お久しぶりです。
今回のお話は、本来なら話の入り方を少し変えて本編の閑話辺りでやろうとしてたんですけど、その頃にはもう本編終わりそうだったので、ここでやることにしました。
多分ですが、何話か昔のお話をすることになると思いますので、ご了承ください。
それでは、どうぞ!
………マズイよなこれ。
最近の俺を取り巻く環境を何度も振り返ってみて、どう考えてもヤバい所しかないという事実にぶち当たり頭を悩ませている。
正直よく耐えれてるなと思う。最近だと……芦花と一緒に寝てた時はもう苦痛で仕方なかった。多分俺が8000年も生きてなかったら確実に罪を犯してた。それくらい今の状況はヤバい……一体俺はどうすれば……
現在、俺は冷静に、そしてクールに、自身が借り受けている百合IQ180の頭脳を活かす事でこの現状を打開できないか思考を繰り広げていた。
「一体、俺はどうすればいい……」
家で考えていると芦花とかたまに来る彩葉達に接触する恐れがあったので、俺は少し離れた公園に行き、ベンチに座って一人思考を繰り返していた。
「何をそこまで悩む必要があるんだ?君のことを求めてくれる子が居るのなら答えは一つだろう?そう、抱────」
「馬鹿野郎がぁぁぁ!!!!!」
アルスハリヤを近くにあったゴミ箱に投げた。中々どうしてホールインワンだな。コントロール良かったってことか?
と、いうか………不純異性交遊って単語を知らねえのかこのカスが!!!冷静に考えなくてもそれだけは絶対ねえんだよ!!!
「だがしかしだヒーロ君。よくよく考えてみたまえ。そもそもこの状況を招いたのは他ならない君だろう?」
即座に復帰し、俺の横でそう語りかけるアルスハリヤ。
「………………」
その通り過ぎて何も言えん……クソッ……!!俺はどうすれ、ば………
「あ」
そうだ、こういう時に
そうと決まれば連絡だ!!
思い立ったが吉日という事で、俺は
そして、数日後。
「……成程、思ったより事態は深刻みたいだな。あんまり彩葉の側に居てやれなかったのがそれを知れなかった原因とは言え………」
「そうなんだよな……何とかお前から説得はできねえのか?
「………うーん、どうしたもんか」
そう、俺は現在、帝に会って色々相談している所だ。なんでも、俺に一度リアルで会ってみたいと言われていたのを思い出したので『この際一回会ってみて色々話して解決したらいいんじゃね?』と咄嗟に思いつき、彩葉達が分からないような場所で会議している。
「そもそもお前が一年位放置してたのが原因ではあるしな……」
「……まあ、それはそうだなぁ……」
結局の所、俺が瀕死にならずに即座に地球に帰還できればそれで良かったが、隕石なんてもん斬った事は当然なかったから、リソースの予想ができなかったんだよなぁ……
けど、かぐやが『もと光る竹』に乗らなかった事でワンチャン地球に隕石が降ってくるかもしれん危険性を鑑みればああするしかなかったのもまた事実………ではあるが、こんな状況になるのは想定外だった……
結局、俺のすべき行動は何だったんだろうな……と考えていると───
「てか、それこそお前の経験値で何とかならねえのか?伊達で数千年生きてるわけじゃねえんだろ?」
そう帝に言われた。
「あ、確かに」
言われてみればそうかもな、過去の俺の経験から活かせるものがあるかもしれん。
「なら、俺の昔話でもするか。丁度よくお前は俺のことを知りたがってたし、うってつけだろ?」
俺もそうやって色々思い返す事で、何か得られるものがあるかもしれんしな。やる価値はあるだろう。
「良いなソレ!聞かせてくれよ。幾ら考えても解決方法に検討すらつかねえし……解決したいところではあるからな」
「だよな?コレどう考えても不健全だよな?」
俺の周りには何故かこの現状を良しとする奴らしか居ないから、実は俺がおかしいのかと最近思い始めてたんだが……俺の考えは異端ではなさそうで安心してる。
「そりゃまあ、そうだな……というか、よく欲望に負けなかったな。いや、彩葉に欲望を解放してたら俺がお前を殺すしかなかったんだが……」
「安心してくれ。何があってもそこだけは越えないとは誓う」
