ポケモン語の理解はぶっちゃけデバフ   作:ポケモン全般(今はas)やってる人

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大変お待たせ致しました。



ヤマブキシティの怪物?

 一夜を越せば火傷はほぼ完治していた。

 やけどなおしと医師の迅速な対応で赤みが残ってはいるが大事には至らなかったらしい。

 

 仕事もやろうと思えばできるが折角の機会。

 両親からロコンを引き取っているしフシギダネのトレーナーにもなったんだ。

 

 日用品を買い揃える為に町に行く。

 

 旅に出ないからといってポケモンと暮らすために必要な物は沢山あるし多岐に渡る。ポケモンの種族…正確にはグループ。タイプによって変わってくる。

 

 例えばポケモンフーズ。ポケモン毎に味の好みは全く違う。同じポケモンでも個体や性格によって好みはかなり変わってくる。

 

 フシギダネお気に入りのポケモンフーズをロコンが食べたが微妙な反応をしていた。しょんぼりとしたフシギダネを見てロコンが慌ててフォローを入れていたのがついさっき。

 

 ポケモンブリーダーの登竜門がポケモンフーズ作りでもありポケモン毎の好みに合わせたポケモンフーズを作ることができて初めて一人前と言われるらしい。

 

 アニメのタケシがどれだけ凄いのか改めて理解した。

 

 因みにポケモンは人間以上に栄養素が必要。

 普通の食事をするよりポケモンフーズの方が沢山の栄養を取ることができる。

 

 そこに目を付けたとある企業が人間用のポケモンフーズを開発したことが少し前に話題になったことがある。

 

 …要するにダイエット食品だ。

 ポケモンフーズは人間が食べることを想定していない。味もそうだし栄養素もだ。

 

 フシギダネとロコンに聞いたが腹持ちも良いらしい。少量でも満腹感を得られる。

 

 正にうってつけらしい。

 しかも普通のポケモンフーズより高いときた。…呆れて声もでなかった。

 

 こればかりは同じ人間として理解できなかった。人間用のポケモンフーズと矛盾している言葉も含めて…ポケモンの為に作られたものをわざわざ人間が食べられるようにして金儲け。

 

 …こういう所は前世と共通らしい。

 別に悪いとはいわない。現に今も人気の商品であり続けている。企業は利益を、消費者はメリットを得ることができ双方が納得し満足できる関係なんだろう。

 

 一般人に口出しできるものじゃない。

 ……気にするものでもなかったな。

 

 あとはロコンの手入れをする為のブラシやハサミ。遊び道具やフシギダネの為に観葉植物等も…おやつやきのみも多めに買った方がいいだろう。

 

 他にもまだまだあるが行ってみなきゃ分からないことが多い。俺が知っているのはあくまでゲームの情報や知識ばかりだ。

 

 それもストーリーやポケモンバトルに主軸を置いている。ストーリーに関してはある程度予測ができるだけ。旅に出ない以上なんの役にも立たない。

 

 ポケモンバトルは意味がない。一応自衛できるくらいには仕上げるつもりではある。

 

 …いざ戦うとして…俺はフシギダネとロコンにポケモンへと攻撃する命令をできるのか。

 

 ……ポケモンだって痛みを感じる。恐怖や躊躇いもある。もしかしたら戦うことが苦手なポケモンや怖いと思うポケモンだっているだろう。

 

 そんな思いや言葉が届くことなく…知らずに戦わせているポケモントレーナーが居ないとも限らない。

 

 …ロケット団やプラズマ団。強奪したポケモンを使い戦わせている組織も存在している。バトルに負けたからと虐待するポケモントレーナーの風上にもおけないクズだっている。

 

 そんな光景を目の当たりにして…俺は指示を出すことができるのか?否……無理だ。したくない。喜んでポケモントレーナーをぶん殴るだろう。勝てるかは別として。

 

 …こういう所は完全なデバフだな。

 いや…何も知らずに割り切ることができる方が幸せなのかといわれれば……はぁ…知らない上で成り立つ幸せもあるんだろうな。

 

 全身に伝わる激しい振動を感じつつ視界が左右に揺れていく。眼前に映る窓ガラスからは大都会を思わせるビル群がそびえ立っていた。

 

