灰冠と香路の年代記   作:MOZIO

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第三十五章 名前を待つ席

名前は、人を一人にする。

 

同じ村。

 

同じ宗派。

 

同じ傷。

 

同じ船。

 

同じ墓。

 

それらが重なっていても。

 

名前があれば、その人はほかの誰でもない。

 

だが代表という言葉は。

 

一人の名前を、多くの人間の代わりにする。

 

鉱山で生まれた者。

 

船倉から生き残った者。

 

給金台帳へ載らなかった兵。

 

国境で親を失った子供。

 

密偵として死んでも、本名で埋葬されない者。

 

それらを一つの椅子へ座らせようとすれば。

 

名前は、再び人を消す道具になる。

 

《国名なし》

 

《名前を待つ席》

 

七国共同法廷の第八席。

 

空の椅子は。

 

誰も座っていない間だけ、すべての者のための席に見えた。

 

最初の候補者が扉をくぐった瞬間。

 

それは、誰か一人の席になった。

 

---

 

## 一

 

四十日の休廷が始まって七日。

 

オルシャ南宿場へ、最初の代表候補が到着した。

 

男。

 

四十八歳。

 

右耳がない。

 

左手の薬指と小指も。

 

名は、カシム・ザード。

 

だが、その名が本名かは本人も知らなかった。

 

「傭兵名です」

 

七国共同法廷事務所。

 

ヨナ・ベン=エズラ。

 

「生まれた時の名は」

 

「母は《カシ》と」

 

「父は」

 

「知りません」

 

「出生地」

 

「サルグァ草原の西か、アルサク北部」

 

「国籍」

 

「ありません」

 

「所属」

 

「自由傭兵団《赤い橋》、旧第三槍隊」

 

「解散後は」

 

「国境護衛、隊商警備、反乱鎮圧、反乱支援」

 

ヨナの筆。

 

止まる。

 

「両方?」

 

「雇い主が違いました」

 

「人を殺した?」

 

「はい」

 

「被害者でも?」

 

カシム。

 

失った指。

 

「給金を一度も満額で受けたことがない」

 

「それが被害?」

 

「それだけではない」

 

彼は、首へ下げた木札を外した。

 

数字。

 

《Ø-3419》。

 

零帳記号。

 

「どこで」

 

「セレスタの灰色艦隊へ、一隊ごと売られた時」

 

「売られた?」

 

「契約では、臨時海兵編入」

 

「実際は」

 

「最初の突撃」

 

「生き残りは」

 

「二百三十人中、十九」

 

「名簿は」

 

「船が沈んだ」

 

「写しは」

 

「雇用主が、我々を《甲板補用品》として」

 

人間ではなく。

 

戦力単位。

 

「第八席を求める理由」

 

「国のない兵も、零帳です」

 

「ほかの被害者を代表できますか」

 

「できません」

 

ヨナ。

 

顔を上げる。

 

「では」

 

「私のような者は、死体船の子供に代表されたくない」

 

部屋の隅。

 

リナ。

 

炭板。

 

《子供じゃない》

 

カシム。

 

少女を見る。

 

「失礼した」

 

板。

 

《人殺し》

 

「はい」

 

《私を代表しない》

 

「同意する」

 

最初から。

 

---

 

二人目は、その翌日に来た。

 

ナジム・ラズル。

 

二十九歳。

 

アルカシャ黒口山系の無戸籍坑夫。

 

生まれた場所。

 

坑道第六居住層。

 

出生記録。

 

なし。

 

母は坑夫食堂。

 

父は不明。

 

幼少期から鉱石選別。

 

十二歳で坑内。

 

「国籍は」

 

ヨナ。

 

「山です」

 

「国では」

 

「王の徴税官は来た」

 

「ならアルカシャ」

 

「事故補償では、登録なしと言われた」

 

「兵役は」

 

「鉱山防衛隊へ徴募」

 

「その時は」

 

「王国民」

 

「給金は」

 

「鉱山会社の債務へ」

 

「死ねば」

 

「無登録労働者」

 

必要な時だけ国民。

 

払う時は不存在。

 

ナジムは胸から、薄い銅札。

 

《坑道六・男・二百八番》。

 

名ではない。

 

「零帳記号は」

 

「ありません」

 

「では、なぜ」

 

「シャヒーン・バヌーが、坑山無戸籍者を探していると」

 

推薦状。

 

差出人。

 

《黒口労働者救済連絡会》。

 

印。

 

本物。

 

署名。

 

シャヒーンのものではない。

 

だが、彼女の昔の演説を正確に引用。

 

「誰から受けた」

 

「山へ来た女」

 

「名」

 

「リヴィア」

 

法廷事務所。

 

全員。

 

「顔は」

 

「紫の外套」

 

「黒い手袋?」

 

「左だけ」

 

隠さない。

 

「彼女が灰冠と」

 

「知っています」

 

「それでも来た?」

 

「手紙が嘘でも、私は本物です」

 

その言葉。

 

これから何度も聞く。

 

---

 

三人目。

 

女。

 

三十六歳。

 

ミレナ・ヴコヴィチ。

 

ヴェリグラード北部の難民孤児。

 

ただし。

 

もう孤児ではない。

 

夫。

 

子供二人。

 

土地なし。

 

出生記録なし。

 

ノルハイムから逃げたと本人は言う。

 

だが言葉は、ほとんど覚えていない。

 

「孤児代表?」

 

ヨナ。

 

「その呼び方が嫌です」

 

「では」

 

「親の国籍がなく、自分の出生地を証明できない者」

 

長い。

 

「短くするなら」

 

「無系譜者」

 

「家系がない?」

 

「あるはずです」

 

「記録がない」

 

「はい」

 

彼女は、三つの国で別の名を使っていた。

 

ノルハイム救済船では《ミラ》。

 

ヴェリグラード孤児院では《ミレナ》。

 

セレスタ縫製工房では《エレナ》。

 

「本名は」

 

「全部」

 

「一つ選ぶなら」

 

「ミレナ」

 

「第八席を」

 

「子供は、自分がどこの人か決める前に、大人から名前を与えられる」

 

「ほかの零帳被害者を」

 

「代表しません」

 

「また」

 

「代表できると言う者を、信用しますか」

 

ヨナ。

 

答えない。

 

---

 

四人目。

 

マヌエル・ロサ。

 

五十二歳。

 

ルシタニア出身。

 

棺運び人。

 

オルシャ。

 

セレスタ。

 

ルシタニア。

 

三港で働いた。

 

死体船へ、棺を積んだことがある。

 

「加害者?」

 

リナ。

 

板。

 

ヨナが読む。

 

マヌエル。

 

「はい」

 

「知っていた?」

 

「棺の下へ、生きた者を隠したことは」

 

長い。

 

「二度」

 

《二度?》

 

「見ました」

 

《止めた?》

 

「一度は、見なかったふり」

 

《もう一度》

 

「少女を逃がした」

 

「誰」

 

「名を知らない」

 

「生きた?」

 

「分かりません」

 

「なぜ来た」

 

「零帳には、荷役人も」

 

「被害者?」

 

「給金を盗まれ、口を封じられ、仲間を殺された」

 

リナ。

 

板。

 

《でも運んだ》

 

「はい」

 

《私を》

 

「かもしれない」

 

少女。

 

マヌエル。

 

互い。

 

「第八席へ座る?」

 

ヨナ。

 

「座る資格はない」

 

「では」

 

「座る者を、被害者だけにするなと言いに来た」

 

室内。

 

冷える。

 

「零帳の加害者も、国がない」

 

「はい」

 

「同じ席へ?」

 

「別の椅子にすれば、我々はまた自分を被害者だと言う」

 

リナ。

 

板。

 

《隣に座れ》

 

マヌエル。

 

「望むなら」

 

《逃げないで》

 

「はい」

 

---

 

## 二

 

四十日の十二日目までに。

 

候補者は七人になった。

 

リヴィアが書いた推薦状の数と同じ。

 

五人目。

 

アウレリア宮廷の元無名密偵。

 

女。

 

