夢想少女ノ魔女裁判   作:タイホくん

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プロローグ
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めんどくせえって方はこちらからどうぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───これより下部へのスクロールを禁ずる───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??

 「まさか、今更逃げるつもりですか? ‥‥ヤレヤレ、困りましたねえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??

 「あなたなら”押し慣れている”と思ったのですが‥‥残念です」

 

 

 

―――これより下部へのスクロールを禁ずる―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??

 「言っておきますが、これ以上進んでも私たちはもう喋りませんよ。大人しく、ボタンをポチポチ、っとお願いしますね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――これより上部へのスクロールを禁ずる―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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(推奨BGM「飛者の迎え-序-」 ♪27)

 

クチョー

 「はい! ではこれより、魔女の処刑を執行します~」

 

 上空からどこか間の抜けた声で、処刑の開始が宣言されました。

 その言葉とともに、何かの仕掛けが作動し始めました。歯車の回転音が鳴り出し、中央の台座が僅かに揺れます。

 周囲の少女たちの方に目をやると、なにが起こるのかと顔を見合わせる人、これから起こる出来事に恐怖し膝がガクガクと震える人、目を塞ぎ耳を押さえる人など反応は様々です。

 

 私は、目を閉じます。次に目を開けた瞬間、飛び込んできた光景は‥‥

 

 処刑の苦痛に悲鳴を上げ、もがき苦しむ少女の姿。

 その様子をただ眺めることしかできない他の少女たちはただ、この時が終わるのをじっと堪える他ありません。

 

 私は処刑台を見上げます。拘束された少女は正気をもはや失っているようです。爪が常軌を逸した長さになり、顔にヒビが入り始めています。

 彼女は人でなくなり始めている。そう思いました。

 

 それでもなお、処刑は続きます。

 

 彼女は“魔女”だから。

 “処刑されなければならない存在”だから。

 

 それはすぐ側で処刑を眺める彼女たちもまた、同じ。

 

 そして私もまた‥‥。

 

 だから、私は‥‥。

 

 私が‥‥

 

 

 

 そう‥‥私が。

 

 

 

 全員──殺します。

 

 

 

 だから、どうか──

 

 

 

 

 

 

 

───────

 

 

 

 

 

 

 

コト

 「──やめてください!」

 

(推奨BGM「鉛の腱」♪7)

 

 私は叫び、飛び上がりました。悪夢を見ていたせいか、呼吸が乱れ全身が汗ばんでいるのを感じます。

 最初に感じたのは、硬いベッドの感触。周囲を見回すと鉄格子が見えました。

 

 監獄──私はそう直感しました。石造りの壁に囲われた部屋に二段ベッドと簡易的な机がぽつんと置かれている、実に味気のない監獄です。

 私は額の汗を手の甲で拭って、呼吸を整えました。視線を落とせば、手がかすかに震えています。

 

 落ち着いて‥‥今のは、夢です。

 ‥‥今はまだ、焦ってはいけません。

 

 それでも、私の体は言うことを聞いてくれなくて。

 心臓がどくどくと波打つ音が頭の天辺まで響いて嫌にうるさいです。心が乱れ、か細いながらも呼吸が荒くなっていきます。

 

??

 「大丈夫かい?」

 

 不意に頭上から声がしました。私がその声に反応して振り返ると、二段ベッドの上で起き上がった人物がいます。

 

??

 「血色が悪くなっている。緊張で血の気が引いているようだ」

 

 ベッドに備え付けられたはしごを使わずにひょいと飛び降りた少女は、こちらに近づいて、「失礼」と一言断りを入れると、私の手を握りました。

 

??

 「‥‥ゆっくり、僕の体温に集中するんだ。他の事は考えなくていい。落ち着いて‥‥手を握って」

 

 少女に促されるまま、私は教えてもらったように彼女の温もりに意識を集中させます。

 彼女の熱がじんわりと私に伝わって。それと同時に、自分の手の温もりを私は思い出します。私は生きていると。生きた人間なのだという実感が湧きます。

 

 そう思うと、次第に心が落ち着きました。

 

??

 「どうやら落ち着いたようだ。よかった」

 

 安堵した様子の少女は、一息つくと周囲をぐるりと見渡し始めた。

 

コト

 「あ、あの。ありがとうございます」

 

??

 「ん。ああ、いや。感謝されるほどの事では‥‥」

 

 少女はお礼を言われたことにドギマギしたのか、顔を僅かに赤らめます。

 

??