『トレーナー…大丈夫?具合悪いの?』

 

『さっきから上の空だけど無理してないわよね?…まだ痛んだりする?』

 

「車酔いでもしたかのう?」

 

 左右からフシギダネとロコンが心配そうに顔を覗かせていた。オーキド博士もルームミラーからチラリと見ている。…ああ、もう着くのか。考え事をしていたから気づかなかった。

 

「大丈夫です。2人も心配かけてすまない」

 

 意外…でもないか。

 マサラタウンからヤマブキシティまでかなりの距離がある。当然徒歩で行けるわけがなくオーキド博士に相談したら車で出してくれたんだ。

 

 オーキド博士が運転手なんて贅沢にも程がある。善意なのは分かりきってるが変に調子が狂う。

 

 昨日の件も含めて頭が上がらなくなりそうだ。オーキド博士曰く依頼はあれから数件来ているらしい。…気を引き締めよう。

 

 ヤマブキシティに入りビルの間に立つ立体駐車場に車が乗り込んでいく。何階かに上がり込んだ所で停車した。

 

「着いたぞ。わしは適当に見て回るから買い物が終わったら連絡してくれ」

 

「分かりました」

 

 車を降りる。後に続いてフシギダネとロコンも降りる。最後にオーキド博士が降りて鍵をかけ隣接したデパートへと入っていく。

 

 タマムシシティの誇るタマムシデパートには劣るがそれでも都会に相応しい大型デパート。横幅は狭いが縦幅は高層マンション並。

 

 何故タマムシシティのタマムシデパートがある中ヤマブキシティを選んだのか。ゲームの知識を辿れば最初にタマムシデパートが思い当たるだろう。……俺もそうだった。

 

 両親に連れられ何回も行ったことがある。

 食材や日用品を買う両親そっちのけでロコンを抱えてポケモントレーナー御用達のモンスターボールやキズぐすりの売り場を見て回っていた。

 

 ポケモントレーナーが沢山いた。

 ……同じぐらいポケモンも。ただでさえ人間の声が聞こえる中でポケモンまでも聞こえてくる。

 

 …ずっと聞いていると人間とポケモンの声の違いが分からなくなる。俺にとっちゃ言葉に変わりない。逆に鳴き声は一切分からない。

 

 泣いたり笑ったりした場面に遭遇しようにも人間と大差ない。…草場の影や森の中で聞こえるのは囁き声に世間話、命のやり取り。

 

 …膨大な情報量を処理しきれなくて頭を抱えることになる。…それは生まれた頃から変わらない。次第に慣れていくし気にならなくなる。余裕を持つことでポケモンたちのことをより深く知ることができる。ただ2年間引きこもってた代償は中々のものだろう。

 

 ……車の中でも声が聞こえてきた。

 風切音に紛れて競争するポッポ達の掛け合い。誰が先に進化できるか勝負している。

 

 微笑ましい会話なら別にいい。

 ………いいんだ。

 

 タマムシデパートに限らずの話。どこに行こうと付き纏う。また慣れていけばいい。

 

 ……理由は別にあったりする。

 少なくとも今後タマムシシティに行くことはないだろう。…あるとすればレッドが──

 

『……トレーナー…』

 

『顔色悪いわよ?…大丈夫なの?』

 

「……悪い。買い物を済ませよう」

 

 …また心配をかけさせてしまった。

 

 思考を振り払う。

 何も考えず事を終わらせればいい。

 

 駐車場からデパートの中に入る。

 オーキド博士が気を利かせてくれたのかポケモン用の日用品売り場へと直ぐに辿り着いた。

 

『わぁ…!』

 

『品揃えは良さそうね』

 

 興奮気味にキョロキョロと見回すフシギダネ。商業施設は初めてなんだろう。

 

 ロコンは慣れた様子で商品を眺めていた。

 

 客は多い。…殆どがポケモンを出して歩かせていたり腕の中で抱えている。

 

 ロコンの言う通り品揃えは豊富で別の店にハシゴする必要も無さそうだ。…他にもポケモングッズも売られているみたいだな。

 

 先ず目に付くのはピッピにんぎょう。野生のポケモンに投げたら確実に逃げられるといった防犯アイテム。どういう原理なのかは分からないが安全の為に子供に持たせる親が多い。

