海軍委員長印のみ。

 

不十分。

 

ヴァルネリア。

 

三身確認なし。

 

アルカシャ。

 

王女印。

 

だが鉱山労働者席なし。

 

セレスタ。

 

総督印。

 

開帳会未確認。

 

アウレリア。

 

皇帝代理印。

 

文書院反署なし。

 

オルシャ。

 

六席のうち三席。

 

足りない。

 

各国。

 

自分たちが作った制度。

 

急使を止める。

 

灰冠は、本物の命令を作らせた。

 

だが制度の全印を揃えられなかった。

 

「遅い制度が」

 

マティアス。

 

「間に合った」

 

---

 

## 十八

 

法廷は、引渡し要求を公開した。

 

隠せば。

 

秘密取引と。

 

群衆へ。

 

七通。

 

印。

 

欠けている反署。

 

期限。

 

「政府は本気では」

 

遺族。

 

「一部は本気です」

 

マリアム。

 

「でも、単独派閥の要求」

 

「被告を守る!」

 

「共同裁判を守る」

 

「同じでは」

 

「違います」

 

何度でも。

 

---

 

マルケル。

 

「私を、どこへも渡さない?」

 

「裁判中は」

 

「安全を」

 

「保証?」

 

「意図的殺害から守る努力」

 

「守れる約束だけ」

 

「はい」

 

「私の刑は」

 

「まだ」

 

「七国が」

 

「責任認定へ」

 

「先に」

 

「あなたの望む時間を与える?」

 

「裁判の時間です」

 

---

 

その夜。

 

マルケルの食事へ。

 

毒。

 

ではない。

 

塩。

 

過剰。

 

舌。

 

喉。

 

死なない。

 

「警告?」

 

医師。

 

「あるいは、毒検査を混乱」

 

翌日。

 

本物の毒が。

 

「食事を」

 

三者。

 

材料。

 

調理。

 

運搬。

 

七鍵のように。

 

「囚人一人へ」

 

「必要」

 

マルケル。

 

「私を王のように」

 

「死なせないため」

 

「生かす権威」

 

「ありません」

 

「では」

 

「裁判に出す義務」

 

分ける。

 

---

 

## 十九

 

責任認定の前。

 

七国は、一つずつ。

 

自国の国内加担者名簿を提出した。

 

セレスタ。

 

百四十三名。

 

アウレリア。

 

八十七。

 

ナフル。

 

六十九。

 

アルカシャ。

 

五十二。

 

アルビオン。

 

二百十一。

 

ヴァルネリア。

 

九十四。

 

オルシャ。

 

百二十六。

 

合計。

 

七百八十二。

 

重複。

 

三十一。

 

死亡。

 

失踪。

 

現職。

 

王族親族。

 

聖職者。

 

職人。

 

坑夫代表。

 

水売り。

 

兵士。

 

商人。

 

「全員を裁く?」

 

群衆。

 

「関与の程度を」

 

「多すぎる」

 

「だから、マルケル一人を」

 

「殺せば」

 

「終わらない」

 

---

 

マルケル。

 

名簿を見る。

 

「足りません」

 

法廷。

 

「誰が」

 

「自分を」

 

「何」

 

「私の名が、各国名簿にない」

 

「被告だから」

 

「国内加担者名簿です」

 

「あなたは国を」

 

「越えた?」

 

「はい」

 

「なら、国籍のない加担者名簿を」

 

ヨナ。

 

「誰」

 

「灰冠専従者。亡命者。無登録の運び手。死体船の人夫」

 

リナ。

 

「被害者だけでなく」

 

「加害者にも、国がない者が」

 

「はい」

 

共同法廷。

 

七国。

 

足りない。

 

---

 

ファティマ。

 

「国がない者を、誰が裁く」

 

ギヨーム。

 

「現在地」

 

「どこにもいない者は」

 

「捕らえた場所」

 

「海は」

 

「共同法」

 

「誰の」

 

終わらない。

 

マルケル。

 

「灰冠が国境を利用したのは」

 

「責任が、国へ戻らない人を使えるからです」

 

「あなたは」

 

「彼らへ金を払った」

 

