ハッピーエンドを迎える者達(ただし1人を除く)   作:アルソック

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 皆さん、お久しぶりです。時間が経つのは早いもので、前回から2ヶ月も空いてしまいました。
考えている間にも多くの方々が見てくれていたのはとても嬉しいです。
これだけ待たせてしまったので皆さんが期待していた物が出来ていると信じたいです。
ただまだ原作というか本編に入れていないのが……ちょっと、という感じですね。
まぁ入れればスッと進んでいけると…いいな。
今回も最後までどうぞ。


2話

 

 仮想空間『ツクヨミ』。それは全世界で登録しているユーザー数が1億人を超える、世界中が熱狂するVR空間。その中に存在するツクヨミ全体を一望できるエリアに、俺は居た。……正確に言えば居させられているのだ。俺の膝の上に頭を乗せて寝転がり、ご機嫌な様子の彼女に。

 

 彼女はこのツクヨミ、いや世界では知らぬ者などいない程に名の通った存在。ツクヨミの管理人にして、世界を盛り上げるトップライバー、『月見ヤチヨ』。そんな彼女は、配信やライブでは見せたことのない程緩んだ表情をして鼻歌を歌っている。……今が配信中でなくて良かったかもしれない。こんなだらしない姿、ヤチヨのファンには見せられないだろう。いや、もしかしたら「そんなヤチヨも可愛い!」となる奴も居る可能性がある。てか居そうだ。

 

「〜♪〜〜♪」

 

 俺はヤチヨの頭を撫でながら視界の隅に表示されている時間を見ると、口を開いて言った。

 

「……なぁ、ヤチヨ。もう良いか?そろそろバイトの時間なんだが……」

 

 だがその言葉を聞いたヤチヨは緩んだ表情から一変して不機嫌な表情となって言った。

 

「ヤダ。まだこのままでいたい。……髙夜がバイトなんて行かなくても良いじゃん。お金なら私がいっぱい持ってるし」

 

 確かに生活する分には、ヤチヨが今まで配信等で稼いだお金があれば十分である。しかし、俺としてはそうするわけにもいかない理由があるのだ。

 

「お前はそれでも良いかもしれないけど、俺が良くないの。俺がバイトとかしないと俺はお前の金で生活する"ヒモ"になっちまうの。流石にそれは世間体がマズいし、変な勘違いされても困るだろ?俺は出来るだけお前に迷惑が掛かってほしくないんだよ」

 

 俺としてはヤチヨに対して金銭的に頼っている状況は非常にマズいのだ。ライバーの少女に生活費を払わせている男、という字面にすると最悪な状態の為、バイトなどでお金を稼ぐ事は必須なのだ。もちろん、それ以外の理由が無いとは言わないが。閑話休題(それはともかく)

 

「世間体とか、迷惑とか関係ない。……私は今髙夜とこうして居たいの」

 

 ヤチヨはそう言って俺のお腹に腕を回して顔を埋めた。ファンの者が見れば発狂しそうである。だがヤチヨは気にする事は無いだろう。どうせこんな事をする相手は、俺と()()くらいしかいないのだから。

 

「……はぁ、なんでお前はこうもわがままなんだ。しかも俺がシフト入ってる日に限って……。てか、この会話前にも似たようなのしただろう?……いいから、立てって」

 

 俺はそう言ってヤチヨに離れるよう言うが、当然ながらヤチヨが離れる様子は無く、さらに俺の腹に頭を押し付けて密着する。

 

「……髙夜のケチ。意地悪。浮気者。ドンファン。スケコマシ。私がせっかく作ったアバターを勝手に変える薄情者。あと———」

 

 ヤチヨは髙夜のお腹に顔を埋めながら俺の悪口を次々に言い出す。

 

「……あのなぁ、言っていい事と悪い事があるだろうが。大体、アバターに関しては仕方ないだろう……」

 

 俺はそう言って、ツクヨミに初めてログインし、アバターを決める際にあったヤチヨとのやりとりを思い出した。

 