 「むしろ、初対面なのに突然手を握ってしまって申し訳ない。‥‥幼い頃、気持ちが落ち着かない時によくこうしてもらったものだから。クセで、つい‥‥」

 

 少女はやや照れている様子で私にそう告げると、再び監獄内の観察を始めます。

 

 その時、頭上に鈍い光が灯りました。見上げてみると、中世風の監獄に似合わないモニターが付いているのが確認できます。

 見慣れないモニターに目を白黒させていると、そこにはフクロウを模したマスコットが映っていました。

 

クチョー

 「あ‥‥もしもし‥‥映像って見えてます‥‥? 何せ古くて故障が多いので‥‥やれやれ」

 

クチョー

 「私、ゴクチョーと申します。詳しい説明がしたいので、ラウンジに集合してください。監房の鍵を開けますので、看守の後についてきてください」

 

クチョー

 「抵抗とかは自由なんですが‥‥命とかなくなっちゃうので‥‥はい‥‥」

 

 モニターは再び真っ黒になりました。それと同時に聞こえる鍵の開く音。

 

??

 「ゴクチョー‥‥? 看守‥‥? 僕達が罪を犯して監禁されたとでも‥‥?」

 

 傍らの少女は聞き慣れない単語を耳にし、顎に手を当て思案にふけります。

 

コト

 「あ、あの。ラウンジに集合してください、って指示のようですし、一度ここから出ませんか?」

 

 私は物思いにふける少女に声を掛けます。

 

??

 「‥‥あ。ああ。そうだね。一旦指示には従おう。何が起こるか分かったもんじゃない」

 

 少女はそう言って監獄の鉄格子に手をかけました。重そうに見える鉄格子は思ったよりもすんなりと開きます。

 

??

 「な、何だ、これは‥‥?」

 

 しかし、廊下から一歩出た瞬間、少女は何かにおののいて監獄へと足を戻しました。

何事かと私も外を見ると‥‥。

 

 見たこともない化物が、そこにいました。大きさは推定2m。つばのついた帽子を被って、奇妙な柄の仮面を身に着けています。

 腕が複数本生えており、それらをフワフワと周囲に漂わせているのが見えました。あの腕は独立して動いているのでしょう。

 全身はカラスの羽のようなもので覆われている一方、胸元だけはあばら骨のような何かがむき出しになっていて、少しグロテスクです。

 

 あれが‥‥おそらく、先ほど説明のあった《看守》‥‥なのでしょう。化物の手には、無数に枝分かれした奇妙な形の剣が握られています。もし、抵抗すればあの剣で‥‥。

 脳裏によぎった恐ろしい想像を、私は頭を振ってかき消します。

 

 看守さんはふらふらと意識があるのかないのか定かでない足取りで監獄前の廊下を進むと、既に外に出た囚人たちをラウンジに向かうよう促すように剣をちらつかせています。

 

??

 「んだよこのバケモンッ! 趣味の悪い格好しやがって! 俺らに何の用だよ!」

 

??

 「ひょええええ~! ナニ、ナニコレ!? デスゲームものはじまた!?」

 

??

 「明らかに一目でわかる異形の存在。これが看守だと言うのか‥‥?」

 

 廊下からは、看守を目撃したであろう他の囚人たちの声が聞こえてきました。その声は少しずつ遠くなり、皆さん看守さんの指示に従っていると見て取れます。

 

コト

 「私達も出ましょう? 指示に従わなかったら、その‥‥“命とか無くなっちゃう”、らしいですし」

 

??

 「‥‥ああ。もっとも僕は‥‥。いや、いい。道に迷ってもいけないし、先ほどの看守を追いかけよう」

 

 なにか言おうとして言い淀んだ少女は、私が扉を開けるのに続いて監房を出ました。

 

 廊下は嫌にかび臭く、天井から床まで苔が生した薄暗い空間です。

 先を見ると、私とほぼ同じ年頃の少女たちが、周囲を警戒しながらオズオズと廊下を進んでいる様子が見えました。その先頭には看守さんがいて、彼女たちを先導しているようです。

 

 同部屋の少女と私は、看守の案内に従い廊下を抜け、階段を登っていきます。

 皆さんが捕らえられていた地下の牢屋を抜けると、玄関ホールと思しき場所に出ました。見上げると首が痛くなるほど天井の高いホールは、この屋敷の大きさを物語っています。

 複数ある扉の内、看守さんは階段横の部屋へと入っていったようです。

 

 

───────

 

 

(推奨BGM「交々のいと-絡-」♪12)

 

 部屋の中には少女が既に複数名たどり着いていました。

 どうやらここはラウンジのようです。毒々しい赤を基調としたラウンジは正面にモニターが設置されていて、鈍い光を放っています。

 私達の入室が最後だったのか、待機していた看守さんは剣を抜くと、それを床にドンと叩きつけます。それを合図に入り口が塞がれました。これで全員が、このラウンジに揃ったということでしょう。

 

 周囲を見回すと、そこには私を含め13人の少女がいました。

 

??