百合の守護者として、そして人として、そこだけは絶対に踏み越えたらダメなラインだと理解できているからな………だが、だ。もしその時が来るなら……出来るだけ死なないように罰し、最大限の苦痛を与えてくれ。
最悪の事態を想定していると、帝が俺に話しかけてきた。
「了解。んじゃ、話聞かせてくれよ」
「そうだな……じゃあ、割と昔の話か、ここ数年前……まあ、最近の話。どっちがいい?」
「最近の話してくれよ。そうすりゃ、お前と彩葉達がどうやって関わってたかも知れるしな」
「オーダー承った。……そうだな、あれは───」
◯
コレは、俺が高校一年くらいの時……冬くらいだったか?まあソレくらいの話だ。その頃には俺はもう彩葉とは友達になってたし、芦花や諌山とは言わずもがな仲は良かった。まあ、当時の俺はせいぜい友達ぐらいの関係で何とか終わると思ってたんだけどな……
「いや……コレマズくね?」
家でふと我に帰り、もうそろそろ期末テストがあったよなと思い出し、何日にあるかを確認していたが……
「嘘だろ?もうテスト一週間前?何の冗談だよ………」
カレンダーに書き込まれている日から何度逆算しても、俺に残された時間は一週間しかないという事実が俺に襲いかかった。
……おかしいな、確かに俺の記憶ではもっと先だった筈……何故もう目前まで迫ってきてるんだ?素晴らしき百合が見れるアニメやゲームをしていた事が原因ではないだろうしな……
「……どうしたもんか……」
俺は正直、前世の頃は高校辺りから学校に行けなくなったのもあって、転生者が割と持ってる経験値が全然ない。だから当然高校生はほぼ初見だし、百合に関しては頭が回ると思ってるんだが、勉強は全然できねえんだよな………
なら───
「よし、酒寄に頼むか!」
正直コレしかない。アイツは勉強マジで頑張ってるから当然のように頭がいい。だから、当然教え方も上手い。………頑張りすぎだとは思うんだがな。
だが、俺や綾紬、諌山と一緒に勉強会でもすれば多少はアイツの事も制止できる。妨害したいわけじゃないが……コレでちょっとでも疲労回復に繋がるならそれが一番だ。
俺の個人的な理由と、酒寄の疲労回復、半々くらいの割合で俺は酒寄に連絡してみた。
『酒寄助けてくれ。テスト死ぬ未来しか見えねえんだよ』
………まあ、今頃勉強かバイトしてるだろうから、返信は来ねえか?
なんて事を考えてると────
『いっつもそれ言ってないアンタ?』
「おっ」
思ったより返信早かったな。
『珍しくお早い返信じゃねえか。勉強はもう終わったのか?』
『一応ね。てかそんな事より、アンタまたテスト勉強してなかったの?もう一週間前だよ?』
『本当にその通りです。すみませんマジで』
いや違うんですよ。やりたいことが自由にできるって感覚には慣れたんだが、それはそれとしてこの快感から抜け出せねえんだよ。分かってくれ。
『はぁ……それで?私にどうして欲しい訳?』
『勉強教えてくれ頼む。このままじゃ普通に成績で欠点取る』
………頼むぜ?ここで俺の未来がかかってくる。留年なんてしたくねえんだよ。
尚、未来のコイツは月に行って一年ほど経過してから地球に帰っているため、少し先で留年すること自体はもう決定事項である。哀れなり。
祈りながらスマホを握り、少し時間が経過した時──
『………分かったわよ。けど、今度こそちゃんと勉強すること!!いい!?』
と、酒寄は慈悲を授けてくれた。マジでありがてえ………
『了解です先生!!』
『調子に乗るなー!!!』
翌日、俺は酒寄に勉強を教えてもらう事になった。因みに諌山と綾紬は今回のテストは珍しく大丈夫らしいので、俺と酒寄で対面授業をしていた。
酒寄の部屋でな!!何でだよ!!!???
「なあ、何で酒寄の部屋なんだ?図書館とかで良かっただろ?」
百合とか関係なくお兄さん本気で心配になってきたんだけど大丈夫?こんなポンポン男の子を自分の部屋に連れてくるのはダメなんだよ?勉強をし過ぎて常識が削がれていったのか?
「って痛え!?なんで足踏むんだよ!?」
机の下に置いている足を軽く踏まれ、痛くはなかったけど反射で痛いって言ってしまった。
「なんか変な事考えてたでしょ」
エスパーかコイツ?あらゆる分野に才能を伸ばすだけでは飽き足らず、とうとう人類が到達できない地点まで行こうとしてるのか………?