『や〜だ〜や〜だ〜!変えないでよ〜!せっかく私が頑張って作ったのに〜!』

 

『変えるに決まってるだろ……!見た目の大部分がお前とそっくりなアバターなんか使えるか!リセットだリセット!』

 

『い〜や〜!さっきのがいい〜!ねぇ、戻してよ〜!』

 

『誰が戻すかッ!男でツインテールとか何処の誰に需要があるんだ⁉︎後服の部分も……!他にも色々有るのになんでこの服をチョイスしたんだ……⁉︎』

 

『私にはあるもん!良いじゃん、お揃いで!何が悪いの⁉︎』

 

『見た目が派手なのと、男が無理にヤチヨのコスプレしてるみたいで目立つんだよ……!……ハァ、とりあえず全体的に変更するからな。異論は認めんぞ』

 

『え〜⁉︎ヤダヤダヤダ、髙夜のケチー!』

 

 そんな言い争いをしながらもアバターを完成させ、ツクヨミ内にログイン出来たのは、俺がスマコンを装着してから2時間も後の事であった。

 

 あの時は凄く疲れた……。最初は適当に地味な恰好にするつもりだったのだが、ヤチヨが、

 

『そんな恰好じゃ面白くない』

 

 と言い出して、アバターのキャラメイクをヤチヨ好みに染め上げたのだ。俺は別にツクヨミで特別何かする訳でもない為、前もって

 

『あまり目立ち過ぎるアバターにはしないでくれ』

 

 と頼んでおいたのだが、聞き入れてはくれなかったようだ。その為自分でしっかりキャラメイクをし直す事になった。

 

 それで、俺が今ツクヨミで使用しているアバターの見た目だが、かの悪魔も泣き出すパワー厨の鬼いちゃんをアレンジしたものだ。とはいえ変わっているのは上半身のインナーが和服になっている事と髪型にロングヘアが加わったくらいだが。

 

 ちなみにヤチヨはこのアバターを完成させた際、凄く微妙な顔をしていた。……良いだろ鬼いちゃん。スタイリッシュだし、カッコいいし。でもあんな動きが出来るとは思ってない。てか出来ない。でもそこからモーションとかが派生したキャラなら……。

 

 などと俺が物思いに耽っていると、ヤチヨを撫でる手が止まっていたのか、ヤチヨが俺の腹に頭をグリグリ擦り付けてアピールする。……それと同時にセットしておいたアラームが鳴り始める。

 

 ……どうやら時間が無いようだ。早々にヤチヨを引き離してツクヨミからログアウトし、家を出なければならない。

 

「ああ、もう……分かった分かった。帰ってきたら倍かまってやるから。お前が望むことなんでもやるから。だから離してくれ。な?」

 

 俺の降参するようなその言葉にヤチヨは顔を上げた。その顔には期待の表情が浮かんでいる。その表情を見て、俺は『しまった』と悟る。

 

「……"なんでも"?本当になんでも———「悪い、嘘だ。なんでもは無理。俺が出来る事にしてくれ」はしてくれないんだ……ふーん……」

 

 俺はヤチヨの言葉に被せるようにさっきの発言を訂正する。それに対してヤチヨは少し機嫌が悪くなったが、すぐに表情を緩めて言った。

 

「じゃあ、ぎゅーっとして。今はそれで我慢するから」

 

 ヤチヨのその要求に対して、俺は応えずただため息をついた。しかし、

 

「……ダメ?」

 

 ヤチヨの言葉と困ったような表情を見て、俺は折れる事にした。

 

「……はいはい、仰せの通りに」

 

 俺はそう言って、ヤチヨを抱きしめる。ヤチヨもそれに応えてしっかりと俺を抱き返した。その時間は1分ほどの事であった。

 

「……もうそろそろ良いよ。これ以上は遅れちゃうでしょ?」

 

 ヤチヨはそう言って俺を離すと、俺もヤチヨを抱き締めていた腕を解く。

 

「……そうだな。じゃあ行ってくるわ。ヤチヨもこれから配信だろ?お互い、頑張ろうな」

 