 「‥‥‥‥‥‥」

 

 本棚の隅の影に隠れて気配を消そうとしている、黒いフードを被った少女もいれば。

 

??

 「あわわわわ。落ち着いて落ち着いて、瀟洒に完璧に完全無欠にぃぃ‥‥」

 

 軽いパニックに陥っているのか、独り言を漏らしまくるメイド服姿の少女もいれば。

 

??

 「なんでこんなところに‥‥」

 

 居場所なさげにすこし縮こまる、透明感のある少女もいれば。

 

??

 「私達は一体、何の目的で‥‥」

 

 努めて冷静な態度を保とうとする、赤髪の少女や、

 

??

 「ガツガツカブカブ‥‥。もっと喰わせろ‥‥!」

 

 ラウンジ中央にたまたま置かれていた、フルーツの盛り合わせに食らいつく少女もいました。

 私の他に、周囲を観察している人物が真正面にもう1人。

 

??

 「‥‥‥‥‥‥」

 

 ──この中で一番、芯の通った雰囲気で周囲を見渡し、そして私にもまっすぐとした瞳を向ける少女。

 その雰囲気は、あどけなさと大人びた雰囲気を兼ね備えているように見えて。1人だけどこか、既に覚悟を決めたような面持ちを感じさせます。

 

 各人各様、様々な様子でありながらも緊張の面持ちでその時を待つ。そんな中‥‥。

 

(推奨BGM「迷宮の徒」♪8)

 

??

 「ひょええええぇ! なんですかこのリテラリー美少女尊み空間はぁッ!」

 

 全く別のベクトルで様子のおかしい少女がいました。思わずそちら見た私と彼女の目があってしまいました。‥‥面倒ごとに巻き込まれそうな気がします。

 

??

 「やや、そこのあなた。今目が合いましたね? そうですよね!?」

 

 様子のおかしい少女は、ズズイと私の方に素早くにじり寄ると、興奮した息遣いでこちらを見つめてくる。

 

??

 「ややや、同士かとお見受けいたしましたが、あなたも中々、ほほう‥‥」

 

 私の顔面をジロジロと、穴を1つ1つ丁寧に開けるかのように少女がこちらを凝視します。恥ずかしくなってしまって思わず目を逸らしてしまいました。

 

??

 「あああ! 今の表情いいですねぇ! ジュルリ‥‥。この場にカメラが無いのが惜しいですなぁ。せめて私の脳内メモリーに‥‥パシャリとな」

 

 誰に向けるでもない独り言をブツブツと少女は放ち続けます。

 

??

 「おい、やかましいぞ。そこのピンクの」

 

 その様子を見かねて、ひときわ背の高い少女が様子のおかしい少女を叱りつけました。

 少女たちの平均身長が大体150台後半だろうと思われる中、1人だけ170台後半はあろう長身の少女です。

 周りよりも高い目線からこちらを見下ろし、ギロリと睨みつけています。

 

??

 「ひょおおおお。デカ女さんですかぁぁぁ。中々乙ですなああ。これもまたパシャリと」

 

 空気の読めない様子のおかしい少女は、睨まれてもなお自分の世界に入っているようです。私の方から離れると、今度は長身の少女の方へと向かいます。

 

??

 「チッ。状況分かってんのかよ。謎の監房。互いに顔も知らない十数人が集められて、こんな意味わかんねえバケモンがいるんだ。もっと危機感持てよ」

 

 苛立ちを隠しきれない長身の少女は、腹立たしげに髪をかきむしります。

 怒鳴りつけられたピンク髪の少女はほんの少し縮こまりましたが、それでも熱い視線を長身の少女に注ぎ続けます。意外と強かな人のようです。

 

??