「…………いやそれはさておきだ、何度も言うが、何で酒寄の部屋で勉強するんだよ?図書館とかそこら辺でよかっただろ?」
「え?何でって、勉強から逃さないためだけど?ここなら逃げるとかできないじゃん」
「………………」
それに、逃げ出せたとしてもヒイロの家すぐ近くだしね。と割とマジで怖い事を言ってくる酒寄。
「だって、こうでもしないとヒイロ勉強しないし、いっつも百合百合言ってテスト前に死にそうになってるじゃん」
「………その通りです」
困ったな、正直本当の事だから反論出来ん。テスト前になっても百合を鑑賞しようと体が動くからな。最早そういう仕様になってるのかもしれん。
「はい、それじゃあ勉強始めていくよー」
「了解です先生!」
「先生じゃないっての!!」
「………何で数学って、『数』って入ってる癖して使うのがXとかYなんだ……?文字じゃねえかよソレ」
何ならsin、cosとかtanとかもあるからな………終わりだよマジで。
「いや、それは文字って言うか、分からない数値を仮定するためにあるだけだから。ほら、無駄口叩かない」
「………分かりません!!」
俺がギブアップと伝えると、酒寄が俺の解いている問題を覗き込んできた。
「えーっと……あーコレはね、正弦定理を使って……こういう風にすれば良いんだよ」
「……あ、言われてみれば?」
確かにそうだな。図で表してもらえると分かりやすい。頭の中で考え過ぎてたのか………
えーっと?この辺とこの角が対応してるからこうすれば………よし、出来た。
「何とか解けたわー……ありがとなマジで」
「そりゃどうも。………まあ、どの問題にも言える事だけど、類題をちゃんと解けるようになったら定期テストでも対応できる問題の数が増えるから、しっかり復習する事。いい?」
「りょうかーい」
「………あ゛ー……疲れた…」
今日が休日だというのもあって昼頃から続けていたこの勉強も、休憩を少し挟みながらも何だかんだで四時間ほどは続けていた。
ここまで長時間勉強することはまあないので相当苦痛に感じていた。が、それはそれとして確実に勉強にはなったので良かったと思った。
「はい、お疲れ様」
「お、悪いな」
「いいのよコレくらい。けど、食べ過ぎたら晩御飯食べれなくなるだろうから少なめにしといた」
「お前は俺のオカンかよ………」
酒寄が俺にくれたのはコンビニで売っているようなショートケーキ。どうやら俺が何かにつけて奢ろうとしたりするのに気が付いたらしく、少しでも抵抗しようと考えた結果、甘い物をたまに俺にくれるようになったそうだ。
にしても………
「うーん、となるとコンビニに売ってるアイスが急に食べたくなってきたな……」
「唐突だなオイ」
まあ酒寄の言ってることも分かるが……食べたいと思ったから仕方ねえな。
コンビニに売ってる甘い物は総じて美味いと俺は思ってる。え?アイスはどこで買おうがそんな変わらねえって?うるせえ気分だよ気分。俺は常に
「まあ良いじゃねえか。自分のしたいように動いた方がきっと楽しいぜ?」
「………そっか」
どこか痛々しい表情で微笑みながら、酒寄は俺にそう言う。
……そうだな。差し出がましいとは思うが、伝えておくとしよう。
「なあ酒寄。俺が思うに、人が生きる上で大事な要素は結構ある。その中でも俺が割と大事だって思うことはな───逃げる事だ」
「逃げる、事?」
そうだ。
「いいか?逃げるってのは恥じゃねえ。本当にやりたい事、やらないといけない事に突っ走るために助走しようと距離を取ってるんだよ」
「…………」
「本当に駄目なのは、逃げる事が目的になってて、そこからどうするかがずっと決まらない時だ。けどまあ、それも仕方ねえとは思うけどな」
頑張って、頑張って、それで欲しかった結果が得られなかったらそうなってしまうのも不思議じゃ無い。本当に辛い時も、そうなってしまうのも否定はできない。難しい所だ。
「俺の場合なら……実はここ最近、見事に百合を破壊しちまってな…正直この世の終わりだと思った」
ライバーになって以来恐らく俺が一番後悔したが、人道的に正しかったのでなんとも言えない事件だ。
「だがまあ、そんな俺の都合関係なく時間は過ぎていくわけだ。終わってるよなマジで」
だからまあ───
「一旦現実逃避はしたよな。そんで『次は絶対やらかさねえようにしねえと……!!』って全力で自分を鼓舞してた」
「……まあ、ヒイロらしいよね」
「だろ?」