 

 ただポケモングッズとしての人気が高く本来の使い方をする人は少ないらしい。…本末転倒な気がするんだが…現にグッズの売り場に置かれている。両隣にはピカチュウとプリンの人形。親子が仲睦まじいやり取りしていた。

 

 …ピカチュウの人形はピッピ人形と同等。だが他にもピカチュウのグッズアイテムが陳列している。

 どうやら今はピカチュウが流行中らしい。

 

 ……ピカチュウだからと納得できしまう自分がいる。ポケモンの顔。アニメやゲーム、漫画でも主役を張り黎明期にはアイドル枠としてピッピとプリンと並びアイドルトリオとも呼ばれていた。

 

 他にも珍しいという共通点があったりするがピカチュウはトキワの森に群れを作って生息している。…人前には滅多に姿を現さない。

 

 …ああ、ピッピ人形と似た効果を持つアイテムでむしよけスプレーがある。こちらは名前の通りスプレータイプで身体に振りかけて使用する。値段もピッピ人形に比べて安価。

 

 ポケモンの嫌いな匂いがするらしくポケモントレーナーよりもポケモンを持たない一般人向けの商品になっている。効果時間によりシルバースプレー、ゴールドスプレーと名前も変わり野生のポケモンの侵入を防ぐためにも使われる。

 

 ……ポケモンの個体によっては平気な子もいるので過度な信用は禁物。因みにロコンは大嫌いで使ったらどうなるかわかったものじゃない。……ブチギレるのは確か。

 

 どちらも縁のない商品。視線をグッズ売り場から日用品売り場へと移す。フシギダネとロコンは見える範囲にいるし自由させても大丈夫だろう。

 

「おかーさん!変なピカチュウの人形があるよ!」

 

「あら本当。ちょっと不気味ね。…不良品でも混ざったのかしら?」

 

『……()()()()()

 

 向かう足を止める。

 

 …人形だし誤差はある。というか…声が聞こえた。

 

 聞こえてもおかしくはない。ただこの場所で聞いたどの声とも一致しなかった。

 

 声の元は先程の親子。顔を向ければ苦笑いをした母親と…不格好なピカチュウの人形…いや、違う。

 

 ピカチュウを模した布を被った…ナニカ。

 …は?…嘘だろ?…あれは……!

 

 思わず目を見開いた。

 

「なんかピカチュウの()()みたい!」

 

 頭が真っ白になる。ピカチュウにはない腹部にある2つの穴が怪しく光ったことで我に返ることができた。

 

「こら!そんなこと言わないの」

 

『………違う…違う違う違う違う違う違う違うチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウ』

 

 ばっ…!!悪態を吐きたくなるのをなんとか押さえつけ親子に向けて駆け出す。

 

『…トレーナー?』

 

『え?ちょっと?』

 

 突然の行動に驚く客。フシギダネとロコンが戸惑いの声を上げるが構わず叫んだ。

 

「今すぐその()()()()から離れろ!!」

 

「え?ポケモ…うわぁぁ!?」

 

「きゃぁぁぁ!!」

 

『……嫌い…キライ!』

 

 少年が抱えていたポケモンを放り投げる。宙に浮いたポケモンが親子に向けて影のように黒い腕を振り上げた。

 

 …なんでヤマブシティにミミッキュがいるんだ。ミミッキュはカントー地方に生息してないだろ。…いや、あくまでゲームでの話だ。

 

 カントー地方に生息しないポケモンがいたとしてもおかしくない。今まで別の地方のポケモンを見なかったから先入観でそう思っていただけに過ぎない。

 

 考える余裕はない。親子に割り込み前に立ち庇う。

 

「グゥッ!?」

 

『トレーナー!?』

 

『ッ!』

 

 黒い腕に引き裂かれる。肩から腹部にかけて衣類ごとパックリ切り開かれ鋭い痛みが走る。吹き出される鮮血。誰かの叫び声、隣の泣き声、逃げ惑う足音。

 

 泣き出した少年を抱き寄せる母親。

 

「…あ、あの…血が……」

 

「大丈夫なので今すぐ逃げてください」

 

「で、ですが……」

 

「いいから」

 