年齢不詳。

 

自称。

 

テア。

 

本名は、封印されたまま。

 

彼女は、反乱派へ潜入し。

 

皇帝派へ報告し。

 

後に皇帝派からも切られた。

 

公式には死んでいる。

 

墓もある。

 

墓碑には別人の名。

 

「なぜ顔を出した」

 

ヨナ。

 

「死んだ者は裁判へ呼ばれないから」

 

「国籍」

 

「死亡前はアウレリア」

 

「今は」

 

「死人」

 

「第八席を」

 

「名を持たずに国家へ使われた者のため」

 

「顔を公開する?」

 

「しない」

 

「公開法廷で」

 

「幕越し」

 

「ほかの者は」

 

「私が生きていると知れば、殺される」

 

代表。

 

匿名。

 

矛盾。

 

---

 

六人目。

 

セレスタ港湾の刻印民帳簿写し。

 

サムエル・ハコブ。

 

六十四歳。

 

国籍はセレスタ市民とされる。

 

だが戦時に市民権停止。

 

平時に復帰。

 

徴税時は市民。

 

選挙時は《外共同体》。

 

「あなたは国を持つ」

 

ヨナ。

 

「国が、必要に応じて私を持つ」

 

「零帳?」

 

「刻印民商人の夜間資産移送記録を」

 

黒帳商会。

 

「自分も」

 

「帳簿を移しました」

 

「被害者と」

 

「加害者」

 

「はい」

 

「第八席を」

 

「国家から一時的に消される共同体のため」

 

「国籍が全くない者とは」

 

「違う」

 

「それでも」

 

「違うから来た」

 

また。

 

---

 

七人目。

 

アルビオンの元船員。

 

名。

 

エイダン・クロウ。

 

三十一歳。

 

《聖ブリジット》逃亡船の乗組員。

 

拿捕時に名簿へいなかった。

 

仮登録。

 

家族給付なし。

 

降伏後。

 

海賊容疑。

 

海軍兵でもない。

 

私掠船員でもない。

 

「人を撃った」

 

「はい」

 

「王命だと」

 

「信じた」

 

「今は」

 

「誤命令」

 

「被害者?」

 

「王国から、兵として使われた」

 

「加害者?」

 

「サンタ・マリア港へ矢を」

 

「第八席へ」

 

「命令の時だけ兵で、裁判では海賊とされる者のため」

 

「カシムと似る」

 

「私は傭兵ではない」

 

カシム。

 

「給金を受けた?」

 

「少し」

 

「なら幸運だ」

 

エイダン。

 

「国を持たない殺し屋に言われたくない」

 

二人。

 

立つ。

 

護衛。

 

「ここで争えば」

 

ヨナ。

 

「候補資格を」

 

「誰が決める」

 

カシム。

 

「お前?」

 

少年。

 

「今は、受付規則を」

 

「国籍がある書記が」

 

エイダン。

 

「国籍がありますか」

 

ヨナ。

 

刻印民。

 

オルシャ。

 

水売り。

 

「あります」

 

「なら」

 

リナ。

 

板を机へ。

 

《全員帰れ》

 

七人。

 

「何」

 

《代表できない》

 

「だから選ぶ」

 

ヨナ。

 

《選んだら消える》

 

誰が。

 

誰を。

 

---

 

## 三

 

七人の推薦状は、全て別の差出人名だった。

 

黒口労働者救済連絡会。

 

北方無系譜児童記録基金。

 

海上臨時兵名簿修復組合。

 

宮廷無名奉仕者遺族会。

 

刻印民市民資格保全会。

 

死体船荷役人告解団。

 

自由傭兵給金請求共同体。

 

すべて。

 

団体名としては、実在しない。

 

だが文中に書かれた事件。

 

被害。

 

数字。

 

証人。

 

本物。

 

推薦対象も。

 

本物。

 

「偽推薦状?」

 

ギヨーム。

 

「団体は偽」

 

マリアム。

 

「内容は」

 

「本物」

 

「なら排除できない」

 

「はい」

 

「リヴィアが」

 

「全員を選んだ」

 

「だから排除?」

 

「それでは、彼女が選んだ被害者は法廷へ来られない」

 

敵に選ばせる。

 

「推薦状を無効にして、自主申請として」

 

ヨナ。

 

「書き直す?」

 

「本人の言葉で」

 

「推薦の影響は」

 

「記録」

 

---

 

七人は、新しい申請書を書く。

 

読み書きできないカシム。

 

口述。

 

ナジム。

 

指印。

 

テア。

 

本名欄を空白。

 

「空欄は」

 

書記。

 

「制度が」

 

「本名を出せば死ぬ」

 

「仮名」

 

「テア」

 

「署名」

 

「存在しない女の名」

 

「今は存在する」

 

---

 

リヴィアは。

 

偽物を送らなかった。

 

最も相容れない本物を選び。

 

それぞれへ。

 

《あなたが行かなければ、別の者があなたたちを代表する》

 

と書いた。

 

全員が。

 

同じ文を受け取った。

 

---

 

## 四

 

第八席選定の公開聴聞が始まった。

 

旧香料取引所。

 

被告席は空。

 

マルケルは南塔。

 

第八席だけ。

 

中央。

 

七候補。

 

リナ。

 

八人。

 

「あなたも候補?」

 

ギヨーム。

 

リナ。

 

板。

 

《違う》

 

「なぜ」

 

《帆布を出した》

 

「なら最初の」

 

《所有者じゃない》

 

「証拠の?」

 

頷く。

 

「代表は」

 

《しない》

 

「では、選定へ参加する?」

 

《見る》

 

見るだけ。

 

目の鍵。

 

---

 

最初の問い。

 

《誰を代表するか》

 

カシム。

 

「国家名簿へ載らない武装労働者」

 

ナジム。

 

「出生も死亡も登録されない労働者」

 

ミレナ。

 

「出生地と親を証明できない者」

 

マヌエル。

 

「零帳を運んだ下働き。被害者であり実行者」

 

テア。

 

「国家に名を奪われた秘密奉仕者」

 

サムエル。

 

「国籍を一時停止され、法の外へ出された共同体」

 

エイダン。

 

「命令時に兵とされ、責任時に民間人とされる者」

 

「重なる」

 

法官。

 

「はい」

 

「一つに」

 

「できません」

 

全員。

 

---

 

第二。

 

《自分以外の候補を代表できるか》

 

全員。

 

できない。

 

「では席へ座る資格が」

 

法官。

 

カシム。

 

「一人で全員を代表できる者がいるなら、その者は嘘つきです」

 

「代表とは」

 

「一部を」

 

「第八席は」

 

「一席しかない」

 

「それが間違い」

 

最初から。

 

---

 

第三。

 

《マルケルの刑について、何を求めるか》

 

カシム。

 

「生かして零帳の雇用主を吐かせる。その後、終身拘禁」

 

ナジム。

 

「鉱山へ連れて行き、死者の名を読ませる。死刑は不要」

 

ミレナ。

 

「出生記録を回復するまで生かす。終われば分からない」

 

マヌエル。

 

「私たちのような下働きへ罪を押しつけたことを認めさせる。自分も裁かれる」

 

テア。

 

「秘密名簿を公開すれば殺される者もいる。公開だけを正義にしない」

 

サムエル。

 

「資産を共同体へ返す。死刑は、帳簿を消す」

 

エイダン。

 

「軍命令者と実行者の責任を分ける。その後、重い刑」

 

「違う」

 

当然。

 

---

 

リナ。

 

板。

 

《生きたい?》

 

候補者。

 

誰に。

 

「マルケルが?」

 

ヨナ。

 

《全員》

 

カシム。

 

「はい」

 

ナジム。

 

「はい」

 

ミレナ。

 

「家族が」

 

マヌエル。

 

「怖い」

 

テア。

 

「既に死者扱い」

 

サムエル。

 

「生きたい」

 

エイダン。

 

「はい」

 

《同じ》

 

マルケルへ書いた言葉。

 

生きたい。

 

同じ。

 

それだけで同じ人間にはならない。

 

だが。

 

誰かの死を簡単に決める資格は減る。

 

---

 

## 五

 

選定聴聞の外。

 

候補者の支持団体が集まった。

 

団体は、今度は本物だった。

 

自由傭兵の残党。

 

鉱山労働者。

 

難民孤児院出身者。

 

港湾荷役人。

 

元密偵の遺族。

 

刻印民共同体。

 

逃亡船員家族。

 

旗。

 

歌。

 

要求。

 

「カシムを!」

 

「ナジムを!」

 

「ミレナを!」

 

一人。

 

一席。

 

選挙のように。

 

投票券まで。

 

誰が作った。

 

灰色の紙。

 

「候補者投票を?」

 

群衆。

 

「代表を民が」

 

「誰が投票資格」

 

また。

 

傭兵だけ?

