Tandem Shape Force Fantasia!! 作:EMM@苗床星人
――マギア・ラージ・キャリアーが地下坑道で死闘を繰り広げ、ヤマトとレイニアが勇者合体を果たしていた頃。
その激戦の舞台となったキルボックスの遺跡から横向きに大きく開けられた横穴から遥か遠く離れた、鉱山の地上付近。
「ぜぇ……はぁ……ふぅぅっ」
分厚い岩戸を乱暴にどかし、鉱山の目立たない一角に掘られた偽装の大穴から、ノシノシと重い足音を立てて外の光の下へと這い出してきた巨体があった。
紺色の重装甲に身を包み、頭部には不気味に光る巨大なモノアイを備えたシェイプシフターが身を乗り出した。
ゼロムード帝国の生き残りである『シンクバイ』の本体である。
そして、その無骨かつ大きな胸の装甲の上には、ダチカルが少年姿のMMSのままちょこんと座り、無邪気に足をばたつかせてキャッキャと楽しそうに笑っていた。
「きゃっきゃっ! MMSって、面白いナ! こんなちっちゃいサイズで、でっかいシンクに運んでもらう感覚、オレ好きだぞ!」
「もうっ!何を呑気なことを言ってるのさ!
此処まで出たんだから、もう交代(バトンタッチ)だよ! ほら、さっさと変身なさい!」
ダチカルの着ているジャケットの襟を、巨大な二本指でヒョイと摘み上げながら、シンクバイは呆れたように急かした。
その合成音声は、先ほどクレーン車の中から響いていた声――眼帯の美女MMSの姿である時と同じ、女性らしいトーンに調整されている。
「えー、シンクのけちぃ」
ダチカルはぷくっと不満げに頬を膨らませたが、大人しくシンクの差し出した『光る機械』を小さな手に取った。
そして、その機械のコアを大きく宙へと放り投げる。
「——解凍、ダチカル=ブレイカー=ザ=ヘイブンロックフォート三世」
ガガガガッ、ギュルンッ!
宙に浮いたコアが、周囲の岩盤や鉱石を凄まじい引力で砕いて取り込みながら、そのシルエットをむくむくと爆発的に肥大化させていく。
ジャラララララッ!と細かい刃の集合体のようなナノメタルに分解したダチカルの少年体がその大きな顎の中へと吸い込まれて行き、その巨体は息を吹き返すかのように大きく息を吸い込んだ。
「——がぁぁっ!!」
ズシィィィンッ!!
短い咆哮と土煙を上げて大地に降り立ったのは、先ほどのシンクバイの巨体をさらに上回る、全長7メートルにも及ぶ雄々しく凶悪な鋼鉄の獣――T-REX型の機龍形態であった。
ただし、その左脚だけは別の装甲材質で間に合わせに構成された、いかにも不格好な義足となっている。
「おー……。やっぱり、規格外にデカくなったねぇ、お前」
一つ目のカメラアイを瞬かせ、シンクバイが感心したように見上げる。
すると、凶悪な機龍形態となったダチカルが、そのいかつすぎる顔と鋭い牙の並ぶ顎に全く似合わない、可愛らしい少年声の合成音声を響かせて尋ねてきた。
『……ねー、シンクゥ?』
「あにさ?」
『何でこっちの世界で女になった途端、そんな急に無理して「女口調」にしてるの?
いつものシンクと違って、ちょっと気持ち悪いよ?』
ガクッ!!
純真無垢な子供特有の、悪意ゼロのド直球なストレートパンチを食らい、シンクバイの巨体が膝から崩れ落ちて危うく転びかける。
「く、訓練だよこれはっ!
これから私たちは、この世界の人間どもと交渉を始める必要があるでしょうがっ!
計画の話まるっきり訊いてなかったねお前!?」
シンクバイは慌てて立ち上がり、咳払いをして改めて語り始めた。
「MMSなんて便利な機能も手に入ったんだ。
コイツを今後の先立つもの(資金や情報)を手に入れるための色仕掛けに、使わない手はないだろうが!」
『えー? でも、炭素生命(にんげん)と手を組むなんて、エイト皇帝は絶対に反対すると思うんだけど?』
ダチカルの尤もすぎる正論に、シンクバイは肩の装甲を展開し、その隙間からナノメタルを出現させ、元の紺色のコートを着た眼帯の美女のMMS姿を再構成した。
そして、実体化したMMSで自身の巨大な一つ目の本体の装甲に寄りかかり、その頬に手を突きながら、ニヤリと底知れぬ邪悪な笑みを浮かべた。
「だから……皇帝は負けたのよ。文明の破壊という力技に手段を選ぶから、弱小な異種族との戦争に負ける。
……私からも何度も忠告したことよ、当たり前の帰結、馬鹿は死ななきゃ治らない!」
シンクバイの唯一残された左目が、野心にギラギラと燃え上がる。
「私は違う! 使えるものは人間だろうが魔物だろうが何でも使わせてもらう!
金も、土地も、愚かな民衆の力をもすべてを利用して、この新世界に『新生ゼロムード帝国』を建造してやる!
どうせこの世界に転生しているであろうネオンワンスの連中を出し抜いて、私こそがこの世界の……真の支配者となるのだ!!」
太陽の光の下で、「ふはははははっ!」と悪役のお手本のような高笑いを響かせるシンクバイ。
よくわかっていないダチカルだったが、T-REXの不釣り合いな短い前足(おてて)をパチパチと合わせながら、「わー、すごーい」と感心したように拍手を送った。
(……しかし、そう大きな口を叩いてはみたものの、この世界にはまだわからないことが多すぎる)
高笑いを収め、顎に手を置いたシンクバイは内心で冷静な分析を巡らせる。
(私はついさっき、あの古代遺跡の内部で目覚めたばかりだ。
対して、ダチカルはもう一年も前にはこの世界に転生していて、彷徨った末に私の発する微弱なシグナルを辿って地下に来て、喪った左足を修理してくれと助けを求めに来た
……つまり、我々の転生の法則と時間は、完全にランダムということだ。
さらに不可解なのは、なぜ我々帝国軍の機体に『MMS機能』が存在するのか、だ)
シンクバイは、自らのしなやかな女性の仮想体を見下ろした。
(MMSは元々、人間融和派であったネオンワンスのヤマトが、自身の『勇者のカテドラル』を用いて自軍にのみ拡散した追加機能だったはず。
地球人を劣等種と完全に見下していたエイト皇帝が、我々にMMSを使わせる必要性は皆無だ。
……いや、待てよ? 皇帝自身が、自らMMSを使う必要があって、我々が転生する前に『此処(異世界)』で何らかのシステム的干渉を行い、追加した……?)
まだ知りえない、いや、底が知れない抜け穴の存在がすぐ真横にあるような悪寒に、知将たるシンクバイは身震いした。
(……いいや、まだ不確定な予想はよしておこう。今は行動あるのみだ)
シンクバイは思考を打ち切り、顔を上げた。
「行くぞダチカル! まずは仲間探しへ出発だ! 先ずは、あの口先ばかりのおべっか使い、『イヒカ』からだ!」
シンクバイは、ダチカルの巨大な背中の装甲をポンポンと叩きながら、悪い笑みを浮かべる。
「エイト皇帝にすら気づかれなかった秘策を見せてやる……!
我々帝国の用いるこのセキュリティコアシステム、作戦立案とシステム構築に協力した際に微弱な個別霊子信号を発するように細工しておいたのさ!
ダチカル!反応はあっちの砂漠の方面だ、『オアシス』を探せ!
奴は前世からずっとバカンス暮らしに憧れていたからな、転生したならきっとそういう環境に引き寄せられているはずだ!」
『あいあいさー! オレ、シンクバイの説明口調、分かりやすくて好き!』
「だまらっしゃい! 道中に人間のバっザール(市場)があれば潜入するわよ!
今は少しでも、この世界の金と情報が欲しいからね!」
やたらとバザールの発音が良いシンクバイは自らの巨大な一つ目の本体をあの光る機械——セキュリティ・コアへと圧縮変換し、ボストンバッグに乱暴に突っ込んで仕舞い込みながら、ダチカルの広い背中へとよじ登った。
「さぁ、新生帝国の夜明けに向かって、前進!」
ドンッ、とダチカルの背を蹴って発進を促すシンクバイ。
『りょうかぁぁぁいっ!! しゅっぱぁぁぁぁぁつ!!』
「ぬああッ!? 加減しろ馬鹿ああぁぁッ!!」
ズドドドドドドドドッ!!
ダチカルが喜び勇んで、義足を軋ませながら土煙を上げて規格外の全力疾走を開始した。
振り落とされそうになったシンクバイは、先ほどの支配者然とした威厳はどこへやら、ダチカルの背中の装甲に半泣きで必死にしがみつきながら、情けない悲鳴を上げつつ未知の荒野へと消えていくのだった。
* * *
先の連絡から数時間、瓦礫の撤去と避難誘導の指揮を執っていた大族長ボリーは、ふと、カタルガダル駅を包む空気に『決定的な違和感』を覚えた。
『静かすぎる……』
ボリーは、巨大な類人猿型の義体の頭部を上げ、周囲を見渡した。
天井をぶち抜いてきた鉄鼠の滝は収まった。
だが、地下坑道特有の微小な環境ノイズや、遠方で稼働しているはずの採掘機械の振動、他駅からの定期的な列車の駆動音が、完全に途絶えていたのだ。
バッ!