「はい」

 

「名前を」

 

「七王勘定には」

 

「ない」

 

「どこ」

 

「零帳」

 

静か。

 

---

 

「零帳?」

 

サルマ。

 

「国家名のない支出」

 

「人名は」

 

「数字と符号」

 

「どこ」

 

マルケル。

 

「存在するか、確認していません」

 

「自分が」

 

「設計した」

 

「保管は」

 

「黒帳商会」

 

リナ。

 

三つの黒点。

 

「死体船」

 

マリアム。

 

「夜荷」

 

「はい」

 

「零帳が」

 

「棺、難民、無登録兵、偽名使者、失踪者」

 

国へ請求できない人。

 

「被害者も」

 

「加害者も」

 

「何冊」

 

「一冊では」

 

「どこ」

 

マルケル。

 

「死者が持っている可能性があります」

 

---

 

## 二十

 

七国法席の責任評決。

 

最初の項目。

 

《複数国家の同一資産を重複保証し、危機時に請求順を操作する制度を意図的に設計した》

 

法席。

 

七対零。

 

被害席。

 

七対零。

 

認定。

 

第二。

 

《戦争、洪水、継承危機、鉱山事故、宗派対立、未払給金及び巡礼制度の危機を、別国の債務利益へ転換した》

 

法席。

 

六対一。

 

反対。

 

アウレリア。

 

範囲が広すぎる。

 

被害席。

 

七対零。

 

認定。

 

第三。

 

《個別の殺人、毒殺、落盤、船舶攻撃、門工作を直接命令した》

 

法席。

 

二対五。

 

被害席。

 

四対三。

 

不認定。

 

群衆。

 

怒号。

 

「殺人者!」

 

「直接命令の証拠が」

 

「仕組みを」

 

「次項」

 

第四。

 

《重大な暴力が生じる高い可能性を認識しながら、資金・情報・免責制度を維持した》

 

法席。

 

七対零。

 

被害席。

 

七対零。

 

認定。

 

第五。

 

《暴力発生後、組織保全と債権維持を、被害者救済及び実行者引渡しより優先した》

 

七対零。

 

七対零。

 

認定。

 

第六。

 

《自らの供述を取引材料として利用し、裁判遅延を意図した》

 

法席。

 

五対二。

 

被害席。

 

六対一。

 

認定。

 

マルケル。

 

「異議」

 

「後で」

 

第七。

 

《七国すべての危機を単独で創出した》

 

零対七。

 

零対七。

 

不認定。

 

「なぜ!」

 

外。

 

法廷。

 

「一人に全てを」

 

マティアス。

 

「載せない」

 

「彼を軽く」

 

シャヒーン。

 

「ほかの者を消さないため」

 

---

 

マルケルは。

 

有罪。

 

だが、世界の全てではない。

 

彼が望む部分。

 

望まない部分。

 

両方。

 

---

 

## 二十一

 

刑罰審理へ進む前。

 

リナが立った。

 

予定にはない。

 

「座って」

 

法廷護衛。

 

マリアム。

 

「待って」

 

少女。

 

炭板。

 

《七つだけ?》

 

ヨナが読む。

 

「七つの国だけか、という意味です」

 

リナ。

 

頷く。

 

「観察国は」

 

ギヨーム。

 

《国がない》

 

「零帳?」

 

頷く。

 

板。

 

《持ってる》

 

法廷。

 

---

 

リナは、自分の衣服の内側を切った。

 

縫い目。

 

長い布。

 

何度も洗われ。

 

薄い。

 

そこへ。

 

小さな数字。

 

三つの黒点。

 

符号。

 

棺番号。

 

夜荷。

 

人。

 

《死体船の帆布》

 

マリアム。

 

「いつから」

 

《ずっと》

 

「なぜ」

 

《取られる》

 

誰に。

 

全員に。

 

---

 

帆布。

 

死体船の内部仕切り。

 

棺下へ敷かれていた。

 

荷役人が。

 

積載番号。

 

重量。

 

受取印。

 

人名ではない。

 

《長物二》

 

《冷荷七》

 

《未声一》

 

未声。

 

舌を切られた者。

 

リナ。

 