 

零帳被害者全員?

 

七国市民?

 

国のない者を、国の名簿で?

 

---

 

投票券の裏。

 

《当選者以外の申立ては、第八席代表を通じてのみ提出》

 

小さな文字。

 

つまり。

 

一人を選べば。

 

ほかは、その人を通さなければ法廷へ届かない。

 

灰冠が望む。

 

「誰が配った」

 

子供。

 

銀貨。

 

「白い服の女」

 

リヴィアではない。

 

下位実行者。

 

捕らえる。

 

女。

 

オルシャの失業書記。

 

「頼まれた」

 

「誰に」

 

《名前を待つ会》。

 

実在しない。

 

「内容を読んだ?」

 

「投票用紙」

 

「小文字は」

 

「読まなかった」

 

空欄。

 

細字。

 

また。

 

---

 

票を燃やす?

 

「証拠」

 

マリアム。

 

回収。

 

番号。

 

配布先。

 

誰が支持されているか。

 

「選挙には使わない」

 

告示。

 

群衆。

 

「法廷が決める?」

 

「候補者自身と」

 

「密室!」

 

「公開で」

 

「でも投票なし」

 

不満。

 

---

 

カシムの支持者が。

 

エイダン支持者へ。

 

「国の犬!」

 

エイダン側。

 

「金で人を殺す傭兵!」

 

殴り合い。

 

鉱山労働者。

 

「兵士ばかり!」

 

難民。

 

「土地も出生もない者を!」

 

刻印民。

 

「我々は何世代も!」

 

それぞれ。

 

自分の傷が長い。

 

深い。

 

数が多い。

 

だから先。

 

---

 

## 六

 

最初の死者は、候補者ではなかった。

 

支持者。

 

名前。

 

ローヴェン・カー。

 

自由傭兵の元炊事人。

 

六十三歳。

 

殴り合いを止めようとして倒れ。

 

頭を石へ。

 

死亡。

 

「誰が押した」

 

エイダン支持の若者。

 

本人。

 

「殺すつもりは」

 

「ない」

 

「傭兵が先に」

 

「ローヴェンは傭兵?」

 

「炊事人」

 

「同じ旗」

 

「だから?」

 

「分からない」

 

一人の死。

 

支持団体。

 

「船員が!」

 

「国のある者が!」

 

実際。

 

若者は無登録船員の弟。

 

彼も国籍が不明。

 

分類が崩れる。

 

---

 

ローヴェンの遺体。

 

誰が代表。

 

カシム。

 

「私たちの」

 

妻。

 

「夫は傭兵ではない」

 

「炊事人」

 

「だから隊の」

 

「人を殺していない」

 

「支えた」

 

「料理した」

 

「それを罪と?」

 

妻。

 

「夫は、戦争から逃げたかった」

 

カシム。

 

口。

 

「知らなかった」

 

「隊長だった?」

 

「槍隊長」

 

「夫の名を」

 

「覚えていませんでした」

 

国のない兵の代表候補が。

 

自分の隊の炊事人を。

 

知らない。

 

「代表?」

 

群衆。

 

妻。

 

「夫を、傭兵の死者にしないで」

 

記録。

 

《自由傭兵隊炊事人。本人が戦闘員を自認した証拠なし》

 

カシム。

 

「名前を」

 

「ローヴェン・カー」

 

「覚えます」

 

「今さら」

 

「はい」

 

---

 

支持集会を三日停止。

 

候補者。

 

「法廷が声を」

 

「死者が」

 

「利用するな」

 

「停止も」

 

何をしても。

 

---

 

## 七

 

第八席へ一人を選ぶ案は、実務上も崩れた。

 

零帳捜索。

 

七国から。

 

箱。

 

書簡。

 

名簿。

 

一日。

 

数百件。

 

鉱山。

 

船。

 

宮廷。

 

傭兵。

 

難民。

 

棺。

 

刻印民。

 

一人では読めない。

 

「補佐を」

 

「誰が選ぶ」

 

「代表が」

 

「自分の集団だけ」

 

「規則で」

 

「分類を」

 

誰が。

 

---

 

ヨナは、帆布番号から最初の十五人を追った。

 

《未声一》。

 

リナ。

 

《長物二》。

 

成人男性二。

 

《冷荷七》。

 

遺体七。

 

《歩荷三》。

 

歩ける者三。

 

分類が人間の状態。

 

名前なし。

 

港記録。

 

積荷。

 

消失。

 

「船員証言を」

 

ベアトリーチェ。

 

古い海燕船員。

 

「死体船を見た」

 

「積荷を」

 

「棺」

 

「生きた者を」

 

「知らない」

 

「棺の重さ」

 

「違った」

 

「なぜ」

 

「積み手が」

 

「記録は」

 

「ない」

 

人の記憶。

 

---

 

マヌエル。

 

帆布を見る。

 

「この結び」

 

「何」

 

「第三港の棺組」

 

「誰」

 

「親方アルド。補佐ロベルト。少年二人」

 

「生存」

 

「アルドは死んだ。ロベルトは」

 

「どこ」

 

「聖座ルミナ」

 

第八席候補が。

 

自分の加害網を。

 

解く。

 

「あなたを席へ座らせれば」

 

リナ。

 

板。

 

《逃げない?》

 

「逃げたい」

 

《でも》

 

「残る」

 

---

 

ナジムは、帆布の重量符号を。

 

「鉱石選別記号と同じ」

 

「なぜ」

 

「人を積荷にする帳簿が、鉱山から」

 

黒帳商会。

 

運搬様式。

 

坑夫。

 

棺。

 

武器。

 

同じ。

 

「零帳は一つの業界では」

 

サルマ。

 

「会計の言葉が」

 

「人へ」

 

---

 

ミレナは、無系譜孤児の服飾記録を。

 

孤児院は名前を失っても。

 

衣服へ縫い印。

 

《北船・女児・十》

 

誰か。

 

死体船。

 

《未声一》。

 

「リナの服は」

 

リナ。

 

残っていない。

 

「縫い印を」

 

手首。

 

傷。

 

同じ形。

 

孤児院の識別札を切り取った跡。

 

「あなたは、孤児院に」

 

リナ。

 

首を振る。

 

「船へ載せる前に、記号だけ」

 

人を施設へ送らず。

 

服の形式だけ。

 

---

 

一人を代表へ選ぶ前に。

 

全員が必要。

 

---

 

## 八

 

リヴィアから、八通目の推薦状が届いた。

 

宛先。

 

第八席選定委員会。

 

候補者名。

 

《名前なし》。

 

推薦理由。

 

《代表を選ばない者を代表するため》

 

紙。

 

本物の共同法廷公文書紙。

 

印。

 

なし。

 

「挑発」

 

ギヨーム。

 

裏。

 

一行。

 

《空席を制度にすれば、空席を管理する者が王になる》

 

マリアム。

 

読む。

 

「正しい部分」

 

「彼女の」

 

「だから危険」

 

「どうする」

 

---

 

一人を選ばない制度。

 

誰が議題を決める。

 

誰が証言を並べる。

 

誰が票を。

 

書記。

 

事務局。

 

法廷運営官。

 

マリアム。

 

ヨナ。

 

それらが。

 

実質の代表。

 

空席を守る者が。

 

空席を所有する。

 