……いや、冷静に考えると失敗する事が俺っぽいって普通に酷くないか?泣くぞ?心で。
心の中で愚痴りながら、俺は言葉を続ける。
「コレも言わば逃げだ。『俺が失敗するかもしれない』っていう現実から、被害妄想から逃げてるんだよ」
………話が長くなったな。要するに、だ───
「酒寄。『何をすべきか』って考えから、自分を縛ってるものから一旦逃げてみろよ。そしたら、意外と周りが広く見えるぜ?」
「……でも、そんなの───」
「ただの我儘だろって?良いじゃねえか。俺らはまだ学生、ガキだぜ?やりたい事やりたいって言って、やりたく無いことから逃げて何が悪いんだよ」
そう、俺らは子供で、大人に友達に迷惑をかけて良いんだ。人は一人じゃ生きていけない。だからこそ、誰かを頼ったり、迷惑をかけたりする。限度はあるが、そんなもんだ。そこに罪悪感を感じる必要はそこまで無い。
「そんで、逃げて、逃げて逃げて逃げて………そろそろ頑張れるかなって思ったら、振り返って立ち向かったらいい。その道中で、やりたい事をゆっくり見つけていったら良いんだよ」
まあ、俺たちの事を頼って欲しい所ではあるが、それはまた何回でも言い聞かせるとして………取り敢えず今は、コイツが抱え込んでる物を少しでも軽くしたい。
「…………出来る、かな?私、そんな風に生きた事無かったから」
戸惑いながら、坂寄は俺にそう告げる。
「出来るに決まってんだろ?何せ俺がそうだからな。今はできなくても良い。だからいつか、お前を変えてくれるような事があれば───そこから変われるさ」
きっとそれは、いつか月からやってくるワガママプリンセスがやってくれる。だから俺に出来る事は、少しでもこいつに友達として寄り添うことだ。
あわよくば、それが少しでもコイツの救いになってくれたなら御の字だな。
ん?あ。
「そうだ、酒寄。もう一つだけ伝えておきたい事がある」
「?」
きっと、お前はそんな簡単には変われない。だから、とりあえず伝えとくとしよう。
「さっきも言ったが、逃げ続けるのはどうせお前が嫌な事だろ?何せ負けず嫌いというか、意地っ張りだしな」
「……まあ?」
少し首を傾げながらそう言う酒寄。まあって言うか確実にそうだと思うんだが………
「だから……嫌な事、物から逃げる時、逃げたい時は『いつか絶対ぶっ飛ばしてやるから覚えとけよ!?』ぐらいの気持ちで逃げたら良いんじゃないか?『倍返ししてやる!!』的な感じでな」
ポカンとした表情になった酒寄。そして、少し笑いながらも──
「ふふっ、何それ。逃げろって言ったりやり返してやれって言ったり、変なやつやな」
「……ん?そんな喋り方だったか?お前?」
「うっさいねん」
「ええ………」
少し表情が和らいだ酒寄。
………頑張れよ。いつか、お前が盛大に母親にかます所を期待して待ってる。
って言っても、俺にそこまで詳しい事情はまだ伝えられてないから、こんな事は言えないがな……
そんな事を考えながら、色んな事を話していると、時間はあっという間に過ぎ───
「さて、そんじゃ俺はそろそろ帰るか。アイスも食べたいしな」
「……うん。それじゃ、また」
「おう!……まあ、俺の言葉も話半分に聞いとけよ?大事なのは、お前がこれを聞いて、どう考えて、何がしたいかだ。それは今決めなくても良いが……いつか決まる事を、俺は祈ってる。んじゃ、またなー!!」
そう言い、俺は酒寄の家を後にしたのだった。
◯
「とまあ、そんな訳で彩葉に貰ったショートケーキを家の冷蔵庫に入れて、コンビニに行ったって感じだな」
懐かしいな、あれももう数年前の話になるのか……
「成程なぁ……そんな事までしてくれてたのか、ありがとう」
感謝の意を込めてそう言ってくる帝。
「気にすんなよ。友達だったからこうしたまでだ。尤も……今はどういう関係って言ったら良いのか分かんねえけどな」
それに、結局これがどこまでアイツの心に残ったのかは俺には分からない。あの時に俺が言いたかった事を言っただけだからな。ただのエゴだ。
「いや……それはきっと、兄貴である俺がやらないといけなかった。だから──本当に、ありがとう」
「……ああ」
いやー過去を振り返れて良かったわー、これで……あれ?
「ちょっと待て?よくよく考えたらこれ問題解決に何一つ関係なくね?」
「あ、言われてみれば確かにそうだな……」
だよな?なんで過去を振り返ってどう現状を打開するかって話をしようとしてた筈なのに、そこまで関係ない所振り返ったんだ俺?シンプルに馬鹿すぎる………!!