 「その通りだ。まずは互いの状況把握に移るべきだろう」

 

 モニター付近から声がした。見ると、凛とした様子の少女が立っています。背筋をぴんと伸ばし、一分の隙も感じさせない様子です。

 

??

 「そこの彼女が言ったように、恐らく私達は皆初対面だ。自己紹介は最低限しておくべきだろう」

 

 1歩前に出た少女は、毅然とした態度のまま続けます。

 

クア

 「言い出しっぺの私から名乗ろう。私の名前は真壁リクア(まかべ りくあ)。15歳だ」

 

クア

 「この春から高校生のはずだったのだが‥‥君たち同様、気がついたらこんなところに拉致されていた」

 

クア

 「状況が飲み込めないが、ひとまず全員で協力すべき状況だろう。よろしく頼む」

 

 先陣を切った少女、真壁リクアさんは堂々と名乗りを上げました。それに続けて何人かの少女も自己紹介を始めていきます。

 

リス

 「え、えととと。私は三条エリス(さんじょう えりす)と申します。え、えと16歳です。ちょっとまだテンパっていますけれどもその、よろしく、お願いいたします‥‥」

 

 軽いパニック状態だったメイドの少女、三条エリスさんが続きます。まだ落ち着けていないのか、丁寧な口調ながらもどこかたどたどしい様子です。

 

 「白川ミト(しらかわ みと)‥‥。14歳‥‥」

 

 縮こまっていた少女、白川ミトさんは必要最低限の情報だけ告げると、それっきり口を閉ざしてしまいました。

 

ナデ

 「鳳月カナデ(ほうづき かなで)と言います。私も白川さんと同じく14歳です。よろしくお願いします」

 

 比較的冷静だった印象の少女、鳳月カナデさんはその姿勢を崩さないままシャンとした様子で名前を告げます。

 名前を呼ばれたことに反応したのか、壁に徹していたミトさんが少しだけピクリと動いたのが視界の端に映りました。

 

 「んあ? これアタイも言わなきゃいけない流れか? アタイは朝雛チサ(あさひな ちさ)。13歳。よろしくな!」

 

 フルーツの盛り合わせにかぶりついていた少女、朝雛チサさんはそう言うと残っているフルーツ齧りに戻ります。

 

ヅハ

 「‥‥私、常盤シヅハ(ときわ しづは)って言います。14歳です。よろしく‥‥お願いします」

 

 影に隠れる少女、常盤シヅハさんは名前と年齢だけ告げると、今度は壁を背にして誰とも目を合わさないように影に隠れ続けます。

 

キラ

 「早瀬アキラ。16だ。よろしく」

 

 長身の少女、早瀬アキラさんは必要最低限の言葉だけ発しました。着慣れていないのか、服のフリルを片手でいじくっています。

 

??

 「少々名乗るのが遅くなってしまいましたわね」

 

 ここまで声を発していなかった少女が口を開きました。ふんわりとしたシルエットのドレスに身を包んでいて、いかにも“お嬢様”な雰囲気をまとっています。

 

ヴィア・ーゼンタール

 「リヴィア・ローゼンタールと申します。今年で齢17を数えますわ。どうやら皆様方の中でわたくしが最年長のようですわね。よろしくお願いいたします」

 

 恭しく深々と頭を下げた少女、リヴィア・ローゼンタールさんは所作を見るに本物のお嬢様のようです。全員の視線が彼女へと向けられます。

 そんな中、頭を上げたリヴィアさんとアキラさんの視線が交錯しました。

 

キラ

 「あ? 何だよ」

 

ヴィア・ーゼンタール

 「いいえ? ただ、なんと言いますか‥‥。少々《愉快なお召し物》だと思いまして。‥‥フフ」

 

 アキラさんが着ているような服は、リヴィアさんに取っては住む世界の違う住民の格好として映ったのでしょうか。

 こらえきれなかったのか、リヴィアさんは思わずほんの少しだけ吹き出しました。

 小柄な彼女をこれまで以上に見下しながらアキラさんはリヴィアさんを睨みつけます。

 

キラ

 「んだとテメェ!? こっちだってやりたくてこんな格好してんじゃねえよ! 気がついたらこんなもん着せられてて‥‥ああッ! イライラしてんだよこの!」

 

 服のフリルをいじくっていたのは、どうやら服そのものを気に入っていなかったからのようです。

 苛立ちを隠しきれなくなったのか、アキラさんは軽く地団駄を踏みます。

 