「リヴィアは」

 

ヨナ。

 

「どちらを選んでも」

 

「使える」

 

一人。

 

排除争い。

 

複数。

 

管理者権力。

 

空席。

 

刑延期。

 

「なら、彼女が使えない答えは」

 

リナ。

 

板。

 

《ない》

 

「諦める?」

 

《違う》

 

「使われることを記録?」

 

頷く。

 

完璧な制度はない。

 

誰が利益を得るかを。

 

隠さない。

 

---

 

## 九

 

マリアムは、七候補へ提案した。

 

《第八席を、一人の代表席としない》

 

「最初から」

 

カシム。

 

「言った」

 

「しかし、全員を裁判官にもできません」

 

「なぜ」

 

「人数が増え続ける」

 

「なら」

 

《三層席》。

 

第一層。

 

証言席。

 

零帳に関係する者は、国籍、登録、加害・被害を問わず申請。

 

第二層。

 

審査席。

 

候補者の分類ごとに一名。

 

現時点で七分類。

 

任期。

 

一件ごと。

 

固定しない。

 

第三層。

 

評決席。

 

最終刑に関しては。

 

分類代表七名のうち、無作為に三名。

 

「無作為?」

 

テア。

 

「くじで死刑を?」

 

「決めるのは三人だけではない」

 

七国被害席。

 

法席。

 

さらに。

 

第八席三名。

 

三人中二人が同意しなければ。

 

死刑と終身秘密拘禁を決められない。

 

「ほか四人は」

 

「異議記録」

 

「票がない」

 

「選ばれなかっただけで」

 

「なら毎回七人全員」

 

「七人で済む?」

 

ナジム。

 

「次の分類が」

 

「増える」

 

「分類を固定しない」

 

「誰が分類」

 

事務局。

 

管理者。

 

王。

 

---

 

サムエル。

 

「分類ではなく、証拠束ごとに」

 

「どういう」

 

「死体船の証拠なら、死体船生存者、荷役人、無系譜者」

 

「鉱山なら」

 

「無戸籍労働者、債務者、運搬人」

 

「軍なら」

 

「傭兵、船員、密偵」

 

案件ごと。

 

関係者が違う。

 

「代表を人で固定せず」

 

「証拠へ」

 

「席を付ける」

 

ヨナ。

 

「名前を待つ席ではなく」

 

リナ。

 

板。

 

《話を待つ》

 

---

 

新案。

 

《移動第八席》。

 

一つの椅子は残す。

 

だが座る者は、審理項目ごとに変わる。

 

一人ではなく。

 

最大三人。

 

被害者。

 

実行者。

 

記録を持つ者。

 

可能なら三者。

 

「実行者を被害席へ?」

 

遺族。

 

「被害席ではない」

 

《零帳席》。

 

加害と被害を分けない。

 

国から消された関係者。

 

「被告側になる者も」

 

「はい」

 

「マルケルを庇う」

 

「証言を」

 

評決。

 

三人。

 

意見が割れれば。

 

割れたまま。

 

第八席は、単一票を出さない。

 

《一致》。

 

《多数》。

 

《分裂》。

 

三種類。

 

最終刑。

 

七国の評決と。

 

第八席の状態を併記。

 

「分裂なら」

 

「死刑を決められる?」

 

新規則。

 

死刑には。

 

第八席《一致》または《多数》。

 

ただし多数の反対意見を全文記録。

 

《分裂》なら。

 

死刑不可。

 

終身拘禁または期限付き刑へ。

 

「被告が分裂を作る」

 

「はい」

 

「なら」

 

「証言者買収を」

 

監査。

 

「完全には」

 

「また生き延びる」

 

マリアム。

 

「国のない被害者を一人へ押し込み、強引に死刑を決めるより」

 

遺族。

 

「マルケルのための制度!」

 

リナ。

 

板。

 

《私たちのため》

 

「彼が生きる!」

 

《私も》

 

生きたい。

 

何度。

 

---

 

## 十

 

候補者たちは、新案へすぐ同意しなかった。

 

カシム。

 

「傭兵が選ばれる案件は、軍だけになる」

 

「あなたたちが人身運搬にも」

 

「一部」

 

「なら申請」

 

「自分で?」

 

「証拠を」

 

ナジム。

 

「鉱山生まれの者は、書類を持たない」

 

「証人」

 

「誰も」

 

「現地調査」

 

「時間」

 

ミレナ。

 

「無系譜者は、何の事件にも完全には関係を証明できない」

 

「だから」

 

「証明がない人の席なのに、関係証明を?」

 

矛盾。

 

---

 

テア。

 

「秘密奉仕者は、公開すれば殺される」

 

「匿名席」

 

「信頼を」

 

「三人の保護確認官」

 

「国の役人?」

 

「一人は零帳席選任」

 

「誰が」

 

また。

 

---

 

マヌエル。

 

「実行者が座れば、被害者が来なくなる」

 

リナ。

 

板。

 

《一緒じゃなく》

 

時間を分ける。

 

同じ審理項目。

 

別日。

 

被害証言。

 

実行証言。

 

最後に。

 

必要なら対面。

 

強制しない。

 

---

 

エイダン。

 

「無作為をなくしたら、声の大きい者が」

 

「交代順」

 

「案件関連度」

 

「誰が」

 

「公開理由」

 

完全な答え。

 

ない。

 

---

 

七人は三日。

 

夜。

 

宿。

 

議論。

 

互いに。

 

罵る。

 

食べる。

 

カシムとエイダンは、同じ戦争で別側にいたことが分かる。

 

「お前の船が」

 

「お前の槍隊が」

 

「誰が先」

 

「命令」

 

「金」

 

殺し合っていたかもしれない。

 

同じ食卓。

 

ナジムは、テアがアウレリア密偵として鉱山反乱名簿を渡した可能性を。

 

「黒口へ」

 

「行っていない」

 

「別鉱山は」

 

「ある」

 

「死者」

 

「知りません」

 

「知らない責任」

 

テア。

 

「あります」

 

---

 

ミレナとサムエル。

 

孤児院資金。

 

刻印民銀行が。

 

利子。

 

「あなたたちが」

 

「孤児院を支えた」

 

「債務を」

 

「両方」

 

また。

 

---

 

リヴィアは。

 

七人が出会えば。

 

争うと考えた。

 

実際。

 

争った。

 

同時に。

 

互いの帳簿を。

 

読み始めた。

 

それも。

 

起きた。

 

---

 

## 十一

 

四十日の二十六日目。

 

零帳捜索所が襲われた。

 

火ではない。

 

盗難でもない。

 

大量の申請書。

 

一晩で。

 

三千二百枚。

 

《私も零帳被害者である》

 

名前。

 

事件。

 

国籍。

 

証拠。

 

一部本物。

 

一部誤解。

 

一部虚偽。

 

一部。

 

同じ筆跡。

 

「法廷を埋める」

 

ヨナ。

 

「審査不能に」

 

ギヨーム。

 

---

 

申請例。

 

《徴税官が姓を誤記した》

 

《兵役給金が一月遅れた》

 

《父が密偵かもしれない》

 

《鉱山で働いた》

 

《宿帳へ名がない》

 

《夫が帰らない》

 

《国籍を二つ持つ》

 

零帳との関係。

 

広い。

 

狭くすれば。

 

本物を排除。

 

広くすれば。

 

制度が止まる。

 

---

 

紙。

 

灰冠の一括書式。

 

だが申請者の多くは、本当に困っている。

 

「捨てる?」

 

「できない」

 

「全部読む?」

 

「四十日」

 

「期限を」

 

「被告が」

 

また。

 

---

 

リナ。

 

三千二百枚を。

 

一枚。

 

見る。

 

端。

 

小さな記号。

 

《有料代筆》。

 

「誰が」

 

オルシャの代書人組合。

 

十七人。

 

「灰冠が」

 

「申請一件ごと銀貨」

 

人を集め。

 

本当の不満を。

 

紙へ。

 

「代書人は、罪?」

 

「内容が本当なら」

 

「法廷を止める意図を」

 

