異世界転生モノだと思ってるバカ   作:さぼさぼさん

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「レターパックで爆弾送れ」は立派な殺人です。

 リサちゃんがランドセルに付けている防犯ブザーを承諾を取ってちぎったアダムくん。それを手首に結んで、こっちを見て説明を始めた。

 

「改めて言うけど、俺はどんな人でも流れてるはずの、アーツエネルギーが無い特異体質なんだ。だから、基本的に俺が触れている間は『アーツ』由来の罠は全て()()()()()()()って誤認してくれる」

 

 つまり、アダムくんが私たちより先に罠を踏む役を買って出て、安全が確保できている隙に私たちを移動させるってこと。じゃあなんで防犯ブザーなんか手首に括りつけてるのかっていうと……

 

「レユニオンムーブメントの一員だって噂……眉唾モノだとしても一笑に付せるものではないと思ってる。

 その場合、『アーツ』由来の罠だけでなくCultistの一味が物理的強硬手段を取ってくる可能性もある」

 

「それって、アダムおにいさんが……やっつけるってことですか? 傷だらけになったり……しませんか?」

 

 リサちゃんはアダムくんと出会ってちょっとしか話してないけど、義兄のアッシュが信頼してる仲間ってだけで、絶対に悪い人じゃないんだって理解してる。

 

 アダムくんは心配してくれてるリサちゃんの頭に手を置いて撫でようとしたんだけど、すんでのところで躊躇って……手を引っ込めちゃった。

 

 あたし、アダムくんの過去を知らないけど……すっごく昔に彼の姓に似たマフィアの人たちに拐われたことがある。トラディトーレ……優しそうなアダムくんからは想像がつかないくらい、乱暴で怖い人たちだった。

 

 こうやって、誰かの頭を撫でることさえ気を遣ってできないくらい繊細な心の持ち主なアダムくんはそんな人じゃない……お互いがお互いを想いあってるのに、辛い顔をするのは間違ってるってあたしは思う。

 

 

 だから、少しだけ……お姉さんがお手伝いしちゃおっと♪

 

 

「大丈夫だよ、リサちゃん! アダムくんってすっごく強いから! なんたってあたしを格好よく助けてくれたんだから、ねっ?」

 

「……あ、ああ。 ちょっとやそっとの傷くらいは、すぐに治るよ。用心棒を名乗るくらいには鍛えてるからね」

 

 ……ちょっと、アダムく〜〜ん?『傷つくことがないくらい強いよ』って言ってあげないと、リサちゃん賢いんだから「傷はできちゃうんですね……」って落ち込んじゃうでしょお!?

 

 人に心配されることに慣れてないんだろうけど、それにしたって励まし方がヘタなアダムくんに肘で小突いていると、リサちゃんがそのやり取りを眺めてくしゃりと顔を崩してほころばせた。

 

「なんだか、よけいなお世話?だったかもしれませんねっ」

 

「い、いやっ! そんなことないよ! ただ、そうやって自分のことで悲しんでくれたり、落ち込んでくれたりする人に会ったことがなくて……」

 

 くすくすと笑うリサちゃんに、全部真面目に受け取って慌てて訂正しようと言葉に詰まってるアダムくん。いやぁ〜〜、微笑ましいですな〜〜!

 

 やっぱりアダムくんって雰囲気がちょっとアッシュに似てる。幼い容姿をしてるのに、どこか大人びて見えたりする。けど、やっぱり年相応なところがあって……アンバランス。

 

 似てるからって惹かれるわけじゃないけどね。なんだろうな、年の離れた弟版アッシュって感じ!故人に嫉妬するのは不謹慎かもしれないけど、ベラさんはアッシュがすっごく可愛くてしかたなかっただろうな〜!

 

 

 

 和やかなトークは一旦中止して、部屋の鍵に手をかけたアダムくんが、さっきの慌てた表情から真剣な表情に変えてあたしたちに頷きを求めている。

 

 リサちゃんはしっかりと縦に頷いて、続いてあたしも頷く。それを合図に、アダムくんが素早く鍵を開けて屋敷の玄関までのルートを確保した。

 

(どうやら、屋敷内には潜伏してないっぽい。罠も……仕掛けてはなさそうだ。問題は外。カチッって音が聴こえたら、すぐにアンジェリーナの『重力』で空中に飛んで。いいね?)

 

(おっけー、あたしにまかせて)

 

(わたしは、アンジェリーナさんにしがみついてますね……!)

 

 じゃあ、行くよ。アダムのその一言で、玄関から飛び出すあたしたち。外の景色が見えてすぐ、アダムくんは大きく跳躍して門の奥で武装していた白いお面の人たちを着地の衝撃で吹き飛ばした。

 

 腰を深く下ろして、シラクーザでは珍しい独特の構え……あれは炎国アクション映画で見た、拳法?ってやつに似てる。どこからでもかかってこい。アダムくんのその威圧が、こっちまで伝わるくらい濃く放たれてる……!

