異世界転生モノだと思ってるバカ   作:さぼさぼさん

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2人きりのタイミングを狙うなんて……ラピ子、卑しか女ばいッッ!!

 ねぇ、マフィアの人間ってテレパシーみたいなものが身体に常設してあったりするの?テオドラの野郎、「なんかアダム、ピンチっぽい〜」とかいきなり立ち上がって外出て行きやがったんだけど。こわい。

 

 それだけじゃなくて、テオドラが出て行ってから30分もせずに入れ替わるようにラップランドが「やぁ!」って入ってきやがった。この子サルッツォ追放されてから暇なのかよく遊びにくるんだけども、一応俺たちミズおば直属の『巨狼の口』なのよ?なんその気さくな挨拶。

 

 ちょっと非難するような視線を目の前のソファ全域を占領して寝そべってるラッピーにプレゼントしてやると、やれやれ……物分りの悪い子だなぁ……みてぇな雰囲気で肩竦めて鼻で笑いやがった。え、こっちがする態度ですよ。厚かましっ!

 

「キミがお仕事中ならいいけどさぁ、どうせ今だってサボってるだけでしょ?」

 

「サボりじゃないですぅ。戦略的後方支援ですぅ!」

 

 ミズおばから(こす)く掠め取ったセーフハウスで合法的一人暮らしができると思ったら、なんかしれっとアダムとテオドラの2人とシェアハウスをする羽目になり、俺の自由な空間というものはありませんでした。とほほ。

 

 しかも一室だけ結構広くて過ごしやすそうな部屋があったんだけど、俺含め3人ともそこがいいって譲らなくてさぁ。結果腕相撲で決めることになったわけだったんだが、なんと俺!アダムはともかく、テオドラにさえ歯が立たずに完敗する始末!

 

 しかたねぇからリビングを改造して俺の部屋兼リビングって感じにしてふんぞりかえってます……いやぁ、弱くなりすぎじゃない?俺ちゃん。『逆転』と『分解』はもちろんのこと、広範囲の『アーツ言語』も使おうとすると身体がミキキ!つって見切り発進(?)しちゃうし……そもそも身体がボロッボロなんで、激しい運動かますと軽い喀血を起こしていたいいたいですわ〜!

 

「それもこれもさぁ、必要以上に左腕刎ね飛ばしたラップランドさんにも原因あると思いませんかねぇ?」

 

「心ここに在らずって感じで恋人の言うことを聞かないおバカさんが悪いと思うけどね? ボク、すっごく悲しかったんだよ?乙女の傷心と引き換えなら安い方じゃない?」

 

 ああ、みんなも気付いたね!ラップランドはここ2年間アホほど甘えてきているよ!そんでもって、現在シラクーザでこいつに敵う同年代がいないときた!追放されてから毎日が楽しそうだぜ、よかったねラッピー!

 

 ま、俺はクソザコナメクジに逆戻りしたし、チェリーニアは現在なんか上京した大学生みたいに龍門で仲良くなった女友達との楽しそうな写真送り付けて殺しとは無縁そうだしで、すこしつまらないな〜……みたいな顔するときもあるけどね。

 

「相変わらずお口がうめぇこった! ……ん? てかまだ俺っておめーの恋人判定なんだ。なんかてっきり見限るモンかと」

 

「────冗談でも面白いことを言ってくれるかな?」

 

 あっ、やっべーい!怒った!ラップランドが怒った!鈍感系主人公したいわけじゃないんだって、信じろって。記憶喪失状態の時の俺がいろいろクソボケかまして、俺からすっとラップランドが愛想尽かしてもしゃーないことしたなって感じでさ。

 

 けっこー酷いことしたじゃん、どーしてまだ愛してくれんのよ?っていう純粋な疑問なんだって。本人に聞くな?ちょっとそれ、人の顔色伺いすぎでは?もう少し明け透けにさ、デリカシーとか考えないのが友達とか、ひいては恋人ってもんじゃないの。