ヴィア・ーゼンタール

 「いいえ? とても似合っていますわよ? あなたにしては‥‥。‥‥プッ」

 

 アキラさんの苛立ちを見てもなお、リヴィアさんは彼女を煽るかのように笑い続けます。

 

キラ

 「んだテメこらッ! あんま笑ってっとぶっ殺すぞ!」

 

ヴィア・ーゼンタール

 「あら怖い怖い。あなたのような者にわたくしが殺せるとは到底思えませんが‥‥。殺せるものなら殺してみなさい。ほら」

 

 キレるアキラさんにリヴィアさんは目を閉じると、右胸に手を当てながら首を差し出してみせます。

 

キラ

 「チッ‥‥。てめえは、この、本当に‥‥」

 

 その様子を見てアキラさんはなぜか意気消沈しました。怒りのボルテージが誰の目に見ても下がっていくのが分かります。

 

??

 「ああ、ちょいちょい。喧嘩はやめなって~。どうせなら仲良くしてーじゃん」

 

 そこに、ギャル風の少女が割って入りました。

 

キラ

 「あ? ‥‥もういい。こっちの話だ。それにもう、片付いた。手ェなんて出しゃしねえよ」

 

 燻った火のように大人しくなってしまったアキラさんはそっぽを向きます。

 

??

 「うんうん。それでよし。みんな仲良くが一番に決まってる」

 

 ギャル風の少女はほっと胸を撫で下ろすと、皆さんの方に向き直り、名乗ります。

 

リナ

 「あ、あーしは星谷セリナ(ほしたに せりな)。16歳でーす。よろ」

 

 ギャル風の少女、星谷セリナさんはピースサインを掲げ、適当な挨拶を投げかけました。

 

??

 「はあ、はあ‥‥。早くも尊き関係性が見え隠れする‥‥。喧嘩ップルの誕生にそれを仲裁するギャル‥‥。たまんねぇ‥‥」

 

 様子のおかしい少女は、相変わらず1人だけ別の世界にいるようです。

 

オリ

 「あ、声を発したついでに名乗っときますね。私の名前は倉科ミオリ(くらしな みおり)。14歳。ご覧の通り、どこにでもいる普通のオタですので何卒~。はあはあ‥‥」

 

 様子のおかしい少女、倉科ミオリさんは名乗るだけ名乗ると、また自分の世界に閉じこもってしまいました。

 

リナ

 「へーオタクちゃん、ミオリってんだ。可愛いじゃん。よろしくなー」

 

 セリナはミオリの肩を抱き寄せてハグします。

 

オリ

 「こ、これはッ。オタクに優しいギャル‥‥? まさか存在していたとは‥‥」

 

リナ

 「‥‥あ。そこの君。今、目があったね? 名前、なんて言うの?」

 

 ミオリさんとセリナさんのやり取りを見ていると、セリナさんと目が合いました。そのまま名前を尋ねられます。

 

コト

 「‥‥篠宮マコト(しのみや まこと)、といいます。15歳です。みなさん、どうかよろしくおねがいします」

 

 簡潔に私はまとめました。この手の自己紹介はいまだに慣れません。私の、悪い癖です。

 

??

 「かなり終盤になってしまったが、次は僕だね」

 

 私と同室の少女が、1歩前に出ました。

 

ナタ

 「僕の名前は南雲ヒナタ(なぐも ひなた)。同室の彼女と同じく15歳だ。よろしく」

 

 私と同室の少女、南雲ヒナタさんもまた、私と同様簡潔に名乗りました。

 

クア

 「さて、これで全員‥‥と思ったが、まだ1人いたな。そこの彼女!」

 

 リクアさんは、最後に残った少女‥‥まっすぐとした瞳の少女に声をかけます。

 

クア

 「最低限名前は名乗ってもらわないと、今後のコミュニケーションに差し障る。自分のことまで進んで話す必要はないから、頼む」 

 

??