「これは」

 

マルケル。

 

立ちかける。

 

護衛。

 

「座れ」

 

「見せて」

 

「許可後」

 

彼の顔。

 

初めて。

 

本当に知らないもの。

 

---

 

帆布の下端。

 

数字。

 

零帳の勘定記号。

 

《Ø》。

 

「本物?」

 

サフィーヤ。

 

「黒帳の零記号」

 

マルケル。

 

「はい」

 

「人を」

 

「国家請求不能貨物」

 

「何」

 

「保険対象外で、損失発生時に誰も請求しないもの」

 

リナ。

 

板。

 

《人》

 

「はい」

 

マルケル。

 

声。

 

---

 

帆布には。

 

船員。

 

棺。

 

生存者。

 

死者。

 

合計。

 

百八十六。

 

死体として届けられた数。

 

百七十一。

 

行方不明十五。

 

リナは、その一人。

 

ほか。

 

誰。

 

名前。

 

ない。

 

「零帳は」

 

ヨナ。

 

「国のない被害者の帳簿」

 

「加害者も」

 

マルケル。

 

「同じ符号で」

 

「被告席から」

 

ギヨーム。

 

「許可なく」

 

「失礼しました」

 

彼は座る。

 

---

 

リナ。

 

板。

 

《私の裁判は?》

 

誰が答える。

 

オルシャ?

 

船が着いた場所。

 

セレスタ?

 

船籍。

 

アウレリア?

 

積荷の一部。

 

灰冠?

 

国ではない。

 

「この共同法廷へ」

 

マリアム。

 

言いかける。

 

リナ。

 

首を振る。

 

《七国の席にない》

 

正しい。

 

被害者席。

 

七つ。

 

どこにも。

 

---

 

ファティマ。

 

「空席を」

 

「八つ目?」

 

法官。

 

「七国法廷の根拠が」

 

「国でなく」

 

シャヒーン。

 

「国のない被害」

 

「誰が座る」

 

「リナ?」

 

「本人は未成年」

 

《子供じゃない》

 

板。

 

ヨナ。

 

「本人は、そう言っています」

 

どこかで。

 

笑いは起きない。

 

---

 

ギヨーム。

 

「第八席を、投票権なしの証言席として」

 

マリアム。

 

「それでは、また観察席です」

 

聖座。

 

ルシタニア。

 

「投票権を」

 

「誰が代表を」

 

「国のない全員を、リナ一人が?」

 

「できない」

 

「では」

 

「空席」

 

ヨナ。

 

全員。

 

「空席に投票権?」

 

「席が埋まるまで、刑罰を決めない」

 

遺族。

 

「また遅延!」

 

「被告が」

 

マルケル。

 

必要な時間。

 

「でも」

 

リナ。

 

板。

 

《いないまま決める?》

 

---

 

七国の法席。

 

協議。

 

被害席。

 

一つ。

 

七つ。

 

第八席。

 

空。

 

中央とは別。

 

被告の向かい。

 

小さい机。

 

旗なし。

 

国名なし。

 

背もたれに。

 

何も。

 

「誰もいない席へ」

 

法官。

 

「票は」

 

「保留権」

 

「どこまで」

 

「零帳に関する責任と、最終刑」

 

「被告の刑全部を」

 

「七国の罪は」

 

「決められる」

 

「国のない罪は」

 

「決めない」

 

分ける。

 

また。

 

---

 

決議。

 

法席。

 

五対二。

 

被害席。

 

七対零。

 

《零帳被害席》を設置。

 

代表選出まで。

 

刑罰のうち。

 

死刑。

 

終身拘禁。

 

証言減刑。

 

資産没収の最終割合。

 

保留。

 

暫定。

 

拘禁継続。

 

証拠公開。

 

零帳捜索。

 

「マルケルが」

 

「生き延びる」

 

遺族。

 

マリアム。

 

「はい」

 

「また!」

 

「同時に、国のない死者を、彼を早く殺すために消しません」

 

痛い。

 

「いつまで」

 

「四十日」

 

法廷。

 

苦い笑い。

 

「また」

 

「期限を設けます」

 

---

 

## 二十二

 