 

 いやまあ親しき仲にも……って言葉があるように、ラップランドは絶賛激おこで、ソファから上体を起こして背もたれの奥に立て掛けてあった剣に手を添え始めてるんですけどね?まあまあ、喧嘩するほど仲がよしのちゃんでもあるじゃん。

 

「…………黙ってないで、何か言うことは?」

 

「ごめんなさい。昨日言ってた最新のブランド服の試着付き添いをさせてください……」

 

「うん!よろしい。でも、『付き添い』じゃなくて『デート』って言ってくれる?」

 

 あれ、なんかもうちょっと恥ずかしそうにしてた覚えあんだけどなぁ?ああ、エロがりは奏でてたけどね。こういうストレートな感じの表現?態度?は『ボクなんかには似合わないし……』みたいな、そんなんだった記憶。すげぇ直球に感じなかった?今の。

 

「ラッピーよぉ、なんか吹っ切れた?」

 

「ヘンなところで鋭いじゃないか、流石はボクの彼氏さんだね! ……失ってから後悔するのはもう嫌だなって思ってさ。見ず知らず第三者の誰かさんに献上するような愛じゃないし、少しだけ気持ちに素直になってみたんだ」

 

 あっ、ふーん。だから起き上がったしさりげなく俺の横に座ろうとしてんのね?あっちょっ、極東で人気の死にゲーやってんだからコントローラー奪うなって。返せ、返してぇ!!

 

「……だから、せっかく2人きりの空間なんだしこんなこと(テレビゲーム)よりすることあるでしょ……?」

 

「近いよ、顔近いってラプ原ラプ助さん? 尻尾腰に巻き付けんな、こしょばいだろうが!」

 

 お前らなんか勘違いしてるけどさ、別に俺のラップランドへの深ぁ〜い愛情は冷めきってないよ。ちょっとこいつ拒否りすぎじゃね?冷めてんの?とか思ったんだろ、ばかちんがぁ!!

 

 今だって心臓バックバクよ。高鳴りすぎて血痰が喉元までせり上がってきそう。あぁ〜、鉄分の味ぃ〜〜^^

 俺が死にかけてからプラス2年の月日が経過して、今やラップランドさんは18歳なんですよ。16ん時でさえたおやかに実ってた、たわわなそれが、馬鹿げた大きさじゃないとしてもまだまだ膨らみを帯びていってんすわ!要は当たってんのよ、腕に!

 

 最近普通の女の子(当社比)してるから、あんまり筋肉も使うことがねーんだろう、「ボク、太り始めてきちゃったかも……」とか言って真っ白なおなかを見せてきたりね、セックスアピールはやれるときにしまくれって感じでバカスカ仕掛けてきやがる。もうちょい慎みを持てよ、淑女だろうが。

 

「どきまぎして、どうしちゃったの……?あはは、こういうの久しぶりだ……ひゃあっ!?」

 

 けどねチミたち、忘れてないかい?ラップランドってのは攻撃力全振りエロがり奏で四重奏の権化みてぇな女だが……その実、防御力は死ぬほどペラい紙装甲だってことを!!

 

 つまり逃げたら負け。こいつには攻めるが必勝!肩にしなだれかかってきたラップランドを勢いまかせでお姫様抱っこし、先程のエロがりはどこいったってレベルで尻尾を丸め、耳を伏せちゃってる純情乙女思考のお嬢様の顔を覗き見てやった。

 

「どーした? さっきまでの威勢は。可愛いじゃないの、顔赤くして、なぁ?」

 

「…………っ。キミっていっっつもズルいよね……!」

 

「おめーだけには言われたかないね!来るたび来るたび色仕掛けやら好き好きアピールしやがって!