と、ボリーは焦燥に駆られ、耳の通信機に手を当てた。
黒曜合金のレールを導線として有線的に繋がっている、ドワーフの地下鉄道ネットワーク。
その各駅と管理局へ向け、大族長の権限で一斉通信を試みる。
しかし。
『……ピーーッ。エラーコード404。通信先、応答アリマセン』
返ってくるのは、無機質で絶望的なエラーコードのみ。
『やられた……ッ!?』
ボリーが悔しげに歯噛みした、その推測は最悪の形で的中していた。
* * *
ガリガリガリガリッ! ガリガリガリガリガリガリッ!!
巨大なキャリアーが通ったのとは別の地下鉄道路線にて。
狂った鉄鼠の小規模な群れが、幾つにも分かれた別動隊となって、通信ケーブルの役割も兼ねている黒曜合金のレールに群がり、執拗に噛み潰して切断していた。
ブァァァァンッ!!
そこへ、猛スピードで突っ込んできた真紅のスポーツカー(ベンザイア)が、群がっていた鉄鼠の群れを火花を散らして無惨に轢き潰しながら駆け抜けた。
「何だよアレ!! なんでレールなんか齧ってやがる!」
タイヤにこびりつく鉄屑の感触に悪態をつきながら、ベンザイアが叫ぶ。
屋根の上で揺れに耐えながら、筋肉メイドのローラが風を切って真剣な顔で怒鳴り返した。
「マズイねぇ! あいつら、ただの獣じゃない!
レールを物理的に切断して、ドワーフご自慢の地下ネットワークを分断してるんだ!
これじゃあ各駅が孤立状態になって、連携も支援もできなくなっちまう!」
ローラの分析通り、狂気の軍勢は確かな戦術目標を持って動いていた。
ゴゴゴゴォォォォォォォッ……!!
突如、地下空間全体が、先ほどの局地的な地震とは比にならない規模で不気味に鳴動し始めた。
「――来るぞッ!!」
ローラが武器を構えた瞬間。
ドバアァァァァァァァンッッ!!!
地下空間のあらゆる岩壁、ヒビ割れ、換気口の隙間から。
大量の鉄鼠の群れが、まるで真っ黒な間欠泉のように、放射状に一斉に放たれたのだ。
* * *
『ひぃぃぃぃっ!』
『助けて! こっちにも魔物がぁっ!!』
カタルガダル駅の居住区で、パニックを起こし散り散りになるドワーフの一般市民たち。
そこへ、壁を食い破って雪崩れ込んできた鉄鼠の別動隊が、容赦なく襲い掛かった。
『民を護れ! 一歩も退くなぁッ!』
カチャリ、ガシャンッ!
避難誘導に当たっていたドワーフの兵士たちが、決死の覚悟で前に出る。
彼らは重武装の義体を駆動させ、連射式の『魔術弓』から青白い光矢を雨霰と放ち、巨大な『採掘用超振動斧』を振り回して鉄鼠の群れを次々と粉砕していく。
だが、狂乱の波は彼らの抵抗を容易く飲み込んだ。
『う、うわあああああっ!?』
切り刻んでも、撃ち抜いても、鉄鼠どもは仲間の残骸を食らってその場で爆発的に増殖する。
弾切れを起こした兵士の義体に、無数の鉄の牙が群がり、装甲の隙間から内部へと侵入していく。
『第2防衛ライン、突破されました! 弾が、魔力が足りな――ぎゃあぁぁぁっ!』
ドワーフ兵士の断末魔が駅に響き渡る。
硬質な義体が内側から食い破られ、無惨に飛び散る体液と潤滑油。兵士たちは一般市民を逃がすための肉の壁となり、次々とその命を散らしていった。
シュウゥゥゥゥ……。
凄惨な殺戮の場に、鉄鼠たちの身体から立ち上る赤黒い『瘴気』が濃密に充満していく。
やがて、その瘴気そのものが震え、スピーカーを通したかのように、地の底から響く悍ましい『呪詛の声』が地下世界全体に木霊し始めた。
『炭素ノ民ヨ。珪素ノ民ヨ。星々ノ旅人ヨ……』
それは、生命への憎悪を煮詰めたような、絶対的な絶望の宣告——魔王の声だった。
兵士が食い殺される咀嚼音と、民衆の悲鳴をBGMにして、その演説は続く。
『総テノ生命ヨ。只、唯……死ヌノダ』
ドカァァァンッ!と居住区の防壁が崩れ落ちる。
『何モ残スコトハナク。何ノ遺産モ、何ノ成果モ……! 意味モナク、タダ死ヌガイイ!』
絶望的な光景の中。
瓦礫に足を挟まれ、逃げ遅れた母親のドワーフが、幼い子供の義体を自らの身体の下に隠し、覆い被さるようにして震えていた。
『お母さん……っ、こわいよぉ……っ!』
『大丈夫、大丈夫よ。声を出さないで……っ!』
しかし、無情にも。防衛線を突破してきた狂気の鉄鼠の群れが、血走った赤いレンズ眼で親子の存在を捕捉し、波のように押し寄せてきた。
『命尽キル侭ニ、死ニ絶エヨ……ッ! 其レガ、我ガ勅命デアルガ故ニ!!』
魔王の悍ましい絶叫と共に、鉄鼠どもが親子めがけて一斉に跳躍する。
足を食い千切られながらも這いずってきた満身創痍の兵士が、親子の前に立ちはだかり、血を吐きながら絶叫した。
『やめろぉぉぉっ!! その子たちには、手を出すなあああぁぁぁっ!!』
兵士の絶叫も虚しく、無数の鉄の牙が、戦う力のない人々と傷ついた兵士の命を同時に刈り取らんと、無慈悲に迫る。
ドワーフの母親が、ギュッと娘を抱きしめて絶望の涙と共に目を閉じた。
――その、直前だった。
「勝手なこと、ごちゃごちゃ!」
「抜かしてんじゃねえッ!!」
ドゴォォォォォォォンッ!!!
天井の通気口を強引にぶち破り、カタルガダル駅のプラットフォームへと、真紅の流星と漆黒の凶戦士が凄まじい勢いで降臨した。
間一髪で駅へとたどり着いたベンザイアが、空中でスポーツカーからMMSへと鮮やかに変形し、ショックブーツの最大出力で親子の前に迫っていた鉄鼠の群れを蹴り飛ばす。
同時に着地したローラが、ジェット鉈のバーニアを吹かし、凄まじい横薙ぎの炎で周囲の鉄鼠どもを一網打尽に焼き払った。
「遅くなって悪かったな、髭の旦那方!」
炎を背に立ち上がるベンザイアが、生き残った兵士と親子にニヤリと笑いかける。
「ここからは、アタシたち『勇者』の防衛線だ! 一匹たりとも、好きにはさせねえよ!!」
魔王の呪詛を切り裂くように、流れるように戦闘態勢に入った二人は、駅を埋め尽くす絶望の群れへと、雄叫びを上げて躍り掛かった。
* * *
『――聞こえましたわねっ、ヤマト!』
「あぁ……! まったくもって、許しがたいっ!」
ゴオォォォォォォォォンッ……!!
地下坑道の暗いトンネルを、背部から噴射される強烈なプラズマ・ジェットの青白い光で真昼のように照らし出しながら。
奇跡の勇者合体を果たしたヤマトのトリコロールカラーの巨体が、大地を激しく鳴動させながら超音速で爆走していた。
物理的な干渉を持たないレイニアの精神体は、ヤマトの巨大な肩の上にふわりと立ち、ヤマトと同じ視界を共有して前を見据えている。
地下世界全体に響き渡った、魔王のあの冒涜的で傲慢な絶望の演説。それは、平和を愛し命を尊ぶ二人の戦士の心に、決して消えることのない猛烈な怒りと闘志の炎を燃え上がらせていた。
「私にはわかる……! この世界の住民(ドワーフ)たちも皆、誇りと、愛し守るべきものを持った、かけがえのない尊き生命だ……っ!」
ヤマトは、歯車を軋ませて拳を固く握りしめた。
「おそらくは……本来の生態系では、今あそこで狂わされている『あの鼠たち』でさえ、そうだったのだ!」
ただ自然のサイクルの中で朽ちた金属を掃除して生きていた、罪なき小さな魔物たち。
それらを『兵器』として狂わせ、使い捨ての爆弾のように消費する、あまりにも非道な手段。
『ええ、その通りですわ!』
レイニアの精神体が、ヤマトの怒りに呼応して激しく叫ぶ。
前世のレオンの記憶と、今世の姫騎士としての誇りが完全に混ざり合った、烈火の如き義憤。
『彼らの命を意味もなく、無価値に、ただ絶望の底へと沈め消費する愚行!
何も残させないという、その思い上がり……神すらも気取るその傲慢!
決して、許すわけには参りませんわ!!』
「あぁ、同感だ! 蹴散らすぞ、レイニア!」
ザザザザザザザザッ!!
二人が激走するトンネルの前方。魔王の瘴気に操られた別動隊の鉄鼠の群れが、彼らの接近を察知し、トンネルの一箇所に異常な密度で群がり始めた。
数万の鼠が互いの装甲を噛み合わせ、完全に結合し合い、通路を完全に塞ぐ分厚く巨大な『金属の壁』を形成する。
『『勇者の剣(エラ・シャイアラ)』!!』
レイニアの号令と共に。
ギャコンッ!と、ヤマトの腕部装甲から重厚な剣の柄(つか)が飛び出した。
ヤマトがそれを力強く握り込んだ瞬間、ジュウゥゥゥゥンッ!!と、刀身の代わりに万色の魔力と高熱のプラズマを帯びた、長大で極太の光の刃が猛烈な勢いで形成される。
「魔王よ! その腐った企み、真っ向から屑鉄(スクラップ)に帰してくれる!!」
言うや否や、ヤマトは魔力の大剣を頭上高く振りかぶった。
大剣の先端から伸びたプラズマの刃が、トンネルの岩盤の天井を真っ赤に溶かし、削りながら火花を散らす。
限界まで魔力をチャージした、鋼の勇者と姫騎士。
二つの魂が完全に同調し、言語すらも前世(レオン)の好んだ地球の古武術の気合いへと統合されていく。
「『ちぃぃぃぇええええすとおおおおおおぉぉぉぉぉッッ!!』」
裂帛の猿叫(えんきょう)と共に。
ヤマトの巨体が限界まで踏み込み、大剣を横薙ぎに一閃して振り下ろした。
ドバァァァァァァァァァァンッッ!!!