 

「……俺の友人たちに手を出そうとして、無傷で帰れると思うなよ」

 

「『手を出した』……?俺たち感染者がどれだけ苦しみながら雨風をしのいで生きてるのか知らねぇだろう!?」

 

「そのお友達とやらは大層なお召し物を羽織れていいわねぇ!!私たちは、少しでも源石結晶がチラつけば迫害されるっていうのにっ……ボロボロの布切れでしか過ごせないのにっ!!!」

 

 感情の堰が崩壊したかのように、彼ら彼女らの絶望がアダムくんに投げられた。あたしたちはアダムくんの背中しか見えないけど、決してあの人たちの言葉を聞いてないようには見えなかった。

 

 そんなアダムくんは、足を振り上げ……真下に振り下ろすことで地面に大きな亀裂を作り上げることで返答をした。大勢の怒号や怨嗟はそれで掻き消え……アダムくんが、静かに言葉を紡いだ。

 

「────お前らが感染者かどうかなんて、1ミリも興味が無い。俺はただ、俺の友達が危ない目に遭ってるってことが何よりも許せないんだよ」

 

「なっ……言わせておけ「今俺が話してるだろ、黙れよ」……〜〜〜っ!」

 

「訴えを起こす前に、まずは相手の主張を聞く努力をしろ。

 なんで話を聞いてもらえないなんて決めつけるんだ。

 なんでその態度で話を聞いてもらえるって思えるんだ。

『対話』をしなきゃ、血で血を洗い流すだけの憎しみの悪循環しか生まれないだろ」

 

 話したいことを話し終えたアダムくんは、一呼吸置いて白いお面の人たち一人一人を見やった。顔は見えないだろうけど、お面の穴から覗く彼ら彼女らの『目』を見て、しっかりと。

 

「お前らは今回、選択肢を誤った。だから俺と戦うしかないし、それは覆しようもない。二度とこんなことをしたくなくなるくらい、ボコボコにしてやるよ。

 ……それが終わったら、俺が知る一番のお人好しに働き口と住む場所を工面してもらうように話をつけてやる。じゃあ、さっさとやるぞ」

 

 

 

 アダムくんは必ず先手を打つことをしなかった。相手が仕掛けてくる攻撃を受け流して、1対1を作ってから、彼らの名前を訊ねてた。

 

「お前、名前は?」

 

「……ぐうっ、ネイソンっ……!」

 

「ネイソン。右足から踏み出したのに、左足がついてきてないよ。もっとリズム感を大事にしてぶん殴ってくるんだ。それじゃあ勢いが死んで、全く痛くない」

 

 アダムくんは丁寧に攻撃を受ける。それはまるで『お前たちのことをちゃんと見ているぞ』っていう、対等を示す誠意にも見えて、かっこよかった。

 

 本当に何度も言うけど、あたしからすると同じ白いお面を被ってて誰が誰だかわからない。でも、訊ねた名前を知ってからは、アダムくんは人を間違えることなく一人一人にアドバイスをしながら圧倒していった。

 

「────よそ見してんじゃないわよッ!!!」

 

「…………してないよ。お前の名前は?」

 

「はっ……ムカつく小僧だね。私はアメリさ!」

 

「アメリね……覚えた。滞空っていうのは大きな隙だから、できるだけ接地しながら戦う方がいい。ほら、空中には逃げ場がないでしょ」

 

 そうやって、彼らの怒りを受け止めるように戦っていけばいくほど……どんどん憎しみによる攻撃は鎮まっていく。

 

 それでもまだ、冷静を取り戻した彼らがアダムくんに襲いかかっているのは、きっとこれが『対話』であることを理解してるから。

 

「……はぁ、はぁ……! アダムって、言ったか……?」

 

「よく聞いてたね。そうだよ、俺はアダムって言うんだ」

 

「……はぁー、ふぅ……何年ぶりかねぇ、こんなに息を切らしたのは……私たちの負けだよ。八つ当たりして、悪かったわね」

 

「……八つ当たりとは思ってない。お前らレユニオンが抱く憎しみは、実際のところ全部が全部間違っているわけじゃないと思うし」

 

 アダムくんは構えを解いて、憑き物が落ちたように地面にへたり込んでいるレユニオン?って人たちと視線の高さを一緒にするために、同じく座り込んで話していた。

 

「あのさぁ……困るんだよ。 そうやって彼らを腑抜けた人間に戻されちゃあ……要らないマフィアどもを殺し尽くす尖兵なんだから……」

 

 あたしたちとレユニオン?の彼らにあったわだかまりを、アダムくんが綺麗に解いてくれたのに、和気あいあいとしだした空間を壊すような、黒板をチョークで引っ掻いたような、そんな金切り声のような男性の声が差し込まれた。