「わ、わかりました!…ありがとうございます」

 

 少年を抱えて小走りに逃げていく母親を見送る。…ミミッキュは床に着地すると頭の部分を不規則に揺らしていた。

 

 飛び散った血飛沫がピカチュウのぬいぐるみを赤く濡らしていく。血がぽたぽたと落ちていき溜りを作っていく。

 

 傷口を手で塞ぐも覆うことはできない。

 

 …クソ痛い。なんて話じゃない。がっつりいっただろこれ。ロコンのかえんほうしゃが可愛く見える。…アドレナリンで痛みが徐々に消えていく。

 

 死の間際なのに冷静に慣れた。

 技は多分…シャドークロー。急所に当たりやすい。もし急所なら臓器ごと切られてたかもしれないと思うと恐怖で心拍数が上がっていく。

 

 売り場…このエリア、この階層から人が消えていく。誰かが押した火災報知器が鳴り響く。…本来なら俺もフシギダネとロコンを連れてその場から逃げるべきなんだろう。

 

 ……目の前のミミッキュを置いて。

 

 ミミッキュはかぶりものポケモン。

 ピカチュウを模した被り物をているからそう呼ばれている。

 

 なぜそんな事をしているのか。理由は二つあり日光を浴びてしまうと体調を崩してしまう体質で日光から身を守るため。

 

 …もう一つは人間と仲良くなりたいという純粋な思い。ミミッキュ自身は友好なポケモン。だけど自身の不気味な姿や生態ゆえに周囲から避けられていた。

 

 そこで流行したピカチュウグッズを見つけて…ピカチュウに化けたら人間と仲良くなれるのではないか?と考えるんだ。

 

 …話が出来すぎている気がしなくもない。

 タイミングが良過ぎるというか……。

 

 ……生息地の一つであるアローラ地方では布の中を見ようとすると呪いにより謎の病に侵されるなんて言い伝えがある。

 

 図鑑の説明でも姿を見た学者が恐怖のあまりショック死した、偶然見てしまったトレーナーがその日の晩に苦しみもがいて死んだ等の死を強調するように書かれる。

 

 人によるがミミッキュは恐怖の対象とされ続けるだろう。

 

 …………はぁ…見過ごせないがそれよりも運が悪過ぎる。

 

『トレーナーッ!!…このポケモン…ピカチュウ……?』

 

『おにぃ!……ピカチュウ…じゃない。見たことがない』

 

 足元に駆け寄り真っ青な顔のフシギダネ。前に立ちミミッキュを見て今にも飛びかかりそうなロコン。

 

『…なんで…なんで…なんで……仲良くなりたいだけなのに…ピカチュウに化ければ仲良くなれると思ったのに…偽者…偽者…偽者じゃないのに…』

 

 …偽者だろ、と言いたくなるが口を噤む。

 本体を見たらどうなるか分からない。仲良くなるためってのもあるが…自身の体を見て人間がどうなるか分かっているからこそかぶりものをしている優しいポケモン。

 

 ……説明しておくか。

 

「……かぶりものポケモンの……ミミッキュだ」

 

『…ミミッキュ?…かぶりものポケモン?』

 

『……なんで知ってるのよ』

 

 当然のツッコミをロコンから返された。

 …そりゃピカチュウに化けるポケモンなんて聞いた事ないだろう。

 

 発見されたらニュースにでもなってるはずだ。……ほぼ悪い意味で…。

 

「知ってるから……知ってる」

 

『理由になってない。…おにぃの隠し事なんて今更だし別にいいけど…』

 

 そう答えるしかないし折れてくれて助かった。こっちは死ぬまで明かせない秘密。…頭がクラクラしてきた。血を流し過ぎたんだと思う。

 

 座り込み血溜まりに膝をつく。

 

『トレーナー!…どうしよ…どうしよう…!』

 

『ああもう!…フシギダネ!かいふくのぐすりを持ってきなさい!分かるわよね?かいふくのくすりよ!角張ってて中身が緑色の!…アタシはこの…ミミッキュってのが何するか分からないから見張ってるわ!』

 

 かいふくのくすり。…どんな怪我を負っても回復することができるキズぐすり系統の最上位アイテム。…ゲームとは違い万能という訳ではない。…人間に効くのか分からない。

 

『かいふくのくすり…わ、わかった!』

 

 ……流れ続ける血液。…ヤバかったらロコンに焼いてもらうしかない。正直もう助からないと思っていた。ミミッキュからの動きはない。

 

 目が霞むんでいく中でミミッキュを見る。…ミミッキュと目が合う。攻撃する様子はなく静止。…どうしたんだ?

