お嬢様がGBNにいるわけないだろう! 作:プラ板の削りカス
「やはり……わたくしは、ミキがいないとダメみたいですね。もうミキなしの身体では生きていけないようにされてしまいました……♡」
「なに人のせいにしてんのよ、格上に喧嘩売りたかったら事前に下調べするとか情報集めるとか色々あったでしょうが」
高難度サバイバルミッションを終えて、ロビーに帰還してきた私たちは、他愛もない言葉を交わしながら当てもなく歩いていた。
「一人で戦ったのは初めてだけど……ぼくもやっぱり、仲間が、ミキたちがいてくれた方がいいな。一人は心細いよ」
「そのようなものだろうか。私は完璧なメイドなので命令とあれば完璧にスタンドアロンで行動してみせるが」
「キョウさんは例外なのです」
まあ確かに、フォースで挑むミッションとして高難度サバイバルミッションを選んだのはちょっと失敗だったかもしれないわね。
ルカはともかく、フィアやシナノちゃんまで似たようなこと言ってるわけだし。
そうなると、次のイベントは、リアルで特になにもなければ、フォースで参加できて、スタート地点も一緒で、なおかつルカが飽きないように上級者にも積極的に喧嘩を売りに行けるようなのが望ましいわね。
……あるの、そんな都合いいイベント?
うーん、バトランダム・ミッションは格下を引く可能性もあるし、50vs50シチュエーションバトルズも悪くはないけど結局運頼みになっちゃうのは変わらないし。
コンソールを開いて、首を傾げながらぽちぽちとイベントを検索していたときだった。
「ふふ、先程ぶりですね。『レディビルド』の皆さん」
「あなたは……ミィクさん」
うおっでっか。じゃなかった。
規格外のプロポーションに目を奪われそうになるけど、個人ランキング39位という上澄みも上澄みが一体なんの用なんたろう。
レイドボスと戦ってたときも意味深なこと言ってたし、気にはなるわね。
「そういえばさっき、GBNでもどうとか言ってましたけど、ミィクさんは私たちのこと、知ってるんですか?」
「ええ、お噂はかねがね。ですからこうしてちょっとしたお話をさせていただきたく」
「別に構いませんけど……ルカ、ステイ。まだ戦うと決まったわけじゃないわ」
キラキラと目を輝かせて「個人ランキング39位」の肩書きを聞いていたルカを宥めつつ、私はミィクさんに話の続きを促した。
「ええ、実はちょっとしたイベントのお誘いでして……今度のフォースフェスが、一風変わった形式で開催されることはご存知ですか?」
「フォースフェス……ってあの、ベアッガイのあれですよね」
興味なさすぎて覚えてなかったわ。
とりあえず朧な原作知識を辿って、ミィクさんに問い返す。
なんか所定の場所を巡ってヒントをゲットしたらお宝が手に入る、みたいな探索形式のイベントだった気がするけど、道中でバトル禁止なのがネックなのよね。
お宝を狙うんだったらこう、もっとギラついた感じで奪い合いする方が私たちの性に合ってるわけだし。
「ええ、次は新形式で、『バトルフェス』として開催される、という予告がきていましたので、よろしければ一緒に参戦しませんか?」
「バトルフェス……面白そうな響きね」
「ただのお宝探しであればお断りでしたが……ガンプラバトルが絡んでいるとなれば行かない方が無作法というものですわね、ミキ」
「でも、バトルフェスって一体なにをするんだい?」
概要も聞かず、話に乗りかけていたけど、フィアの疑問はもっともだった。
確かに、バトルフェスっていって想像するのは100人ぐらい集めて最後の一人になるまで戦い合う豪華版バトルロイヤルだけど、それなら50vs50シチュエーションバトルズで事足りるわけだし。
そんな具合に、ぼんやりと考えを巡らせていると。
「ではそれは、私の方から説明させていただきましょう」
「まあ、ヒオリさん」
「戦場ではお会いできませんでしたけれど、こうして会えて嬉しいです。ミィクさん」
おお、なんか強そうな人がきた。
青みがかかった髪の毛をストレートロングにしつつ毛先に軽くウェーブをかけて、小さなサイドテールを髪の毛の右側に作った、白ずくめの服装をした女の子だ。
ハイライトがない赤い目からは常に隙を伺わせまいとする緊張感が漂っていて、思わずこっちも身構えてしまう。
「そう緊張なさらないでください、『レディビルド』の皆さん。ヒオリさんともそのうちお会いできるはずなので」
「本題から外れていますよ、ミィクさん。こほん……バトルフェス、というのは皆様の予想通り、フォースフェスとバトルイベントを組み合わせた、お宝の争奪戦です」
ヒオリ、と名乗った女の子は、コンソールを開いてバトルフェスの開催予告が記載されたウィンドウを私たちに投げ渡してくる。
ははーん、なるほど?
