異世界転生モノだと思ってるバカ   作:さぼさぼさん

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三食寝床付き、高収入アルバイト

 ミズ・シチリアおばあちゃん、略してミズおばの出した条件とやらは俺ら一人につき一つずつ出された。

 

 まずは、死んだ二人のテキサスが聖遺物化した物品の押収。これをイングリッドに保護および保管の名目で命じることで一つ。

 

 関連して、チェリーニア・テキサスをシラクーザマフィアのネットワーク下から完全に除籍、追放するというもの。これはチェリーニア本人に告げることで一つとされた。

 

 ラップランド・サルッツォに課せられた条件は、聞いた感じこれだけはミズおばってよりアルベルト・サルッツォからの伝言預かりみてぇな感じだったな。

 

 テキサスサルッツォ問わずマフィアを手当り次第に殺しまくってたらしいラッピーはどうやら勘当されちまったようで、サルッツォから出ていけとのこと。

 

 当の本人が「ま、そうなるよね」みてぇな分かりきってた顔ですんなり受け入れてたもんだからビビった。もっとさ、がーん!ってなるもんじゃないのと。

 

 そして俺ちゃん。死にかけからギリギリ戻ってきた俺はぶっちゃけクソ弱いわけ。なのにミズおばったら俺のこと買いかぶりすぎちゃって、えーとなんだっけな……

 

「アッシュ、『巨狼の口』へ入りなさいな」

 

「誘う相手間違ってないっすか?ミズおば」

 

「いいえ。貴方で合っているわ。ここで暴れすぎた貴方には、その分だけ働いてもらわないとね」

 

 イメージ的にはあれですか?「馬鹿息子がおたくの工場に不手際を働いてしまったので、迷惑料分でもなんでも気が済むまで死ぬほどこき使って下さい!」って親に頭下げさせられてる、その馬鹿息子ポジってとこ?

 

 え、にしても『巨狼の口』って結構なエリート組織だよね。ね、イングリッドママ!?ね、ラップランドちゃそ!?

 

「実力は折り紙付き……そして、ミズ・シチリアの忠実な下僕って言われてるね。それくらいしかボクは知らない……」

 

「組織の人間たった一人でマフィア間の抗争を鎮めて皆殺しにしていたのを私は見たことがある。つまり、それが難なくできてしまうほど、組織の人間たちは精鋭揃いだと思ったほうがいい」

 

 はえ〜。マジで強そう(小並感)。マフィア同士の抗争って、『アーツ』飛び交う激戦区ですからね。それをたった一人で止めるっていうのは、俺目線からするとイングリッドとかジュセッペレベルじゃないとできない芸当だと思ってんすよ。

 

「あの、ミズおばさぁ。やっぱ勘違いしてない? あんたも分かるっしょ? 俺今ちょ〜〜弱いよ? 鱗獣の稚魚以下だよ?」

 

「ふふ、そんな堂々と自分の弱さをひけらかすなんて。面白い子ねぇ……『強さ』とは斯くも殺しの腕だけではないのよ、アッシュ。貴方は、人を繋ぎ止める才覚がある」

 

 貴方の周りに集う皆々(みなみな)は、どう?有象無象の集い、弱者の山と言える?なんてズルい投げかけをしてきやがるミズおば。は〜、シラクーザの女って口喧嘩が強すぎないか?

 

 男は女傑に尻敷かれるのが定めなのか?抗いたい、この力関係にっ……!あ、別に女を尻に敷きたいわけじゃないですよ!多様性配慮の時代。俺は対等を望んでいるっ!!!

 

「貴方には貴方を慕う者たちを率いる指導者として。そして、時に私の懐剣として働く『巨狼の口』の一員として。他でもない私が、貴方を手元に置いておく価値があると判断しました」

 

 次私の決定につべこべ言ったらいてこますど。そういう視線で貫かれたので、もう黙りますハイ。二億歩譲って加入するのはいいとして、俺は誰を率いればいいのよ。

 

「ウチらのこと忘れてんの? ぶっ飛ばすよアッシュ!」

 

「よかった……俺はてっきりアッシュが死んじゃうんじゃないかって……!」

 

 うひゃあ!テオドラが俺の首を後ろから絞め落としにかかってきてます!ぐるじいっ……!

 アダムくん!?ぐすぐすして泣いてないでこの男の娘を止めて!?安心しきらないで、俺はまた逝きかけてるわよっ!?