 

『…ミミッキュ……ミミッキュ…ボクの名前……?』

 

『何よこいつ。自分の名前も分からないの?』

 

 名前を繰り返すミミッキュ。…明らかに様子がおかしい。…人間がそう呼んでるだけでポケモンは知らないことはあったりするが…。

 

『ボクみたいな化け物に名前…名前………名前…ボクの名前…ミミッキュ…うん、ミミッキュ…ボクの名前はミミッキュ』

 

 噛み締めるように名前を言葉に出す。

 ……もしかして…まだ名前が付けられていない?いや、流石に他の地方なら……。

 

『……名前を付けてくれてありがとう。あと…ごめんなさい…!ボクのせいで怪我を…ぁや…

 ぁ…ど、どうしよう!…折角名前をつけてくれたのに…嫌われちゃう…死んじゃう……ッ…ぐずっ…ひっぐ…』

 

 ……何が起きている?胴体から見える二つの目から涙が溢れ出している。

 急に泣き出したミミッキュに呆然とするしかない。…頭回んねえって……。

 

『なによこいつ……おにぃ!!』

 

『持ってきたよ!…トレーナー…!?』

 

 視界が歪む。手足が冷たくなっていく。

 意識が朦朧としていく。

 

 ……これは出血多量の……!

 なんとか意識を留めようと頭を振り上げると勢いのままに仰向けに倒れ込む。天井のライトがいつも以上に眩しい。

 

 薄まる視界の中には涙ながらに呼びかける二人。…シュー…と患部にスプレーが…かいふくのくすりが吹きかけられているのが分かる。

 

 痛みは感じず熱を感じる中、意識は完全に途絶えた。……目を覚ませば知らない天井にベッドの上。腕には点滴が付けられている。

 

 すぐ側のテーブルにはおかしの詰め合わせが置かれている。備え付けられた窓から外を覗けば満月と夜空。…結構時間が経っている。

 

 清潔感のある部屋にオーキド博士と警察官が話をしていた。足元には落ち着きがないフシギダネとロコン。起き上がろうと力を込めるが麻痺したかのように力が入らない。

 

 …倦怠感に吐き気。…まるで…手術後みたいな感覚。

 

『トレーナー!…よかったぁ…よかったっ……!!』

 

 気づいたフシギダネが駆け出しベッドによじ登り突撃する寸前に動きを止める。今も瞳を潤ませてボロボロ涙を流していた。

 

 もし突っ込んできていたら情けなく泣き叫んでいたな。

 

『全く…心配かけさせないでよ』

 

 フシギダネに遅れてゆっくりとベッドに飛びのり座るロコン。…涙のあとが残っている。

 

 布団を捲り傷口を確かめれば包帯が丁寧に巻かれていた。…少し血で滲んでいる。

 

 話し合いが終わったのかオーキド博士とこちらに頭を下げると退室する警察官。ホッと息を吐くとオーキド博士がベッドの横にある椅子に座った。

 

「おお、目を覚ましたか。…流石に焦ったぞ」

 

「……ご迷惑をおかけしました」

 

 なんとか起き上がろうとするもオーキド博士に止められる。

 

「無理しちゃいかん。手術からまだ時間はそう経ってないからのう。…それにポケモンから親子を守ったことは知っておる。もし君が気づかなければ……目も当てられんことになっていただろう」

 

 暗い表情をする。

 …もしあのまま少年が受けていれば…背丈の関係上頭から顔にかけて……切り裂かれていた。あの威力だ……最悪の光景が目に浮かぶ。

 

 …というか手術後なのか。手術するほどの大怪我…それはそうだ。

 

「……ミ…あのポケモンは…」

 

 ミミッキュのことが気掛かりだ。

 怪我を負わされ病院送りになったが……ミミッキュは精神が不安定だった。

 