第八席の机へ。

 

リナは帆布を置いた。

 

座らない。

 

「なぜ」

 

ヨナ。

 

板。

 

《私だけじゃない》

 

「では」

 

《探す》

 

零帳の人。

 

生存者。

 

遺族。

 

名のない者。

 

加害者。

 

運び手。

 

「四十日で」

 

リナ。

 

《努力》

 

守れる。

 

---

 

マルケル。

 

被告席。

 

第八席を見る。

 

「私は」

 

許可。

 

「発言を」

 

ギヨーム。

 

「短く」

 

「零帳を、制度として承認しました」

 

法廷。

 

「初めて?」

 

「公開では」

 

「目的」

 

「国家間請求から外れる取引を」

 

「人間も含むと」

 

「明示は」

 

「可能性を知っていた」

 

リナ。

 

板。

 

《同じ》

 

「はい」

 

「罪を」

 

「認めます」

 

「何罪」

 

「まだ、名前を」

 

リナ。

 

《人を荷にした》

 

「はい」

 

「それで」

 

ギヨーム。

 

「認める?」

 

「はい」

 

「刑を」

 

「受けます」

 

「何でも?」

 

マルケル。

 

止まる。

 

「死刑を含めて」

 

「生きたい?」

 

リナ。

 

板。

 

ヨナ。

 

読む。

 

マルケル。

 

「はい」

 

《なら同じ》

 

「何が」

 

《私も》

 

生きたい。

 

罪人。

 

被害者。

 

同じではない。

 

ただ。

 

生きたい。

 

その一点。

 

マルケルは。

 

答えない。

 

---

 

## 二十三

 

法廷外。

 

七国の号外。

 

《マルケル、有罪》

 

《死刑回避》

 

《無国籍少女が法廷停止》

 

《灰冠会計王、零帳を自白》

 

《七国法廷、被告保護を延長》

 

同じ日。

 

違う見出し。

 

本物の出来事。

 

別の意味。

 

リヴィアが作らなくても。

 

人々は自分で七つの版を作る。

 

---

 

七国政府は。

 

共同法廷を続けると。

 

不満。

 

一部。

 

満足。

 

誰も完全では。

 

ナフルのユースフ。

 

《零帳席を支持。無記録者条項との共同調査》

 

アルビオンのアデライン。

 

《旧船員名簿、逃亡船、未払給金無記録者を照合》

 

ヴァルネリアのアドリアン。

 

《傭兵、避難民、秘密軍名簿を公開》

 

アルカシャのザレフ。

 

《鉱山無記録死者と毒物運搬人を》

 

セレスタ。

 

《港湾夜荷と死体船》

 

アウレリア。

 

《宮廷無名密偵》

 

オルシャ。

 

《巡礼者、棺、門外死者》

 

制度が。

 

初めて。

 

国に属さない帳簿を探す。

 

---

 

灰冠自由会議。

 

七王勘定計画。

 

評価。

 

《七国相互不信、達成》

 

《共同法廷崩壊、未達》

 

《七冊差異による証拠混乱、限定》

 

《マルケル単独悪人化、未達》

 

《各国国内加担者公開、重大損失》

 

《七重名義制度露見、重大損失》

 

《引渡し要求同時発行、達成》

 

《各国新制度による要求無効化、敵制度強化》

 

《マルケル責任認定、達成》

 

《刑罰確定、未達》

 

《零帳公開、想定外》

 

無貌。

 

「帆布が」

 

鴉筆。

 

「死体船の少女」

 

「零帳は」

 

「回収していない」

 

「どこ」

 

黒雪。

 

「一冊ではない」

 

「なら」

 

「港。墓地。傭兵隊。修道院。鉱山。宮廷」

 

「全部」

 

「国家が帳簿へ載せなかった場所」

 

「灰冠だけの」

 

「違う」

 

「何」

 

黒雪。

 

「国が見たくなかった人を、灰冠が利用した」

 

責任。

 

戻る。

 

「リヴィアは」

 

「零帳の存在を」

 

「知っている」

 

「次は」

 

「第八席へ、偽の代表を送る」

 

空席。

 

誰が座るか。

 