 

「貴方にはテオドラ、アダム、ジョヴァンナの三名と共に動いてもらうわ。ああ……けれど、ジョヴァンナ。貴女はクルビアに残り、復興に尽力してもらえると助かるのだけど」

 

「……言われなくても。クルビアは私の故郷であり、数多くの家族が居る大事な居場所ですから。離れる気は毛頭ありません」

 

「そう、安心したわ。……貴女のお祖母様はご存命?」

 

「……私が10歳になるころにはお身体を悪くされ、この世を去っています」

 

「……そう。気付けば皆、いなくなってしまうわね。少しだけ寂しいわ」

 

 ミズおばってもしかして呪術〇戦の某目隠しバカみたいに強者ゆえの孤独を抱えてるタイプなの?強すぎて周りから人がいなくなって寂しいんか?

 

 ならよぉ、あえて孫ムーブかまして定期的に顔見せてやろうかな。絶対食べないだろうけどお菓子類バカみてぇに持ってきて、ばあちゃん家にお菓子死ぬほどあるやつ演出してやろうぜ。

 

 絶対ばあちゃんって食べずにとっておいて、別の孫とかいとこに横流しするよな。ミズおばも例に漏れずそのタイプなのか気になりません?あ、気にならない……

 

「結婚とかする気なかったの、ミズおばって」

 

「そんなことを考える暇も余裕も当時のシラクーザにはなかったから……というか、さっきからその『ミズおば』って何かしら」

 

「そりゃあ、ミズおばはミズおばだろ?何言ってんのさ」

 

 会話してる風ドッジボールしてるから流石のミズ・シチリアも頭痛そうにしてて草。今からでも『巨狼の口』勧誘取り消してもいいんだよ^^

 

 え、それは沽券に関わるからしない?アスカロンくらいプライド高くていいねミズおば。弄りがいがありますよこちらといたしましても!

 

 

 

「ほうほう……では、わたしは今あぶない立場にあるんですね?」

 

 ティーカップを両手で抱えて、ちびちびと可愛らしく紅茶を飲んでいるリサちゃん。立ち話もなんですから……なんて花の咲いたような微笑みで屋敷の中へと招き入れてくれた。

 

 こんな広いお屋敷で、立派に家事をこなしているところみると、あれ?もしかしてあたしってリサちゃんに女の子として負けてないか?って実は少しショックを受けてたりしてる。

 

「あんまり驚いてないんだね。怖くないの?」

 

「こわくないわけじゃないんですが……アッシュおにいさんが傷だらけで帰ってきたり、ベラおねえさんが亡くなってしまってから……心配かけないように、ひとりでもちゃんとしないとって思ってですね……?」

 

 きっと、アッシュが少しヘンだったときのことだよね。危なかっしくて、目を離したらどっか行っちゃいそうで怖かった、あのとき。

 

 ……ベラおねえさん。会ったことは無いけど、アッシュが写真を見せてくれたりしたから知ってる。そうなんだね、あれだけアッシュが怖い顔をしてたのは、そういう事があったからなんだ。

 

「うぅ〜……! えらいね、リサちゃん! あたしなら我慢できなくて泣いちゃいそうになるよ〜!」

 

「わふっ……んぇ……く、くすぐったいですよぉ〜!」

 

 健気なリサちゃんに、思わずあたしはぎゅ〜!って抱き締めちゃった。わわっ!って驚いてたけど、尻尾は嬉しそうに揺れてたからやっぱりちょっとは気を張ってたのかな?

 

 まだちっちゃいんだから大人を頼ってぇ〜!背負いすぎちゃうと、心がばーん!って破裂しちゃうから!ほらほら、お姉さんになでなでされるがままになっちゃえ〜!

 

「……なるほどね。アンジェリーナの言うとおり、とってもえらくていい事だけど、俺たちにも手助けをさせてくれないかな」

 

「うんっ。リサちゃんの安全はあたしたちが守るからね!」

 

えっほ(えっと)よほひふ(よろしく)ほへはい(おねがい)しまふ(します)……?」

 

 リサちゃんの同意を得れたことを確認したアダムくんは、屋敷の窓とカーテンを閉め、扉の施錠までして、誰かに連絡を取ろうとしていた。

 

「……誰に連絡しようとしてるの? というか、連絡するのにどうして戸締りなんか……」

 

「ここに来るまでと、ここに来てから……誰かにずっと見られてる感覚があった。だから窓、カーテン、部屋の鍵を締めた。

 それと、誰に連絡してるのか……ね。俺って誰の部下って話だったか覚えてる?仕事の報告がてら、上司に連絡してるだけだよ」

 

 そう言って、端末の画面をこちらに差し出したアダムくん。画面に映し出されていたのは『アッシュ・チェーネレ』という名前。

 

 ちょ、ちょっと待って!あたし久しぶりに話すから、えっと、緊張で声とか上擦らないようにしないと!そ、そうだっ、髪の毛とかちゃんと整えとかなきゃ……!