「一部は知らない」

 

分業。

 

---

 

申請書を。

 

三つへ。

 

零帳記号あり。

 

国家記録から意図的に除外された証拠あり。

 

関係不明。

 

「関係不明を捨てない」

 

別棚。

 

《未分類》。

 

名前を待つ席。

 

書類も待つ。

 

---

 

ミレナ。

 

「未分類を、一番後へ?」

 

「証拠が」

 

「記録がない者ほど後」

 

正しい批判。

 

「では抽出」

 

無作為で。

 

百件。

 

現地確認。

 

残り。

 

受付日でなく。

 

危険度。

 

高齢。

 

生命。

 

刑期限。

 

「また分類」

 

「必要」

 

完全でなく。

 

理由を公開。

 

---

 

## 十二

 

襲撃は、紙だけでは終わらなかった。

 

三千二百人の申請者が。

 

法廷へ来た。

 

「受付された!」

 

「第八席へ!」

 

「私も!」

 

宿。

 

水。

 

食糧。

 

不足。

 

オルシャ。

 

巡礼季。

 

「帰れとは」

 

「申請権を」

 

「滞在費」

 

「ない」

 

救済。

 

銀。

 

誰が。

 

七国。

 

「自国民だけ」

 

「国がないから来た」

 

矛盾。

 

---

 

灰冠系商人が、臨時宿を。

 

高値。

 

債務。

 

《法廷参加貸付》。

 

「また」

 

マリアム。

 

宿を凍結できない。

 

人は寝る場所が。

 

必要。

 

「公的野営地」

 

大門外。

 

水。

 

衛生。

 

費用。

 

七国分担。

 

「自国申請者数で」

 

国がない。

 

「均等」

 

不満。

 

「灰冠凍結資産」

 

使う。

 

また敵の金。

 

---

 

野営地。

 

候補者の支持者。

 

申請者。

 

群衆。

 

リヴィアが狙った。

 

一つの椅子では。

 

もう足りない。

 

---

 

夜。

 

野営地で、子供が消えた。

 

ミレナが。

 

捜す。

 

十三歳。

 

名。

 

アリク。

 

両親不明。

 

申請書。

 

《難民孤児》。

 

「誘拐?」

 

「自分で」

 

門外。

 

倉庫。

 

発見。

 

灰冠商人と。

 

「何を」

 

子供。

 

「証言を売った」

 

「何」

 

「僕を、死体船生存者だと」

 

「本当?」

 

「違う」

 

「なぜ」

 

「席へ近づける」

 

銀貨。

 

「誰に」

 

「この人」

 

商人。

 

「私は、申請の助言を」

 

「偽証を」

 

「少年が」

 

契約。

 

《記憶整理支援》。

 

「記憶を作る?」

 

「本人が忘れた可能性を」

 

ミレナ。

 

商人を殴る。

 

護衛。

 

「暴力」

 

「子供を」

 

「契約」

 

「十三歳」

 

「当地法では」

 

「後見人なし」

 

無効。

 

「後見人がいない」

 

「だから契約できない?」

 

「だから保護が」

 

「誰が」

 

制度。

 

---

 

アリク。

 

「僕は本物の孤児だけど、死体船じゃない」

 

「それで十分」

 

ミレナ。

 

「十分じゃない」

 

「なぜ」

 

「席が一つ」

 

子供も。

 

分かっている。

 

「一つじゃなくする」

 

「本当?」

 

「努力」

 

「遅い」

 

「はい」

 

---

 

## 十三

 

三層案は、さらに変わった。

 

最終名称。

 

《第八席共同手続》。

 

一。

 

席は一つ。

 

ただし所有者を置かない。

 

二。

 

証拠案件ごとに、最大三名の《関係証人》が座る。

 

被害者。

 

実行者。

 

記録・扶養関係者。

 

三分類。

 

揃わない場合。

 

空席部分を明示。

 

三。

 

関係証人は、代表者ではない。

 

自分が知る範囲だけを話す。

 

《代表》という語を禁止。

 

「候補者は」

 

「候補でなく」

 

《最初の証人群》。

 

四。

 

第八席の意見は。

 

一致。

 

多数。

 

分裂。

 

空白。

 

四状態。

 

空白。

 

証人なし。

 

五。

 

最終刑。

 

死刑には、第八席が一致または多数で賛成。

 

ただし。

 

零帳犯罪が死刑理由に含まれる場合のみ。

 

七国犯罪だけなら。

 

七国評決で。

 

「マルケルを七国罪だけで死刑に」

 

遺族。

 

「可能」

 

「なら第八席は」

 

「零帳の罪を、勝手に追加するために使わない」

 

六。

 

終身拘禁。

 

同様。

 

七。

 

証言減刑。

 

第八席の反対が多数または分裂なら。

 

零帳犯罪による減刑は認めない。

 

八。

 

事務局の分類判断。

 

公開。

 

異議。

 

候補者七人から選ぶ《分類監査輪番》。

 

二十日ごと。

 

一人。

 

「管理者が王に」

 

「輪番」

 

「それでも」

 

「全決定理由を」

 

リヴィアの警告。

 

記録。

 

九。

 

申請が未処理でも。

 

刑期限を無期限にしない。

 

四十日後。

 

七国犯罪の刑を決める。

 

零帳犯罪の刑は、別に追加または統合。

 

「二回刑?」

 

「一人の刑を」

 

「最終統合は」

 

「いつ」

 

「零帳審理の初期区切り、百二十日」

 

長い。

 

被告。

 

生きる。

 

「期限を」

 

二段階。

 

---

 

リナ。

 

板。

 

《私の意見》

 

「何」

 

《席に座らない》

 

「制度へ」

 

《いい》

 

「理由」

 

《一人じゃない》

 

---

 

## 十四

 

七人は、候補者の肩書を捨てた。

 

カシム。

 

《軍事零帳証人》。

 

ナジム。

 

《労働・出生無登録証人》。

 

ミレナ。

 

《無系譜・移動証人》。

 

マヌエル。

 

《運搬実行証人》。

 

テア。

 

《秘密奉仕証人》。

 

サムエル。

 

《資格停止共同体証人》。

 

エイダン。

 

《命令身分変更証人》。

 

「長い」

 

群衆。

 

「王より」

 

誰か。

 

「分かりにくい」

 

「正確」

 

「民衆は」

 

「短い名を」

 

市場。

 

結局。

 

七人を《零環》と呼ぶ。

 

誰が。

 

歌。

 

《七国の外を回る零の環》

 

本人たちは嫌う。

 

だが通称。

 

記録。

 

《通称・零環。本人らは正式名称として採用せず》

 

マルケルと会計王。

 

同じ。

 

---

 

ローヴェン・カーの死。

 

エイダン支持の若者。

 

裁判。

 

過失致死。

 

群衆暴力。

 

刑。

 

三年の拘禁・野営地復旧労働。

 

「軽い」

 

傭兵側。

 

「殺意なし」

 

船員側。

 

「旗が」

 

遺族。

 

「夫を旗にしないで」

 

死者名簿。

 

《炊事人》

 

所属。

 

《赤い橋傭兵団第三槍隊付属》

 

戦闘員。

 

《証拠なし》

 

カシム。

 

毎朝。

 

名前を読む。

 

罰ではない。

 

自分で。

 

---

 

## 十五

 

第八席共同手続の最初の案件。

 

死体船。

 

関係証人。

 

リナ。

 

被害者。

 

マヌエル。

 

運搬実行者。

 

ミレナ。

 

無系譜記録。

 

三人。

 

同じ机。

 

座る。

 

リナは中央を拒む。

 

端。

 

マヌエルは最も遠く。

 

ミレナが間。

 

「被害者と実行者を」

 

傍聴席。

 

「同じ席に!」

 

「代表席では」

 

「同じ机だ!」

 

マリアム。

 

「見えることも記録です」

 

---

 

証拠。

 

帆布。

 

零記号。

 

棺組。

 

孤児識別傷。

 

マヌエル。

 

「この結びは、第三港」

 

ミレナ。

 