 「‥‥‥‥‥‥私は」

 

 先程のまっすぐとした瞳の少女は、ほんの一瞬、逡巡した様子を見せましたが、やがて口を開くとこう名乗りました。

 

ノカ

 「‥‥黒部ナノカ (くろべ なのか)。年齢は‥‥15歳。‥‥以上よ」

 

 少し辿々しい様子を見せた少女、黒部ナノカさん。

 まるで、名前を名乗ること自体にためらいが含まれているような、そんな雰囲気を感じ取りました。

 

 ナノカさんの自己紹介を受けて、リクアさんは全員の顔をもう一度見回します。全員が名乗ったことを確認し終えたのか、咳払いを1つして話を続けます。

 

クア

 「ひとまずこれで全員の名前が分かった。協力に感謝する。さて、この後の動きだが‥‥。先程のフクロウの言う“説明”がない限り、どうすることもできないな‥‥」

 

 リクアさんが少し困った、という様子を見せたその直後です。

 天井付近にある通気口から、ゴクチョーさんが飛んできたのが見えました。私含めた少女たち全員の視線が集います。

 

(推奨BGM「看るモノ達」♪16)

 

クチョー

 「あっ‥‥人がいっぱい‥‥。えっと、改めまして‥‥この屋敷で管理を任されているかわいいフクロウ、ゴクチョーと申します‥‥」

 

 先ほどモニターで喋っていたこの牢屋敷の管理者、ゴクチョーさんがその姿を現した。

 

クチョー

 「‥‥定時とかもあるので‥‥さっさと説明をしていきますね‥‥」

 

クチョー

 「えっと‥‥すごく申し上げにくいんですが‥‥皆さんは《魔女》になる因子を持っています」

 

 皆の間からざわ、と不穏な空気が広がります。

 魔女‥‥本来はおとぎ話や漫画の中にしか出てこない、架空の存在‥‥そんなものが“実在する”と告げられたのです。その動揺は察するに余りあります。

 

クチョー

 「エラい人が決めた話では《魔女》はこの国にとって、災厄をもたらす悪らしいんです」

 

クチョー

 「わが国の法に基づいた全国検査によって、皆さんはその因子が大きく検出された存在」

 

クチョー

 「この国にとってあまりに危険であると判断され、この牢屋敷への収容が決まったんですね」

 

クチョー

 「いずれ《魔女》になる可能性があるとなると、野放しにはできませんので‥‥」

 

クチョー

 「つまり皆さん、この世界に害をなす悪者ってことで‥‥ご納得ください」

 

クア

 「“法に基づいた全国検査”、だと? 誰が、一体、何のためにそんな人権侵害も甚だしい法律なんか作ったんだ」

 

クア

 「それに検査なんかいつ行われたんだ? あらゆる面において理解に苦しむ発言だ」

 

クチョー

 「私に文句言われましても‥‥私はただのかわいいフクロウなので‥‥」

 

クチョー

 「皆さんにはこの春から囚人として生活してもらいます」

 

クチョー

 「救済がなくもないのですが‥‥《大魔女》さえ見つかれば皆さんの呪いを‥‥」

 

クチョー

 「あ、でも、期待とか持たせても良くないですよね‥‥。忘れてください」

 

クチョー

 「シャワーも娯楽室もあるので、ここで余生を楽しく過ごすとか‥‥どうですかね?」

 

 そこまで言うとゴクチョーさんは思い出したように、出入り口前に立っている看守さんを、伸ばした羽で指し示します。

 

クチョー

 「あっ、ちなみに看守はかつてここに収容された者が魔女になってしまった姿です。“なれはて”と呼ばれています」

 

クチョー

 「多くの魔女になった者は処刑されますが、与しやすい者を、マインドコントロールしています」

 

クチョー

 「逆らったら殺すように洗脳してしまったので‥‥ほんとすみません、逆らったら死んでください」

 

 出入り口を見張る黒衣の化け物に、少女たちの視線が集います。看守さんが携える大剣の刃が室内の照明を反射して、ギラリと鈍く怪しい光を放ちます。

 かつて、人間だった者。そして、魔女になってしまった、なれのはて。皆さんの表情はそんな事信じられるはずがない、と物語っているようでした。

 

 「な、なあ、それって‥‥もう好きなだけご飯食べられないってことか?」

 

 重々しい沈黙を破り声を発したのは、先ほどまでフルーツに齧り付いていた少女、チサさんでした。

 

クチョー

 「全く食事を提供しない、なんてことは致しませんが‥‥まあ、こちらの食料の在庫にも限りはありますし‥‥“好きなだけ”とはいかなくなるかもしれませんね‥‥」

 

クチョー

 「あ、でも、規則を破って懲罰房行きになったら、食事は抜きになりますね。せいぜい、2、3日くらいのものですが」

 

クチョー

 「あ、その程度で死ぬことはありませんよ。なにせあなた方は、魔女候補なんですから」

 