 

 [んぁ……? なんかなつかしー声しねぇ? アダム、おめー今どこにいんのさ]

 

「アッシュの実家。ちょっと人助けの一環で、アッシュの義妹さんと旧友のアンジェリーナに巡り合わせたんだ」

 

 [え! じゃあそこにアンジェリーナいんの!? おーい! こんにゃろー、勝手に連絡先消しやがって! ガッコーにも来ねぇから心配したんだぞ! やんちゃしてもいいから、お父さんに連絡くらいは寄越しなさい!]

 

「おとう……え、なんて? いやまあ、パパとママに連絡取ってないのはそうだけど……そうじゃなくて! とりあえずええと……ひ、久しぶり……だね?」

 

 うわーん……声だけでアッシュの姿が思い浮かんじゃうなぁ……!アッシュって名前にぴったりな灰色の髪でしょぉ、優しい眼差しでよく見詰めてくる綺麗に透き通った水色の瞳でしょぉ、あと、あとあと……

 

 [ほんっとーに久しぶりだからね? 何してたんだよ音信不通消息不明娘ちゃんや]

 

「……えっと、交通事故で……鉱石病になっちゃ、って」

 

 やる気のなさそうな声なのに、いつもアッシュは真っ直ぐにこちらを見据えてくる。実際は毎回が毎回そうじゃないんだろうけど、そう思わせてくるくらい、こちらの心を不快にならない手触りでなぞってくるような感じがする。

 

 あたしはいつもアッシュに支えられてばっかりで、アッシュが隠してた辛いことを打ち明けてもらえる相手に選ばれなかった。でも、それでもアッシュはずっとこれでもかってくらい、あたしに優しくしてくれるんだ。

 

 今だって、普通は鉱石病って言ったら冷たい態度を取られるかもって思うところを、アッシュならもしかしたら受け止めてくれるかもって期待なんかしちゃってし。

 

 [ありゃま……そりゃ大変だわな。 抑制剤とかちゃんと確保できてる? 無かったらツテがあるから言えよ。

 あ、言い忘れてたけど実は俺も鉱石病なんよ。おそろっちやね!]

 

 ……ほら。アッシュはやっぱりあたしが傷つくことを言ったりなんか……って、ちょ、ちょっと待ってね。今凄いことサラッと言ったよね!?

 

「ううん……まず何から突っ込めばいいの!? アッシュって鉱石病患ってたの? それにあんなに買うと高い抑制剤をそんな他人に譲り渡せるツテってどういうこと!?」

 

 [……アダム、お前なんにも説明とかしなかったの? してやんなよ、ほんっとやらしい子ねッッッッ!!!!]

 

「俺らは秘匿された組織に属してるんだから、説明しようにもできない身の上なのは分かってるだろ」

 

 [俺らを組織に入れたミズおばが悪いってことでどーにかなるだろソレ。言われたとき俺即辞退したし。ま、多分さぁ、ウザいくらい遊びに来る孫レベルで顔見せてるからミズおば判定甘いと思うんだ。だから上司命令でアダムから説明ヨロ〜]

 

「はぁ!? ちょ、まっ────切りやがった……あんのクソボケ上司ぃ……!」

 

 マイペースに通話を切ったアッシュに青筋を立てて、端末をミシミシ音を鳴らしながら怒り心頭のアダムくん。リサちゃんはおろおろと慌ててるし、あたしはいたずら好きの昔のアッシュだな〜……って懐かしさを感じつつ苦笑いでこの空気感をやり過ごそうとした。

 

「────はぁ、しかたない。俺たちは今、アッシュをリーダーとして『巨狼の口』って組織でチーム単位の任務に従事してるんだ」

 

「任務の内容は、最近シラクーザ内でぽつぽつと勃発してる、何者かの手によって()()()()()と思われる変死体の原因調査」

 

「実は、犯人がこいつだろうって目星は既についていて、あとは尻尾を掴むだけってところまできてるんだ。そいつの名前はCultist(カルティスト)

 

「執拗にマフィア、そのマフィアの家族、ストリートでたむろしてるチンピラだけを狙って殺害する、儀式なのかとすら見紛うような猟奇性からそう名付けられたらしい。最近ウルサス方面で活発なレユニオンムーブメントの一員なんじゃないかって噂もある」

 

「……で、大事なのはここからだ。

 アンジェリーナ。さっきの一件の爆発事件、俺はCultistの犯行手口とかなり似てると思っててね。

 二人とも、準備が出来たらこの屋敷から逃げるよ。目的地は、アッシュとテオっていうもう一人の仲間がいるセーフハウスだ」

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