狂った魔物も、それに憑りついていた魔王の怨念も。
すべてをまとめて両断し、浄化する破魔の剣撃。
その絶対的な一撃が、凄まじい爆音と光の奔流と共に、分厚い鉄鼠の壁を一瞬にして解体し、粉微塵に吹き飛ばした。
バラバラになった鉄屑の雨を掻き分け、ヤマトは一切の減速をすることなく、こじ開けられた道をカタルガダル駅へと向けて一直線に爆走していく。
* * *
同時刻。
カタルガダル駅の居住区のさらに奥深く、安全な岩盤に守られた区画にて。
フリフリの愛らしいアイドル衣装を纏ったオヅマのMMS(仮想体)は、逃げ惑うドワーフたちの波に逆らうようにして、ひっそりとしたある場所へと向かって歩いていた。
そこは、ドワーフたちが熱心に祈りを捧げるための、一種の『聖堂』のような安置所だった。
青銅の燭台が並び、発光粘菌の厳かな光に照らされた空間の中央に、それは鎮座している。
「……」
それは、泥と傷に塗れた、無骨で巨大な『トラクター』だった。
ここに来たばかりの数年間、オヅマがその身を挺して彼らの過酷な採掘作業を手伝い、崩落事故から子供たちを護り抜いた、かつての老龍の『本体』。
いつしかドワーフたちから「神様」と呼ばれ、深く感謝されるようになったその機体は、装甲の劣化と、億年単位の稼働による長時間駆動の体力(バッテリー)の限界を迎え、今や稼働を完全にMMSに任せ、この聖堂と言える空間に『ご神体』としてただ飾られるだけの存在となっていたのだ。
地下のアイドルとして、平和なセカンドライフを謳歌し、もう二度と戦場には立たないと決めていたオヅマ。
しかし。先ほどのヤマトの、すべてを背負い込んで一人でボロボロに泣き崩れていた、あの不器用な教え子の顔が、オヅマの量子脳にこびりついて離れなかった。
『私が今、こうして生きてここに居るのも。君が今、そこに居るのも……全部、これが運命だよ』 そう、ヤマトに語ったのは、自分自身だ。
オヅマは、静かに歩み寄り、冷たく沈黙しているトラクターの巨大なフロントグリルを見上げた。
「……ねぇ、アメノオヅマ」
彼女は、他ならぬ『自分自身』の老いた魂(本体)に向けて、静かに語り掛けた。
「また、あのバカな若造が、一人で全部背負い込んで、無茶をやらかそうとしてるよ。……放っておいたら、またアイツは一人で死んじゃうかもしれない」
オヅマは、そっと小さなMMSの手を伸ばし、油と泥にまみれたトラクターの分厚い装甲に触れた。
「ここで、ぬくぬくと安全な場所から祈りだけを捧げて、アイツらの悲痛な泣き声をまた聞くことになるのが……これが本当に、私の望んだ『運命』だと……そう思う?」
問いかけの答えは、とうに出ている。
あの時、カタールの砂漠で若者たちを逃がすために自爆を選んだのも。今、こうして異世界の地下で、再び誇りに身を焦がす事も。
逃げられない『戦士としての性(サガ)』。
「戦いを知ることなく、そんな当たり前の生活を此処で暮らす人々の悲鳴を、只、唯、聞いていられる?」
オヅマは、トラクターの冷たいエンジンブロックへと、両手を深く押し当てた。
そして、その瞳からアイドルの愛らしい甘さを完全に消し去り、かつて全軍を鼓舞した『老龍』としての鋭く獰猛な眼光を宿らせた。
ズンッ。
「……目覚めろ、半身」
――ぶぅおおおおおおおぉぉぉんッ!!
その瞬間。
長きに渡って沈黙していたトラクターの巨大なカグツチ・ドライブ(心臓部)が、けたたましい、地響きのようなエンジン音を上げて再起動の咆哮を轟かせた。
排気筒から真っ黒な煙が勢いよく噴き出し、青銅の聖堂全体がその凄まじいトルクの振動でビリビリと震え上がる。
「行くぞ、装甲なんてなくても、何でもない生活を護るために——!!」
限界を迎えていたはずの老いた機体に、再び火が入った。
アイドルの衣装のまま、吹き荒れる排気の風を浴びながら。オヅマはもう一切の迷いなき瞳で、力強くコクリと頷いた。
* * *
カタルガダル駅の居住区中央。
つい先ほどまで、アメノオヅマが華やかなライブを繰り広げ、熱狂と歓声に包まれていた巨大な地底湖は、今や完全なる阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
バキバキバキッ! ギャアァァァァァァッ!!
地底湖を取り囲むように、数え切れないほどの鉄鼠の群れが密集し、波のように押し寄せている。
その真っ黒な濁流の最前線に立ちはだかり、たった一人で防衛線の要となっているのは、大族長ボリー=リビアの体長3メートルを超える類人猿型の巨体だった。
『オオオオオオォォォォォッ!!』
ボリーは両腕の装甲をパージして内部機構を完全に剥き出しにし、右手に持った巨大な『超振動斧』を竜巻のように振り回して群がる鉄鼠を粉砕する。同時に左腕に増設された『多連装魔術弩』から青白い光矢の雨を絶え間なく放ち、波状攻撃を強引に押し留めていた。
「すまねえ、連絡が遅れた!」
そこへ、プラットフォームの防衛を一般兵に任せ、戦場を駆け抜けてきたベンザイアと、その肩に乗る筋肉メイドのローラが合流する。
ボリーが血の滲むような合成音声で謝罪するが、ベンザイアは巨大な足で鉄鼠を踏み潰しながら鋭く叫び返した。
「謝んのは後だ! それより、あの湖の中に何かヤバいモンでも隠してあるんじゃねえのか!? 鼠公どものあの湖への集まり方、明らかに異常だぞ!」
ベンザイアの指摘通り、鉄鼠たちはドワーフの市民を襲うよりも優先して、一直線に地底湖の奥深くへとダイブしていく個体が後を絶たなかった。
『やべぇなんてもんじゃねぇ……!』
ボリーは迫り来る鉄鼠を斧で両断しながら、絶望的な事実を吐き出した。
『あの地底湖の底は、此処で採掘され、各国へ儀式杖の演算リソースとして出荷される『炸裂晶(ゴートナイト)』の保管庫なんだ!
加工前はああして常に極低温の地下水で冷やしてねえと、ちょっとした衝撃や熱の刺激で大爆発を起こしちまう……古の儀式の生贄に代わって使われる、超圧縮された『熱量の結晶体』の塊だ!』
「つまりは、この大空洞を丸ごと吹き飛ばせる『火薬庫』ってことかよ!?」
ベンザイアが戦慄して叫んだ、その瞬間だった。
ボゴバァァァァァァァァァッ!!!
巨大な水柱と蒸気が上がり、地底湖の奥底から『悍ましいもの』が飛び出してきた。
それは、湖の底で炸裂晶の紫色の結晶体を無数に取り込み、それを核にして細胞のように結合し合った、鉄鼠の超巨大な変異集合体だった。
『『『ギヂィィィィィィッ!!』』』
全身から紫色の禍々しい光と熱を放ち、何本もの巨大な『触手の塊』となった悪意の化身。
そのバケモノは、紫色の結晶がギラギラと瞬く極太の触手の一本を天高くググッと持ち上げると、空気を引き裂くような鋭い音を立てて、ビュンッ!とローラめがけて一直線に振り下ろした。
「――ッ!! 筋肉メイド、あぶねぇッ!!」
ドンッ!!
ベンザイアは咄嗟に、自身の巨大な腕を使い、人体を傷つけない最低限の絶妙な力加減でローラを空中へと突き飛ばした。
間一髪でローラの身体が触手の軌道から外れる。
だが、その身代わりとなるように。鞭のようにしなった紫色の触手が、巨大なベンザイアの左足首にギリギリと深く絡みついた。
「っ!?」
ガチンッ。
触手の先端を構成していた無数の鉄鼠たちが、一斉に不気味に歯を鳴らし、紫色の結晶が限界まで眩く明滅した。
彼らは、取り込んだ炸裂晶のエネルギーを自らの命ごと臨界点まで圧縮し、『自爆』する機構へと変異していたのだ。
ズガァァァァァァァァァァンッッ!!!
地底湖を揺るがす凄まじい爆発。
強烈な衝撃波と超高熱の爆風が辺り一帯を覆い尽くし、ドワーフたちも吹き飛ばされる中。
爆煙の中から、鼓膜を劈くようなベンザイアの悲痛な絶叫が木霊した。
「がああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
ガドンッ!!