「この切り傷は、施設識別札を外した跡と似る」

 

リナ。

 

板。

 

《船で切った》

 

「誰が」

 

《女》

 

「名前」

 

《赤い髪》

 

マヌエル。

 

顔。

 

「エステル」

 

「知る?」

 

「棺布係」

 

「生存」

 

「分からない」

 

零帳。

 

最初の名前。

 

《エステル・バレン》。

 

---

 

マルケルを法廷へ。

 

被告席。

 

第八席。

 

三人。

 

「人身運搬が起きる可能性を」

 

マリアム。

 

「認識」

 

「はい」

 

「具体的に生存者を棺下へ」

 

「報告を一度」

 

リナ。

 

板。

 

《何した》

 

「夜荷保険分類を、一時停止」

 

《一時?》

 

「調査」

 

「再開」

 

《なぜ》

 

「遺体搬送が止まり、疫病と宗教問題が」

 

「人を」

 

「確認手続を追加した」

 

マヌエル。

 

「棺を開けなかった」

 

「宗教的抵抗」

 

「だから重量」

 

「荷役人が数値を偽った」

 

「金をもらって」

 

「はい」

 

「あなたの会社から」

 

「間接」

 

「同じ」

 

マルケル。

 

「はい」

 

---

 

ミレナ。

 

「孤児記号を使ったのは」

 

「孤児は国籍確認が」

 

「難しい」

 

「だから運びやすい?」

 

「はい」

 

「子供を選んだ?」

 

「実行者が」

 

「制度は」

 

「名がない者ほど、請求されない」

 

「設計した?」

 

「その部分は」

 

「何」

 

「損失時の請求者不在を、低危険と評価」

 

「人が消える危険は」

 

「評価しなかった」

 

「ゼロ?」

 

「はい」

 

第八席。

 

三人。

 

意見。

 

《一致》。

 

《被告は、国家請求が起きない人間を低危険資産として扱う制度を承認し、具体的な人身運搬報告後も制度を廃止しなかった》

 

最初の零帳責任認定。

 

---

 

刑への意見。

 

リナ。

 

板。

 

《生かす》

 

傍聴席。

 

「なぜ!」

 

《名前を出す》

 

マヌエル。

 

「生かして証言。その後終身拘禁」

 

ミレナ。

 

「記録回復義務。終身かは後」

 

三人。

 

死刑反対。

 

一致。

 

この案件だけ。

 

ほかは違う。

 

---

 

## 十六

 

二件目。

 

無登録軍事雇用。

 

関係証人。

 

カシム。

 

エイダン。

 

テア。

 

被害。

 

実行。

 

命令。

 

三つ。

 

「全員、人を殺した?」

 

法廷。

 

カシム。

 

「はい」

 

エイダン。

 

「はい」

 

テア。

 

「直接は少ない」

 

「少ない?」

 

「二人」

 

「それでも」

 

「はい」

 

---

 

マルケル。

 

「傭兵を《甲板補用品》とした分類は」

 

「海務局」

 

「承認は」

 

「自動」

 

「あなたの規則」

 

「はい」

 

「死者補償を」

 

「国籍なしの場合、雇用主へ」

 

「雇用主が死ねば」

 

「請求なし」

 

カシム。

 

「それを知って、隊を」

 

「安く」

 

「はい」

 

「我々が人を殺すと」

 

「そのために雇った」

 

「なら」

 

「はい」

 

言い訳なし。

 

---

 

エイダン。

 

「王命船員は」

 

「アルビオンの問題」

 

「灰冠保険が、仮登録を」

 

「本登録より安く」

 

「はい」

 

「戦死時」

 

「家族記録なしなら請求なし」

 

「はい」

 

「国が」

 

「使った」

 

「あなたも」

 

「保険設計」

 

「はい」

 

---

 

テア。

 

「密偵は」

 

「零帳へ直接」

 

「なぜ」

 

「国が認めない任務」

 

「死ねば」

 

「関係費」

 

「家族へは」

 

「別口」

 

「本当に」

 

「届かない場合が」

 

「知っていた」

 

「はい」

 

「私の名を」

 

「帳簿に」

 

符号。

 

《紫鴉十二》。

 

テア。

 

揺れる。

 

本名ではない。

 

だが、自分の符号。

 

「生きていると」

 

「今、知った」

 

「家族は」

 

「いない」

 

「誰がそう決めた」

 

「記録が」

 

「記録がないから?」

 

彼女。

 

マルケル。

 

「はい」

 

---

 

第八席意見。

 

分裂。

 

カシム。

 

死刑反対。

 

証言後、終身労働。

 

エイダン。

 

死刑賛成。

 

「なぜ」

 

「命令を作る者が生き、実行者だけが」

 

自分。

 

テア。

 

保留。

 

「秘密名簿を公開すれば、生存者が死ぬ」

 

「では」

 

「先に保護」

 

分裂。

 

零帳軍事罪を死刑理由には。

 

今は使えない。

 

遺族。

 

怒り。

 

制度が。

 

被告を生かす。

 

同時に。

 

異論を消さない。

 

---

 

## 十七

 

リヴィアの次の手は。

 

第八席の中へ。

 

買収ではない。

 

情報。

 

カシムへ。

 

《エイダンの船が、赤い橋第三槍隊を沈めた》

 

エイダンへ。

 

《カシムの隊が、サンタ・マリア港の前に民間船を襲った》

 

ナジムへ。

 

《テアの密偵報告で、坑夫反乱者が処刑された》

 

テアへ。

 

《ナジムの坑夫組合が、密偵の家族を殺した》

 

ミレナへ。

 

《サムエルの銀行が孤児院を債務化》

 

サムエルへ。

 

《ミレナの夫が刻印民倉庫略奪へ》

 

マヌエルへ。

 

《リナの死体船を積んだ荷役人名簿に、あなたの兄》

 

全て。

 

一部本物。

 

一部別事件。

 

一部日付違い。

 

「誰から」

 

同じ灰色封筒。

 

署名なし。

 

---

 

七人。

 

互いを。

 

問い詰める。

 

「お前が」

 

「違う」

 

「帳簿に」

 

「日付を」

 

ヨナ。

 

「封筒を提出してください」

 

「私信」

 

「裁判関係」

 

「出したら」

 

「自分の罪も」

 

「はい」

 

---

 

カシムとエイダン。

 

海戦記録。

 

赤い橋第三槍隊が乗った船。

 

沈めたのは。

 

《聖ブリジット》ではなく、《白剣》。

 

エイダンは別船。

 

「無関係?」

 

「同じ船団」

 

「なら」

 

「でも矢を放った」

 

誰へ。

 

分からない。

 

「潔白では」

 

「ない」

 

---

 

テアの密偵報告。

 

黒口ではなく。

 

アウレリア北鉱山。

 

ナジムとは別。

 

だが坑夫二十七人が処刑。

 

「私が」

 

「はい」

 

「命令」

 

「報告」

 

「結果を」

 

「知っていた」

 

ナジム。

 

「なら同じ」

 

「あなたの仲間ではない」

 

「坑夫だ」

 

代表を否定しながら。

 

他の坑夫を。

 

自分へ。

 

「同じと」

 

「言う」

 

矛盾。

 

---

 

サムエルの銀行。

 

孤児院債務。

 

彼の支店ではない。

 

共同体銀行全体。

 

「責任は」

 

「一部」

 

「いくら」

 

「分からない」

 

「知らない」

 

「はい」

 

「同じ」

 

ミレナ。

 

マルケルへ向けた言葉が。

 

互いに。

 

---

 

リヴィアは、嘘を送らなくてもよい。

 

人は。

 

過去を持つ。

 

---

 

## 十八

 

第八席共同手続は、一度停止した。

 

七人自身が。

 

求めた。

 

「理由」

 

マリアム。

 

カシム。

 

「我々は、互いの罪を知らずに席へ」

 

「知れば」

 

「座れない?」

 

「逆です」

 

エイダン。

 

「知らずに、自分だけ被害者の顔を」

 

テア。

 

「全員の利益・加担対読を」

 