 「さ、さんにちも食べられなくなるのか、ご飯!? そ、そんなのアタイ耐えられない‥‥」

 

(推奨BGM「Kei-Plne Co-Jundic」♪53)

 

 頭を抱えたチサさんは立ち上がるとフラフラとおぼつかない足取りでラウンジをうろつき始めます。

 

 やがて、チサさんの目線は看守さんへと向けられます。無機質で巨大で無表情。視界に入ったその姿は、ただそこに立っているだけなのに‥‥彼女にとっては、“全てを奪う存在”に見えてしまったのでしょうか。

 

 「そうか‥‥。アタイはコイツらに支配されちゃうんだ‥‥。そしたら、食べる自由も、生きる自由も‥‥なくなる‥‥」

 

キラ

 「お、おい。大丈夫か? さっきからなんかおかしいぞ!」

 

 見かねたアキラさんが叫びました。それを皮切りに、何人かの少女たちも続きます。

 

リス

 「そ、そうです! お、おおおお落ち着いてください! こんな私が申し上げるのもなんですけど落ち着いてくだささささい!」

 

ナデ

 「今は指示に従うのが懸命です! この人たち、何を考えているか読めたものじゃないです!」

 

 しかし、呼びかけも虚しく、チサさんはフラフラと看守の方を見据えます。

 

 「嫌だ‥‥アタイは、食べるんだ‥‥生きるんだ‥‥それを邪魔する“わるもの”がいるなら‥‥そんなやつはここでぶっ飛ばす!!」

 

 虚ろな目をしたチサさんは、次の瞬間看守に飛びかかります。‥‥しかし、その刹那。

 

コト

 「くっ‥‥!」

 

 私は彼女の前に飛び出していました。

 何かの考えがあっただとか、そんな理由はなく。

 ただ、“止めなければ”という使命にだけ駆られ、気がついたら飛び出していました。

 

 「じゃ、邪魔をするな! あいつはアタイがやっつけて‥‥!」

 

コト

 「看守さんに逆らってはいけません! 殺されますよ!」

 

 自分でも驚くくらいの声量で私は叫んでいました。まるで自分の声ではないように感じられます。

 それでも、私は彼女を止めないといけません。そうでないと‥‥。

 

リナ

 「そうそう、1回落ち着けっての。この手のシチュエーションじゃあ大人しくしとくのが定石だって」

 

 セリナさんがチサさんの背中をポン、と叩きました。チサさんはようやく冷静さを取り戻したのか、私の元からゆっくりと離れます。

 

 「ご、ごめん‥‥アタイ、なんかちょっとおかしかった。もうご飯が食べられないって思ったら‥‥眼の前のアイツをぶっ飛ばさないとって気持ちが止まらなくなって‥‥」

 

 チサさんは、ばつが悪くなったのか、イノシシを模したフードをぐっと目深に被って目元を隠しました。

 彼女の先程の行動は、どうやら本心によるものではないように思われます。

 

 荒い息を上げ続けるチサさん。それを見かねたのか、リクアさんは床にへたり込んだチサさんの方に近づくと、かがんで彼女に目線を合わせます。

 

クア

 「落ち着け。‥‥朝雛クンと言ったかな? 一旦深呼吸をするんだ」

 

 「し、深呼吸‥‥?」

 

クア

 「ああ。4秒吸って、4秒止める。そして8秒かけて吐き出す。私に合わせてやってみるんだ」

 

 リクアさんは周囲をグルリと見回すと、他の人にも声をかけていきます。

 

クア

 「他の皆も深呼吸することをおすすめする。呼吸が乱れている人間が多い」

 

クア

 「焦ったときほど、呼吸を意識しろ。冷静になるように努めるのが一番重要だ」

 

 私も周りの皆さんの様子を伺ってみます。確かにエリスさんやチサさんを中心に、皆さん少し動揺の色が浮かんで見えます。

 

 かくいう私自身も気づかなかっただけで、かなり気が揺らいでいるようです。

 思わず看守さんの前に飛び出した時は無意識の内に動いていましたが、改めて自分の行動を振り返ると‥‥下手をすれば死んでいたかもしれません。

 

 ここはリクアさんの言う通り、一度呼吸を整えておいたほうが良さそうです。

 

クア

 「さあ、朝雛クン。まずは4秒、息を吸うんだ」

 

 リクアさんのお手本に従うように、周囲から空気を吸う音が聞こえます。

 吸って、止めて。そしてゆっくり吐き出す。何度か繰り返す内に、気持ちが凪いできました。

 