数十トンに及ぶ真紅の巨体が、バランスを崩して大地の石畳に激しく倒れ込む。
ベンザイアは狂おしいほどの痛みに身をよじらせ、地面を転がりながら、吹き飛んだ自身の片脚を巨大な両手で押さえて蹲った。
「ベッチー!?」
空中で体勢を立て直し着地したローラが、血の気が引いた顔で叫ぶ。
爆発の直撃を受けたベンザイアの左足は、膝下から分厚い装甲が無惨に剥がれ落ち、内部の精密な骨格フレームや人工筋肉のシリンダーが完全にひしゃげて焼き切れていた。
バチバチと青白いショートのスパークが瞬き、切断面からは人間で言うところの大量の血液に等しい、鮮やかなオレンジ色の冷却オイルがダクダクと滝のように流れ出ている。
それはどう見ても、一歩も立ち上がれなくなるほどの致命的な重傷だった。
「あぐっ、うぅっ! ち、ちくしょうっ……避け損なった、ミスったぁっ……!」
激痛に巨大な顔を歪め、油の混じった声で呻くベンザイア。
「ベンザイア!」
ローラが武器を放り捨てんばかりの勢いで駆け寄ろうとする。
しかし、湖の中から現れた悍ましい触手の群れは、倒れたベンザイアにトドメを刺そうと、さらに三本の紫色の触手を持ち上げ、容赦なく襲い掛かってこようとしていた。
「……っ! っく、来んなァッ!!」
ベンザイアは、がくがくと全身の装甲を震わせ、青いカメラアイの端から痛覚のオーバーフローによる冷却液(涙)を薄く垂らしながらも。
迫り来る触手に対して、倒れ伏した本体の胸部――ビークルモードにおけるバンパー部分の装甲を、咄嗟に大きく展開した。
ジャラララララララッ!!
内部から無数の銀色のナノメタルの嵐が吹き荒れ、一瞬にして光の粒子を収束させる。
そして、倒れ伏した巨大な本体の前に立ち塞がるようにして、人間の少女の姿をした『MMS(メンタルモデルシステム)』のベンザイアが構築され、実体化した。
「どぅりゃああああっ!!」
本体とは異なり、怪我を負っていないメイド服姿の少女(MMS)。
彼女は空中に魔法陣の足場を展開すると、両足に装備された小型ショックブーツを最大出力で炸裂させ、迫り来る三本の触手を強烈なエネルギーの蹴り技で弾き飛ばし、間一髪で迎撃してみせた。
ズガンッ、バァァンッ!!
触手の軌道が逸れ、背後の岩壁が身代わりに粉砕される。
「くそっ……! やっぱ、こっちの小せぇ身体(MMS)じゃ、威力はともかく攻撃の『範囲』が全然足りねえ……っ!」
スタッ、と地面に着地しながら悪態をついたベンザイアの少女体。
その小さな身体には、傷一つついていない。
しかし、彼女は額から滝のような脂汗を流し、肩で激しく呼吸を繰り返しながら、今にも倒れそうなほどに足元をふらつかせていた。
当然だ。MMSはあくまで遠隔操作の仮想体に過ぎない。精神と痛覚のリンクの大部分は、背後で巨大な足を押さえて蹲っている『大破した本体』にあるのだ。
本体の凄まじい激痛とシステムエラーの苦しみをダイレクトに味わいながら、それでも無理やり仮想体を動かして戦線を維持している。その精神力たるや、まさに超人的と言えた。 駆けつけたローラが、ベンザイアのMMSの細い背中をガシッと支えた。
「そんじゃあ、あのでけぇ『本体』の護衛は、アタシに任せな!」
ローラは背中から巨大なジェット鉈を引き抜き、そのバーニアを轟音と共に吹かせた。
戦友を傷つけられた激しい怒りが、その褐色肌の筋肉を通常時の倍以上にパンプアップさせていく。
「あんたの足の分まで、きっちり借りは返すよ!」
「へっ……言うじゃねえの」
激痛に顔を歪めながらも、ベンザイアのMMSは勝気な笑みを浮かべ、ショックブーツの魔法陣を再び輝かせた。
「上等ぉ……!! 頼んだぜ、筋肉メイド!」
湖中から身を乗り出し、周囲の熱を吸収してさらに巨大化しながら、『ぎぢいいいぃぃぃぃぃ!!』と鼓膜を破るような悍ましい雄たけびを上げる鉄鼠の変異集合体。
その絶対的な絶望の顕現に対し。
満身創痍のベンザイア、怒りに燃えるローラ、そして大族長ボリーと残存するドワーフ兵たちは、一歩も退くことなく武器を構え。
地底湖の底を守り抜くための、決死の暴力と魔術の火蓋を、再び切って落としたのであった。
「アニー……どこぉ?」
地底湖での死闘から少し離れた居住区の避難経路。
ドワーフの避難民たちが恐怖に震えながら長蛇の列を作る中、球カニ型の小さなドワーフの少女・クレナイは、避難用に支給された金属製の樽を内部からカラカラと転がしながら、はぐれてしまった姉を探し回っていた。
「クレナイ! こっちに来ちゃダメぇっ!」
不意に、瓦礫の向こう側からアニーの悲鳴が聞こえた。
クレナイは樽をキュキュッ!と急ブレーキさせ、声がした方へ向けて樽の縁から身を乗り出した。
「……ひっ!?」
クレナイの光学センサーが恐怖に見開かれた。
アニーは、地底湖から這い伸びてきた紫色の結晶が混ざった鉄鼠の極太の『触手』に片脚を掴まれ、空中に宙吊りにされていたのだ。
ジタバタと短い多脚を振り回して必死に抵抗しているが、強靭な触手の力には到底抗いきれない。
「あ、アニーを放せぇっ!!」
クレナイは恐怖を振り払い、ぴょいっ!と樽から飛び出した。
宙吊りになるアニーの足に群がり、今にもその装甲を食い破ろうとしている鉄鼠どもに向け、クレナイは自身の片手の鋏に内蔵された『子供用の採掘ドリル』を展開し、バチバチと地道で必死な攻撃を加え始めた。
「馬鹿! クレナイ、逃げてぇっ!」
アニーが泣き叫ぶが、遅かった。
ぎゅるるんッ!
鉄鼠で構成された別の触手が鞭のように高速で巻き付き、抵抗するクレナイの小さな身体をも容赦なく捕獲した。
そして、悍ましい変異集合体が座す地底湖の中央――はるか頭上の天井近くへと、二体を一気に吊り上げたのだ。
「「きゃああああぁぁぁーーっ!?」」
二匹の子供の悲痛な悲鳴。
それに真っ先に反応したのは、地底湖の最前線で超振動斧を振るい、防衛の指揮を執って暴れ回っていた大族長ボリーだった。
「……ッ!? アニー!! クレナイぃぃっ!!」
目に入れても痛くない、誰よりも愛する可愛い孫娘たちが連れ去られようとしている。
ボリーの血を吐くような悲痛な絶叫に、激痛に耐えながらMMSで戦うベンザイアと、大剣を振るうローラがハッとして振り向く。
無数の爆発触手による波状攻撃を休みなく戦士たちに叩きつけながら、地底湖中央に座す鉄鼠の集合体は、その頭上に二体の子供を持ち運んだ。
そして、集合体の中央部分を巨大なすり鉢状に円形に展開し始める。
ギヂギヂギヂギヂギヂ……ッ!!
そこは、赤熱した数万匹の鉄鼠の前歯がグラインダーのように高速回転する、文字通りの『地獄の入り口(大口)』だった。
「ひぃぃっ……アニーお姉ちゃぁんっ」
「クレナイ……っ」
触手に宙吊りにされながら、空中で身を寄せ合うように抱き合う姉妹。
その絶望に震える声が、魔王にとっては極上の美酒であるかのように。
大空洞に、悍ましくも愉快そうな高笑いが響き渡った。
『ハ、ハ、ハ、ハ……! 潰エロ。老イモ若キモ……全テ、惑星ノ滅ビノ糧トシテ!!』
ぱっ……と。
無慈悲にも、空中の触手が二体の子供を解放した。
重力に従い、飛行ユニットを展開する間すら与えられず。二体の小さな球状の身体は、高速回転する赤熱のグラインダーの口の中へと、真っ逆さまに落ちていく。
「やめろおおおおぉぉぉぉっ!!」
ボリーが斧を投げ捨て、手を伸ばして絶叫する。
緩慢に進む絶望の時の流れの中で。
ベンザイアが、ローラが、その場にいる戦士たち皆が、届かない距離に絶望の声を上げた、その瞬間だった。
――ガツンッ!!