最も簡単に争える。

 

「難民代表」

 

「死体船生存者」

 

「無国籍傭兵」

 

「刻印民」

 

「孤児」

 

「どれも本物」

 

「一人を選べば」

 

「ほかが消える」

 

灰冠は、空席を嫌わない。

 

誰でも座れる席は。

 

誰が座るかで戦争になる。

 

---

 

## 二十四

 

裁判が終わった夜。

 

まだ終わっていない。

 

責任認定だけ。

 

マリアム。

 

ヨナ。

 

リナ。

 

空の第八席。

 

帆布。

 

「どうやって探す」

 

ヨナ。

 

「零帳の人を」

 

マリアム。

 

「帆布の番号から」

 

「名前が」

 

「港記録」

 

「消されて」

 

「消す前の記録を」

 

「なければ」

 

リナ。

 

板。

 

《体》

 

「墓?」

 

頷く。

 

《傷》

 

《歯》

 

《服》

 

《歌》

 

名前でなく。

 

覚えているもの。

 

「証人を」

 

マリアム。

 

「生きている人を」

 

《少ない》

 

「はい」

 

---

 

ヨナ。

 

「第八席へ、誰が」

 

リナ。

 

《決めない》

 

「四十日」

 

《探す》

 

「見つからなければ」

 

板。

 

止まる。

 

《空いたまま》

 

「刑を」

 

《空いてると書く》

 

不足を。

 

埋めたふりをしない。

 

---

 

マリアムは、第八席の背へ。

 

小さな札。

 

《国名なし》

 

ヨナ。

 

「それだけ?」

 

「ほかに」

 

リナ。

 

板。

 

《名前を待つ席》

 

採用。

 

---

 

マルケルは南塔へ戻る。

 

三重護衛。

 

鎖なし。

 

円から。

 

歩く。

 

外。

 

遺族の声。

 

殺せ。

 

話せ。

 

嘘つき。

 

会計王。

 

彼は反応しない。

 

塔の扉。

 

入る前。

 

第八席の方を。

 

振り返る。

 

何を。

 

考えたか。

 

記録には残らない。

 

---

 

七つの国は、一人の被告を裁こうとした。

 

七つの帳簿。

 

七つの被害。

 

七つの利益。

 

七つの真実。

 

裁判は、マルケル・セヴェロスを有罪と認めた。

 

だが刑を決める直前。

 

一枚の古い帆布が。

 

七国の外にいた人々を法廷へ運んだ。

 

名前のない死者。

 

国籍のない生存者。

 

給金を記録されなかった兵。

 

棺の下に隠された子供。

 

存在しないことにされた運び手。

 

国家が請求しない損失。

 

灰冠自由会議は、それらを零と書いた。

 

損失がないからではない。

 

誰も支払いを求めないと思ったから。

 

その零が。

 

法廷へ席を一つ増やした。

 

王冠でも。

 

鍵でも。

 

国旗でもない。

 

空の椅子。

 

---

 

七国共同法廷は、四十日間の休廷へ入った。

 

目的。

 

零帳の捜索。

 

第八席の代表方法。

 

被告刑の最終審理。

 

だが四十日は。

 

灰冠にとっても時間だった。

 

リヴィア・サン・ジェルマーノは、既に七通の推薦状を書いていた。

 

《零帳被害者代表候補》。

 

七人。

 

全員。

 

実在。

 

全員。

 

本当に傷ついた者。

 

全員。

 

別の集団を代表できない者。

 

誰を選んでも。

 

残り六人が。

 

自分たちの死者を消されたと叫ぶ。

 

偽物を送り込む必要はなかった。

 

本物を。

 

七人送ればよい。

 

七つの国の被告を裁く法廷は。

 

次に。

 

一つの空席をめぐって。

 

国を持たない者たち自身を争わせようとしていた。

書き溜めていた分のストックがほぼ尽きてきましたので… 更新頻度についてアンケートをさせていただきたいと思います。 以降の更新頻度はどの程度がよいでしょうか?

  • 死ぬ気でがんばれ
  • 可能な範囲でがんばれ
  • そんなに急ぐこたーないぞ
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