七国と同じ。

 

第八席にも。

 

---

 

新規則。

 

零帳証人が、他者の責任を問う時。

 

自分が同じ制度から得た利益。

 

加担。

 

沈黙。

 

可能な限り提出。

 

《零帳対読規則》。

 

「被害者へ負担を」

 

遺族。

 

「七国法廷と同じ」

 

「被害者が、自分の罪を出さなければ話せない?」

 

「関係する場合だけ」

 

「誰が」

 

難しい。

 

---

 

リナ。

 

板。

 

《私は?》

 

「あなたの加担」

 

ヨナ。

 

少女。

 

船。

 

生き残った。

 

《棺の子を押した》

 

部屋。

 

「何」

 

彼女。

 

書く。

 

《隠れるため》

 

船倉。

 

棺の下。

 

ほかの子。

 

狭い。

 

リナは、自分が入るため。

 

別の幼い子を。

 

奥へ押した。

 

その子は。

 

死んだか。

 

分からない。

 

「名前」

 

《知らない》

 

「なぜ今まで」

 

《言いたくない》

 

被害者。

 

生存。

 

加害。

 

子供。

 

「罪?」

 

法官。

 

「当時年齢、脅迫状態」

 

「でも」

 

リナ。

 

板。

 

《押した》

 

記録。

 

免責では。

 

事実。

 

---

 

マヌエル。

 

彼女を見る。

 

「私も」

 

《同じじゃない》

 

「はい」

 

同じにしない。

 

違いを。

 

残す。

 

---

 

## 十九

 

四十日目。

 

七国共同法廷は再開した。

 

被告。

 

マルケル。

 

七国席。

 

第八席。

 

一つの机。

 

その日の関係証人。

 

リナ。

 

カシム。

 

ナジム。

 

ほかの四人は。

 

後ろ。

 

証言輪番。

 

---

 

最終刑審理。

 

七国犯罪。

 

既に責任認定。

 

零帳犯罪。

 

初期認定。

 

全体は未完。

 

法席。

 

求刑。

 

セレスタ。

 

終身拘禁、資産全没収、公開会計労働。

 

アウレリア。

 

死刑。ただし毒杯実行者名簿完全開示後。

 

ナフル。

 

終身拘禁。無記録者基金への労働。

 

アルカシャ。

 

鉱山被害地での公開審理後、終身拘禁。

 

アルビオン。

 

終身拘禁及び債権償還労働。

 

ヴァルネリア。

 

死刑反対。国家反逆単独犯化を避ける。

 

オルシャ。

 

終身拘禁。共同裁判継続。

 

七国で。

 

死刑二。

 

反対五。

 

---

 

被害席。

 

パオロ。

 

「終身」

 

侍医。

 

「死刑」

 

サルマ。

 

「終身」

 

シャヒーン。

 

「死刑を望んだ」

 

机。

 

義手。

 

「でも、生かして鉱山の名を」

 

「終身」

 

トーマス・ウェルズ。

 

「終身」

 

マティアス。

 

「終身」

 

ファティマ。

 

「終身」

 

死刑一。

 

終身六。

 

七国犯罪の刑。

 

死刑なし。

 

---

 

マルケル。

 

「終身拘禁を」

 

「意見は」

 

ギヨーム。

 

「重い」

 

群衆。

 

「軽いと言え!」

 

「死にたくないので」

 

「はい」

 

「では」

 

「受け入れます」

 

「上訴」

 

「一部責任認定へ」

 

「刑は」

 

「上訴しません」

 

なぜ。

 

「生きたいから」

 

正直。

 

---

 

第八席。

 

初期零帳犯罪。

 

意見。

 

リナ。

 

《終身。名前を書く》

 

カシム。

 

「終身。軍事雇用主を公開」

 

ナジム。

 

「終身。坑山出生記録を作る」

 

《一致》。

 

この日の三人。

 

死刑反対。

 

終身。

 

だがほかの零帳案件で。

 

変わる可能性。

 

「最終統合は」

 

百二十日後。

 

それまで。

 

七国犯罪による終身拘禁。

 

零帳犯罪の追加刑。

 

資産。

 

労働。

 

公開義務。

 

審理。

 

続く。

 

「終身に追加?」

 

「死刑は」

 

「後から?」

 

規則。

 

七国終身が確定。

 

零帳で死刑を追加できるか。

 

議論。

 

「同じ被告を後から」

 

「二重」

 

最終。

 

零帳審理では死刑を追加しない。

 

終身刑の条件。

 

資産配分。

 

公開範囲。

 

被害修復義務。

 

それを決める。

 

「リナたちが、マルケルを生かした」

 

号外。

 

真実の一部。

 

---

 

## 二十

 

判決。

 

《マルケル・セヴェロスを、七国共同犯罪について終身拘禁とする》

 

《拘禁は、証言終了によって解除されない》

 

必要な囚人。

 

証言すれば自由。

 

それを禁止。

 

《証言拒否によって処刑へ変更しない》

 

沈黙へ死の脅迫を。

 

しない。

 

《ただし、虚偽供述、証拠隠滅、逃亡、共犯への危害は別罪》

 

《資産は、個人生活最低分を除き凍結》

 

「家族は」

 

「本人の家族が、犯罪利益と無関係である範囲を分離」

 

《会計労働は、被害修復のため行う》

 

《労働が刑の短縮理由にはならない》

 

英雄化。

 

免罪。

 

防ぐ。

 

《被告の名を、制度名に使わない》

 

《会計王方式》

 

など。

 

禁止。

 

制度を彼の遺産にしない。

 

---

 

マルケル。

 

「私は、死ぬまで」

 

「はい」

 

「帳簿を」

 

「必要な範囲」

 

「話し終えたら」

 

「拘禁」

 

「価値がなくなっても」

 

「はい」

 

彼が最も恐れたこと。

 

必要だから生きる。

 

ではなく。

 

必要でなくても。

 

刑として生きる。

 

「分かりました」

 

初めて。

 

声が。

 

小さい。

 

---

 

リナ。

 

板。

 

《名前を書く》

 

「誰の」

 

《全部》

 

マルケル。

 

「不可能です」

 

板。

 

《努力》

 

「私一人では」

 

《知ってる分》

 

「はい」

 

---

 

## 二十一

 

第八席は、判決後も空席ではなく。

 

固定席でもなくなった。

 

机。

 

一つ。

 

椅子。

 

三つ。

 

普段は。

 

空。

 

案件がある時だけ。

 

誰かが座る。

 

背には国旗なし。

 

正面札。

 

《代表者ではない》

 

その下。

 

《知る範囲を話す者》

 

「長い」

 

見学者。

 

「必要」

 

ヨナ。

 

---

 

リヴィアが送った七人は。

 

法廷を壊さなかった。

 

完全には。

 

彼女の計画が失敗したのか。

 

分からない。

 

七人は互いの罪を知った。

 

支持団体は割れた。

 

一人死んだ。

 

三千人が押し寄せた。

 

法廷は遅れ。

 

被告は死刑を免れた。

 

灰冠報告なら。

 

一部成功。

 

同時に。

 

国のない人々を。

 

一人へ押し込む制度は。

 

作られなかった。

 

一部失敗。

 

---

 

カシムは、自由傭兵の未払給金を探す。

 

ただし。

 

自分の隊の略奪名簿も。

 

エイダンは、仮登録船員名簿を。

 

同時に。

 

自分が撃った港の死者を。

 

ナジムは、坑道出生記録を。

 

同時に。

 

無登録労働者を使った坑夫組合の帳簿を。

 

ミレナは、無系譜児童の名を。

 

同時に。

 

孤児院債務。

 

サムエルは、刻印民市民資格停止記録を。

 

同時に。

 

銀行の利益。

 

テアは、密偵符号を。

 

ただし、生存者を殺さない封印手続。

 

マヌエルは、棺組の名を。

 

自分の名を最初に。

 

リナは。

 

帆布。

 

炭板。

 

見たもの。

 

知らないもの。

 

書く。

 

---

 

## 二十二

 