巨大な『ハイヒール』の踵が、地底湖の分厚い石畳の床材を粉砕し、深々と突き破る轟音が響き渡った。
「――お前、子供を喰うのか?」
それは、どこまでも女性らしく、甘ったるいハイトーンのアニメ声だった。
だが、その声色には、深淵の底から這い上がってきた修羅のような、地を這うような『低く唸る迫力』が完璧に備わっていた。
ぽ――んっ。
不思議な、風船が弾けるような軽快な音。
グラインダーの口へと落ちていったはずのアニーとクレナイの二体の身体が、口の数メートル上で突如として展開された『見えない音波の壁』に阻まれ、ぽよんとバウンドして空中にフワリと浮き上がったのだ。
「え……?」
「おねー、ちゃん……?」
宙に浮いた姉妹の視線の先。
地底湖の岸辺に、凄まじい砂埃と排気煙を上げて着地した『それ』が立っていた。
その光景に直面し、アメノオヅマの脳裏に、かつて居た故郷の世界――ヘイブンガーデンの暗黒時代の、封じ込めていた泥臭い記憶が鮮烈にフラッシュバックしていた。
『旧支配者(オールドワンス)』という傲慢な化け物に、生贄として強制的に捧げられ、泣き叫びながらすり潰されていった自分の幼い息子。
さらに昔、あの花の姿をした悪魔の支配の始まりに。あまりに幼く未熟だった自分を庇い、その悍ましい顎に喰われていった、若き先代の兵士たち。
皆、若かった。皆、未来があった。
そして今現在もまた、遠い宇宙の何処かの戦場で、若い命が意味もなく散っているのだろう。
オヅマは、世界の理不尽を『運命』と呼んで受け入れてきた。
自分が女の子の姿になろうが、地下のアイドルになろうが、それもまた運命だと笑って受け入れてきた。
しかし。彼女――否、歴戦の老兵である『アメノオヅマ』には、いかなる運命や理不尽を前にしても、どうしても、絶対に耐え難い『たった一つの逆鱗』があった。
「――『儂』の目の前で、子供を喰らう気かッつってんだァァァァッ!!」
叫ぶその巨体は、トラクターの本体から完全変形(シェイプシフト)を果たした、アメノオヅマの勇姿(ロボットモード)だった。
全長わずか4メートル。かつての十数メートルに及ぶ巨大な黒龍の威容は見る影もなく、あまりにも小さく、細く、若々しい花模様にリペイントされている。
その装甲に至っては、MMSの時と同じような『フリフリのアイドルドレス』を模した、薄く、軽く、ひどくふざけたデザインのままだ。
それでも。
その華奢な装甲の奥で燃え盛るカグツチ・ドライブの熱量は、かつて全軍の先頭に立って絶望の戦場を駆け抜けた、偉大なる『鋼の守護者』のそれと、何一つ変わってはいなかった。
戦場に再び立った老兵は、目の前の絶望めがけて、何処までも響き渡る規格外の声量で吼えかかった。
ガシャァァァァンッ!!
瞬間、オヅマの全身を覆っていたドレス風の装甲が一斉に開き、内部に隠されていた無数の音響兵装(スピーカー)と増幅アンテナがハリネズミのように展開された。
オヅマの量子脳が、ヤマトの『勇者のカテドラル』から受け取った『魔術適応アップデートプロトコル』を完全に解析し、自身の霊子エネルギーと強引に融合させる。
展開されたスピーカー群から、目も眩むような黄金の霊子と、翠緑の魔力が混ざり合った強大な力場が放出される。
それはオヅマの眼前の空中に、複雑怪奇な『超巨大な多重魔法陣』を瞬時に形成していった。
——分厚い装甲なんて無くしても、私(わし)には声(これ)がある!
オヅマが腕を振り下ろすと同時。
魔法陣から放たれた極大の音波振動が大空洞の壁を縦横無尽に反響し、指向性を持った『不可視の正方形の箱』となって、鉄鼠の変異集合体の中心――あの巨大なグラインダーの大口めがけて、ピンポイントで叩きつけられた。
ズドォォォォォォォォォンッ!!!
『『『ギギャァァァァァァァァァッッ!?』』』
空間そのものが圧縮されたかのような、凄まじい衝撃。
鉄鼠の群れが形成していた巨大な中心部が、目に見えない巨大な『箱』の面によって四方八方から無慈悲に押し潰され、ひしゃげ、メチャクチャに圧壊していく。
そして、その箱の面(絶対防壁の境界線)を越えて伸びていた紫色の触手の遍くすべてが、ギロチンにかけられたかのように一瞬にして『切断』され、地底湖の底へとボトボトと無惨に崩れ落ちた。
「おじいちゃぁぁんっ!」
「こわかったよぉぉっ!」
飛行ユニットを展開し、ぶーんと飛んでくる孫たちを太い腕でしっかりと抱きしめ、ボリーは心底安心したように皺だらけの顔をほころばせた。
「ボリー君! レールを齧ってる鉄鼠を全部つぶせば、ネットワークは自動修復できるね!?」
相当な距離があってもはっきりと聞こえるオヅマの大きな声に、ボリーが耳を押さえながら返す。
「お、おう! 黒曜合金の伸縮(自己修復)機能を使えば、鉄道としちゃあすぐには使えねえが、通信手段としちゃあすぐに復旧できるはずだ。って……どうやる気だ!?」
「私がこの五年間、何やって来たと思ってんの!?」
ガン!と自らの胸に手を当てて、オヅマは大きな瞳を閉じ、もう片方の手で指を鳴らした。
ガ、コゥゥゥ……ンンン……。
地底湖全体に響き渡る、音の反響。
その音の波紋の中で蠢く鉄鼠の形状、材質、固有振動数。数億年を生き抜いたオヅマの量子脳は、放った音の反響のみで敵の全データを瞬時に解析し、その反響が届く限りの範囲に奴らがどう散らばり、数を成し、結合しているかを完璧に弾き出していく。
かつて、アニーとクレナイを崩落から助けた時にオヅマは思っていた。
ヤマトのカテドラルによって与えられた自らの固有武装『ハウルウォール』は、自らの声の音波と装甲を媒介にして、至近距離にのみ霊子の壁を発生させるものだった。
しかしあの時、本当に欲しかったのは……もっと広範囲に、もっと自由な場所に壁を展開して皆を護り、そして壁の動きそのもので外敵を押し退ける力だった。
その切実な願いが今、ヤマトから送られたカテドラルの奇跡(アップデート)によって、真なる形となったのだ。
(ヤマトちゃん……『儂』が死んで尚、誰かのために戦い続ける誇らしい後輩。
君の力は今でも……こうして、誰かを護るための力になっているんだね)
感慨深く細めた目をカッ!と見開き、オヅマは叫ぶ。
「敵組成、固有振動計算完了! 今、声が通るだけでも……まずは第一波ぁ!!」
そして、すぅぅ……と。
華奢な胸の奥にあるカグツチ・ドライブのポンプが許す限り、大気を深く深く吸い込むと。それに膨大な霊子と魔力を限界まで纏わせ、一気に放った。
「ッッッらぁー――――――――――――ッ!!」
その凄まじい絶叫は、展開されたスピーカー群を通じて複数の複雑な音色へと変換され、無数の音波情報となって地下坑道中を縦横無尽に駆け回った。
* * *
「なっ……何だ!?」
一方、暗い坑道をカタルガダル駅へ向けて超音速で爆走していたヤマト。その前方から、振り返る暇もなく猛烈な勢いで『魔力の塊(音波)』が通り過ぎていった。
その懐かしくも力強い音色に、肩に乗るレイニアの精神体がハッとして呟く。
『今の声……オヅマのおじいさんの?』
最大延長まで届いた音波は、坑道の奥深くで複雑に反響する。
『ヂヂヂ、チッヂヂ!? ギギャアアァッ!!?』
前方から、鉄鼠たちの凄まじい悲鳴が上がった。
跳ね返って来た見えない音波の壁が、まるで巨大なブルドーザーのように自分たちを押し上げ、レールから剥がし、凄まじい力で一箇所へとかき集めようとしているのだ。
狂乱した鉄鼠はその不可視の壁を食い破ろうと牙を剥くが、その壁に実体はなく、前歯は虚しく文字通り空を切るだけだった。
レールを齧っていた鉄鼠の群れが、見えない壁に押し流されるようにして自分たちを追い越していくのを見送り、ヤマトはこれが、あの偉大なる老兵の力であることを察した。
「カテドラルのアップデートが、『私の仲間』に新たな力を与えたか……っ!」
その背中を押すような圧倒的な力に、さらなる勇気を与えられたヤマト。
恩師のもとへ、そして仲間たちのもとへ一刻も早く追いつこうと、鋼の勇者はプラズマバーニアをさらに激しく吹かし、最高速度の限界を越えて加速していくのだった。
ギィィィンッ……!
大族長ボリーの指示と、オヅマの放った規格外の音波が、ドワーフの地下鉄道ネットワークに奇跡を起こしていた。
鉄鼠の別動隊によって食いちぎられていた黒曜合金(ユゴシウム)のレール同士が、まるで生ききた粘土のようにグニュウゥゥッ……と伸び、断線していた隙間を自動的に埋め合わせて結合していく。
そして、レールが一本に繋がった瞬間。
修復されたレールを伝導体として、オヅマの放った『音波の壁』が、新たな歌声の如き共鳴音を発しながら、大陸中に広がる広大な地下鉄道の全域へと音の速さで伝播していったのだ。
『ギ、ギギャアァァァッ!!』
坑道やレールに群がり、浸食を広げていた鉄鼠たちの包囲網が、その不可視の音響防壁によって急速に掃き清められていく。ブルドーザーのように押し流された数万の群れは、逃げ場を失い、すべてがこのカタルガダル駅の地底湖へと『圧縮』されていった。
「ッッッらぁーーーっ! らぁーーーーっっ!!」
地底湖の特設ステージの上で、オヅマが絶叫し続ける。
「くそぉっ! いい加減、喉(声帯モジュール)が持たないよ、コレぇッ!!」
フリフリのアイドル衣装の隙間から、限界を超えた排気熱の白煙を噴き上げながら。
オヅマが音圧を上げれば上げるほど、地底湖の中央――空中の中空に展開された不可視の『箱(ハウルウォール)』の中に、坑道中から掃き集められたすべての鉄鼠たちがギュウギュウに押し込まれ、巨大な真っ黒い『キューブ』を形成していく。
だが、追い詰められた魔王の悪意は、そこで終わるほど底浅くはなかった。
――ドクンッ!!
巨大な真っ黒いキューブの内部から、心臓の鼓動のような悍ましい音が響いた。
同時に、キューブの隙間から、不気味な紫色の光が怪しく明滅し、オヅマの作り出した『箱』の絶対防壁を、強烈な力で内側から押し広げようとし始めたのだ。
「――っ!? 負けるか、ぁあぁらあぁーーーーーーッ!!」
オヅマが血を吐くような悲鳴を上げ、音圧をさらに一段階上げる。
しかし。
ドクンッ! ドクンッ! ぼこぉぉっ!!