つまりベアッガイフェスの欠点だった「お宝を奪い合うのに参加者同士で戦えない」という縛りを撤廃した感じか。
「なるほど、戦えるフォースフェスだからバトルフェスね、わかりやすいわ」
「はい。今回のテーマは……『宇宙海賊』。お宝として用意されているのは、フォースネスト『エオス・ニュクス号』。なので、私とミィクさんも同じF97を好む者として、参加させていただくのです」
「F97、クロスボーンガンダムですか」
「ええ、それに……宇宙海賊といっても一枚岩ではないので。他の方々も張り切って参加してくださるようですよ?」
ルカの問いに、柔らかい笑みを浮かべてヒオリさんは答えを返したけど、やっぱり一分の隙もないというか、近寄りがたさみたいなものを感じてしまう。
いや、違う。
恐れているのか、私は? ヒオリさんを?
「どうやらレイドボスだけでは満足いかなかった様子でしたので……でも、ヒオリさんも参戦してくださるならきっと楽しいお祭りになりますよ。なにせ、彼女は──個人ランキング、5位ですから」
「「「「「5位!?」」」」」
私たちは、気づけば声を揃えてミィクさんの言葉を復唱していた。
いや、強そうな人だとは思ってたけど、5位って。
このGBNで言葉通り五本の指に入るぐらいの強さを持っている人──そりゃ、震えるわけだ。恐れと、憧憬と、興奮で。
「もう、ミィクさん……肩書きは肩書きでしかありませんよ?」
「ふふっ、そうでしたね」
「そういうことで、もしもバトルフェスにご参加いただけるなら、私と戦場で相見える機会もあるかと思いますが、いかがでしょう?」
穏やかに微笑みながら、ヒオリさんは白手袋を投げつけてきた。
「面白い宣戦布告じゃない……! 上等よ、ミィクさんもヒオリさんも、『レディビルド』をナメんじゃないわよ!」
一桁と、二桁上位のランカーとやり合えるかもしれないとなれば、バトルフェスに参加しない理由はない。
それに、優勝賞品のフォースネストにも興味がないわけじゃないし。
シナノちゃんが加入して、手狭になってきたデフォルトのフォースネストを新調するにはいい機会だ。
「やはりミキと一緒にいると、面白いことが絶えませんわね。流石はわたくしの生涯のパートナー……♡」
「滾るね……! 至高の戦いが奏でる音に、ぼくも思わず疼いてきそうだよ……!」
「お嬢様が下された判断であれば、私は完璧に従うまでだ」
「エオス・ニュクス号……興味深いのです」
「そういうわけだ! 私たちをそう簡単にコマせると思うんじゃねえぞ!」
皆もやる気満々みたいだし、いいじゃない。
やってやろうじゃないの、バトルフェスを。
私は天上に立つミィクさんとヒオリさんを睨みつけるように、不敵な笑みを浮かべて、中指を立てるのだった。
3日サボっててすみませんでした……