ローヴェン・カーの妻は。

 

判決の日。

 

カシムへ鍋を渡した。

 

傭兵隊で夫が使っていた。

 

底。

 

焦げ。

 

「夫のもの」

 

「なぜ私に」

 

「名前を覚えると言った」

 

「はい」

 

「鍋も」

 

「持てと?」

 

「法廷へ置いて」

 

第八席の証拠室。

 

武器でも。

 

帳簿でも。

 

契約でもない。

 

炊事鍋。

 

「夫が、戦闘員でなかった証拠?」

 

「兵に食べさせた証拠」

 

「戦争へ」

 

「はい」

 

「罪?」

 

「分からない」

 

「では」

 

「分からないものを、捨てないで」

 

鍋。

 

証拠番号。

 

《零-生活-一》。

 

最初の生活物証。

 

---

 

死者。

 

兵。

 

子供。

 

坑夫。

 

密偵。

 

荷役人。

 

人は。

 

帳簿だけでは生きていない。

 

鍋。

 

靴。

 

歌。

 

傷。

 

歯。

 

名前。

 

記憶。

 

第八席は。

 

零帳を探す法廷から。

 

零帳に書かれなかった生活を探す場所へ。

 

少し。

 

変わる。

 

---

 

## 二十三

 

灰冠自由会議は、《名前を待つ席計画》を次のように評価した。

 

《七候補同時推薦、達成》

 

《候補者間暴力、達成》

 

《死者一名、達成》

 

《単独代表選挙による排除、未達》

 

《第八席選定遅延、達成》

 

《大量申請による事務麻痺、限定達成》

 

《偽証候補育成、限定》

 

《零帳被害者と実行者の分裂、達成》

 

《候補者による相互加担公開、想定外》

 

《移動第八席制度、敵制度強化》

 

《単独代表概念の廃止、長期的損失》

 

《マルケル死刑回避、達成》

 

《マルケル終身拘禁、損失》

 

《証言終了による釈放可能性、消滅》

 

無貌。

 

「彼は生きる」

 

鴉筆。

 

「自由にはならない」

 

「帳簿を話す」

 

「話しても」

 

「終身」

 

黒雪。

 

「取引価値を奪った」

 

「なら、話さない?」

 

「虚偽は別罪。沈黙でも刑は変わらない」

 

「動機が」

 

「被害修復だけ」

 

「弱い」

 

「人は、自分の名を残したい」

 

「マルケルは」

 

「会計王の名を消される」

 

最大の刑。

 

「それでも、何かを」

 

「自分の制度として残そうと」

 

「第八席へ」

 

「関与させない」

 

---

 

無貌は。

 

別の地図。

 

東。

 

アウレリア。

 

皇帝位。

 

ミハイル皇弟。

 

麻痺。

 

後継。

 

紫秤帳。

 

宮廷無名密偵。

 

「次は」

 

「国のない者ではなく」

 

「国を継ぐ者」

 

アウレリア帝国。

 

皇帝アレクシオス七世は死去。

 

皇弟ミハイルは毒で半身不随。

 

王統。

 

傍系。

 

軍。

 

教会。

 

都市。

 

「皇帝を選ぶ?」

 

「東方帝国は選ばない」

 

「継承する」

 

「継承者が」

 

「三人」

 

「全員、正統」

 

「帳簿は」

 

紫秤帳。

 

三人へ。

 

別の出生証明。

 

「偽物?」

 

「一つは」

 

「本物」

 

「残り」

 

「本物の証人が、違う時に違うことを言った」

 

名前。

 

血。

 

王冠。

 

また。

 

「空席を分けた法廷の次は」

 

黒雪。

 

「一つしかない玉座を、三人の本物へ」

 

---

 

リヴィア・サン・ジェルマーノは。

 

オルシャから遠く。

 

アウレリア西街道の宿。

 

七通の推薦状の写しを。

 

火へ入れた。

 

御者。

 

「失敗ですか」

 

「誰が」

 

「一人も選ばれなかった」

 

「七人全員が席へ入った」

 

「望んだ?」

 

「いいえ」

 

正直。

 

「では」

 

「制度は、予想よりよくなった」

 

「なら負け」

 

「一つの戦場では」

 

左肩。

 

傷。

 

「次は」

 

「制度が分けられないもの」

 

「何」

 

「皇帝」

 

玉座は。

 

三つへ分けられない。

 

少なくとも。

 

人々はそう信じている。

 

「三人の本物を」

 

「一つの椅子へ」

 

---

 

## 二十四

 

判決から十日後。

 

第八席へ、最初の正式な名前回復報告が届いた。

 

《未声一》。

 

リナではない。

 

帆布の別番号。

 

少女。

 

赤髪の棺布係エステルが、船倉で呼んだ名。

 

《ノア》。

 

少年か。

 

少女か。

 

不明。

 

生存。

 

不明。

 

ただ。

 

名前。

 

一つ。

 

零から。

 

戻る。

 

---

 

ヨナは台帳へ。

 

《零帳記号・未声一》

 

線。

 

その下。

 

《呼称・ノア。棺布係エステル・バレンの証言による。性別、年齢、国籍、生死不明》

 

「名前が分かった?」

 

見学者。

 

「一部」

 

「ノアが本名?」

 

「分かりません」

 

「なら」

 

「呼ばれていた名です」

 

「それで十分?」

 

リナ。

 

板。

 

《ゼロより》

 

---

 

第八席の背には。

 

まだ。

 

《名前を待つ席》

 

とある。

 

だが、待つだけでは。

 

名前は戻らない。

 

港へ行き。

 

墓を掘り。

 

傷を見て。

 

古い歌を聞き。

 

加害者へ問い。

 

被害者の記憶違いも記録し。

 

偽の申請を捨てず。

 

本物だから正しいとも決めず。

 

一人ずつ。

 

拾う。

 

---

 

空席は。

 

すべての者を代表できない。

 

人が座れば。

 

その人の傷が、別の傷を隠す。

 

誰も座らなければ。

 

書記と法官が、空席の意味を所有する。

 

だからオルシャは。

 

椅子を空にしたままにしなかった。

 

誰か一人へも渡さなかった。

 

話す内容ごとに。

 

座る者を変えた。

 

代表ではなく。

 

証人として。

 

---

 

名前を待つ席は。

 

ついに、誰かの名前を冠することはなかった。

 

リナ席。

 

傭兵席。

 

難民席。

 

刻印民席。

 

どれにもならなかった。

 

ただ。

 

三つの椅子と。

 

一つの机。

 

国旗のない札。

 

《知る範囲を話す者》

 

それだけだった。

 

そして、その小さな文は。

 

王冠よりも。

 

鍵よりも。

 

聖典よりも。

 

人に、できないことを認めさせた。

 

あなたは。

 

全員を代表できない。

 

だから。

 

全員の代わりに話すな。

 

自分が見たものを話せ。

 

知らないことは。

 

知らないと書け。

 

---

 

オルシャで、名前を待つ席が最初の名を取り戻した夜。

 

アウレリア東方帝国では。

 

一つの玉座の前へ。

 

三通の出生証明書が置かれていた。

 

三人の皇位継承者。

 

三人とも。

 

故皇帝の血を引く。

 

三通とも。

 

本物の証人印。

 

三通とも。

 

日付が違う。

 

一人は。

 

皇帝の婚外子。

 

一人は。

 

亡き皇太子の隠し子。

 

一人は。

 

毒杯で倒れた皇弟ミハイルの養子。

 

帝国法では。

 

三人のうち。

 

誰か一人しか皇帝になれない。

 

第八席のように。

 

案件ごとに交代することはできない。

 

玉座は。

 

一つ。

 

少なくとも。

 

その時のアウレリア人は。

 

そう信じていた。

書き溜めていた分のストックがほぼ尽きてきましたので… 更新頻度についてアンケートをさせていただきたいと思います。 以降の更新頻度はどの程度がよいでしょうか?

  • 死ぬ気でがんばれ
  • 可能な範囲でがんばれ
  • そんなに急ぐこたーないぞ
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