内側からの異常な圧力によって、キューブ状だった見えない箱が、メキメキと限界の音を立てて『球状』へと歪められていく。
そう、その内部では、生命の理を完全に冒涜した異常な行為が行われていた。
ぐじゅる、うじゅるるる……と、機械らしからぬ湿った生物的な音を立てながら。
最早本来の装甲も肉も削ぎ落とされ、骨組みだけで活動し体積の面影のみを残した鉄鼠たちが、限られた空間の中で『異常繁殖』を始めていたのだ。
そして、その骨の隙間には――丁寧にも、地底湖から奪い取った紫に妖しく輝く炸裂晶が、まるで爆弾の信管のように無数に埋め込まれていた。
『産メヨ、増ヤセヨ、地ニ満チテ……!』
球状に膨れ上がる鉄鼠の塊から、魔王の悍ましい呪詛が響き渡る。
『ソシテ、地下ニ遍ク生命ヲ巻キ込ミ、散華セヨ!! 最後ノ希望ヲ、白紙ニ帰スルノダァァァッ!!』
それは、最悪の自爆特攻。
極低温で冷やさねば大爆発を起こす炸裂晶を抱え込んだまま、自らの増殖熱で臨界点を超えさせ、このカタルガダル駅の居住区、ひいては地下大空洞すべてを道連れにして消し飛ばすという、魔王の底知れぬ悪意だった。
限界まで膨れ上がった球体から、致死の紫色の閃光が漏れ出そうとした。
――その時。
ごばああぁぁぁぁぁぁぁッ!!!
大空洞に続く鉄道の巨大な通り口の岩壁を、その巨体で強引に粉砕しながら。
輝くトリコロールカラーの装甲と巨大な機龍の翼を備えた、『勇者合体』状態のヤマトが、隕石のような速度で居住区の地底湖へと突っ込んできたのだ。
「すまない、遅れた到着だ!!」
空中で急制動をかけ、ヤマトの巨大な雄叫びが大空洞に響く。
その肩越しに、融合したレイニアの精神体が極限の速度で戦況を把握し、即座に魔力回路を全開にした。
『間に合わせます! 『エラ・レイオウ・ザンカン・ラージア(魔力刃・最大射程)』!!』
レイニアの無駄のない詠唱に合わせて、ヤマトの手にある『勇者の剣』の刀身から凄まじいプラズマが噴き上がる。光の刃は一瞬にして、オヅマの歌声の檻ごと、巨大な鉄鼠の球体を丸ごと両断できるほどの規格外の長さ(直径)へと強引に引き伸ばされた。
「旦那ぁ! ただ斬るな! そいつらは爆弾の群れだ!! 下手に刺激したら、爆発してここが全部吹き飛ぶぞ!!」
下から、満身創痍のベンザイア(MMS)が血相を変えて警告を叫ぶ。
(熱量を持った物理切断では、炸裂晶を起爆させてしまう!)
ベンザイアの叫びを聴覚センサーで拾った瞬間、レイニアは空中で即座に魔術の追加コマンドを並列詠唱で入力した。
『シズル・セフィルス・ヒョウラ・レムナ・シャザム・シヴァル(属性・氷結の大精霊へ変更・刀身に纏え)!!』
ヒュガアアアァァァァァァッ!!
空間の温度が一気に絶対零度へと急降下する。
赤熱していた長大な勇者の剣の刀身が、一瞬にしてプラズマから『超低温の猛吹雪』の嵐を纏った氷の刃へとその性質を完全に反転させた。
「「『魔王! その傲慢な絶望、屑鉄(スクラップ)に変えてやる!!』」」
ヤマトとレイニア。
二つの魂が重なり合った、気合一閃の絶叫。
「「『ちぃぇぇぇぇええええすとおおおおおおおおッッ!!!!』」」
ズバァァァァァァァァァァンッッ!!!
ヤマトの巨体が空中で鋭く旋回し、超長大な氷結の剣が、膨れ上がっていた鉄鼠の球体を、オヅマの音波の箱ごと見事に真っ二つに一刀両断した。
凄まじい斬撃音が響き。
球体が両断されたその『断面』から、すべての熱量を根こそぎ奪い去る極寒の魔力が、ウイルスのような速度で球体全体を侵食し始めた。
『ぎ、ぎ――きっ、ぎ、ぎぃぃ……ぃぃ』
斬撃から逃れ、球体の最も遠い位置にいた鉄鼠の残骸が、逃げ出そうと震える骨の体を外へと伸ばす。
しかし、超高速で広がる白銀の冷気が、その指先に埋め込まれた紫色の炸裂晶を起爆(点火)させる間すら与えず、一瞬にして、文字通り『残さずすべて』をカチコチの氷塊へと凍り尽くしてしまった。
ピキィィィンッ……!!
熱も、悪意も、魔王の呪詛さえも。
すべてが絶対零度の氷に閉じ込められ、完全なる静寂が地底湖を包み込んだ。
「っはぁ……! はぁ……! もう、限界ッ!!」
ガクンッ。
数秒間、中空に漂っていた巨大な氷の半球。
それを支えていた『ハウルウォール』の出力を維持しきれなくなり、ステージの上のオヅマが息を切らせて両膝を突いた。
見えない箱の支えを失った、二つの巨大な氷の塊は。
魔王の怨念ごと完全に量子脳を死滅させた鉄鼠の群れを閉じ込めたまま——
ズゴォォォォンッ!!
と、凄まじい水柱を上げて地底湖へと落下した。
そして、ブクブクと大量の泡を立てながら。
平和を取り戻した暗く冷たい湖底の底へと、静かに、静かに沈んでいったのであった。
「凄え……っ」
氷塊となった巨大な鉄鼠の群れが、地底湖の底へと沈んでいく様を見届けながら。
目を見開いてその光景を見上げていたベンザイアのMMSは、腰に手を当てて、深い深いため息をついた。
「あぁ、あれがアタシたちのご主人様(姫様)だ」
へへ……っと、誇らしげなうすら笑いを浮かべ、自慢げに仁王立ちするのは筋肉メイドのローラだ。
「色々と突っ込みたいけど、ごめん。もう、限っ……界……」
ふらっ、と。
ベンザイアのMMSが、糸の切れた操り人形のように仰向けにふらつき、冷たい石畳へと倒れ込もうとした。
「おっと……!」
ローラが即座に踏み込み、倒れゆくベンザイアの背中をその太い腕でガシッと受け止める。
MMSとはいえ、同じ背丈の一般的な人間の少女に比べて、その質量(体重)は優に2.4倍はあるはずのベンザイアだが。
ローラの常人離れした筋肉であれば、その重さを片腕で支えるのは赤子の手をひねるより余裕だった。
腕の中のベンザイアの額には、滝のような冷や汗が浮かび、「ふぅ、ふぅ」と呼吸も荒い。
MMSには傷一つないが、その精神リンクの先――大破した巨大な本体の左脚から伝わる凄まじい激痛に、彼女は戦線の維持のためにギリギリまで無理をして耐え抜いていたのだ。
「よくやったよ、ベッチー。少し休んでな」
「……ああ。わりぃ、筋肉メイド……」
ズドォォォォンッ!!
二人の傍らに、空中の氷結を終えたヤマト(勇者合体状態)が、プラズマバーニアの青い炎を吹かして重々しく降り立った。
ヤマトはMMSのベンザイアを一瞥すると、そのままスタスタと、爆発で装甲が剥がれ落ち、冷却オイルをダクダクと流してスクラップ化しているベンザイアの『本体の左脚』へと歩み寄った。
そして、その巨大な鋼の指先を、ひしゃげたフレームへと無造作に向ける。
パッ、バチチチチッ!!