「しくじったなぁ……」
「いやまあ、時間はまだある訳だし他の話すりゃいいんじゃねえか?彩葉の話もっと聞きたいしな」
「……まあ、それもそうか」
「他にどんな話あるか私も気になってきたかも」
まだ時間はある。ゆっくり話を───は?
「………なあ帝。俺、幻聴が聞こえたんだが、お前はどうだ……?」
「奇遇だな、俺もだ。何故か妹の声が聞こえた様な……」
「いや幻聴なんかじゃないから」
そう俺の真後ろから聞こえた瞬間、思わず後ろを振り返ってみると──彩葉がそこにいた。
「………おいおいマジかよ。一応バレない様に割と穴場の喫茶店調べたんだけどなぁ……いつからだ?」
「知ってた?ヤチヨって監視カメラハッキング出来るんだよ?あと、いつからって質問だけど……割とさっきからだね。そういえばそんな事あったなぁ……ってなってた」
ええ……頭おかしいだろマジで。そんな事出来るんだったらその内日本、いや世界征服出来るって。
ヤチヨ、引いては月人の恐ろしさを再確認していた俺。そして、思わず固まっていた俺たちに───
「それで?他に話ってないの?ヒイロの話でも聞いて昔を振り返ってみたいんだよね」
そう彩葉が俺に伝えてきた。
……どうやら、この昔話をしていた目的までは知らねえみたいだな。なら、それでいい。
「……なら、次は───」
○
きっと、
まあ、お母さんに縛られてた私にはそんな簡単に実践出来るようなものじゃ無かったし、かぐやが来るまではずっと出来てなかったと思う。
頼るって所は……出来てる風に見えても『誰かに言われたから、友達に言われたから頼る』とか、そんな感じだったんじゃないかな。
でも……『逃げてもいい』って言葉には酷く救われたんだ。私はずっと、お母さんから逃げてた。どうせ何を言っても無駄だって、聞き入れてなんてくれないって。
頭の中で何回も反芻される言葉から、ずっと逃げようとしてた。けど、それは中々私を掴んだまま離してくれなくて……正直、しんどかった時期もあったんだよね。
お母さんの言葉が正しいのは分かってた。だから、ずっとコレと向き合っていかないといけないのかなって………そう思ってた。
そんな時に、ヒイロに言われたんだ。『一旦逃げてみて、そっからもう一回向き合ってみたらいい』って。
いや、正直そんな簡単に逃げれたら今まで苦労はしてねえし、頭の中でお母さんの言葉がフラッシュバックしねえよってなったんだけどさ。それって多分……逃げることにこう、悪さというか、後ろめたさを感じてるからなのかなって私なりに考えたんだ。
まあ、トラウマになってるって部分もあったとは思うんだけどさ。
私はお母さんにこう教えられたのに、今更それから逃げて、恩知らずなんじゃないかって。そういう風に感じちゃってたのかなって。
けど、そんな私を助けてくれたのが、ヒイロ。
逃げることに悪さなんてなくて、いつか大事な物に立ち向かう為に準備してるんだよって。そう言ってもらえたから、心が少し軽くなった気がした。
親子の形なんてわからなくて、本当にこれで良いのかな。なんて少し思ってた時に、そうやって言ってくれたことでどれだけ私が救われたか。
かぐやとヒイロ、みんなの言葉があったから、私はお母さんと話せた。何回もブレて、フラフラだったけど、それでもそこまで辿り着けた。
けど、そんなこと言ってもアンタはきっと分からない。分かってくれない。そんな確信がある。
だから、何度でも行動で示す。
そして、いつかきっと、私達に夢中にさせてみせる。夢中じゃないからこそ逃げようとするんだもんね……?
……けど、今は──
「ヒイロ。ありがとね」
「ん?おう」
こうして言葉を伝えられる。
だから、ありったけの思いを、これまでの感謝をぶつけよう。何度でも。
そう思いながら、私はヒイロの話を聞くのだった。
彩葉って、良くも悪くも責任感強い子だと思うんですよね。甘えないというか、逃げようとしないというか……だからこそ芦花や真実は彩葉のその危うい在り方を見て「フッと消えちゃいそう」と表したのだと思います。
けど、ウチのヒイロ君は現実(百合を破壊し続けている事)から逃げ続けてますからね。逃げる事の大切さを説いて貰いました。
大事なのは、逃げない事じゃなくて、何が何でも自分がしたい事、やらないといけない事にいつか向き合う事だと思っています。
だから、その過程でどれだけ逃げても、誰かを頼っても良いんだよって、そう伝えてあげる事が少しの救いになるんじゃないかな、と傲慢にも思いました。
それでは、また次回!