クア

 「さあ、もう大丈夫だろう」

 

 「う、うん‥‥ありがと」

 

 先ほどまでヒートアップしていたチサさんはすっかり落ち着いていました。他の人たちも、落ち着きを取り戻したようです。

 

クチョー

 「‥‥あ。終わりましたか? できれば、早いところ説明を終わらせてしまいたいんですが」

 

 空気を読まず、ゴクチョーさんが割って入ります。気だるそうに羽をパタパタと動かしています。

 

クア

 「‥‥ああ、続けてくれ」

 

 リクアさんは警戒するように低い声を出すと、ゴクチョーさんの話を促します。

 

(推奨BGM「看るモノ達」♪16)

 

クチョー

 「では‥‥これ以上あれこれと話すのも面倒ですので、もっとも大切なことを伝えてお開きにしましょう」

 

クチョー

 「えー‥‥。実は、魔女になりつつある者は、抑えきれない殺意や妄想につかれてしまいます」

 

 抑えきれない殺意や妄想‥‥もしかして、先ほどのチサさんの暴走は、魔女化に伴う副作用だったのでしょうか。

 

 チサさんの方を見ると、深呼吸である程度落ち着いたとは言え、まだ顔色がよくありません。

 あの時の彼女の様子は、ある種常軌を逸していました。本心による攻撃ではなく、魔女化のせいで無理やり突き動かされた‥‥今の彼女に、攻撃の意思がないのを加味すると、その可能性が高いように思えます。

 

 私の考察をよそに、ゴクチョーさんはさらに恐ろしい話を続けます。

 

クチョー

 「その殺意やら妄想のせいで‥‥面倒なことに、いずれ囚人間で《殺人事件》が起こるんですよ。これが毎度のことなんですよねぇ‥‥」

 

クチョー

 「流石にそんな危険人物とは一緒に生活できませんよね」

 

クチョー

 「というわけで殺人事件が起こり次第、《魔女裁判》を開廷します」

 

クチョー

 「《魔女》になった囚人は‥‥あのー‥‥。‥‥処刑しますので‥‥」

 

オリ

 「殺人事件‥‥魔女裁判‥‥処刑‥‥不謹慎ながら、いよいよデスゲームの様相を体してきたと評価せざるを得ませんな‥‥」

 

 ミオリさんの何気ない一言が、少女たちの間に緊張を走らせます。

 

 殺人事件、魔女裁判。そして‥‥処刑。

 

 私達はこれから、そんな現実から大きく乖離した狂った世界へと巻き込まれていくのです。

 誰かが殺し、誰かが殺される。そんな常に気の抜けない、大きな爆弾を私達は抱えながらこれから生きていくことに‥‥。

 

クチョー

 「これら詳細につきましては、支給されたスマホに搭載のアプリ“魔女図鑑”にてご確認ください。では私はこれにて‥‥」

 

 ゴクチョーさんが羽ばたき、通気口の中へと姿を消していきます。

 

コト

 (始まってしまうというのですか‥‥? 魔女をあぶり出す、最悪の獄中生活が‥‥今、この瞬間から‥‥)

 

 私は汗ばんだ手を握り込み、何度目かも分からない覚悟を決めます。この小さな箱庭の中で生き延びてみせる‥‥その、《覚悟》を。

 

 こうして、私たちの獄中生活は幕を開けました。

 




以下、作者後書き






























どうも、タイホくんです。初めましての方は初めまして。そうでない方はお久しぶりです。
本日より、新作「夢想少女ノ魔女裁判」の投稿を開始いたします。久々に表に出てきて緊張しております。

かなりのんびりとしたペースでの投稿となりますが、お付き合いいただければ幸いです。
以前活動報告で述べたように、実は既に2話まで完成しきっております(逆にそこから先は‥‥)。

ですが、何よりもストックを切らさないことを最優先に考えておりますため、基本的に拙作(未完)の「逆転裁判 ~東方法闘録」同様、亀ペースで投稿していくつもりでございます。
もっとも、1話だけは裁判パートを出来る限り早くお披露目したいので、少しペースを早めて投稿を行います。

色々と拙いところもあると思いますが、何卒ご容赦のほど、よろしくお願いいたします。

次回投稿予定日は、4月10日・21:05です。基本的には、3日おきに投稿し、公開時間は21:05にする予定です。変更があれば、適宜お知らせいたします。

では。
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