 あの攻撃も怒りをコントロールできずに振るったんだろう…と思いたい。

 

「あのピカチュウを模したポケモンか。わしは遅れて来たんじゃが君の傍にずっといたよ。様子を見ておったがそのポケモンが黒い腕を出して君の顔に伸びたところで同行していた警官のガーディが攻撃して…逃げた。現在デパートを封鎖して捜索しているが見つかっていない。もうデパートから出ているだろう」

 

 ……傍にいた、か。

 

「しかし面白い生態をしている。ガーディの攻撃をものともしなかった。…ただ攻撃を受けた時に首が曲がった姿は不気味さを感じたのう。わしの方でも同僚に頼んで調べている。…進展はないがのう」

 

「……そう、ですか」

 

「今はそれよりも君のことじゃ。本来なら数週間は入院…のところ、かいふくのくすりを使っていたことで重症化を防ぎ2日程度で退院しても大丈夫とのことじゃ」

 

 驚いた。名前負けしてない効果をしてるのか。こればかりはロコンの冷静な対応に感謝しかない。

 

 ……ただ価格が高い。一つ3000円する。

 他にも汚してしまったピカチュウ人形やグッズ。…弁償になれば……。

 

 

「ああ、安心して欲しい。怪我人も君一人だけ…商品がダメになったが大した損害はない。寧ろ店は感謝しておったよ。むしよけスプレーが品切れになるほどに売れたと…お詫びの品に色々と……のう」

 

 微笑ましそうな視線をフシギダネとロコンに向ける。

 

『…あのね!貰ったポケモンフーズがとても美味しかったんだよ!今度一緒に食べようね!あとね!おっきい植木鉢も貰ったんだよ!!ウチがすっぽり入っちゃうくらいおっきいの!』

 

『…そうね。そこそこ良いブラシとコーム。…ボディソープを貰ったわね』

 

 ……なるほど。過程は置いて…買い物は完了したのか。結果良ければ全てよし、か。

 

「着替えも必要、荷物もあることだしわしは一度戻ることにするよ。……フシギダネとロコンは一度連れて帰った方が良いじゃろう」

 

『え?…なんで!トレーナーと一緒にいたいよ!』

 

『そうね。防犯の為に残った方が良いと思うのだけど』

 

 納得がいかない2人。首を横に振る。

 

「うーむ、言いたいことは分かるんじゃが血で汚れておったじゃろ。衛生面、医学的にもリスクが付き纏う。なにより怪我を悪化させてしまうかもしれん。…もしかしたら入院が長引いてしまう場合もあるぞ?」

 

 …その通りだ。

 ロコンは何も言えないのか項垂れる。…フシギダネは首を傾げているように見える。

 

「なに。明日またお見舞いに行き退院するまで傍にいればいい。だから今日だけは我慢しておくれ」

 

『うー……うん、わかった』

 

『……仕方ないわね。…癪だけど洗って貰いましょう』

 

 説得はできたみたいだ。

 

「では行くとしよう。小腹が空いたらそこのお菓子を食べていいぞ。助けた親子からの見舞い品じゃ。…感謝していたよ。今度改めてお礼がしたいとも…」

 

 礼なんて別にいい。…逆の立場を考えれば恩人なのは分かる。ただ恩着せがましい真似はしたくない。…一度だけ、そう心に留めよう。

 

「…わかりました。フシギダネとロコンをお願いします」

 

『トレーナー!また明日くるからね!』

 

『……明日くるわ』

 

 フシギダネとロコンを連れて病室から去っていくオーキド博士。…途端に静粛が訪れる。…まだ2日なのに引きこもってたのが懐かしく感じる。

 

 ……麻酔が切れたら耐え難い激痛に苛まれることになると憂鬱だ。

 とっとと寝てしまおう。目を閉じ……。

 

「……?」

 

 窓を見る。

 

 一瞬窓が揺れた気がする。…風か?

 確かめようにも動けない。…気のせいだろう。

 

 目を閉じて眠りについた。




フライングしてます。変な終わり方になりましたし今後出てくるかも…しれません(多分)

依頼が始まりません(白目)
またアンケート適当にポチってくれると嬉しいです。

次回はくさタイプ

  • ナゾノクサ
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