 俺はねぇ!晩年のおしどり夫婦みたいな、何も言わなくても通じあってる感じの関係性が望ましいのっ!!!」

 

「それで言ったら、キミは分かりにくいんだよ! 大体なんで全部一人で突っ走ってボクらを置いていくのさ! 通じあう気がないのはそっちじゃないの!?」

 

 うごご……何も言い返せねぇ……。実際もうちょっち頼ったりすりゃあ混沌大好きジジイに半殺しにされなかっただろうし、テキサス粛清の一件は丸く収まったように見えて、ぶっちゃけ俺が暴れ散らかしたからチェリーニアは二の次になったみたいなところあるしな……

 

 結局俺が拳骨喰らわせなくてもチェリーニア一人で立ち直ったし。自信過剰っていうか、自分のこと高く見積もりすぎてたよね。あとチェリーニアのこと舐めすぎてた。

 

「……あ、てかチェリーニア今禁煙してんだって。ラッピーの方に写真送られてねぇの?」

 

「ボクはまだ怒ってるんだけど、喧嘩中断するのやめてくれない?……あのチェリーニアが?どういう風の吹き回し?」

 

「龍門の『ペンギン急便』ってとこでヒラで働いてるらしいんだけどよ、そこで知り合った……ほれ、こいつら」

 

 クソザコナメクジとはいえ一人くらいは片手で抱えるくらいの筋力はありまっせ。ポケットから端末をまさぐって、ロックを外す。ほんで、ラップランドの眼前に送られてきた写真をタップして見せてやった。

 

「わお、見事に多種多様な種族の娘たちだね? サンクタ、フォルテ……ん、この娘……ループスじゃないね」

 

「チェリカスからは『詮索はしないでくれ』だとさ。まあ似合ってんじゃん?付け耳」

 

 どーやらあっちで出来た同僚兼お友だちにすげー剣幕で指摘されたんだとよ。ウケる。禁煙してまだ日も経ってないから、ずっと口元が物足りなくて付け耳ちゃん……ソラっていったか。ソラがいつも職場に差し入れで寄越してくれるココアシガレットを咥えてるんだとさ。

 

 俺らと関わってる時が陰気臭かったとは言わねぇが、随分と写真に写るチェリーニアは表情が柔らかい。クソみてぇなマフィア社会から望まぬ形とはいえ足を洗えたのは喜ばしいことなのかねぇ。

 

「……へぇ、元気そうで良かったよ。あの後すぐに荷物をまとめてクルビアから出ていったから、飢え死にでもしてないか心配だったんだけど」

 

「え、なに? やっぱチェリーニアから嫌われてたりするの? 何にも教えて貰わなかったのねお前。……うぅ、お労しい子……」

 

 ちょっと腕プルプルしだしたから抱っこやめるわね〜?名残惜しそうな顔してもだめだよー?俺の腕が折れちゃうから。てか本当に重たいね、太っ……てないです。スリムスリムスリム!痛いっ、弁慶の泣き所だってそこ!なにそれ?……あ、知らんよね。知らないのが普通だわ。

 

「……次太ってるとか言ったらタダじゃおかないから。ま、お父サマがボクを勘当した際に、連絡のための端末から社会的信用まで、ぜーんぶ取っ払っちゃったからね。ボクが知ろうにも知ることのできない情報ってワケ」

 

「…………あ、ガチでサルッツォ姓からお前の名前消えたのね。お前のお父様ってミズおばと同じくらい決断力バグってんな。もはや狂人の域に達してるわ」

 

 でけぇ荷物のようにソファにぽすんと座らされたラップランドは、どっから展開したのか分かんねぇマニキュアを爪に塗って、時に天井に塗った指を掲げたりして、塗りムラが無いかをなっげーしぱしぱの眉毛が様になってる目を細めて確かめながら話を聞いている。

 

「ははっ……まあ、あの人はサルッツォが末永く存続できさえすればいいみたいだからね。ボクのような無軌道な狂狼は飼いならすには損失が大きすぎるなってくらいしか、思うところは無いんじゃないかな」

 