「痛(い゛)ぃぃっっ!!?」
ヤマトの指先から、修復の魔術と霊子が混ざり合った強力なスパークが放たれた瞬間。
ローラに支えられていたベンザイアのMMSが、まるで電気ショックを受けたカエルのように短い悲鳴を上げてビクンッ!と跳び上がり、涙が飛び散った。
しかし、その痛みに反比例するように。ベンザイアの本体の千切れた左脚は、ガチャッ、ギャコッ、シャキキキキキッ……ガコン!と、目にも留まらぬ速度で金属細胞を自己増殖させ、急速に修復し、瞬く間に元通りの頑強な赤い装甲の形を取り戻していったのだ。
「~~~ッッ!! っく、はっ、はぁっ……旦那ぁ! 治すなら治すって、先に言ってくれよぉ! これ、重傷であればある程、細胞が強制結合してすっげえ痛いんだから……っ!」
激痛のあまり涙目で悶えきった末、涙でぐしゃぐしゃになったベンザイアが恨めしそうにヤマトを睨んで訴える。
だが、ヤマトは悪びれる様子もなく、極めて真面目な声で正論を返した。
「すまないが、我慢してくれ。ここは金属生命体(魔物)も住まう過酷な地下環境だ。傷口から、我々の駆動系にも有害な菌やウイルスが侵入・感染しないという可能性もないからな」
「ぐぅっ……」
司令官としての身も蓋もない真っ当すぎる正論に、ベンザイアはぐうの音も出ず、項垂れるしかなかった。
――しかし。
そんな、死闘を乗り越えた勇者たちの少し和やかになった空気も、ほんの束の間のことでしかなかった。
『く、く、く、く、く……は、は、は……』
突如として。
地の底から響くような、怨念が泥のようにこびりついた恐ろしい笑い声が空間を震わせた。
「……ッ!」
その場にいたヤマトたち、そして大族長ボリーをはじめとするドワーフたちは、一斉に戦慄して地底湖の湖面を振り返った。
氷塊が沈み、静寂を取り戻していたはずの泉の底から、ポコポコと不気味な泡が湧き上がり。
やがて、水面を突き破って『深紅色の濃密な瘴気』が、まるで巨大な間欠泉のように立ち昇ってきたのだ。
その瘴気の渦は、空中でうねり、やがて悍ましい『巨大な人の顔』のような輪郭を形作って、再び喋り出した。
『ソレガ、貴様ノ「魔法」ノ使イ道カ……。今代ノ勇者ヨ』
「……!」
瘴気の顔が、ヤマトを真っ直ぐに見下ろす。
『温イナ……。他者ノタメニ、他者ノ願イヲ叶エルタメニ、己ガ願イヲ浪費シ、加護トシテ分ケ与エル。ソレデ、其ノ力ノ持ツ全体ノ何割ヲ喪失シタ?』
ヤマトが仲間たちに力や癒しを与える『勇者のカテドラル』の力を、心底見下し、嘲るような声。
その侮蔑に対し、ヤマトは一歩前に出て、大剣を構え直しながら毅然として答えた。
「これは我々の惑星意思が選出した『勇者のカテドラル』の力だ! 貴様の言う『魔法』というものがこの世界で何であれ、私がこの力をどう使おうと、貴様に謂れを言われる筋合いはない!」
瘴気の顔が、ぐにゃりと歪で邪悪な笑みの形に歪む。
『――ダガ、ソノ物言イ……。「使イ方ガウマイ者」モ、過去ニ存在シテイタヨウダナ。お前ハ、ソノ者ヲ知リ、劣等感ヲ抱イテイタな?』
「――っ!!」
その瘴気から発せられた鋭い指摘に、ヤマトは呼吸を忘れ、言葉を完全に詰まらせた。
『カテドラル』の持つ強大な願望機の力を、仲間のため、星を護るために『分け与えて』使ったヤマト。
対して、その力をすべて自らの欲望と進化のために独占し、圧倒的な暴君として君臨した『皇帝エイト』。
あの親友が至った絶対的な強さと、己の無力さの差は、誰よりもヤマト自身が痛いほどに理解し、絶望した過去だった。
魔王の言葉は、ヤマトの魂の奥底に眠るトラウマを、冷たい刃で的確に抉り出していた。
「……お前が、魔王か!」
それでも。動揺を気合いでねじ伏せ、ヤマトは剣先を瘴気の顔へと突きつけた。
「名を名乗れ! 生命を弄ぶ、唾棄すべき悪意の根源よ!」
『これ以上、好きにはさせませんわ!』
ヤマトに同調し、内部のレイニアも怒りの声を上げる。
ヤマトは自らのスタンスを崩すわけにはいかない。
「お前の名と共に! その傲慢な思想のすべてを、ここで否定し尽くしてくれる!」
ヤマトの勇ましい宣言に、瘴気の渦から、大空洞を揺るがすほどの狂った嘲笑が響き渡った。
『――我コソ魔王! 魔ナルモノ達ノ王! 我コソガ、生命ニ対スル「絶対否定者」デアル!!』
深紅の顔が、怒りと憎悪に満ちて膨れ上がる。
『記憶スルガイイ、何モ知ラヌ異界ノ勇者ヨ!
我ガ名ハ、魔王「ベアトテム」!』
その名が発せられた瞬間、周囲の発光粘菌の光が一斉に青ざめたように明滅した。
魔王の放つ圧倒的な殺意に、害意に、絶望に、空間そのものが恐怖しているかのように。
『生キトシ生ケル総テノ生命ヲ否定スルモノ。ソレハ――貴様タチ、常世ヨリ渡リシひるこノ民トテ例外デハナイ!!』
「……レイニア!」
『はいっ!』
魔王の絶対的な殺意の宣告。
それに対し、ヤマトは間髪入れずに相棒の符丁を呼んだ。
バチィッ!!
霊子と魔力の激しい光がヤマトの巨体から迸り、構えた勇者の剣の刀身が、すべてを断ち斬るほどの眩い輝きを増す。
「「ォォォォおおおおおッ!!」」
二人の声が重なり、対象の概念そのものすら否定する絶技の斬撃が、空中に浮かぶ深紅の瘴気の顔に対して十字に振るわれた。
ズバァァァァァァァンッ!!
光の刃が、魔王の顔を完璧に両断した。
――しかし。
その瞬間、瘴気の顔は実体を持たず、急激に霧散して散り散りになり、勇者の剣は空しく風を切るのみだった。
「チッ……!」
『逃げられましたわ!』
全く手応えのない空振りの感触に、ヤマトもレイニアも同時に忌々しげに舌打ちをする。
霧散していく赤い瘴気の中から、ベアトテムの冷酷な嘲りが、残響となって響いた。
『足掻ケ。――抵抗モ、最早気ニハ留メナイ』
風に流され、消えゆく輪郭。
『コノ惑星ハ死ヌ。死ニ尽クス。我ガ悠久ノ怨念ハ、尽クスコト能ワズ……』
風に溶けて消えていくその悍ましい呪詛の言葉と共に。
地底湖を満たしていた深紅の瘴気と、魔王ベアトテムの圧倒的な威圧の気配は……完全に、その場から消失したのだった。
「……っ、はぁぁ……」
完全なる脅威が去り、再び静けさを取り戻した地底湖に、ヤマトの深く、安堵の入り混じった吐息が漏れた。
極限まで張り詰めていた緊張の糸が切れ、鋼の勇者がその巨大な剣を下ろした瞬間。
ガシュゥゥゥン……!
ヤマトの全身から、レイニアの機龍を構成していたトリコロールカラーの鐵の鎧が、まるで逆立つ鱗のように次々と剥がれていく。
それらは空中で淡い光の粒となって、亜空間(ストレージ)へと静かに消えていった。
そして、装甲がパージされ露出したヤマトの胸部――その中央で激しく脈打っていた緑に輝く宝玉——カテドラルの顕現部品から、スッと、熱を帯びた光が抜けていく。
「ぅあ……っ」
ビクン!と。
極限の魔力同調が解除され、魂に挿入されていたレイニアが抜け落ちる甘い脱力感に、ヤマトが身を震わせる。
宝玉から抜け出た光の繭が空中でパチンと弾け破け、そこから、魔力を使い果たして意識を失いかけているレイニアの華奢な姿が空中に現れた。
――しかし、合体の際に纏っていた彼女の服や装甲は、魔力還元されてすべて消失しており、その身体は一糸まとわぬ『全裸』の状態であった。
ハッとして、その事実に気づいたヤマト。
「……っ!」
ヤマトは誰よりも早く、その目にも留まらぬ速度で巨大な両手を差し伸べ、空中に投げ出されたレイニアの小さな身体を、周囲の視線から完全に覆い隠すようにして優しく包み込んだ。
「わぷっ……!」
突然、真っ暗で温かい鋼の空間に閉じ込められ、レイニアは驚きの声を上げる。
だが、すぐにその暗いヤマトの手の中で、自分の身に風が直接当たっている感覚――そういえば自分は今、全裸であったという事実に気づき、カァッ!と顔を茹でダコのように真っ赤に染め上げた。
「あ、ありがとうございますわ……ヤマト」
「いいさ。今回間に合ったのも、君のおかげだレイニア……」
そっと手の中を覗き込むようにして、戦闘マスクに覆われたヤマトの大きなオッドアイの瞳が、ふ……と優しく微笑んで細くなったのが見えた。
その真っ直ぐで誠実な眼差しに、レイニアの胸がドクンと大きく高鳴る。
「姫様! よくやりましたねぇ!」
そこへ、タッタッタッと筋肉メイドのローラが駆け寄ってきた。
彼女は一足でヤマトの腕にまで跳躍すると、自分のエプロンのポケットから、イザベラから非常用と渡されていた厚手で大きなローブを素早く取り出すと、ヤマトの巨大な手の隙間からひょいと差し入れた。
「助かりますわ、ローラ……っ」
暗がりの中で急いでローブをすっぽりと被り、ようやく人前に出られる格好になったレイニアが、ヤマトの手の上からひょっこりと顔を出す。
その瞬間。
『うおおおおおおおおっ!!』
『助かった! 勇者様だ! すげえ強さだったぞ!』
『赤い車のお嬢ちゃんも、よくあんな重傷で最後まで護ってくれた!』
地底湖の各所から、瓦礫の陰から、そして避難経路から。
生き残ったドワーフたちの、割れんばかりの大歓声と称賛の声が、ヤマトとベンザイア、そしてレイニアたちに向けて巻き起こったのだ。
金属の義体を打ち鳴らす音、歓喜の口笛。それは先ほどの魔王の呪詛を完全に掻き消すほどの、圧倒的な生のエネルギーに満ちた嵐だった。
「へっ……まぁ、これくらい朝飯前ってやつだぜ!」
痛む足を庇いながらも、ベンザイアのMMSが満更でもなさそうにピースサインを掲げる。