 

「……もう、使えない駒は……要らなぁい。ただの人間に戻るくらいなら……『爆弾』になっちゃえよ!ギャハハハハ!!!!」

 

 カチッ!誰も何も触ってないのに、あの爆弾の起爆を報せる音が鳴り響く。アダムくんが目を見開いて、レユニオンの皆の方を向いている。

 

 視線の先を見ると、仲良くなれそうだった彼ら彼女らの首がおかしなくらいぶくぶくと膨らんで、首の中にある爆弾みたいなものが赤い点滅をして目に焼き付いた。

 

「……ちくしょう、もっと早くに……アダム。お前たちに出会ってれば……」

 

 少しだけ考える間があって、レユニオンの人たちも自分がどうなるのかを察してしまう。彼らが何を最後に言葉で遺したのかはあたしたちの距離だと分からなかったけど、アダムくんはきっと聞き届けたと思う。

 

 そして……数人分の爆発が連鎖して、血飛沫と肉片が伴った爆風があたしたちを巻き込んだ。『重力』を使って、咄嗟にリサちゃんを覆い被さるように抱き締めて宙に浮いたけど……爆発の中心地に居たアダムくんだけは浮けてない……!

 

「Cultist……! ひどいよ……こんな……!」

 

 砂塵が落ち着いて視界が開けたはいいものの、パチパチと木々が燃える音で、アダムくんに声をかけようにも掻き消されちゃう。肉の焦げた匂いと、大勢の人が死んだことで充満した濃い血の匂いが鼻を狂わせて、吐きそうになる。

 

 凄惨な現場だから、直視するのに覚悟が必要だったけど上から地面を見下ろしてみたりしても、どこにいるかわからない……!どこなの……!どうか死んでないでよね……リサちゃんだって、あたしだって悲しむから!

 

「アンジェリーナさん、みてください! あそこ……!」

 

 落ち込む前にアダムくんが生きてる可能性を捨てるな……そう思ってたのはリサちゃんもだったらしくて、あんなに可憐で優しそうだったリサちゃんが意志の強い瞳であたしの腕を叩いてある所を指差した。

 

 そこには、薄い膜によって無傷の状態で立っているアダムくんと……青水色の明るい髪色をした女の子?がアダムくんの背中をばんばん!と叩いて励ましてるっぽかった。

 

 すぐに『重力』を解除して、アダムくんの方に走り寄ると、茫然自失みたいな状態のアダムに代わって青水色の子が対応してくれた。

 

「あ〜! キミらがアッシュの義妹ちゃんとぉ、お友達のアンジェリーナちゃん!? え、アンジェリーナちゃん髪艶良っ……どこのトリートメント使ってんの? ウチさぁ、シラクーザに来てから湿気凄くて髪ヤバいんだよね〜!」

 

「あ、あのぅ……! アダムおにいさんは、ぶじですか?」

 

「あ、ゴメンね!話が逸れて。えーっと、アダム? ちょっと今ショック受けてるっぽくてさぁ?元気だせって背中叩いても動かないんよ〜!」

 

 マジでヤバいよね〜!なんていいながらケラケラ笑ってる女の子は、あ、ウチの自己紹介まだだったわ!って手に口を当ててあざとくウィンクを決めてる。……なんか、ノリが軽い……

 

「ウチの名前はテオドラって言ってぇ〜、アッシュの参謀的な?そんなカンジで働いてまぁ〜す!

 アダムとは同僚だし、長い間柄〜だからアダムが話したがらない過去とか訊きたかったらウチに訊きな〜?」

 

「……Cultistのやつ、ネイソンたちを爆弾にして殺しやがった……!」

 

「うおっ……!? いきなり再起動すんのはビビるって」

 

 アダムくんがいきなり喋りだしたかと思うと、小刻みに肩を震わせて、怒りのままに地面に拳を叩きつけた。皮が剥がれて、骨が見えそうになってもやめないのは……それだけレユニオンの彼らが死んだことに心を痛めているから。

 

「爆弾にするだけして……逃げやがってェ……!!! ぶっ飛ばしてやるっ……絶対に、ぶっ飛ばして……ネイソンたちを殺したことを償わせてやる……!!!」

 

「アダムおにいさん……わたしも、ゆるせません……」

 

 あたしとリサちゃんはそれを理解してるから、止めない。止めることなんてできない。でも、その痛みはあたしたちも共有できるよって、後ろから背をさするように身を寄せてあげるくらいは、してもいいよね。

 

「…………え、これシリアスな感じ? ウチだけ空気読めてないやつ? アウェーなのヤバ……。

 あ、もしもし〜? アッシュ〜? あ゛〜〜……そのマヌケな返答効くわぁ〜!バカにしてんのかって?ちがうちがう!大バカにしてるんよ〜!」

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