 俺はそう言うとツクヨミからログアウトしようとする。しかしヤチヨはそれを遮るように俺に再度抱き付いた。

 

「……どうしたヤチヨ?」

 

 俺のその問いに、ヤチヨは躊躇うように目線を左右に動かし、か細い声で言う。そこにいたのは、ライバーとして皆んなを楽しませる『月見ヤチヨ』ではなく、8000年の年月を経験した『かぐや』だった。

 

「……ねぇ、髙夜。髙夜は、最後まで一緒にいてくれるよね?私を置いて行ったりしないよね?……私を、1人にしないよね?」

 

 ヤチヨ(かぐや)の懇願する様なその表情を見て、俺はヤチヨの頭を撫でながら言った。

 

「……大丈夫だ。かぐやには一緒にいてくれる奴がいる。お前は1人にはならないさ。それに———いや、なんでもない」

 

 じゃあ行ってくる、と言って俺はツクヨミからログアウトする。目に装着していたスマコンを外して専用のケースに入れる。そして必要な物を持ってマンションを出た。さぁ、今日もバイトの時間だ。頑張らなければ。

 


<少し前・ツクヨミ内>

 

 髙夜が花吹雪となって消えていったのを見届けて私はポツリと呟いた。

 

「……髙夜のバカ。そういう事じゃないのに」

 

 髙夜は気付いていた筈だ。さっきの質問が、何を指していたのか。でも髙夜はそれを濁して答えた。私が欲しい答えじゃないと分かっていながら。

 

 全く酷い人だと思う。8000年も一緒に居て、色んな事を一緒に経験して、色んな話をしたというのに、髙夜はどこか私に対して一線を引いている。……大方、()()との関係を気にしての事だろう。だから私はこう言うのだ。

 

「……馬鹿だなぁ、髙夜は。そんなの気にする必要なんて無いのに。本当、鈍感だよね」

 

 髙夜からすれば、必死に考えた結果の行動なんだろう。でも、私からすれば、それはただの逃げにしか見えない。確かに私にとって彩葉とは命よりも大切な存在だ。でもそれと同じくらい、髙夜も大事な存在だ。それを天秤にかける事なんて出来ない。

 

「……ねぇ、髙夜。私は、嬉しかったんだよ?あの洞窟で出会った時。『一緒に行こう』って誘ったら渋々でも着いてきてくれた時。私の話をちゃんと聞いてくれた時。それから……」

 

 挙げ出したらキリがない。でもそのどれもが、髙夜との思い出だ。私が現代まで辿り着けたのは、髙夜が居たからだ。1人だったら、何処かで心が折れていたかもしれない。だから髙夜には感謝しているのだ。私と出会ってくれてありがとう、私と一緒に居てくれてありがとう、と。だから今度は私が返す番だ。

 

「……絶対に一緒に行くからね、髙夜。もし途中で居なくなったり、逃げたりしたら———」

 

 その時は。

 

「首輪と手錠を付けてでも引っ張っていくから」

 

 だから、私の前から居なくならないで。

 




ここまで読んで頂きありがとうございます。
今回遅くなった理由は普通にリアルが忙しかったのと、やってるゲームのストーリーやイベントが重なって執筆できるタイミングが合わなかったのが原因ですね。(後ハーメルンで面白い小説がいっぱいあったからそれ読んでた。読んでたらマジで時間溶ける)そこら辺は自分がちゃんと配分を考えるべきでした……。以後気を付けます……。
今回は髙夜君メインで、最後にヤチヨ(かぐや)が髙夜君に対して思っている事を少しだけ書きました。少し病み気味になったけどヤンデレでは無いから大丈夫ですね。
次回は、ようやく彩葉ちゃんの話を書きます。書きたい事いっぱいあるから1話丸々使うかも。その次で原作本編に入ろうかな。
……進行遅くね?って思った方、申し訳ありません。出来るだけ早く完成させるようにしますので……次回をお待ち下さい。
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