『お姉ちゃん!!』
『おねーちゃぁん! かっこよかったよぉーっ!!』
そして、歓声の矛先は勇者たちだけではなかった。
孫のアニーとクレナイが、大族長ボリーの腕の中から飛び出し、ステージの瓦礫の上に座り込んでいたアメノオヅマの元へと駆け寄っていく。
『『『おづちー! おづちー! おづちー!!』』』
ドワーフの民衆たちからも、最大の危機をその歌声(音波防壁)で救ってくれた彼らの絶対的アイドル――オヅマへの、熱狂的なアンコールの嵐が沸き起こり始めたのだ。
「……ふふっ。まったく、世話の焼けるファンたちだねぇ」
オヅマは、ボロボロになったフリフリのアイドル衣装の埃をパンパンと払い、すっと立ち上がった。
そして、コホン、とわざとらしく、しかし心底嬉しそうに咳払いを一つすると。
再び、持ち前の完璧なアイドルの笑顔(スマイル)を顔に張り付けた。
「ぃよーし! それじゃあ、今日は特別に『追加ライブ』、行っちゃうかーっ☆」
オヅマの甘ったるくも力強い声が、地底湖の隅々にまで響き渡る。
「みんな! 怪我人の手当てと後片付けしながら、しっかり聞いてってねーっ!!」
『『『うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっっ!!』』』
悲惨な被害を出しながらも、決して絶望に屈しないドワーフたちと。
それを護り抜いた異界の勇者たちの前で。
大盛況のコール&レスポンスが、復興の狼煙のように、地底の闇を明るく力強く照らし出しながらキメられるのだった。
* * *
絶望的な鉄鼠による襲撃の爪痕が、ドワーフたちの不屈のバイタリティによってある程度片付き始めた頃。
「ふぅーっ、疲れたぁ♡」
カタルガダル駅の居住区の片隅。
急遽開かれた熱狂のアンコールライブを無事に終えたアメノオヅマは、MMSのフリフリのアイドル姿のまま、トラクターに変身した巨大な自身の本体にちょこんと腰かけてご機嫌に足を揺らしていた。
その手には、先ほどまでストローでちゅるちゅると啜っていた、冷たい蟻蜜ジュースのグラスが握られている。
その少し向こう、広場の中央では。
「ですから! この魔術式による外敵検知システムを鉄道ネットワークの要所に組み込めば、今回のような通信ケーブルの物理的切断も事前に防ぐことが可能ですわ!」
『おおっ! なるほど、この「ルーン交流干渉」という回路構成、実に無駄がなくて美しい! これならレール構造の多層化と並行して進められそうだわい!』
エンジンの冷却を終え、マギア・ラージ・キャリアーと共に駅へと戻って来たモルガンが、目をキラキラさせたドワーフの技術者たちの輪の中にすっかり混ざり込んでいた。
彼女は身振り手振りで、地下鉄レール構造の多層化と、魔術を用いた通信・外敵検知システムの画期的な改良案を彼らに熱弁し、技術者たちもまた彼女の知識を貪欲に吸収しようと盛り上がっている。
「ふふっ。モルガンったら、すっかり意気投合していますわね」
その光景を少し離れた場所から見守っていたレイニアが、微笑ましそうに呟いた。
魔王という、生命を否定する共通の強大な敵を前にして。
人間とドワーフという種族の壁や、技術的優位感などを気にしている余裕はないということを、両者は今回の激戦を通じて痛いほどによく理解し合えた証拠だった。
「地上の姫騎士よ。改めて、礼を言わせてくれ」
ふと、重々しい合成音声と共に、レイニアの背後から大族長ボリーが歩み寄ってきた。
体長3メートルを超える類人猿型の巨体が、レイニアの前でドスンと片膝を突き、深々と、その厳つい頭を垂れる。
「本当に、世話になった。
あんたたちがあの時、囮になって魔物を引き付けてくれなきゃ……初手でこの街に住むドワーフの全員が、いやこの地下大坑道全体が、あの忌々しい鼠の餌か、爆発の消し炭になるところだった」
ボリーの声には、大国の主としての面子を捨てた、心からの感謝と震えが混ざっていた。
「この多大なる恩義と礼は、俺たちドワーフ族の総意として、いずれ必ず返すぜ。地上の姫よ」
「頭を上げてくださいませ、大族長殿」
ボリーが頭を下げている前で、レイニアもまた、王族の姫としてではなく、一人の騎士として恭しく頭を下げた。
「わたくしたち騎士は、無辜の民を護る事こそが第一の使命。相手の種族や国に関わらず、当たり前の責務を果たしたまでですわ」
その真っ直ぐで力強いレイニアの言葉に、ボリーは深く頷き、ゆっくりと立ち上がった。
そして、ボリーは伏し目がちに視線をずらし、トラクターの上でジュースを飲んでいるオヅマの方を見た。
「オヅマ。……あんたにも、本当に迷惑をかけた」
ボリーは、まるで叱られるのを待つ不出来な息子のように、力なく肩を落とした。
「せっかく、あんたがヤマトたちに『戦士を辞める』って言って、平和な道を選んだばっかりだったのに。
俺が不甲斐ねえばかりに、あんな最前線で、アニーとクレナイの命を護らせちまった……!
すまねぇ!」
頭を下げる大族長の姿を前に。
オヅマは、「ずずーっ」と残っていた蟻蜜ジュースをストローで一気に飲み切ると、コトン、とグラスをトラクターの装甲の上に置いた。
そして、ふわりと地面に飛び降りると、巨体を丸めてうなだれるボリーの目の前まで歩み寄り。
――ピンッ。
「ぉあっ!?」
オヅマは、小さな白い指で、ボリーの毛むくじゃらの額(装甲)に、容赦のない痛烈な『デコピン』を食らわせた。
「痛っ……! な、何すんだ!」
「ボリー君が謝る事じゃないでしょ?」
額を押さえて涙目になるボリーを見上げて、オヅマは腰に手を当て、プクッと頬を膨らませた。
「私だって、覚悟がブレてたんだから、お互い様さ。……でも、おかげで今日、はっきりと理解できたよ」
オヅマの言葉から、少しずつアイドルの甘さが消え、かつて全軍を導いた深く穏やかな『老兵』の声色が滲み出る。
「私の戦いは……まだ、終わってないって事がね」
「オヅマ……」
ボリーをまるで手のかかる幼い弟のように叱る口調。そこから、穏やかで決意に満ちた声へと変わりながら。
オヅマはくるりと振り返り、少し離れた場所でその様子を見守っていたヤマトとベンザイアへと真っ直ぐに向き直った。
「私、変わって無かったよ。……今も昔も、元気に笑い回る『子供たち』が大好きだし。
そんな未来ある子供たちの命を理不尽に奪おうとする魔王のヤロウは……絶対に、許せない」
オヅマの赤い瞳の奥に、かつての『鋼の守護者』としての鋭い光が宿る。
「あんなのが存在する限り、この死後の世界で、安心してライブなんかできたもんじゃないからね?」
「……ッ! オヅマ、それじゃあ……!」
ヤマトが、頭部のアンテナをピーンと高くそびえ立たせ、期待と喜びで瞳を輝かせる。 オヅマは、そんなかつての部下(ヤマト)に向けて、パチンッと小気味良く指を鳴らし、アイドル然とした愛らしいウインクを飛ばした。
「そういうわけだからさ! 『最古の戦士』とか『鋼の守護者』みたいな厳ついのは卒業! 心機一転『若くて可愛い歌姫』って事で!
このアメノオヅマ、ネオンワンスと共に、魔王軍と戦うことを改めて誓わせてもらうねっ☆」
ビシッ!と、可愛い決めポーズと共に放たれた、頼もしすぎるオヅマの復帰宣言。
しかし。
「いや、いくらなんでも『若い』の部分には無理があるんじゃ……もがっ!?」
純粋な感動の空気をぶち壊すように、ベンザイアが脊髄反射で入れた致命的なツッコミ。
それを、隣にいたヤマトが目にも留まらぬ速度で巨大な手でガシッ!と物理的に防ぎ、ベンザイアの口を完全に塞ぎ込んだ。
「んんーっ!? むぐぅーっ!?」
「ベンザイア、言うな。そこは言うな……!」
ジタバタと暴れるベンザイアを必死に羽交い締めにしながら、ヤマトは冷や汗を流して歯を食いしばっていた。
その顔は、オヅマの復帰が心底嬉しい反面、自分自身も「若いは流石に無理があるだろ」とすっごくツッコミたくてツッコミたくてしょうがないという、複雑極まりない引き攣った表情を浮かべている。
「……なんか言ったぁ? そこの若造二人」
「「い、いえっ! 何でもありません! 大歓迎です歌姫オヅマ!!」」
オヅマの笑顔の奥にある恐ろしいプレッシャーに直面し、ヤマトとベンザイアは同時に直立不動で完璧な敬礼をキメた。
頼もしくも、相変わらず気まずくて騒がしい仲間たちの光景に、レイニアは思わず「ふふっ」と噴き出し、声を出して笑い転げた。
最強の老兵にして、最年長の歌姫。アメノオヅマの帰還。
こうして、一行の『ネオンワンス再結成』の旅路は、新たな戦力とドワーフたちとの固い絆を手に入れ、さらに賑やかに、そして力強く前へと進み始めたのであった。
次回予告
レオン「あー、あーっ、あ、え、い、う、え、お、あ、お、ギ、ゴ、ガ、ゴ、ゴ」
ヤマト「レオン、いつになくやる気じゃないか?」
レオン「わかるか?いやぁ次回は回想とはいえやっと本編で俺にまともなセリフが回ってくるからな」
ヤマト「あぁ、私達の出会いの話だものな……頑張ってくれ、私も応援してるから」
レオン「お前……良い女になったなぁ」
ヤマト「なぁっ、何でそんな事言うんだ!こんな所で!///」
レオン「へへへ」
ベンザイア「なんだこのバカップル……次回『暗躍と根回し』」
レイニア「行けっ、行けっ、、そのまま押し倒しあそばせっ(小声)」
レオン「オレの来世は何でこうなっちまったかなぁ……」