 今までの俺が抱え込んで苦しんでた、イングリッドとの間にあるわだかまりとか、ベラ姉の仇討ちをしたほうがいいのか分かんなくて情緒ぐちゃぐちゃになったりしてたモノはさぁ、一応の収まりを見せたんだよ。

 

 だからなんつーの?やっとこさ周りの人の事を気にかけることができるっつーか。敢えてノイズをかけてぼやかしていた他人へのブレが、無くなってきた。

 

 俺の横にちょこんと座ってるこいつは、俺の人生の半分以上長く付き合いのある親友でもあり、恋人でもあるラップランドだ。どれだけ人道に反した殺人術を叩き込まれ、どれだけ心無い言葉を投げかけられたとしても、やっぱり父親に抱く愛情は本物な……ただの女の子なんだ。

 

「寂しくて俺んとこに来るなら、素直に『寂しい』って言いな。……わぁーってら、そういう機微を言わんでも察して欲しいんだろ。でも言ってくれ」

 

「キミだって言えない不器用さんなのに。酷なこと言うじゃないか」

 

「おうよ、俺もお前も同じく不器用で、そんでもって繊細なバカだ。だから分かるだろうけど……言わないっつーのはさ、そんだけ俺が信用なんないの?って思うんだわ」

 

 お姫様抱っこはありゃノリでしかないし、思い返すとあんまりロマンチックじゃなかった。風情っていうのはな、下手に派手派手しく演出するんじゃなく……こうやって、ただ何気ない膝まくらとか、そういうのでいいんだよ。

 

「……ねぇ、これは?」

 

「してもらってばっかだったから。……筋肉質な太ももで悪ぃが……まあ、お疲れさん。ラップランド」

 

 実は俺、ラップランドが泣いてるところを見た事がない。こいつはいつも段取り良く、誰よりも周りの空気を読んで、誰よりも丁寧に根回しをして、にこやかに佇んでいた。

 

 絶対どこかで辛かったり、苦しかったり、嫌なことがあっただろうに。甘えてくることはあれど、弱音を吐くことはあんまりなかった。

 

 あ、記憶喪失のときのギャン泣きはあれ弱音とかじゃないから。あれクズ男が散々色恋営業したくせに金搾り取れなくなったって判断した瞬間即切りするときの歌舞伎町の午前2時みたいなやつだから。

 

 まあ、つまりはよ。ラップランドってよくよく考えたら、親から絶縁されてんだから「あんまりだぁぁぁぁぁ!!!!」ってエ〇デ〇シみたいに泣いてもいいんじゃないのって話。

 

 へへ、リサちゃんの尻尾の毛の手入れを昔お手伝いしてたからね、俺ァ手櫛のスキルも最高峰なんですわ……!女の子のプライドと言われる髪、一掬い致しやす……!

 

「やっぱいつかも思ったけど、すげーしっかりお手入れしてるな。本当にお前の髪、綺麗だ……嫌なら言えよ?」

 

「嫌じゃ、ない。ぐすっ……家族揃ってキミたちは……ボクの頭を撫ですぎだって……」

 

 そう言って、寝返りを打ったかと思えば俺の腹に顔を埋めて小さくすんすんと泣き出したラップランドちゃん。よしよし、いっぱいお泣きよ。

 今日くらいは弱くたっていいじゃないの。そういう日があるから、毎日強くいられるみたいなところあるんじゃない?

 

 そんな感じに母性爆発系マフィアとして商売できそうなムービングでマターリしていたら、いきなり電話してきたテオドラに死ぬほどバカにされて凄く悲しかった俺であった。

 

 しかもどうやらアダムがCultistと接触したらしく、最低なファーストインプレッションを刻みつけられてご立腹とのこと。

 

 ウチだけだとアウェーで気まずいからアッシュも来て〜的なことを言われたので、懐いた子猫みたいに離れないラップランドを着いて……来させず、お家にお留守番ね〜^^と久しぶりのラプ虐をかまして外出することにした。

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